ゼンレスゾーンゼロ・二刀の剣士   作:涙があふれる

4 / 7




Episode2.メイドっ子と列車でのアクシデント

 

▼△▼△▼△▼

─【場所:デッドエンドホロウ内部】─

 

 計画を立てた後、齋秋(さいしゅう)猫又(ねこまた)はデッドエンドホロウへと潜入(せんにゅう)し、アキラの操るボンプ──イアスと共に姿はあった。

 

「んで列車がトンネルで減速した時にボンプを列車上部に投げ飛ばしゃいいんだろ?」

 

 齋秋たち…主にアキラの立てた計画は以下の通りだ。

 齋秋と猫又の目標である爆薬を積載(せきさい)した無人列車はコンピュータが操縦を(にな)っている(ため)、線路前方に障害物(しょうがいぶつ)設置(せっち)すれば別ルートを選択する。今回はそれを利用し、列車をトンネル方面へと誘導(ゆうどう)…列車はトンネル内に突入すると自動的に減速をし始める。

 そして齋秋か猫又がその(すき)に列車上部へとアキラたちのボンプを投げ飛ばす。そこからイアスを操って居るアキラへとバトンタッチし、列車を故障停止させる。

 

『でもまだ“デッドエンドブッチャー”の居場所は把握(はあく)できてないから、3人共気を付けてね!』

 

 デッドエンドブッチャーとは此処(ここ)、デッドエンドホロウの(ぬし)である。その姿は人型をしており、巨大な体躯を持ち道路標識(どうろひょうしき)を武器に振り回してくる。

 現状デッドエンドホロウの都市開発計画が進んでいないのは、このデッドエンドブッチャーの影響が大きい。

 

「ま、遭遇(そうぐう)したらしたでぶった斬りゃいいだけだろ」

「「「……」」」

「…んだよその目は」

「…その500ゼニーの包丁持って言われても説得力ないぞ…」

「……」

 

 3人の視線の先、齋秋の右手には一本の出刃包丁が握られていた。まんま普通の包丁…特段(ひい)でた名包丁という訳ではなく、141で買える普通のどこの一般家庭にもある安物の出刃包丁だ。

 

「っ仕方ねぇだろ!刀どっかにやっちまったんだから!」

「あんたの管理どうなってんだ?!普通自分の武器無くさないだろ!」

「はあ?!俺には俺の事情ってもんがあんだよ!」

 

 別に俺は刀をなくした訳じゃない。そんなことは地球がサンバを踊り始めるレベルでありえない!俺は単に仕事場に忘れただけであって、無くした訳じゃない!

 仮に取りにでも行けばそれこそ帰って来れねぇ…100%ミズハに捕まる。だから仕方なく包丁を買っただけだ。

 

『はあ。2人共、そんなに騒いでるとエーテリアスが集まってきちゃうよ?』

「上等だクソッタレ!俺がこのなまくら包丁でエーテリアス共をばったばったとなぎ倒したらあッ!」

 

 

▼△▼△▼△▼

─【場所:デッドエンドホロウ_(ふさ)がれた道】─

 

 齋秋らがデッドエンドホロウに踏み入ってから(しばら)()った頃、順調に進めていた中で山積みになった列車によってその道が塞がれてしまっていた。

 

「おーすっげ。こりゃ完全に人為的なやつだな」

「別に道を間違えた訳じゃないんだな?」

『ああ。目的地は間違いなくその先だよ』

「どうすっかなあ。回り込もうにもここらは穴だらけ…下を通ろうにも俺じゃ無理だしな」

 

 まあ正直なところ、上から飛び越えるのも列車(これ)ぶっ壊して進むことも出来るっちゃあ出来んだが…それだとあのチェンソーメイドとのエンカウントイベが無くなっちまうからな。

 今は俺にはそんな事できませんムーブをするしかねぇか。

 

『う〜ん。このままだと計画に間に合わない可能性が──』

 

──「あ、あのっ…えっと…」

 

 この先をどのようにして進もうかと考えていると、山積(やまづ)みになった列車の向こう側からおどけた少女の声が聞こえて来た。それに対して猫又は電車が喋った!などと巫山戯(ふざけ)たが、アキラが冷静にツッコミそれに続くようにリンも話を進めた。

 そしてリンがルールだなんだと言い、列車の向こう側に居る少女に対して名乗るようにと言葉を飛ばした。

 

──「えっと…私は“カリン”。家事代行会社の従業員です。星座は双子座。血液型はRh-、好きなことはお掃除です。市民ナンバーは…」

 

「すげぇ詳細に名乗るのな…」

 

 そこから話は進んで行くと、どうやらカリンは危険なエーテリアスを()けて通ろうとした際に、同行していた仲間と(はぐ)れてしまったらしい。その上カリン自身は“キャロット”と呼ばれるホロウを脱出するために必要なアイテムを所持しておらず、しげしげと彷徨(さまよ)っていた中で齋秋らと遭遇(そうぐう)

 そしてカリンはホロウを抜け出す(ため)に、調査員だろうと思った齋秋らに助けを求めたのだ。

 

「…どうする?あのコを助けてあげる?」

『助けると言っても、まず向こう側に行けないからなあ…』

「さっさと引き返すなりなんかしねぇと、計画に間に合わねぇでドカンだドカン」

 

 と会話をしていれば、向こう側に居るカリンから提案が飛んでくる。カリンからの提案と言うのは、『自身が道を切り開くけたら同行しても良いのか』と言うものだった。

 それに対して猫又がそんな方法があるのかと返せば、カリンは少し待つようにと言い行動を始める。

 

「ん〜?下から来るのかあ?」

「こんな(せま)いところは無理だろさすがに──」

 

──ヴィィイイイイイッッッ!!!

 

「にょわあ!ヤな音だ!」

 

 猫又が列車の下から来るのかと思い覗いていると、まるでチェンソーが金属を削るような金切(かなき)り音が耳を(つんざ)いて来る。

 だが数秒してその音は鳴り止み、猫又が再び列車に近付こうとした瞬間──ギュイイインッ!と言う音と共に丸型のチェンソーの刃が高速回転しながら列車を切り裂いた。

 

「いやあ〜〜!!」

「どぅわビビった!つかこの光景どっかのミームで見たことあんぞオイっ!」

「危ないよふたりとも!」

 

 突然列車のドアを切り裂いて来たチェンソーに、猫又は驚きの余り大きく飛び退いて尻もちを着く。そして齋秋は生前動画系サイトで目にした光景と類似していていることにツッコミながらも、冷静に列車から離れる。

 そうしてズバズバと列車のドアは切り裂かれていき…最終的には尻もちを着いた猫又と腕に()(かか)えられたイアスの左右に分かれるようにしてドアが倒れ落ちる。

 

「んしょ──!うん、破れてない…」

 

 破壊されたドアの向こう側から現れたのは、なんと丸ノコチェンソーを持ったメイド服の少女だった。

 

「すっげ。メイドがバカデカチェンソー持ってやがる」

 

 このちっこいメイドっ子が友人(あいつ)の推し?とか言う奴のひとりか。確かに見た目は人気出そうな感じしてやがんな。

 にして…ちっこいメイドが丸鋸を担いでるの直で見んのは流石にインパクトえげつねえな。そこらのホラー映画よりもホラー味あるだろ。

 

 と齋秋が考えている他所で会話がトントン拍子に進んで行き、『お互い何も余計な事を話さない』と言う条件を元に、カリンを連れて行く事が決まった。

 そうして目的の場所に向けて進んで居ると、エーテリアスの群れと衝突する。

 

「ま、物は試しってヤツだな」

「なあ…ほんとに包丁(それ)で切れるのか?」

 

 エーテリアスを前に包丁を握って意気揚々としている齋秋を見た猫又は、不安げに顔を(しか)めながら声を掛ける。

 

「んな心配することはねえよ。包丁とは言え刃物は刃物だ。斬れるに決まってんだろ?」

 

 包丁ってのは野菜やら肉体…中には馬鹿太い骨を斬ることだってある。だから相手がエーテリアスだろうが何だろうが、上手く振るえばなんだって斬れちまうもんで──

 

「あらよっと」

 

──ピッ。

 

 齋秋がエーテリアスの群れ。

 数にして30体ばかしのエーテリアスに向かって1歩で肉薄すると、軽く左斜め上段から包丁を振るう。するとエーテリアスはズルリと斜めにズレて、地面へと崩れ落ちて粒子となって消滅する。

 

斬れる(よし)

 

「すごっ」 

「包丁であんなに綺麗に…」

『もしかして山月さんって、結構すごい人?』

 

 包丁で滑らかに斬り倒す齋秋に、驚きを(あらわ)にする一行。そんな皆を他所に、齋秋は一体目を皮切りとして次々とエーテリアスを斬り伏せて行った。

 ものにして十秒足らず…3人でも少しばかり面倒な数のエーテリアスを、齋秋は単独で殲滅し終えた。

 

「ん〜♪案外包丁ってのも悪かないな」

 

 距離感に多少違和感とズレが有りはするが、特に問題になる差異でも無い。それに今ので両方とも調整はできた。正味これでダメだったら素手で行くしか無かったんだが…思いのほか役立つみたいで助かったぜ。

 

「よーし、さっさと列車止めに行こうじゃねえのよ」

 

「お、おう!」「は、はい!」

 

 そうしてその後もなんやかんや戦闘を繰り返しながらも、迅速かつ負傷を負うことなく先へと進んで行き…暫くしてリンがホロウからの出口を発見したことを伝える。

 

「あの…本当に、ありがとうございました!調査員様のお力がなければ、カリンはきっとこのホロウを永遠に彷徨(さまよ)っていました!」

 

 カリンは出口を発見してくれた事に対して、にこやかに感謝の言葉を並べる。

 

「いやこっちとしても助かったってもんだ」

「そうそう。カリンちゃんがあのタイミンで現れてくれなかったら……」

 

 と、そこで猫又の言葉が止まる。

 

『「……」』

 

 その流れで場が静寂に包まれ…猫又がハッと思った事を口にしてしまった。

 

「なあ。もしかしてだけど、あんたなら列車くらい切れたんじゃ…」

「た、たしかに。私よりも早く切れそうですよね…」

『もしかして山月さん。わざと切らなかったんじゃ…』

 

 リンとアキラと猫又とカリンの疑心に満ちた眼差しが、一斉に齋秋へと向けられる。

 

「おっほん!…よっしゃー!出口も見つかったことだし!カリンはさっさと帰って仲間と合流してこいよ!んで俺らはさっさと列車止めに行こうじゃねえか!爆発しちまう前にな!な!」

 

「すっごい早口だぞ…」「すごい早口ですね…」『やっぱり切れたんだね…』

 

 とまあ最後の最後で面倒な事に成りかけはしたが、無事カリンはホロウから脱出完了…の前に、カリンは後々お礼をしたいと理由で、3人に対して名前を尋ねる。だが特に気にする必要は無いとリンが言った事により、その場で名乗る事はなくカリンは一足先にホロウを後にした。

 そうして暫く予定の列車が到着するのを待っていれば…。

 

『今だ!みんな行こう!』

 

 列車が来たのを確認したアキラの掛け声を始めとして、齋秋と猫又が列車に近付く。そして齋秋は右手でイアスを鷲掴むと──

 

「頼んだぜっ、と」

 

 列車上部に向けて放物線を描くようにして投げる。軽く投げ込まれたイアスは、お尻をクッションに着地する。

 

『-気をつけくださいマスター。お尻を列車のループにしたたかに打ちました-』 

 

 などと言いながら、Fairyからリンへと操縦を交代する。余り操作に慣れていないのか、リンは愚痴を零しながら進んで行く。

 そうして列車上部に取り付けられたハッチを開いて中へと侵入…出来たかと思えば、治安局の身なりをした完全武装の兵士に即座に発見されてしまう。

 本来無人である筈の列車に兵士が乗っている…リンはその事に驚いているが、今は驚いている程悠長にしていられる状況では無かった。

 

「どうしますか?パールマン長官に引渡し──」

 

 今にも捕まっても可笑しくはない…だがその様子に気付いた猫又が列車と窓をぶち破り兵士を蹴り飛ばす。それに続いて列車上部が円形状に斬り開かれると、そこから齋秋が侵入する。

 

「猫娘。俺はイアス(こいつ)と一足先に出る。殿(しんがり)は頼んだわ」

「わかった!こっちはキャロットがあるから大丈夫!先にお店に戻ってて!」

 

 そうして齋秋はイアスを抱えて列車から飛び降りる。そんな状況に一体全体何事なのかと、アキラは少しばかり声を荒らげながら問い掛ける。

 そんなアキラに対して、リンは今すぐ戻ると言いイアスを操作したのだった。

 

 

─【場所:Random_Play(ランダムプレイ)_STAFFROOM(スタッフルーム)】─

 

 時間は少し進み、齋秋とイアス((リン))は猫又よりも一足先に“Random_Play(ランダムプレイ)”へと戻っていた。

 

「ふたりとも、おかえり。無事に戻ってこれてよかった」

 

 特に負傷する事なく帰還した様子に安堵した様子を見せるアキラは、(ねぎら)いの言葉を掛けながらも状況の整理をするように話をする。

 アキラによれば、先程ニュースでヴィジョンが爆破解体を明日の夜にまで遅らせる事が発表されたらしい。遅延理由は『技術的な要因』…となっていると言う。

 それからトンネル内で別れた猫又からの連絡はまだ無いとのこと。だが特に心配せずとも大丈夫だとアキラは言う。

 

「爆破解体を遅らせることができたのは何よりだ…が、なにか違和感ねえか?列車がルート外れたってのに、メディアに口外は無し。加えて無人列車とか(のまた)いてたくせして、中には完全武装の兵士だ」

「ああ。身なりは治安局のものだったけれど、『任務とはいえこんな格好を』とか『靴が合わない』とか言ってたし、治安局の関係者じゃないことは明らかだ」

 

 アキラは続けて『それに猫又は何かを隠している』と言い、猫又が戻り次第徹底的に問い質す事を決めた。とは言えすぐに戻って来る筈もなく、3人はひとまず一息つく事にした。

 

 

 






  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。