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【場所:
──ガチャンッ!
“
「お、なんだ遅かったじゃねえか。猫娘」
「はぁ、はぁ。ただいま!」
生き急ぐようにして帰ってきた猫又に対して、
どうやら猫又の持っていたキャロットでは遠い出口しか無かったらしく、予想よりも帰るのに手こずってしまったようだ。
「そうだっ、さっきスマホで爆破が遅れるってニュース見たぞ!」
「ああそれな。
「そうなんだ!これからどうする?他の方法を探さなきゃ…て、」
と、そこで猫又の言葉を遮るようにアキラが話を変える。
「猫又。焦る気持ちも分かるけど、それよりも話すことがあるよね?」
「うんうん。お兄ちゃんの言う通りだよ」
「そうだぜ?隠しごとはこの際無しで行こうじゃねえのよ。猫娘」
今この状況に於ける空気感を察したのか、猫又の顔色がバツの悪いものに変わる。
そんな猫又を意に返さず、アキラは『これは大事な話だ』と言い少しばかり語気の強い口調で、猫又と
「猫娘。あの列車には本来誰も乗ってない、だったよな?それなのに完全武装の兵士がさっきダダ漏れで乗ってやがった。だってのにお前の反応はどうにも、咄嗟の出来事に遭遇したって感じがし無かった」
なんて俺もコイツらのノリに乗っちゃいるが、真剣な雰囲気ってのはどうにも苦手なんだよなあ。高校の頃の鬼教師に説教される時の地獄みたいな雰囲気…あれ思い出しちまうわ。
「猫又、正直に言って。私たちのこと、こっそりと嵌めようとしてない?」
「あたし…そ、その……」
リンからの真剣な問い掛けに、猫又はたじろいだ様子を見せる。
続けてアキラが『パエトーンのサポートがまだ欲しいのなら、全て隠すこと無く話してくれ』と
すると猫又は何も隠すつもりは無いと言い、あの列車に人がいるなんて事はもとより知らず、ただ同様の格好をした集団を見た事があるだけだと白状する。
「あ、あんた達の言う通り…たしかにあたしと邪兎屋はとんでもない面倒事に巻き込まれてた!でもっ、それは人助けのためなんだ!」
「ちょいと待てよ猫娘。俺たちは一切、そんなこと教えて貰っちゃいねえんだけど?なんで最初のうちに言わなかった。それだけで状況は100倍マシだったぜ?」
そのように齋秋が言えば、猫又は頭が追いつかない程の驚きの連続で、それを上手く説明できる自信が無く伝えなかったのだと言う。
それに加えて列車を止める事に必死になり過ぎて、ボンプの視覚記録も最後まで見ることが出来ず…と、そこで猫又はハッと何かを思い出しのか猫耳を立てる。
「…そうだっ、ニコのボンプ!あれがすべてを記録してる!」
「ニコってぇと…アレか、邪兎屋のリーダーか」
「ああ!あれの一部始終を見れば、あんた達もきっと分かってくれる!」
「よしそんじゃ、頼んだぜプロキシコンビ」
「ああ!」「任せて!」
そうして邪兎屋のリーダーであるニコが所有しているボンプのデータを取り出し、映像を再生する。
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映像を再生してから暫くして、猫又と邪兎屋がどのような面倒事に関わっているのかが分かった。
大まかに纏めれば…ホロウ内で見つけた少女のあとを追った結果、爆破予定地である“カンバス通り”に辿り着いた。そしてそこには避難している筈の民間人が少なくとも100人は残っていた。
映像内の会話を聞く限りでは、ヴィジョンがコスト削減の為に住民ごと爆破する腹積もりだと言う予測が上がる。
加えてヴィジョンは以前より“
「なるほど。詰まるところお前と邪兎屋の連中は、ヴィジョンの計画を暴く為と住民を助ける為にこの七面倒臭ぇ厄介事に首突っ込んだ訳だ」
齋秋の言葉に、猫又はそうだと頷く。
「ニコたちはひとまず工事エリア内で委任状を集めて、ヴィジョンの動向を探るって言ってた」
そこから猫又は続ける。
まず猫又の仕事は頼みの綱である援軍ことパエトーンにこの事を伝えて、助けを求めること。そうしてどうにかこうにかホロウを抜け出して、猫又は
「嘘はついてない!ニコも、爆破エリア内の住民たちも、絶体絶命の状況に置かれてるんだ!お願いっ、パエトーン!あたしと一緒に、皆を助けに行って!」
猫又は全て言う事は言ったと、必死にリンとアキラに頼み込む。そんな姿の猫又に対して、ふたりはこの状況が
だが猫又は真っ直ぐな目で答えを変えする。
「今更あたしを試さなくてもいい。出発した時、心に決めたんだ──何とかしてでも皆を爆破エリアから救い出す!今のあたしには、それしか考えられない!」
「……」
こいつがガキなのか大人なのかは分からんが…死ぬ可能性が圧倒的に高いってのに折れないってのはそこそこ、気に入った。
「いいな。俺はそう言うの嫌いじゃないぜ?俺はお前に手を貸してやる。少しでも腕の経つ奴はいんだろ?」
「…ふう、分かったよ。依頼人がそう決心したんなら、私たちもこれ以上は何も言わない」
「それなら早速、救助計画を考えよう」
そこからリン.アキラ.猫又.齋秋の4人は邪兎屋及び民間人救出に於ける、救助計画を練り始める。
とその中で、もう時期先程遅らせた列車が到着する事を思い出す。列車が目的地に到着すれば、今以上に兵士が増強され警備は一層厳しいものになってしまう。
「そうなれば正面突破は……」
「…あ、俺の出番か?」
アキラの視線が齋秋に向けば、齋秋はハッとしながらもニカッと笑い任せろとばかりに自身の出番かを問い掛ける。
「おー!たしかにあんたの強さなら突破できそうだ!」
「ま、雑魚がいくら集まろうが余裕のよっちゃんよ!」
列車で見た限りじゃあ兵士の質は大して高くなかった。あの
まあ
「…いや。いくら齋秋が強いと入っても、真正面から暴れれば民間人に死傷者が出掛けない」
「うんうん、お兄ちゃんの言う通りだよ」
アキラの指摘に、リンが同意する。そしてリンは他の方法があると言い、それを説明する。
「ほら、閉じ込められてる住民たちはエーテル適応体質じゃないでしょ?だから武装部隊は正面だけを警戒すると思うだよね」
「まあそうだろうな。場所が場所だけに、まばらに配置するよか一点に集中した方が守りが硬い」
兵士とは幾ら居たとしても有限に変わりは無い。であれば、監視拠点を守る為に最も警戒すべき一部分…真正面からの襲撃に備えて、大半の兵力を割いている。
となれば他の面…特に背後には兵力を極端に少なく配備している可能性が高い。兵士が少ないとなれば、隙も多くなる。
続けて、監視拠点の列車を奪取しホロウ内に敷かれた線路を利用。その後“カンバス通り”の駅へと向う。その際、邪兎屋と住民には事前に駅で待機して置いて貰う。
そしてそれらが上手く進めば、無事全員を爆破計画エリア内から運び出す事が出来る。
これがリンの考えた方法だ。
「あったまいい〜!きっと列車自体にも、侵食耐性があるはず。なる早でホロウを出られれば、住民たちも侵食に晒されずに済むぞ!」
「
リンから問い掛けに、Fairyは可能であると返答する。
「よし。準備が整ったらすぐに行動を開始しよう」
「猫又、ボンプを連れてって。まずはニコと合流して、計画を説明しよ。後は…」
「うん…あとは、決着を付けるだけだ」
「よし。それじゃ準備を始めよう。出来れば齋秋さんにも猫又について──」
「いや、猫娘がそっち行くってんなら俺は別の方で動くわ」
アキラが出来るだけ安全にという考えで、猫又と共に行動してくれないかと齋秋へと頼もうとすると、それを遮り別で動くと伝える。
「別の方…ってなんなんだ?」
猫又はそんな齋秋の言葉に、小さく首を傾げる。
「それは内緒。でもま、確実に良いことだ」
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【場所:六分街_齋秋の隠れ家】
その後アキラたちと別れた齋秋は、自身の隠れ家のひとつに来ていた。
「さてと…」
齋秋は机の上に何台も置かれている携帯端末の一つを手に取り、とある人物へと電話を掛ける。
『―
「はっはっはっー。元気そうでなにより…」
電話が繋がるや否や、端末の向こう側から聞こえて来たのは頭を劈く程の怒号であった。
齋秋が電話を掛けた相手…それは同組織に所属する人間であり、齋秋の補佐を務める人物──
『元気な訳がっ…ああっもう!とにかくこっちは色々とっ──』
こりゃマズったな。
かなりの量の仕事ほっぽり出した上に、殆どミズハに投げ付けた所為でとんでもなくカンカンだわ。これで頼み聞いてくれっかは賭けだな。
「あ〜なんだ、忙しいところ悪いんだが…ヴィジョンとこのパールマン?だかが今どこに居るか分かるか?それと今から送る発信源と、挟み撃ちする形で案内してくれ」
『……』
齋秋の問い掛けに、電話の向こうが静かになる。そして10秒程度が経つと…。
『…見つけました。パールマンは現在──』
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それから暫くして………。
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【場所:監視拠点_列車前】
猫又たちが到着する少し前…。
「ナイスだミズハ。見つけた」
「な、なんだお前はっ!」
齋秋は一足先に、ヴィジョン・コンポレーションCEO──チャールズ・パールマンを見つけ捕縛していた。
『無事見つけられたようで何よりです。その男をなぜ追っていたのかは聞きませんが、出来るだけ早く帰って来てくださいね?副長官はともかく、他の面々が死にそうですので』
「あ〜おっけおっけ。なる早で戻るわ、そんじゃまたな」
『ああそれと──』
──プツンッ。
「…やべ」
最後ぜってぇ重要なこと言おうとしてたよな?これまた後から怒鳴られそうなんだが…まあしゃーなしか。大人しく怒鳴られるとしよう。
要件の済んだ齋秋は、電話を切り携帯端末を粉々に握り潰す。その様子を見たパールマンは、小さく『ひぃっ』と情けない声を上げた。
とそんなこんなしていると、此方に向かって走ってくる足音が聞こえた。
「……」
足音からして猫娘か…他3つは邪兎屋連中ってところか。テチテチ
「っあんた!なんで先に…て、別の方ってこのことだったのか」
『えぇ〜。ほんとに、山月さんって何者?』
「おいおいそんな褒めたってなんも出ねぇぞ〜?」
などと和気藹々?とした雰囲気を出していると、邪兎屋のリーダーであるニコが『その人誰なの?』と疑問を浮かべる…が今はそれよりも、住民の避難を最優先する。
ニコの話す内容からして、邪兎屋の他メンバーであるアンビー.ビリーのふたりが運転室に向かっているらしい。
「お、お前たち…あのスラムの連中を外に出すつもりか?!」
そんな様子に焦ったパールマンが、脂汗を浮かべながら止めるようにと喚き散らかす。
「るっせわ!どっちにしろヴィジョン終わりだってんだ馬鹿がっ!」
「ぐぅっ」
齋秋は押さえ付ける腕から逃れようとするパールマンを、より強い力でねじ伏せる。これであとは計画通りに──
『-警告!予定ルート上路線の予期せぬ破断。小規模な爆破による線路の損傷を検出。計画は失敗です-』
『そんな──?!』
「……」
ありゃ?もしかしてミズハの奴が言おうとしてのって…いやいやまさかそんな事は、ないよな?流石のアイツでも爆破する未来まで分かる訳が…いや有るわ。絶対これのこと伝えようとしてたんじゃねぇかよ!
「パ、パールマン長官、ご安心を!新エリー都に続く唯一の路線を爆破しました。これでやつらはもうでられません…」
何をとち狂ったのか、兵士のひとりが退路でもある道を爆散させ潰してしまった。
「おいボケ何やってんだこのクソ野郎が!」
「おおおお前っ、このバカタレが!線路を爆破するのは、我々が撤退したあとだ!」
この独断専行はパールマンも予想外だったようで、齋秋に続いで罵詈雑言とも言える言葉を吐き出す。
更に続けて、邪兎屋のメンバーが敵の増援が来ていることを伝えて来る。
「ちっ。お前らは先に列車中に隠れてろ!おい猫娘!このダルマじじぃも持ってけ!」
「お、おう!」
「な、投げるなぁああ!」
齋秋は猫又にパールマンを投げ渡すと、懐に隠し持っていた出刃包丁を取り出す。そして自身を除いた全員が列車へと乗り込んだのを確認すると、齋秋はひっそりと列車上部に出来た影へと隠れる。
その頃、列車内部では──
『パールマン長官!ご指示を!』
…………。
「と、突入はするな!私は今その運送室だ!邪兎屋の侵…くっ、紳士淑女に捕まっている!よく聞け!動くんじゃないぞ?!この私が少しでも怪我を負ったら、会社はお前たちの責任を問う!」
パールマンは脅されるも同然の状態で、部下に向けて待機命令を下す。
これで暫くは攻撃を仕掛けてこない…とは言え、退路は爆破によって崩落。線路がないのであれば列車があったところで、住民たちを連れて抜け出す事は出来ない。
相も変わらず絶体絶命的な状況…にも関わらず、猫又は『へへっ』と不気味に笑う。
「おいおい、こんな時によく笑ってられるな!」
そんな様子の猫又に対して、邪兎屋のメンバーであるビリーがツッコミを入れる。
「ううん、あんたのことを笑ったワケじゃなくて……これ、さっきの戦闘でたまたま見つけたんだ──あたしの家族の、形見」
そう言って見せたのは、猫又ともうひとり…“
それを見たニコが、驚いた反応を見せる。
「実は、あんたたちを騙してたんだ」
猫又は申し訳無さそうに言う。
「赤牙組に形見を奪われたってのも、嘘。私は、昔カンバス通りの近くに住んでて、組に引き取られたひとりなの」
猫又は更に、昔の思い出に浸るように、哀しみの零れる声色で続ける。
嘗ての赤牙組には確固たる理想が存在していた。皆で手を取り合い、故郷を守る為に心に近いあった。だがその理想を宿した赤牙組は、日を追う事に酷く変わっていき…猫又はいつしか赤牙組から後を立った。
「でも、どんなに組に失望しても…それでもシルバーヘッドが引き取ってくれたのことは事実だし、あそこはあたしにとって、1番『家』に近かい場所だったんだ」
だからこそ、猫又はシルバーヘッドがホロウにおびき寄せられて死んだと聞いた時、復讐の為に邪兎屋をデットエンドホロウへと連れて行った。
「だけど…あんたたちは、あたしが想像してたのと随分違って…子供を助けるためにホロウを駆け回ってくれたり、ヴィジョンの陰謀を知ったあとも、躊躇わず残ることを選んでくれた」
猫又の声が、僅かに震える。
そこには、酷く後悔の感情が入り交じっているのが感じ取れた。
「結局、シルバーヘッドが死んだのもあんたたちのせいじゃなかったし…あたしにはもう、あんたたちに復讐する理由がない」
赤牙組は誓いを破り、守るべき人たちを見捨ててしまった…猫又は嘗ての赤牙組の一員として、その過ちを繰り返す訳には行かない、黙って彼らを見捨てる事は出来ないと力強く言葉に吐き出す。
「覚悟はできてる──あたしがヴィジョンと交渉してくる」
そう言いながら、猫又はパールマンを引き摺って扉へと手を賭ける。
「安心して。パールマンって切り札もあるし、あたしの出身が赤牙組だって知ったら、きっと交渉に応じてくれる…」
その言葉を最後に、猫又はパールマンと共に外へと飛び出して行ってしまった。
ニコはビリーに直ぐに扉を開けて猫又を追うように言うが、強化扉なのか無駄に頑強な作りの所為でビクともしない。
「しっ、静かに。外から声が聞こえる──」
▼
【場所:列車外部】
外へと飛び出した猫又は、自身の考え通りに交渉を始めていた。そんな様子を、列車上部に身を隠している齋秋が見聞きしていた。
「……」
なんか中でクッソシリアスな雰囲気になってるかと思えば…あの猫娘いきなり飛び出して交渉始めやがって、一体どんな
交渉を聞く限りじゃあ、自分とパールマンを交渉材料にって感じか?お、なんだ上手くいってんのか?ホロウに向かって歩き出したな。
「…あと着けるっきゃねーよなぁ」
嫌々だが…と言う雰囲気を出しながらも、齋秋はポケットから紙とペンを取り出し、猫又の後を着けると言う事に加えて、とある番号を書いてその場を後にしたのだった。