OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた   作:檻@102768

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1 全国優勝、それから――――

 

 

 最後の(・・・)エキシビジョンマッチが、始まる。

 

 立ちはだかるのは世界第三位という、強豪中の強豪。

 ”祓魔紙(ふつまし)”の異名を取る、世界で三指に入るビッグネーム。

 

 共鳴に限れば、一位と二位を凌ぎ、当代最強と謳われる傑物。

 

 それと今、向かい合ってるのが俺。

 俺! 何故か俺!

 

 今から世界三位とやり合うの、俺!!

 

 

 これから始まるファイトに心躍る片隅で、冷静とは違う視点が頭をのぞかせる。

 

 (なんでこんな事になってるんだろうなぁ)

 

 今更すぎるが。

 何が今更って、この直前までに世界ランカーを既に9人抜きした後で思うのが特に

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 事の始まりは、夏のエレウシス全国大会。

 

 全国優勝の栄光を勝ち取った。

 

 先鋒に妹分のマリカ。

 副将に、去年は大将だった天儀ドロシー。

 そして今年の大将に俺を据えて。

 

 これでうちの高校は、エレウシス全国大会を2連覇。

 かつて3連覇を果たしたという、伝説の元部長の偉業にリーチをかけた。

 

 

 

 

 そうして湧く会場の、メインから外れた一角。

 

 ファイトがエネルギー産業であるこの世界において、有力なファイターとは油田にも近しい価値を持つ。

 必然、そのような人材の確保を目論むのは名だたる社長、会長などなどのお歴々。

 

 将来、己の会社の未来を担うかも知れない有望な若者を、今のうちから見極めたいと思う数多のVIPが座るその場所で。

 

 

 

 そのVIP達ですら影を踏むことを躊躇うような、あり得ない顔ぶれが揃っていた。

 

 

 

 VIP席に居座る顔ぶれは世界ランカー。

 それも一人や二人じゃない。総勢10人。

 

 世界ランカー100名の中でも、別格と称される十二聖座(ラスール)のうち、10名。

 

 こんなの(・・・・)がギャラリーにいたと明かされた時には、会場は大名行列の如き騒ぎになった。

 

 

 

 

 そして、そのVIP席とはまた別の一角。

 

 公式に用意された席ではない。

 だが、誰もが自然と距離を取ってしまう、奇妙な空白があった。

 

 

「改めて、ただならぬ男じゃのあやつ」

 

 

 低く、しかし愉快そうに声を漏らしたのは、常盤カド。

 かつて十二聖座にも名を連ね、今は殿堂入りの十三位として名を刻む怪物。

 

 その隣で、同じくかつての十二聖座の一人、人刹ロウドが鼻を鳴らす。

 

 

「そりゃ、わしの自慢の弟子じゃからなぁ。非公式とはいえアンタも負けたと聞いてるぞ?」

 

「偉そうにほざきよるな小僧…………ケンカ売っとるのか? おん?」

 

「買ってくれるんなら僥倖じゃなぁ。あいつのファイトを見たら滾ってきたし、わしらも一戦交えるか?」

 

「吾にそれを言うとは本当にいい度胸よ。もう一度、実力の差を思い知らせて……」

 

 

 

「か、カド市長、師範。お二人ともそのへんで…………」

 

「む」

「うん?」

 

 

 

 おどおどしながらも、二人を諌める女性。

 

 地柩セト。

 

 史上最速で十二聖座に上り詰めた記録保持者(レコードホルダー)

 そして今は、フツオのバイト先の店長でもある。

 

 

 常盤カド。

 人刹ロウド。

 地柩セト。

 

 

 殿堂入りの十三位と、元十二聖座が二人。

 現役の十二聖座と肩を並べても何の不思議もない頂点達が、そこにいた。

 

 

 

「ほ、ほら。フツオ君の晴れ舞台の途中なんですから。脇で盛り上がりすぎるのはちょっとですね!」

 

「うぅむ……一理あるの」

 

「カカカ! それもそうじゃったな」

 

 

 カドが腕を組み、ロウドが愉快そうに笑う。

 

 

 彼らほどの者達が、今にも自分達で席を立ちかねないほどに()を入れている。

 

 その話題の中心にいるのは、まだ高校二年生の少年だった。

 

 

 

 セトはその実力を知ってなお。本当に、信じられない。

 

 彼の実力の()が見えない、見通せていないだろうと自覚があっても、なお。

 

 

(フツオくんが強いのは知ってたけど、さぁ……!)

 

 

 

 いかに相手がサブデッキとはいえ、タイプが異なるデッキの現役トップランカーを9人抜き。

 

 十二聖座に準ずる八十八星座ですら、果たして何人にそれが叶うものか。

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 最初は、ただの余興だった。エキシビジョン(戯れ)の名の通り、本当にお遊び程度の認識だった。

 

 

 ――強いのはわかった。強さはわかった。

 ――こうして全国規模の大会で優勝を飾るほどだ。弱いわけもない。

 

 ――でも、所詮はアマチュアだろ?

 

 

 大会優勝で湧く俺達のチームと会場。

 

 VIP席から突如現れた彼らは、その空気をかっさらうかのように、会場の色を塗り替えた。

 

 

 余興と称して、現役の十二位が誘う。

 

 

 

「優勝おめでとう。

 見てて面白い試合のお礼とご褒美に――――私と一戦やってみない?」

 

 

 

 そんな、余興でしかない、歯牙にもかけていない口ぶり。

 

 下に見ていた。

 期待の超新星。しかし結局はアマチュア(プロ未満)

 

 

 前任の十二位である地柩セトが目をかけている若造。

 

 その程度の認識で、面白半分にちょっかいをかけてみたくなったのだ。

 

 

 

 世界十二位という、ワールドクラスのバトルが見れると聞いて、会場は沸き。それに反して、フツオのチームは生ぬるい空気が漂った。

 温度差があった。

 

 世界ランカーとやり合える栄誉なんて、人生で絶無だろう。

 直接対戦どころか、間近で見る機会ですら一生に一度あるかどうか。

 

 

 せっかくの優勝に湧いていたところに、空気を持っていかれた。

 挙げ句、負ければ優勝にケチが付きかねない。

 

 負けても、恥ではないだろう。優勝チームと言えど、所詮はアマチュア。

 むしろ戦ったこと自体が語りぐさになるほど。

 

 

 

 端的に言えば。

 

 

 

 どうせ負けるんだから負けても気にしなくて良い――――なんて、軽んじられているのがわかった。

 声にはとても出せないが。そういう扱いに、一種白けていた。

 

 

 唯一違ったのはフツオだけ。

 

 

 このカードゲームバカは、思わぬハプニング、更なる強者とやり合える事実に、人の気も知らずにはしゃいでいた。

 

 そして現十二位との対決。

 

 

 

 

 そうして――――薙ぎ払われた。

 

 

 

 

 結果は、フツオの勝ち。

 

 彼は世界ランカーをあっさり下した。

 

 

 

 現役の世界十二位が、負けた。

 

 その事実をありのまま受け止められるものなどいない。

 静寂が、ワンテンポ遅れて会場を包んだ。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 誰かの、間の抜けた声が聞こえた気がする。

 それが誰のものだったかは、もう分からない。

 

 さっきまで騒然としていた観客席が、急に現実に置いていかれたみたいに、言葉を失っていた。

 

 それはVIP席でも同じだった。

 

 世界ランカーたちの表情が、揃って固まっている。

 さっきまで余裕の笑みを浮かべていた連中が、誰一人として、次の言葉を見つけられずにいた。

 

 

「……マジ、かよ」

 

 

 誰かが、呟いた。

 

 その空気を破ったのは、すぐ隣に座っていた男だった。

 

 

 

「次。いいか?」

 

 

 

 立ち上がる。

 世界十一位。

 

「流石にここまでやれる(・・・)のはマグレじゃねぇだろ。

 ……なら。どれだけのもんなのか、俺にも試させてくれ」

 

 その声に、異論は出なかった。

 

 

 

 

 ――ここから先は、雪崩だった。

 

 

 

 

 十一位。

 十位。

 九位。

 

 誰もが「次こそは」と席を立ち、

 誰もが、同じように席へと戻っていった。

 

 勝ち方は千変万化。

 本当に使われているのが同じデッキかすら疑わしいほどの多種多様な殺し方。

 

 

 ただ、はっきり覚えているのは――――

 勝敗が決まるたびに、会場の音が一つずつ消えていったことだ。

 

 

 歓声が消え、

 私語が消え、

 やがて、息を呑む音すら消えた。

 

 

 気づけば、彼の向かいに座る世界ランカーの順位は、

 片手で数えられるところまで来ていた。

 

 

 

「……信じられねぇな」

 

 

 

 世界五位が、乾いた笑いを漏らす。

 

 

「アマチュア、なんだよな?」

 

「……そのハズです。そのハズ、なのですが…………」

 

 

 

 そして――――

 四位が、負けた。

 

 誰もがその勝利、快挙に沸き立ち、あるいは困惑する中で。

 けれど、世界ランカー達の視線は歓声には向かなかった。

 

 

 

 誰もが知っていた。

 

 ここから先は、更なる別物だと。

 

 

 

 

 まだ一人だけ、席を立っていない女がいた。

 

 

 世界ランク三位。

 祓魔紙(ふつまし)

 

 久遠(くおん)セレヴィア。

 

 

 

 豪奢な金の髪を結い上げた少女は、指先を静かに唇へ添え、思考を巡らせている。

 蒼を宿す双眸は揺らぐことなく、この先の展開を正確に見据えている。

 

 柔らかなフリルのブラウスと黒のコルセットに包まれた肢体は優美でありながら、どこか隙がない。

 細く絞られた腰と長い脚線は、座した姿でさえ静かな威圧を放っていた。

 

 

 そして、デっっっっっかい。

 

 

 ……いや違う。

 そこじゃない。

 今見るべきなのはそこじゃない。

 

 だが、目に入るものは仕方がない。

 本人の美貌と気品が持つもの以上に、そのプロポーションが放つ圧力が尋常ではなかった。

 

 

 

 彼女は、ようやく席を立つと、ゆっくりとこちらへ歩いてきた。

 足取りは静かで、焦りも、苛立ちも、ない。

 

 

「……大した手並みです。御見事、と言わせて頂きましょう」

 

 

 誰に言うでもなく、そう呟く。

 そして、ボードを挟んで、フツオの前で立ち止まった。

 

 

 

「面白い」

 

 

 

 初めて、視線が合う。

 

 

「大会優勝からここまで続いた連戦に申し訳ない――――ですがもう一戦。

 此方とも、付き合ってくださいますか」

 

 

「ええ。望むべくもない――――俺で良ければ喜んで」

 

 

 

 笑いながら、答える。

 

 ――――最初から、ちゃんと俺を対戦相手として見ている。

 

 

 

「改めて。これはあくまで、エキシビションマッチ、ですね」

 

「そうですね」

 

「なら――――勝っても負けても、これで最後」

 

 

 

 祓魔紙は、デッキをテーブルに置いた。

 

 その瞬間、

 会場に、再び音が戻ってきた。

 

 

 ざわめき。

 期待。

 

 そして、張り詰めた緊張。

 

 

 

 これが、最後。

 

 俺はデッキをシャッフルする。

 

 

 

(……本当。なんで、こんな事になってるんだろうなぁ)

 

 

 

 今更すぎる疑問が、頭をよぎる。

 

 でも。それは一瞬だけ通り過ぎた余韻を残し、消えていった。

 

 

 ギアが入っている。

 思考が先鋭化し、研ぎ澄まされる。

 

 今さっき下した第四位を、さらに上回るプレイヤー。

 これほどの獲物と張り合える機会など、人生を何度繰り返しても得られるかどうか。

 

 

 その好機に他のことに意識を割くなど、余りにももったいない。

 

 

 

 

「「それでは」」

 

開始の合図が、告げられる。

 

 

 

 

「「ファイトをしましょう」」

 

 

 

 

 

――――最終戦争、開幕ラストファイト、スタート

 

 

 







ここまでお読みいただきありがとうございます。

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面白かった、続きが気になる、と思っていただけましたらよろしくお願いします。


ちなみに第三位のキャラデザは、プリズマイリヤのアンジェリカがモデルです。
https://x.com/ori000123/status/2050500543362257346?s=61&t=lUpy0bCzURk6Qy_r5alO2A


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