OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた   作:檻@102768

10 / 16


 大変お待たせしましたー!
 今回の話、すごい難産でした……3話分くらいのエネルギーを使った気がします……




10 砂時計に残る二粒

 

 

 

「僕のターンですね」

 

 

 

(――――さて。

 もし、彼女を完璧に攻略するならどうするか)

 

 

 仮に。徹底的にマークしたのなら。

 倒すことは理論上、ほぼ確実にできるだろう。

 

 『未葬教典』を構築するカード群は、おおよそ覚えている。

 既に見えているのは…………

 

 目玉である勝敗ロッククリーチャー、〈縛なるもの 終焉未達体(ネヴァー・エンド)〉。

 〈白銀の静域(ダメージメタ)〉。

 〈停滞の福音(デッキ修復&ライフゲイン)〉。

 〈空位の補白(ルーター)〉。

 パーミッションの肝である、軽量の妨害と除去。

 

 

「手札から〈不死鳥の残り火(バーン)〉をプレイ。〈ネヴァー・エンド〉にダメージを与えます」

 

 

 墓地起動を備えた、ループ素材として使える、軽量のバーン。

 

 火力としては小さい。

 だが、〈ネヴァー・エンド〉はスタッツ1/1。

 勝敗を歪める悪魔であっても、盤面に立つ体はあまりに脆い。

 

 

「〈白銀の静域(ダメージメタ)〉で対応。次のターンまでダメージは通りません」

 

 

 ――――ダメージは、届かない。

 

 静域に阻まれた残り火は、そのまま何も灯すことなく消えていく。

 

 

(やっぱり、そこはケアしてくるか。デメリットのある〈スルト〉以外での破壊は許さない、と)

 

 

 〈ネヴァー・エンド〉は軽い。

 だから強い。

 

 だが、軽いということは脆いということでもある。

 

 

「続けて、〈閉ざされる未来の扉〉。あなたのデッキを削り切ります」

 

 

 今度は、山札を狙う。

 

 彼女のライフやクリーチャーを守る〈白銀の静域(ダメージメタ)〉では、デッキそのものを蝕む手には触れられない。

 

 勝敗をその場で決められなくとも、デッキを削り切ることには意味がある。

 〈ネヴァー・エンド〉がどれほど敗北を拒もうと、デッキが空になれば、次の札は引けない。

 

 

「妨害です」

 

 

 ――――当然、防がれる。

 〈ネヴァー・エンド〉が手札にない限り、〈停滞の福音(デッキ修復)〉には手札を一枚追放するコストがある。

 

 ならば〈停滞の福音〉を打てる状況では無駄打ちに終わるデッキデスを、妨害と交換させる。

 あちらにロスをさせるのではなく、こちらのロスを減らす仕掛け。通れば儲けもの。対処されても織り込み済み。

 

 どうあがいても損はない。

 思惑通り、ではある。

 

 だが。

 

 

(思惑通りは、あっちにとっても同じか)

 

 

 負けないからといって、延々とドロースキップを強いられるなど論外。

 ならば、ここで妨害を切るのは必要経費。

 

 有効打には、なっていない。

 

 無駄打ちを避け、1:1交換には持ち込めている。

 けれど、それでは勝ちには近づかない。

 

 

――――――――――

 

 

 今、見えているカード。

 まだ、見えていないカード。

 そして、彼女だからこそ不要なカード(・・・・・・・・・・・・・)

 

 その情報が、ここに来て整理されていく。

 

 

(まだ見えていないのは……高耐久の壁クリーチャーと、全体除去と、回収用の秘宝(・・・・・・)か。

 壁クリーチャーは、今回出番がないだろう。コンボ相手に壁役を引くくらいなら、妨害を構えた方がいい)

 

 

 こちらがビートダウンならともかく、今の僕のデッキ相手に、あえて壁を立てる意味は薄い。

 

 

(全体除去はおそらく入っている。

 一対一交換が基本のパーミッションにとって、トークン系の横並べは天敵だ。

 トークンの対処が単発除去では、カード枚数の交換が崩れる)

 

 

 だから、自分のクリーチャーも巻き込む代わりに軽い全体除去。

 全体除去は上手く使えば、パーミッションでは希少な1:n交換が狙えるカード。

 

 仮に〈ネヴァー・エンド〉ごと消し飛ばしても、再召喚のあてがあるなら大した損ではない。

 〈ネヴァー・エンド〉自体のコストも軽い。元の世界なら、手札でダブついている二枚目を出せばいいだけだ。

 

 こちらが横並べに寄せていないから、彼女も引いていないだけ。

 デッキの中には、まず入っているはずだ。

 

 

 そして――〈未葬の聖櫃〉。

 

 軽量クリーチャー用の、継続回収ができる秘宝。

 

 

(あれは採用してないだろうな。〈ネヴァー・エンド〉が二枚以上ある前提で使うカードだ。

 何より――――第三位(最強の共鳴使い)なら、あれを省いてもデッキを回せる)

 

 

 本来なら、破壊された〈ネヴァー・エンド〉を拾い直すための保険。

 軽い勝敗ロックを何度も構え直すための、テーマ内の補助輪(サポーター)

 

 〈停滞の福音〉が墓地ごと山札を戻すカードなら、〈未葬の聖櫃〉は〈ネヴァー・エンド〉そのものを拾い直すカード。

 軽く、脆く、何度も壊されることを前提にした専用の支え。

 

 

 だが、彼女にはその補助輪(サポーター)がいらない。

 

 

 共鳴で必要なカードを引ける。

 デッキ修復で山札そのものを戻せる。

 軽量妨害で致命打だけを正確に弾ける。

 

 本来のテーマが用意していた隙埋めを、プレイヤー本人の能力が肩代わりしている。

 

 いや、下手をすれば。

 本来のパーツを抜いたことで、かえってデッキの完成度が上がっている。

 

 完成されたテーマから、桁外れの力量で不要になった補助輪だけを外す。

 その結果、安定性が落ちるどころか、いっそう理論値運用に近づいている。

 

 

(…………恐ろしい話だな)

 

 

 実際、ここまで突破は許されていない。

 

 〈ネヴァー・エンド〉。

 〈白銀の静域〉。

 〈停滞の福音〉。

 軽量妨害と除去。

 

 そのすべてが、必要な瞬間に、必要な形で差し込まれてくる。

 

 

 

 ――――それでも。

 

 

 

 決して、完璧なロックではない。

 

 

 

――――――――――

 

――――――――――

 

――――――――――

 

 

「〈終焉の巨人 スルト〉で攻撃。対象は〈縛なるもの 終焉未達体(ネヴァー・エンド)〉」

 

 

 『俯瞰』を持つ巨人の攻撃。〈ネヴァー・エンド〉は、あっけなく破壊される。

 

 その代償は、大きい。次いで、こちらのデッキも破壊されていく。

 バラバラと、一気に四枚。

 

 残り時間が、ごっそりと削り取られた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 仮に、完全に攻略する(メタを張る)なら。

 

 まず、ゲームレンジは中から長。

 

 相手には軽い妨害や除去が揃っている。

 このクオリティのパーミッション相手に、高速コンボはまず通らない。

 最速でも中速が限度。

 

 短期決戦で轢き殺すのではなく、ある程度付き合った上で、交換の土俵そのものを壊す必要がある。

 

 

 

 ――――入れるべき天敵その一。

 

 毎ターン、〈ネヴァー・エンド〉を処理できるクリーチャー。

 

 今回はリスクのある〈スルト〉が無理やり担っているが……最適解はバーン内蔵型、攻撃をトリガーに火力(バーン)を飛ばすクリーチャーだろう。

 これで、毎回〈ネヴァー・エンド〉をノーコストで除去できる。

 

 1/1のスタッツでは、どんなに軽量の火力でも耐えきれない。

 

 相手がマナを払って〈ネヴァー・エンド〉を再召喚する。こちらは攻撃のついでに焼く。

 それだけで、交換の計算が崩れる。

 

 

 

 そう思いつつ、盤面を見返す。

 

 

 …………最適解ではないにしろ、〈ネヴァー・エンド〉は処理できた。

 当然、その隙を逃す理由はない。

 

 〈ネヴァー・エンド〉が消えた今なら、こちらの勝利条件は正常に機能する。

 そのまま勝ちに届く手を重ねる。

 

 だが。

 

 

「妨害します」

 

 

 相手は、当然のようにそれを止めた。

 

 勝利を拒む悪魔がいない以上、ここだけは受け間違えられない。

 彼女は、それを分かっている。

 

 

「エンド時に〈停滞の福音(デッキ修復)〉をプレイ。墓地をデッキに戻します」

 

「対応して墓地起動。〈停滞の福音〉を対象に、〈揺月の水面鏡(コピーカード)〉を」

 

「通しませんよ。妨害です」

 

「…………対応はありません。〈揺月の水面鏡〉は除外されます」

 

 

 こちらも予定調和のように、防がれる。

 

 …………それでいい。これで、また一枚距離を詰めた。

 

 

 

 ――――入れるべき天敵その二。

 

 墓地起動。

 

 パーミッションは一対一交換が原則だ。

 

 相手のカード一枚に、こちらの妨害一枚。

 こちらの脅威一枚に、相手の除去一枚。

 

 だからこそ、手札の枚数が勝負になる。

 だが、墓地起動は一枚で二枚分の仕事をする。

 

 加えて、〈停滞の福音(デッキ修復)〉は墓地起動と致命的に相性が悪い。

 

 

(天敵、と言って良いのかわからないが。

 〈停滞の福音〉以外のデッキ修復も、一種類は上限まで入れておきたいな)

 

 

 もちろん。使えばほぼ確実に妨害されるだろう。

 だが、逆に言えば、手札にある限り相手の妨害一枚分の手札とマナを縛れる。実際に通っても良いわけで。

 

 あちらの〈停滞の福音〉のようなライフゲインまではいらない。

 いざとなれば、切腹加速(自傷バーン)で扱える色彩を増やして畳み掛けることだってできる。

 

 

 

 墓地から使ったカードに対して妨害を切らせた。

 手札の消費だけを見れば、こちらが得をしている。

 

 けれど。

 

 

(勝利までの距離は、彼女の方が近い)

 

 

 こちらのデッキは減った。

 あちらのデッキは戻った。

 

 こちらの支払う代償は不可逆で、あちらの支払う代償は取り戻せる範囲に収まっている。

 

 

 アド差は詰まった。

 だが、届いたのは背中に指先が触れるかどうか程度の距離。

 

 まだ、追いついてはいない。

 

 

 

――――――――――

 

――――――――――

 

――――――――――

 

 

 

「……もう無理じゃないか?」

 

 

 

 観客席のどこかで、そんな声が漏れた。

 

 

「ここまでやって倒せないんだろ。デッキも、もうほとんど残ってない」

「往生際、悪くないか?」

九連勝(ここまで)で十分すぎるのにな。ちょっと見苦しいかも」

 

 

 それを聞いた多くの観客が、その暴言を咎めなかった。

 盤面だけを見れば、そう見えて当然だった。

 

 何度仕掛けても、届かない。

 アド差は詰めても、勝ちには近づかない。

 こちらのデッキだけが削れ、あちらの山札だけが戻っていく。

 

 

 

 けれど。

 別席のギャラリー。

 

 世界ランカー達の空気は、むしろ逆だった。

 特に第四位など、瞬きすら忘れたように盤面を見ている。

 

 

 彼は知っている。

 

 セレヴィアが、本当に勝利を確信した時の顔を。

 詰め切った相手に向ける、あの静かな終局の目を。

 

 

 今の彼女は、違う。

 まだ、警戒を切っていない。

 

 

 彼女を相手にしてデッキが減るということは、順調に敗北に近づくということ。

 だが、あの少年のデッキは、残り枚数だけで測れるほど単純ではない。

 

 何度止めても、別の角度から刃が出る。

 だからこそ、勝ち切るまで第三位(セレヴィア)は安堵などしない。

 

 

 

――――――――――

 

――――――――――

 

――――――――――

 

 

 

「〈絡まった命綱〉をプレイ。通りますか」

 

 

 その宣言に、第三位の目がわずかに動いた。

 

 

「……少々お待ちを。対応を考えます」

 

 

 単体では勝ちに届かない。

 少なくとも、それ自体が決定打になるカードではない。

 

 九戦の間に見せている、瞬間発動持ちの秘宝。

 クリーチャーを身代わりにして秘宝を守る為のカード。

 

 破壊耐性を持つ〈スルト〉を身代わりにすれば、継続的に守れるシナジーがある。

 もし妨害されれば――――――

 

 

 第三位は短く息を吐いて、答える。

 

 

「お待たせしました。通ります。着地どうぞ」

 

「…………では、〈スルト〉と〈砂時計〉を対象にし、解決」

 

 

 細い命綱が、終焉の巨人と砂時計を結ぶ。

 

 

(まぁ、通されるか。妨害を吐いてくれても良かったのに)

 

 

 〈命綱〉は厄介ではあっても、脅威度は相対的に薄い。

 止めるべき札は別にある。

 

 マスカンは、あくまで勝利へ直結する最後のピース。

 無限バーン、無限ターン、デッキデス。それらを完成させるカードだ。

 

 そのピースさえ止められれば、コンボパーツや盤面など張り子の虎で終わる。

 

 

「……次いで、〈時渡りの階段(ターン追加)〉をプレイ――――」

「妨害します」

 

 

 即答された。

 

 〈命綱〉を通し、温存した妨害。

 それで、最も危険な一枚を打ち消す。

 

 

 盤面には、勝利に届かない細い命綱だけが残った。

 

 

 マスカンを徹底的にマークし、それ以外は静観する。

 静観した分は温存され、次の手を遮る厚みと化す。

 

 

 パーミッションにおける、基礎にして奥義。その体現。

 

 

 

 ――――――終盤が迫ってなお、一切衰えない共鳴率。

 

 一切崩れないプレイング。

 

 正しい。

 どこまでも、正しいプレイングだった。

 

 

――――――――――

 

 

 ――――そして、最後に耐性付与。

 

 バーン内蔵クリーチャーを除去されたら、出し直しでテンポが崩れる。

 なら除去への対策を持たせれば良い。

 

 

(シンプルな耐性付与の秘宝を使うのは……ナシだな。秘宝の方を先に壊されれば丸裸だ。秘宝側にも耐性がいる。

 〈ネヴァー・エンド〉の破壊も重要だけど、ライフゲインされながらでもライフ詰めきれないと勝てないし。

 

 できれば、ライフを削る役のフィニッシャーとシナジーさせて守れるようにできればベスト)

 

 

 なら――――耐性持ちの巨人を絡めて、秘宝で守る。

 それが最適解の一つだろう。

 

 理想は、〈大地の巨人 アンタイオス〉。

 維持に毎ターンマナが必要だが、その分〈スルト〉と違い攻撃にデメリットはない。

 また〈スルト〉を数段上回る「フィールドから離れない」耐性を持つ。

 もちろんスタッツもフィニッシャー級。

 

 

 パーミッション相手なら、毎ターンのマナ拘束もそれほど痛くない。

 どうせ妨害の差し合いは相手の土俵。こちらから仕掛けを連打する手順は切っても良い。

 場を離れづらい大型は、パーミッション系のコントロールには滅法強い。

 

 ただし、ロック系のコントロールには弱い。

 まして〈アンタイオス〉が場を離れないということは、逆に言えば、自分のマナを縛り続けるということでもある。

 場合によっては、わざとマナを足りなくさせて自壊させるという、アド損まみれのムーブまで要求されかねない。

 

 

 だが、第三位相手に限れば、〈アンタイオス〉は強い側に該当する。

 彼女のデッキはロックでもあるが、主軸はパーミッションだ。

 

 軽量の妨害と除去で相手を捌き、捌ききれない部分を〈ネヴァー・エンド〉で封じるデッキ。

 なら、場に残り続ける大型は厄介極まりない。

 

 

(さらに、〈命綱〉の互換で、バーンクリーチャーとアンタイオスを紐付ける。

 バーンクリーチャーが破壊されるなら、代わりにアンタイオスを差し出せる形にする。

 

 互換のカードは……〈大樹の陰〉だったか)

 

 

 〈絡まった命綱〉がクリーチャーを身代わりに秘宝を守るカードなら、その亜種。

 クリーチャーを守るために別のクリーチャーを身代わりにする秘宝。〈大樹の陰〉。

 

 瞬間発動ではない代わりに、秘跡(妨害不可)を持つ。よりパーミッション相手に向いているカード。

 ここまで揃えば、相手はバーンクリーチャーを簡単には落とせなくなる。

 

 落とせなければ、〈ネヴァー・エンド〉は毎ターン焼かれる。

 〈ネヴァー・エンド〉が立たなければ、勝敗拒否は機能しない。

 

 勝敗拒否が機能しなければ、〈アンタイオス〉で殴り倒せる。

 

 

 まとめるなら。

 

(〈アンタイオス〉と、それを呼び出す踏み倒しギミック。

 墓地起動のカードに、バーン内蔵型クリーチャー。

 それを守る、秘跡の身代わり秘宝。

 そして、ブラフにもなるデッキ修復。

 

 バーンクリーチャーと〈アンタイオス〉の二刀流ビートバーン……

 これが、第三位(かのじょ)に完全なメタを張る最適解に近いだろう)

 

 

 〈ネヴァー・エンド〉は確かに強いカードだ。

 場合によっては、突破不可、無敵の存在に見える。

 

 が、それでも。

 

 倒し方を知っているのなら、それこそ手品か魔法のように軽々と突破できてしまう。

 

 

 〈ネヴァー・エンド〉は強い。

 だが、あくまでコストパフォーマンス上の話だ。

 

 いくらコスパが良いからといって、このカードをビートダウンに組み込む奴はいないだろう。

 

 逆に、ビートダウンを相手取るなら相当辛い。

 バーンクリーチャーの処理に手間取り、居座られたら、出るたびに丸焼きだ。

 

 1/1のスタッツなど、そんなもの。

 場にいないと仕事できない(・・・・・・・・・・・・)システムクリーチャーの場持ちが悪い(・・・・・・・・・・・・・・・・・)というのは、コスパでフォローできる範囲を超えかねない。

 

 

(ま、そこは織り込み済みの性能(スペック)だよな。

 収録されたテーマがパーミッションなんだから、消費を誘うデコイの役割もこなせる方が強いだろう)

 

 

 低スタッツで、耐性もない。

 最軽量の火力ですら焼ける。

 

 

 だからこそ、相手に対処を強いる。

 

 

 勝敗を拒むカードは、勝とうとするなら絶対に無視し続けられない。

 焼けるなら焼くしかない。

 破壊できるなら破壊するしかない。

 

 そして、その一手に付き合った時点で、こちらは軽いカード一枚に対して、除去か火力か攻撃の手番を支払わされている。

 〈ネヴァー・エンド〉は、場に居座って完封するためのロックパーツではない。

 

 〈天界龍〉や〈天壊龍〉のように、絶対に退かない壁ではない。

 退かされることまで織り込んで、相手の手数を削る札。

 

 完全な封殺ではない。

 勝敗を止めるカードを餌に、相手の回答を吐かせるパーミッションロック。

 

 

 そしてパーミッションが主軸である以上、ビートダウンにはどうしても不利がつく。

 

 コンボである大神官環境や《アポカリプス・ドライブ》では、ビートダウンが鳴りを潜めていただけ。

 本来マッチアップすれば、相当厳しい戦いを強いられる。

 

 即座に発動できる代わりに使い切りの呪文が多いコントロールは、クリーチャーで継続してリターンを稼ぐビートに不利。

 その原則が、嫌でも見えてくる。

 

 

 …………ここまで完全にメタを張ったとしても、彼女ならいくらでも食い下がってきそうなのが、本当に怖い(楽しそうな)ところだが。

 

 

(それに今回、僕のデッキにバーンクリーチャーは入ってないしなぁ。対策がわかってても、倒し方が入ってないと片手落ちだよね)

 

 

 とはいえ。…………今考えたデッキは、普通は組めない。

 

 〈アンタイオス〉。

 バーン内蔵クリーチャー。

 

 墓地起動。

 〈命綱〉の互換の秘宝。

 デッキ修復。

 

 これらが揃えば、時間の問題で押し切れる。

 

 

 だとしても――――このメタデッキはあまりにも歪だ。尖りすぎている。

 

 

 第三位への勝率を上げるためだけに、構築全体を寄せている。逆に言えば、他への対処できる()を著しく削っていると言えるだろう。

 

 このガンメタを成立させながら、なお他のランカーとも渡り合える形に整える。

 そんなことができる人間が、どれだけいるか。

 

 

 だが、一人だけ心当たりがある。

 

 

 ちらり、と客席へ目線を向ける。

 

 

 第四位、 ”塵塚王”。

 自分と同じように共鳴を使わず、世界屈指に上り詰めた男。

 

 彼ならば――――組めるだろう。

 

 

 対戦した時のデッキは、ビート、コンボ、コントロールの複合。

 

 切り札は、〈三面六手の鬼神 アシュラ〉。

 あの〈アシュラ〉も、色々悪用できる能力を複数持っている。

 

 その分、構築段階からかなり練らなければ本領を発揮できない。

 

 だが、彼は使いこなしていた。

 

 序盤はコンボで決めに行く。

 中盤まで凌がれれば、ビートダウンで押し通す。

 終盤までもつれれば、コントロールで絡め取る。

 

 誰もが一度は考えて。そして、大抵はまとまり切らず、器用貧乏に終わる組み合わせ。

 

 

 それをまとめ上げ、丸く収め、使いこなすプレイング。

 

 コンボの起点になるパーツを、除去を兼ねた火力で焼き潰して。

 ルートを次々切り替え、コントロールの妨害を吐き出させ。

 フィニッシャーでもある〈アシュラ〉に殴り倒される前に、こちらのコンボを完成させてどうにか轢き殺したが――彼のデッキビルディングの腕は相当なものだった。

 

 

 あの腕なら。

 

 普段使いの〈アシュラ〉そのままではない。

 この九連戦のためだけに組み直した、専用の調整デッキなら。

 

 第三位に有利を保てるギリギリのラインを維持しながら、削れるところを削り。

 他のランカーとも張り合えるように要素を整えたデッキを組むことができただろう。

 

 

(もし彼が、この九連戦専用にデッキを組んでいたなら――制覇できた可能性はあったんじゃないかな)

 

 

 そう思わせるだけの気迫があった。

 

 無論、デッキとプレイングの前情報ありという前提ではあるが。

 同じランカー同士なら、互いの手の内を把握していないなど不可能だろう。

 

 どのテーマを使うか。

 どのカードを好むか。

 どのレンジを得意とするか。

 どういう勝ち筋を選び、どういう負け筋を嫌うか。

 

 その情報があるから、メタを張れる。

 もちろん、九人全員に対応できる”幅”を確保した上での構築など生半にはいかない。

 

 ましてや。

 

 

(いま)みたいに、前情報無しで勝とうっていうのは大変だ。

 九戦を突破して、最後に立ちはだかるのがこれ(・・)とは、手の内が知れてても勝てるかどうか)

 

 

 普通なら、たまったものではない。

 そう思うべきなのだろう。

 

 

 けれど。

 

 

(…………本当、楽しくて仕方ないな)

 

 

 同じランカー同士なら、味わえない。

 互いの手の内を知り尽くし、対策を練り、メタを張り合う戦いでは得られない。

 

 世界三位を、初見で攻略する。

 

 目の前で使われたカードから、デッキの輪郭を読む。

 見えていないカードを推測する。

 勝ち筋と負け筋を並べ、対策を考える。

 

 

 こんな相手を前にして――――楽しくないわけがない。血が(たぎ)らないわけがない。

 

 

 対策は分かる。

 倒し方も、理屈では見える。

 

 そのうえで、足りないことを承知で、手持ちの材料だけで超えなくてはならない。

 

 対策が分かっていても、倒し方がデッキに入っていなければ片手落ちだ。

 

 知識は、勝利ではなく。

 読みは、カードではない。

 

 どれだけ相手の弱点を理解しても、そこを突く刃が山札に眠っていなければ意味がない。

 

 

(そんなことは、今更だ。カードに限った話でもない)

 

 

 人生なんてものは往々にして、手持ち不足の連続だ。

 ならば、今あるものだけで突破する気概くらいは持っておきたい。

 

 

 

 少なくとも――――僕のデッキは、まだ、終わっていないのだから。

 

 

 

――――――――――

 

――――――――――

 

――――――――――

 

 

 

 応酬は、なおも続いた。

 

 墓地からの火も。

 山札を削る扉も。

 福音を映す水面も。

 時間を奪う一手も。

 

 

 全て、届かない。

 

 

 そのたびに、こちらは少しずつ差を詰めた。

 残り火も、映した水面も、確かに彼女の手札を削っていく。

 妨害を吐かせ、選択肢を狭め、盤面に小さな痕跡を残して消えていった。

 

 

 

 だが。

 

 勝利までの距離だけは、縮まらない。

 

 

 

 そして、ついに。

 

 僕のデッキは、残り二枚(・・・・)

 

 

 砂粒が落ちきる音まで、聞こえてきそうだった。

 

 

 







「命を守るのに引き換えにできるものは、
 同じく命しかありえないだろう?」


     ――――〈絡まった命綱〉




――――――――――



 お気に入り2200人突破ですー!
 ここまでお読みいただきありがとうございます!



 今回、作中では省きましたが。
 〈ネヴァー・エンド〉搭載テーマに収録されていた秘宝〈未葬の聖櫃〉は、こんな能力でした。

――――――――――
〈未葬の聖櫃〉

 自分のターン開始時、一マナを支払ってもよい。
 そうしたなら、自分の墓地にあるスタックの合計が二以下のクリーチャーを一枚選び、手札に戻す。

 その後、自分の手札を公開する。相手はその中から一枚を選ぶ。
 自分はそのカードをデッキの一番上に置く。

――――――――――


 低スタッツが売りの〈ネヴァー・エンド〉を再展開するための、デザイナーズコンボ。
 墓地から〈ネヴァー・エンド〉を回収しつつ、手札の一枚をデッキトップへ戻す秘宝です。

 相手にピーピングさせるデメリットの代わりに、次のドロー後には再び〈ネヴァー・エンド〉を構え直せます。

 デッキトップへ戻す関係上、手札に〈ネヴァー・エンド〉があれば、相手がそれを選んでも次のドローで引き直せます。
 手札に二枚目があれば、片方を戻されてももう片方を構えられる。

 二枚以上あっても意味が薄い〈ネヴァー・エンド〉に、二枚目以降の役割を与えるカードでもありました。

 場合によっては、相手に毎ターン除去用の呪文を強いることもできます。
 こちらは墓地から戻すだけで、相手はそのたびに除去を撃つ。
 迂闊に付き合えば、先に呪文が枯渇するのは相手の方。そんなカードでした。

 今回は不採用枠ですが…………



 面白かった、続きが気になる、と思っていただけましたら、
 お気に入り登録・評価で応援していただけると嬉しいです。

 特に評価の方を入れてくださると大変励みになります!
 書くのにも大変に熱が入るので、ポチッとお気軽にー!




 次の回で、決着です。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。