OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた   作:檻@102768

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 おまたせしました!


 今回は、共鳴の強さ。

 そして、共鳴使い達が辿り着ける到達点と、その先にあるものについての話です。





エピローグ3 星々の到達点と、星に属さぬ道の先

 

 

 

「まず、ファイターの強さが何によって決まるのか。そこから話してみましょうか」

 

 

 

 そう前置きして話し始めた少年を見て、第四位は思う。

 つい先程、世界に名だたる自分達を、次々と退けた規格外のファイター。

 

 それを見て、まず思ったのは――――――

 

 

 

 

 

(……なんで、こいつはここまで自分を誇示しない? 誇示せずにいられる(・・・・・・・・・)??)

 

 

 

 

 

 第四位は、胸中で訝しむように唸った。

 

 自分と同じく、共鳴を用いずに世界の頂へ手をかけた男。

 

 

 認めるのは癪だが。

 少なくとも、先程見せた実力と思慮、見識。

 

 そのいずれもが、自分の想定を上回っていた。

 だからこそ、わからなかった。

 

 

 

 ――自分がここまで辿り着くのは、生半な道ではなかった。

 

 

 

 カードで上にのし上がるために必須の才能、共鳴を持ち得なかった。

 それでも、カードを諦めきれなくて。

 

 だから必死に頭を回した。

 

 

 共鳴なしでも戦える戦略を探し、使えるカードを漁り、相手の思考を読み。

 才能で埋められない差を埋めるために、死に物狂いで自分の技術を磨き上げた。

 

 

 その道を、間違いだったとは思わない。

 

 正しかったからこそ、今の自分がいる。

 

 

 世界第四位という結果がある。

 いつかこの先にも、届いてみせるという自負がある。

 

 

 そして、その自負があるからこそ。

 

 同じ道を歩いてきた者ならば、仮に更なる()に行っていたとしても。

 その執念も、傷も、纏う空気も、見誤らないつもりでいた。

 

 なのに。

 

 

 

 

自分と同類のはずのこの男からは、そのどれも感じられない。

 

 

 

(なんだ、この屈託のなさは(・・・・・・)

 こいつも俺と同じように、共鳴に選ばれなかった側で、それでも諦めきれずに足掻いてきたんじゃないのか?)

 

 

 共鳴使い達とは異なる方法で世界ランカーを打ち倒し。

 それを可能にした持論を、今から語ろうというのだ。

 

 

 ならば、もっと力が入るはずだった。

 

 

 自分の道が正しかったという自負。

 才能ある者達を追い越したという反骨。

 自分を認めなかった世界へ、結果を突きつけるような熱。

 

 そうしたものが、少しくらい滲んでもいい。

 

 だというのに。

 

 

 

 目の前の少年は、あまりにも自然体だった。

 

 

 

 長年の苦闘の果てに掴んだ答えを語るというより。

 

 面白いカードの使い方を見つけたから、友人達に教えようとしているような。

 そんな、妙に無邪気な顔をしている。

 

 

 

(……本当に、なんなんだ。こいつは)

 

 

 

 

 

 ――――第四位は、まだ知らない。

 

 

 

 

 

 同じく共鳴を使わず、頂の近くまで辿り着いた二人。

 

 しかし、そこへ至るまでの道筋は、まるで違っていた。

 

 

 

 自分は、共鳴を持たなかったから、この戦い方に辿り着いた。

 

 

 

 だが、同類に見えていた目の前の男は――――――

 

 

 そこへ至る因果の順序が、まるで()だったことを。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「僕は、ファイターの強さは二つに分けて考えられると思っています。

 

 一つは、デッキそのものが持っている強さ。

 もう一つは、その強さをプレイヤーがどこまで引き出せるかです」

 

 

 強いデッキを使うこと。

 デッキを、強く使えること。

 

 当たり前だけど、その二つは同じではない。

 

 

「どれだけ優れたプレイヤーでも、デッキのポテンシャル以上は引き出せません。

 同時に、デッキの強さを引き出すには、ファイター自身の強さが必要になります」

 

 

 極端な話。

 

 最強と呼ばれるテーマでも、それに共鳴できない人が握れば、本来の力は出ない。

 逆に、どれだけ優れた共鳴使いでも、自分と噛み合わないテーマやカードを、共鳴できるカードと同じ精度では扱えない。

 

 だから、ファイターの強さは、デッキの強さだけでも、プレイヤーの技量だけでも決まらない。

 

 

「デッキがどれだけ強いか。そして、そのデッキの力をどこまで引き出せるか。

 この二つを掛け合わせたものが、実戦で出せる強さになる。僕は、そう考えています」

 

「……掛け合わせる?」

 

 

 サレンが、小さく首を傾げた。

 

 

「うん。デッキそのものの強さと、そのデッキから引き出せる強さ。

 その両方を10点満点で考えて、掛け合わせた上限が100点……って感じかな」

 

 

 もちろん、実際の勝負がそんな単純な数字で決まる訳ではない。

 

 相性もある。

 情報量もある。

 初見かどうかもある。

 

 

 けれど、考え方としてはそういうことだ。

 

 

「ここで言うデッキの強さ10点は、カードプール全体を自由に使える理論値だと思ってほしい。

 最強のカードも、特定の相手にだけ刺さるカードも、必要なものを全部選べる。

 

 そういう、現実にはほぼ不可能な理想値だ」

 

 

 だから、現実の勝負ではまず、もう一つの数字が重要になる。

 

 デッキの力を、どこまで引き出せるか。

 

 

「共鳴は、このうち後者――デッキの力を引き出す能力を、極限まで高める力だ」

 

 

 共鳴できるテーマであれば、望むカードを引き寄せられる。

 必要なカードを、必要な時に手札へ届かせられる。

 

 

 本来なら、どれだけ正しい判断をしても、山札の順番だけはどうにもならない。

 

 

 勝ち筋が見えていても、必要なカードを引けなければ届かない。

 最善手が分かっていても、その札がなければ、別の手を選ぶしかない。

 

 けれど、共鳴はそこを埋めてくれる。

 

 

 もちろん、何も考えなくてよくなる訳ではない。

 

 何を引くべきか。

 いつ引くべきか。

 引いたカードを、どう使うべきか。

 

 そこには、やはりファイター自身の判断が必要になる。

 

 

 それでも、共鳴は、正しい判断が山札の都合で潰される可能性を大きく減らしてくれる。

 

 だから、プレイングの出力は限りなく満点に近づく。

 

 

 その体現者が、眼前の彼女――世界第三位。

 当代最強と謳われる共鳴使い。

 

 

「だから、共鳴使いは強い。

 プレイヤーとしてなら(・・・・・・・・・・)、間違いなく理想論の体現だろうな」

 

 

 それは、否定しようのない事実だった。

 

 

 僕は、共鳴を使わずに戦っているけれど。

 だからといって、共鳴を軽く見たことは一度もない。

 

 

 むしろ逆だ。

 

 

 共鳴の強さを知っているからこそ。

 

 同じ土俵で戦えば、勝てないと分かっている。

 

 

 

「ただし――――共鳴には、実はもう一つの側面がある」

 

 

 

 僕は、そこでサレンへ視線を向けた。

 

 

「サレンも共鳴使いで、共鳴するカードは引けるんだろ?」

 

「うん。そうだけど」

 

じゃあ(・・・)なんで共鳴できないカードを(・・・・・・・・・・・・・)デッキに入れないんだ(・・・・・・・・・・)?」

 

「え?」

 

 

 サレンが、きょとんと目を瞬かせた。

 

 

「共鳴で必要なカードを引き寄せられるなら、普段は使わないけど、いざという時だけ役に立つカードを入れておく……なんてこともできるだろ。

 引いたら腐るカードでも、他のカードを引き寄せられるなら、そのリスクはケアできるんじゃない?」

 

 

 少し、意地の悪い質問だったと思う。

 サレンは、答えに困ったように口ごもった。

 

 けれど、たぶんそれが答えだ。

 

 

「ごめん。困らせるつもりじゃなかった」

 

 

 僕は、軽く頭を下げてから続けた。

 

 

「ここからは僕の推測になるんだけど。

 共鳴使いは、共鳴できないカードを入れないんじゃなくて、入れられない(・・・・・・)に近いんだと思う」

 

 

 もちろん、共鳴できないカードも、デッキに入れること自体はできるのだろう。

 

 けれど、それを入れた瞬間に、共鳴の精度が落ちる。

 テーマの純度が落ちる。濁る。

 

 望むカードを引き寄せる力。

 共鳴使いが共鳴使いであるための武器そのものが、少しずつ鈍っていく。

 

 

 もしそうでないのなら――――第三位。

 眼前にいる当代最強の共鳴使いが、あの無限ターンのロックで封殺されることもなかっただろう。

 

 

「だから、強い共鳴使いほど、自分が共鳴できるテーマを濁らせない。

 共鳴できるカードを中心にして、共鳴の精度を高める」

 

 

 それが一番強い。

 それが一番安定する。

 それが、自分の才能を最も活かせる。

 

 だから、多くの共鳴使いは、自分が共鳴できるテーマを中心にデッキを組む。

 

 

「つまり共鳴は、セルフサーチ能力と、それに伴うプレイングの最適化、事故率の低下を得る。

 その代わりに、デッキ構築が共鳴できるテーマへ縛られていく能力だと言える」

 

 

 共鳴できるテーマなら、強く使える。

 

 裏返せば。

 共鳴できないテーマは、同じようには扱えない。

 

 

 相性の悪いカードを無理に混ぜれば、共鳴は濁る。

 だから、共鳴使いはテーマの純度を高める。

 

 

 しかし――デッキ構築の自由度は下がる。

 

 

 おそらく、カードにおける無色のような、共鳴できずとも濁りにくい汎用カードはあるのだろう。

 

 どのデッキにも入りやすい。どのテーマにも添えやすい。

 効果としても、共鳴への影響としても、丸いカード。

 

 

 

 けれど、丸さとは、尖りを失うことでもある。

 

 

 

 多くのデッキに入れられる代わりに、特定の相手だけを根本からひっくり返すほどの役割は持ちにくい。

 

 

 

 例えば、カードゲームには、相性不利の相手だけを見て入れるカードがある。

 

 

 

 普段は腐る。

 自分のデッキ本来の動きとも噛み合わない。

 

 けれど、特定の相手や盤面にだけは決定的に刺さる。

 

 

 

 僕の感覚だと、銀の弾丸(シルバーバレット)と呼ばれるカードだ。

 

 

 

 …………おそらく、この世界では、その発想自体がかなり遠い。

 

 

 

 共鳴を濁らせてまで、普段は引きたくないカードを入れるくらいなら。

 共鳴できるテーマの出力を高めて、正面から押し切る方が安定するからだ。

 

 

 それは、間違いではない。

 むしろ、共鳴使いとしては正しい。

 

 

 

 正しいからこそ。

 

 

 

 そこに、上限(・・)が生まれる。

 

 

 

「ここで、最初の話に戻るよ」

 

 

 

 

 そう言ってから、僕は改めて周囲へ視線を戻した。

 

 デッキそのものの強さ。

 その強さを、プレイヤーがどこまで引き出せるか。

 

 この二つが、実戦で出せる強さを決める。

 

 

「共鳴は、デッキの力を引き出す能力を極限まで高める。

 けれど、デッキそのものの上限を引き上げる力じゃない」

 

 

 そう。

 共鳴は、デッキが本来持っている上限へ、限りなく近づくための力だ。

 

 その代わり、デッキの上限そのものは、共鳴できるテーマの範囲に縛られる。

 

 

「だから、共鳴できるテーマと少数の汎用カードで組まれたデッキは、完成度が非常に高くなる。

 けれど、カードプール全体を自由に使っている訳ではない以上、どうしても上限がのしかかる」

 

 

 単一のテーマは、基本的に、そのテーマが得意な勝ち方へ向けて作られている。

 

 速さに優れたテーマには速さの。

 妨害に優れたテーマには妨害の。

 墓地利用に優れたテーマには墓地利用の形がある。

 

 だから、同じテーマ内のカードだけで組めば、動きは綺麗になる。

 

 

 噛み合いが良く、シナジーがあって、無駄が少ない。

 共鳴もしやすい。

 プレイングも安定する。

 

 けれど、綺麗にまとまっているということは。

 逆に言えば、そのテーマが持っていないものは持てないということでもある。

 

 

「共鳴できるテーマを中心に組まれたデッキを、ざっくり数字にするなら、10点満点中8点くらい」

 

「8点……」

 

 

 サレンが、確かめるように呟いた。

 

 

「もちろん、低いという意味じゃないよ。むしろ、ものすごく高い。

 ただ、ここで言う10点は、カードプール全体を自由に使えた場合の理論値だ」

 

 

 共鳴できるカードも、共鳴できないカードも。

 この世の全てのカードを、必要に応じて選び取れる。

 

 そこまで行って、初めて10点になる。

 

 

「サレンだって、自分のデッキが、全てのカードを自由に使える理論値の10点だとは思ってないだろ?」

「確かに。……全部のカードで満点なら、8点くらいが妥当かも」

 

「うん。そういう感覚でいいと思う」

 

 

 サレンが、小さく頷いた。

 

 8点。理論値には届いていない。

 けれど、完成度は高く、安定していて、ものすごく強い。

 そんなイメージ。

 

 

 8点のデッキ。

 

 その8点のデッキを、共鳴によって10点満点に近い精度で扱う。

 

 

「つまり、デッキのパワーが8点。

 共鳴によって引き出されるプレイングが10点。

 掛け合わせれば、8掛ける10で80点」

 

 

 普通のプレイヤーなら60点程度、優れたプレイヤーでも70点台に留まるかもしれない。

 

 けれど、共鳴使いなら、8点のデッキから80点に近い力を安定して引き出せる。

 

 

「だけど」

 

 

 僕は、続ける。

 

 

「どれだけ完璧に力を引き出せても、デッキそのものの上限を超えることはできない」

 

 

 8点のデッキを、10点満点で扱えば80点。

 

 それは、凄まじいことだ。

 けれど、それでも80点だ。

 

 

 

 8点のデッキは、10点のデッキにはならない。

 

 

 

 プレイヤーの出力(ドラテク)は満点でも、使っている(デッキ)の最高速度そのものには限界がある。

 

 

 共鳴できるテーマの上限が、その人の出せる強さの上限になる。

 

 少なくとも、共鳴に頼る限りはそうなる。

 

 

 

 

 

「――――それを踏まえて、ここで一つ考えることができる」

 

 

 

 

 

 僕は、テーブルの上のカードから視線を上げた。

 

 

「デッキそのものの上限と、プレイヤーが引き出せる割合。

 その両方を最大化できたら、何が一番強いのか」

 

 

 強いデッキを握る。

 その強いデッキを、完璧に扱う。

 

 理屈で言えば、それが最強だ。

 

 

 だから、この問いの答えは難しくない。

 

 

「どんなテーマにも共鳴できる。どんなカードにも拒まれない。

 

 最強のクリーチャーを入れられる。

 最強の秘宝を使える。

 最強の除去を積める。

 最強の妨害を選べる。

 

 …………最強の勝ち筋を、余さず組み込める」

 

 

 そして、それだけではない。

 

 

「特定の相手、特定の盤面。

 特定の一瞬だけは、最強のカードよりも強くなるカードも入れられる」

 

 

 用途が狭い。

 腐りやすい。

 

 普段は、最強ではない。

 単純なカードパワーだけを見れば、もっと強いカードがある。

 

 

 けれど、刺さる相手には、何より深く刺さる。

 そんな銀の弾丸さえ、必要に応じて選び取れる。

 

 

「全ての最強と、最強未満(・・・・)が集うデッキ。

 それら全てを濁らせずに扱えるなら、理屈の上では、それが一番強い」

 

 

 テーマに縛られない。

 

 共鳴が濁らない。

 

 

 全てのカードを、最適な形で扱える。

 

 

 デッキ構築の時点で、最強のカードだけではなく、その瞬間にだけ最強を超えるカードまで選び取れる。

 そのうえで、プレイングの段階でも全ての力を引き出せる。

 

 

 

「いわゆる――――――バベル使いだね」

 

「バベル……」

 

 

 

 その言葉が、ユウキの口から小さく零れた。

 

 あらゆるカードの言語を理解し、あらゆるテーマへ繋がる者。

 その響きに、ユウキは思わず視線を動かしていた。

 

 そして、ユウキは気づく。

 

 サレンもまた、同じ場所を見ていることに。

 

 

 視線の先にいるのは、テーブルの端で、静かに座っている少女。

 

 

 

 バニラ。

 

 

 

 今はそう呼ばれている少女。

 

 ユウキの脳裏に、記憶を失う前の彼女の姿がよぎる。

 

 

 メガバベルの社長ちゃん。

 

 彼女のデッキは、まさに――――

 

 

 

「? ユウキちゃん、サレン。どうかした? ……思い当たるプレイヤーでもいたとか?」

 

「えっ!? いえ、なんでもないです!」

 

「そう? …………そっか。じゃあ、話を戻すね」

 

 

 なんでもない、というには少し分かりやすすぎる反応だった。

 何か、僕の知らない事情があるのだろう。

 

 けれど。聞いてほしい話なら、きっと向こうから話すだろう。

 少なくとも今は、無理に踏み込む場面ではない。

 

 

 そう判断して、僕は、そのごまかしに乗ることにした。

 

 

 僕は、二人の反応を胸の片隅に置いたまま、話を続ける。

 

 

「今言っているのは、あくまで理論上の完全なバベル使いの話だ」

 

 

 ただ、色々なテーマに手を出せるだけでは足りない。

 

 全てのカードに拒まれず。

 全てのカードを濁らせず。

 その全てを、必要な場面で正しく選び取れる。

 

 

「そこまでできる真のバベル使いこそが、理論上の最強になる」

 

 

 もし、完全なバベル使いが存在するならば。

 そのファイターは、理論上の100点だ。

 

 デッキそのものの上限も最大。

 引き出せる割合も最大。

 

 どちらにも欠けがない。

 

 

「でも、これはあくまで理論値だ。

 単純に、全てのカードに共鳴できるなんていう才能だけじゃとても足りない」

 

 

 僕は、少しだけ息を置いた。

 

 

「だってそれは…………最強ではないカードまで、無数に抱え込むことが前提だからだ。

 そして、抱え込む以上、それら全ての意味を知り尽くさなければならない」

 

 

 バベルは、強いカードだけで構成されている訳ではない。

 むしろ、強いカードだけを見ている限り成立しないデッキタイプだ。

 

 弱いカード。

 用途の狭いカード。

 似た役割を持つカード。

 普段は使われないカード。

 

 ある一瞬にだけ、最強以上の意味を持つカード。

 

 

 そうした全てを抱え込み、どの状況で、どの一枚を選ぶべきかを判断しなければならない。

 

 全てのカードを使えるという自由は、全てのカードに精通しなければならないという義務でもある。

 

 知識。

 見識。

 構築力。

 プレイングテクニック。

 

 そして、それら全てを実戦中に選び取る判断力。

 

 

 

 破格の共鳴の才以上に(・・・・・・・・・・)求められるものが大きすぎる(・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 だから、完全なバベル使いは、あくまで理論上の最強でしかない。

 

 

「だから、全てのカードへ手を伸ばせて。

 

 共鳴以外のプレイングでも、その全てを使いこなせる、完全な(・・・)バベル使い。

 

 これでようやく理論上の100点。

 実在すれば(・・・・・)最強だ。文句のつけようもないね」

 

 

 理論上、考えることはできる。

 

 …………けれど、現実には到底存在しえない、仮想(・・)の最強。

 

 

 理想のプレイングができる共鳴という才能。

 

 それだけ(・・・・)ではとても届かない――――――机上の到達点(イデア)

 

 

 

「では、現実に存在する最強クラスの共鳴使いはどうか」

 

 

 

 そう言ってから。

 

 僕は、ほんの一瞬だけ、第三位へ視線を向けた。

 

 

 世界第三位。当代最強の共鳴使い。

 

 未葬教典というテーマの力を、限界まで引き出すファイター。

 

 

「自分に最も適したテーマと共鳴し、そのテーマの力を極限まで引き出す。

 それが、現実における共鳴使いの最高峰(ハイエンド)

 

 

 テーマそのものの上限が高く。

 

 プレイヤーが引き出せる割合も高い。

 

 

 だから強い。

 

 だから、世界の頂点へ届く。

 

 

 

 …………それでも。決して100点ではない。

 

 

 とはいえ、その100点――――完全なバベル使いは、とても実在しえないだろう。

 

 

 ならば、現実の共鳴使いが目指せるのは。

 理論値ではなく、到達可能な天井――80点の領域へ、どれだけ肉薄できるか……だった。

 

 

 共鳴を前提にするなら、それが一つの到達点。

 

 

 その極致こそが十二聖座(ラスール)…………星の頂に立つ者たち。

 

 

 

 

 

「でも、僕は――僕のデッキは違うんだ」

 

 

 

 

 

 僕は、テーブルの上に並んだカード達へ視線を戻した。

 

 

〈終焉の巨人 スルト〉。

〈自転式の砂時計〉。

〈絡まった命綱〉。

 

 ひと目でわかる、僕の側のカードの統一性のなさ(ちぐはぐさ)

 

 どれも、同じテーマのカードではない。

 

 

 けれど、テーマを超えて決定的に噛み合い、僕を勝利に導いた。

 

 共鳴を前提にするなら、選ばれなかったカード達。

 

 

 

 それでも。

 

 僕にとっては、全部必要だった。

 

 

 

「――――共鳴使いでないからこそ、辿り着ける境地(さき)がある」

 

 

 







「大地より離さぬ限り、その巨人を退かせることは叶わぬ。

 星脈はその体へと根を張り、
 地の鼓動は、巨人へ血潮を送り続ける。

 不動のまま立ちはだかるその姿は、まさしく星の化身。
 つながる星と同じく、揺らがず、崩れず。巨人は戦場に立ち続ける」


     ――――〈大地の巨人 アンタイオス〉



――――――――――




 お気に入り3000人を突破しましたー! やったぁぁぁ!
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 次回。

 星々の到達点より、なお先へ。
 共鳴使いではないからこそ辿り着ける、モブ君の強さの本質についに踏み込んでいきます。
 乞うご期待!


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