OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた   作:檻@102768

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試合開始
2 通らない壁を、貫く一手


 

 

 

 バトルボードが、淡く発光する。

 先攻後攻の決定。

 

 光が灯ったのは――――――

 

 

此方(こなた)の先攻ですね。

 励起(レディ)維持(アップキープ)抽出(ドロー)。……白の色彩(カラー)をセット。エンドです」

 

 

(……様子見か。それとも構えるタイプ?)

 

 

 共鳴使いがドローにアドバンテージがある以上、初手の手札事故の可能性は考えづらい。

 それで動かないってことは、高速コンボの可能性はだいぶ低くなる。

 

 こっちの仕掛けを警戒してマナを温存しているのか?

 

 

 

※   ※   ※

 

 

「よく見ておくが良いぞ。天儀よ」

 

 

 ファイトが始まると同時に、静かな声が、観客席の一角で落ちた。

 

 カド市長が、ドロシーへと声をかける。

 

 

 面識はあれど、さほど親しいとは言えない相手からの助言に、ドロシーは困惑した。

 

 

「ド、ドアですか?」

 

「うむ。あやつはお主の発展型――――このまま進めば行き着く”果て”の一つじゃ。

 大いに参考になるじゃろう。見逃さぬようにな」

 

 

 それを聞いたドロシーは、わずかに目を細めた。

 

 

 今はその言葉の意味はわからないけど。

 それでも耳にいれる価値があると、心の何処かで直感した。

 

 

 

 まだ盤面には、何も起きていない。

 

 だが、その一手の意味を理解している者は、この場に確かに存在していた。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「僕のターン。レディ、アップキープ、ドロー。

 色彩をセットし、『災火の前触れ』をプレイ」

 

 

 盤面に置かれたそれを、対戦相手は一拍置いて見つめる。

 

 

「除去を合わせます。着地と同時に破壊」

 

「通ります。『前触れ』は墓地へ」

 

 

 コンボの最初の種火、『前触れ』は風に吹かれたかのように、あっさりと消えた。

 

 

 (……開幕からコンボの起点を潰してきたか)

 

 

 先行で何も展開せず、除去を構えていた。

 つまり、序盤の盤面の構築より“芽”を潰すことを優先している。

 

 

「此方のターン。ドロー。……色彩をセットし、エンドです」

 

 

 また動かない、か。

 

 

「僕のターン。ドロー。色彩をセットし、『終局へ至る歯車』をプレイ」

 

「妨害します」

 

「……通します」

 

 

 今度は盤面にいつく間もなく、コンボパーツは墓地へ落ちた。

 

 

(開幕から除去と妨害。

 しかも両方とも、惜しまず切ってくる)

 

 

(ここまでのエキシビションマッチでも、エニグマが複数のルートを持つコンボデッキというのは見せてきた)

 

 

 だからパーツを端から即対処も間違いじゃない。

 が……違和感がある。

 

 

(搭載数が限られてるなら、決定機かその直前まで温存する。

 それを、まだ二ターン目であっさり二枚。デッキに潤沢に積まれている証拠だ)

 

 

 ……コントロール要素あり、どころじゃないな。

 最後の最後でド不利対面引いたか?

 

 

(……ま、十人もいれば、コントロールだって二、三人はいる計算だもんな。

 それにコントロールなら、前世でも何度も相手にしてきた)

 

(今世でも、ドロシーと何度もファイトしてる。

 レベルは違うだろうけど――やること自体は変わらない)

 

 

(……ただ。エニグマでこの相手は、普通に不利だな)

 

 

 それからも、似たような応酬が続いた。

 

 

 僕が仕掛け、相手が潰す。

 

 何度か試すようにコンボパーツを投げる。

 そのたびに、除去と妨害が飛んでくる。

 

 秘宝は盤面に残らず、クリーチャーも並ばない。ただの更地のまま。

 

 

 だが、ターンは確実に進み。

 互いの前には、使えるマナだけが増えていった。

 

 

 

(こっちから除去や妨害を打つまでもなく、相手の盤面は空っぽっていうのも引っかかるね)

 

 

 相手は殴り勝つタイプのデッキではない?

 

 もちろん、序盤の展開はひたすら咎めて、中盤以降に大型フィニッシャーを妨害と除去でサポートするタイプって可能性もあるが。

 

 

(それでも、間違いなくコントロール系のカードは山盛りだ。

 コンボ主体のデッキで、このまま空中戦に引きずりこまれるのは上手くない)

 

 

(なら――――――盤面だけでも先行させてもらおうか)

 

 

 ここからが中盤。

 

 小細工の牽制は終わり。偵察用の札は十分切った。

 

 

 戦局を動かす一手を――通せるか、叩き落とされるか。

 

 

 

 次の一手に向けて、静かに呼吸を整えた。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

※   ※   ※

 

※   ※   ※

 

 

 

「僕のターン。〈自身も危うい金貸し〉を召喚。通りますか?」

 

 

 宣言したのは、新たなコンボパーツ。

 コスト関連での飛び道具。

 

 

 

〈自身も危うい金貸し〉

 

――――――――――

 

これは利子カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。

 

あなたのアップキープの開始時、

またはあなたが望むとき、

利子カウンターを1個取り除く。

 

利子カウンターを取り除いたとき、

次にあなたが唱える呪文1つのコストは{1}少なくなる。

 

利子カウンターが0個になったとき、これを破壊する。

 

――――――――――

 

 

 数ターン分のコストを前借りするカード。

 ただし期限付き。上手く使い切れなければ抱え落ちで自壊する。

 

 

 つまりコンボデッキで素通しすれば、この数ターンで決め(・・)に来るという宣言に近い。

 よって――――――

 

 

 

「妨害します」

 

「妨害は通ります。『金貸し』は墓地に」

 

 

 淡々とした宣言。

 これまでと同じ、静かで熱量を含まない声。

 

 

(やっぱり、即潰しに来るか)

 

 金貸しは場に出ることなく消えた。

 だが、それで顔色は変わらない。

 

 

(想定内だ)

 

 

 

「再び、『自身も危うい金貸し』を召喚。通りますか?」

 

「! …………対応を考えます」

 

 

 今度は、相手の反応がわずかに遅れた。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

(…………二枚目を引いていましたか)

 

 

 対応は三種類。

 妨害か、除去か、あるいはスルーか。

 

 なまじ、どの選択肢も取れるからこそ悩ましい。

 

 

 本音を言えば妨害を打ちたい。着地なんてさせず消し飛ばすのが最適解なのはわかってます。

 けれど、ここまでにもひっきりなしに妨害を打ち込んだ手前、手札の妨害は残り僅か。

 

 

 この妨害は相手の仕掛けを止めるためではなく、こちらの本命(・・・・・・)を通すために使いたいですね。

 

 

 スルーも厄介です。このまま野放しにすると『金貸し』のアドが残っている早期、おそらく次のターンで畳み掛けに来る。

 そこで温存した妨害を注ぎ込んだとしても、使えるコスト差で上を取られたら詰みかねません。

 

 なら――――――

 

 

「お待たせしました。対応はなし。着地どうぞ」

 

「はい。『自身も危うい金貸し』が盤面に着地します」

 

 

「着地と同時に除去をプレイします。『金貸し』を破壊」

 

 

 一瞬の着地は許しますが、効果起動前に排除を。処理は妨害ではなく除去で。

 呪文にも対応できる妨害は惜しいですが、クリーチャー用の除去なら使っても構いません。

 

 

 何より、除去は彼の切り札(・・・・・)には刺さらないですし。一応は引いておきましたが、温存しておいても、思った以上に使い所は限られます。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

(――――その選択を、待っていた)

 

 

 

 狙い通りのそのアクションを見た瞬間、即座にカードを叩きつける。

 

 

「対応します。その除去に呪文『一時しのぎの強襲』をプレイ。効果は――――――」

 

 

「覚えています。自身のクリーチャーを1体破壊し、代わりに手札からクリーチャーを召喚。

 そのクリーチャーはエンド時に破壊される……ですね?」

 

 

「そう。その代償(デメリット)と引き換えに、この呪文は秘跡(打ち消されない)を持つ……」

 

 

 

 

 『一時しのぎの強襲』はかなりのアド損呪文だ。

 代わりに、軽く、妨害されない。

 

 

 …………普通の運用なら、こんなカードには目もくれない。

 

 

 莫大なデメリットを、アドではなくコストの軽さと通りやすさとトレードしている。

 

 しかしせっかく召喚したクリーチャーが、ターン終了時に破壊されるような呪文など、わざわざ妨害するまでもない。

 

 

 これほどにピーキーな呪文、普通なら不採用だろう。

 

 

 

 だから。

 

 もし使われるとすれば、そのデメリットを丸ごと踏み倒せるような。そんなギミックが仕組まれているに違いないのだ。

 

 

「…………対応は、ありませんね?」

 

「無論です。どうぞ召喚なさってください」

 

「では、遠慮なく。『自身も危うい金貸し』を破壊し、手札からクリーチャーを召喚」

 

 

 能力を使う前に。除去が刺さる前に。『金貸し』は砕けた。

 

 

 

 

 

 そして―――――その残骸を踏みしだきながら、怪物が君臨する。

 

 

 

 

 

「召喚するのは――――――終焉(しゅうえん)の巨人 スルト》

 

 

 

 

 宣言とともに、バトルフィールドが、揺らぐ。

 

 

 

 

 

 次の瞬間。

 

 

 隕石が眼前に落ちたかのような衝撃が、会場すべてを襲った。

 

 

 

 

 

 







「貧乏人は物取りに遭う心配がなくていいなっ!」


     ―――――《自身も危うい金貸し》





――――――――――




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