OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた 作:檻@102768
…………さて。
久しぶりに再会できたリオちゃんと話が弾んでるのは良いが…………
そろそろ、背中に向けられるプレッシャーに対処しないとマズそうだな。
これ以上ターンまたぐと手遅れになりそう…………
「リオちゃん、ちょっとごめんね」
「んー?」
ひとこと断ってから、ゆっくりと振り返る。
そこには案の定――――ただならない威圧感を放つドロシーがいた。
「あの、ドロシー?」
「何ですか?」
「いや……なんか、怒ってない?」
「怒ってませんけど?」
「…………そう?」
「はい」
「…………」
「…………」
(怒ってるよなぁ…………)
「あのー…………僕、なんかした?」
「別に?」
「…………何かした人への返事なんだよなぁ、それ」
どう考えても『別に』で済ませる人の声音じゃない。
どうしたものかと頭を悩ませていると、ドロシーはふいっと顔を逸らした。
「別に、楽しそうで何よりです」
(君が楽しくなさそうだから困ってるんだけど)
どうやら完全に機嫌を損ねてしまったらしい。
さて、どこでプレミした。
久しぶりに会った旧知と話していただけ――――なんだけど。
そりゃ、仮にドロシーと付き合ってるとかなら。
目の前で他の女の子と盛り上がって放置した、なんてのは普通にアウトだと思う。
でも、僕らは別にそういう間柄じゃない。
チームメイトで、友達で――――まあ、かなり仲は良いと思ってるけど。
(だから、こんな顔されるような覚えがないんだが…………)
そう言いながら、彼女はほんの少し身を寄せてきた。
さっき席をずらしたせいで、僕とドロシーの距離はもう、腕を伸ばすまでもないくらい近い。
何をするのかと見ていると、ドロシーの手が、おずおずと僕の方へ伸びてきて――――
きゅっ、と。
制服の袖を、細い指先でつままれる。
……………………
……………………
…………………………………………えっ。
何それ。
かわいい。
いや待って。
男相手にその表情とそのムーブのコンボは致死量じゃない??
頭に浮かんでいた応手が一発で消し飛ぶくらい、とんでもねー破壊力だった。
思わず目元を、片手で覆う。
「…………、……ごめん。
こっちの盤面壊滅したから、立て直すまでちょっと待っててくれる?」
数秒かけて、どうにか思考回路を再起動させる。
…………いや、まだ無理かもしれない。
指の隙間から、改めてドロシーを見る。
腰まで流れる銀色の髪。
透き通るように白い肌に、澄んだ空色の瞳。
普段から見慣れているつもりだったけど。
こうして真正面から意識して見ると――――――
(…………この子、とんでもなく可愛いんだよな)
本当に販促アニメの世界じゃなかったら実在しないだろって言いたくなるくらい。
ファンタジー級に、掛け値なしの美少女。
そんな子が、今、僕のすぐ隣で。
僕の袖をつまんだまま、こっちを見上げている。
(……………………ダメだ。盤面復旧どころか、追加で焼かれてるかも…………)
「…………」
目が合う。
「…………」
するとドロシーは、今度は見つめられていることに耐えられなくなったのか。
白い頬をほんのり赤くして、ふいっと横を向いた。
――――ただし。
僕の袖をつまんだ指だけは、離さないまま。
…………なんだこれ。
さっきまで背中から殺気じみたプレッシャー浴びてたはずなのに。
なんとなく、声を掛けづらい。
というか、ドロシーも何も言わない。
なのに袖だけは、そのままつままれている。
「…………」
「…………」
ふと気づけば、さっきまで好き勝手に話していた周りまで、妙に静かになっていた。
「…………まあ、なんじゃ」
しばしの沈黙のあと。
カド市長が、妙に遠慮がちな声音で口を挟んだ。
茶化すでもなく。
割って入るでもなく。
むしろ――――これ以上、周りで見ている方が野暮だとでも言うように。
「一旦、休憩にせんか?」
「…………あー、はい。お願いします…………」
その一言を境に。
部屋の空気は、自然と二つに分かれた。
一方では、ようやくフツオを捕まえたドロシーが、彼と向かい合い。
もう一方では――――先ほどまで、そのフツオと刃を交えていた世界ランカー達が、自然と一つの輪を作る。
そして。
休憩に入るや否や――――
「――――おい、ジジイ」
待ってましたとばかりに、ロウド師範へ食ってかかった者がいた。
世界第四位――――”塵塚王”
先ほどのエキシビションで、フツオと刃を交えた一人。
「なんじゃ?」
「テメー、いつの間にあんなの身内に抱え込んでやがった」
「…………あんなの?」
「とぼけんな。あのガキだよ」
くい、と顎で示した先。
そこには、少し離れた場所で天儀ドロシーと話しているフツオの姿がある。
「なんであんな奴が身内にいたのに、俺に顔見せの一つもしとかねぇの?」
「いや…………」
ロウドは呆れたように眉を寄せた。
「あやつもさっき言っとったじゃろ。こんな理論を人に話したの初めてだったと。
ワシも今日初めて聞いたんじゃが?」
「それにしたって、それにしたってだぞ…………!」
どうにも納得がいかないらしい。
それも、無理からぬ話ではあった。
第四位は、共鳴の才そのものを持たないわけではない。
だが――――己が使いたいデッキと、その才能が噛み合わなかった。
ゆえに。
共鳴を使わず、死に物狂いで鍛え上げた己の技量で、世界第四位まで登り詰めた男である。
そんな彼の目の前へ。
同じく共鳴を使わず――――それでいて、今まで見たこともない理屈と技術で。
世界上位へ食らいつく少年が現れた。
それをよりにもよって、その少年と近しい元
一言くらい物申したくなるのも当然だった。
「こんな面白ぇ奴いるんなら、もっと早く俺んとこ連れてこいよ……!」
「あー…………」
ようやく何に腹を立てているのか理解したらしい。
ロウドはぽりぽりと頬を掻く。
「まあ。いつかは一位や二位にでもぶつけてやろうかとは、思っとったがの」
ぴくり。
第四位の眉が跳ねた。
「よりにもよって、あの一位や二位にか? …………
「うむ」
「………………」
声の温度が、一段下がった。
「ジジイ」
「なんじゃ」
「喧嘩売ってんのか?」
「いや?」
ロウドはけろりとした顔で、
「でも実際、お前負けとるじゃろ」
「ッ!!」
「あいつ、
「………………」
第四位は黙った。
不満はある。
ものすごくある。
だが。
――――実際に自分が負けた。
少なくとも。
ロウドが『一位や二位にぶつける』と言うだけのものを、あの少年が持っていることだけは。
他ならぬ第四位自身が、身をもって証明してしまっていた。
その一点を突かれると、どうにも反論しづらい。
「…………チッ」
結局。
舌打ち一つで矛を収めるしかなかった。
だが――――
「…………待て」
そこで、第四位がふと眉を寄せる。
「じゃあ、あいつのアレ。テメーが仕込んだんじゃねぇのか?」
「アレ?」
「共鳴使わねぇ前提の構築だの、プレイングだの。
さっきからペラペラ喋ってる、あの辺全部だよ」
「ああ、知らん」
ロウドは即座に答えた。
「…………冗談だよな?」
「知らんもんは知らん」
「いや待て。テメー師範だろ」
「師範だから何でも教えられると思うな」
「開き直んな」
「そもそもワシ――――――
「…………!」
言われて。
第四位の表情が止まる。
「ワシがあやつに仕込んだのは、気門流の基礎やら対人戦の心得やら、そういう類じゃ。
今あやつが話しとるようなプレイングの理屈は――――ワシも知らん」
ちらり、と。
ロウドもフツオへ視線を向けながら、そう締めた。
その発言を受けて。
第四位に先を越される形で、ひとまず成り行きを見守っていた他のランカー達も、揃って表情を改めた。
人刹ロウド。
かつて世界の頂点、
代々”秘虎”のレガシーカードを継承し、
フツオと近しい人物の中で。
あそこまで育てた人物として、誰もが真っ先に疑った男。
その本人が。
――――知らない、と証言している。
ならば。
「…………となると、じゃな」
カド市長の声とともに。
いくつかの視線が、もう一人へ向いた。
地柩セト。
同じく、フツオと以前から交流があり。
こちらもまた、かつて世界の頂へ届いた一人。
歴代最速で十二聖座へと名を連ねた麒麟児。
次に疑われるのは。
当然――――彼女だった。
――――の、だが。
「…………」
当のセトは、こちらを見てすらいなかった。
「…………セト?」
「…………」
「おい、セト」
「…………えっ!? あ、はいっ!?」
二度目でようやく反応したセトが、勢いよく振り返る。
その様子に、カドは訝しげに眉を寄せ――――
すぐに。
セトが今まで何を見ていたのかに気づいた。
視線の先。
少し離れたところでは、フツオとドロシーが向かい合っていた。
――――ただし。
何故か、二人とも口を開かない。
構って欲しいとねだったドロシーは、つまんだ袖を離さないまま、視線を逸らし続けていて。
フツオもまた、振り払うことのないまま、何とも言えない顔で頬を掻いている。
「…………その」
やがて。
沈黙に耐えきれなくなったらしいフツオが、先に口を開いた。
「カードの話なら、いくつかできるけど…………それでいい?」
「…………はい」
たったそれだけ。
たったそれだけなのに。
――――妙に、見ているこっちが恥ずかしくなる空気になっていた。
「…………」
セトの視線が、またそちらへ吸い寄せられる。
「…………セト」
「は、はい」
「吾が今、何を聞いたか覚えておるか?」
「き、聞いてましたよ??」
「なら答えてみよ。割と真剣な話だったんじゃぞ」
「…………」
「…………」
「…………すみません。もう一回お願いします」
「聞いとらんかったではないか」
ぐうの音も出ない。
セトは申し訳なさそうに肩を縮めた。
しかし。
それでも数秒もしないうちに、ちらり、と視線が横へ向く。
「…………気持ちは察するが、今は控えよ」
「っ!?」
ぼそり。
カドが小声で告げた瞬間、セトの肩が跳ねた。
「な、何のことですか!?」
「声がでかい」
「…………っ」
慌てて口をつぐむ。
カドは呆れたようにため息を吐き。
もう一度、フツオ達の方をちらりと見た。
「…………あの空気に割り込むとか、好感度の急転直下必至じゃぞ……」
「うっ」
「今行ったところで、どうするつもりじゃ」
「それは、その…………」
「何も考えとらんのか」
「…………はい」
「なら尚更やめい」
ぴしゃりと言われ。
セトはしゅん、と項垂れる。
…………が。
「…………でも」
「なんじゃ」
「ドロシーちゃん、ちょっと距離近くないですか……?」
「知らん」
「さっきより絶対近いですよね?」
「吾に聞くな」
「いやでも、あの感じはちょっと――――」
「今はムリにでもこっちに集中せい」
「…………はい」
「余計なことをする前にな」
「…………はいぃ」
完全に釘を刺された。
それでもまだ気になるのか。
セトは名残惜しそうに一度だけそちらを見てから。今度こそ、カドへ向き直る。
「では改めて訊くぞ」
「うぅ…………わかりました」
「お主は、あやつにどこまで教えた?」
「…………フツオくんに?」
「そうじゃ」
カドが腕を組む。
「デッキ構築。プレイング。理論。技術。何でもよい」
「…………」
「お主もあやつとは以前から交流がある。
「ああ…………」
そこでようやく。
セトにも、何を疑われているのかが伝わったらしい。
「でも…………ボクも、フツオくんにそこまで教えたことないですよ?」
「…………何?」
「というか…………あの子のデッキについては、むしろボクが説明してもらった側です。
前に聞いた時とは、
「…………説明してもらった側?」
にわかには信じがたい話だった。
元十二聖座。それも歴代最速でその座へ上り詰めた地柩セトが。
少なくとも
何人かが、その言葉を確かめるようにフツオへと視線を向ける。
ちょうどその時。
彼は一枚のカードを手に、ドロシーへ何かを説明しているところだった。
「アンチシナジーをプレイングで使うコツはね…………一枚のカードに、どれだけ多くの意味を持たせられるかだ」
「多くの意味…………ですか?」
「うん。僕が使った
《
フィニッシャーと壁クリーチャーを兼ねる《スルト》なんかがまさにそうだ」
言いながら、フツオはカードのテキスト欄を指でなぞった。
「ここで言う“意味”っていうのは、効果がいっぱい付いてるって話じゃないよ。
同じカードを、局面によってどれだけ別の役割として使えるかってこと」
そう前置きして。
「僕の〈スルト〉が、決着の直前までは疑似除去として働きながら、墓地起動のための墓地肥やしも兼ねていて。
最後には壁クリーチャーになったの、見てたでしょ?」
「はい」
「でも〈スルト〉が『屹立』を持ってて、壁になれること自体は最初から分かってたはずなんだ。
別に、途中で知らない効果が生えてきたわけじゃない」
「そう、ですよね。私も見落としてましたし」
「それまで僕が取る追加ターンは、通せばそのまま無限ターンにつながるマスカンだった。だからずっと妨害されてた。
でも最後だけは、相手に妨害が残ってたのに通された」
言われてみれば、その通りだった。
「ここから分かることは、大きく二つある。
一つは――――カードの価値は、状況によって変わるってこと」
「状況によって……」
「僕の無限ターンが、デッキ切れ寸前ではマスカンじゃなくなったみたいにね。
さっきまで絶対に止めなきゃいけなかったカードが、状況一つで『通してもいいカード』に変わることもある」
そこで、フツオは軽く肩を竦めた。
「こっちはあとで話すけど――大事なのは、もう一つ」
テーブルの上のカードを指差す。
「場にある
これね。初見殺しとは、ちょっと逆なんだよ」
「…………初見殺しの逆??」
「そうそう。……むしろ、自分の手の内が割れてる時にこそ効く」
「??」
疑問符が浮かぶ。
手の内が知られているのなら、普通なら不利になる。
初見殺しという言葉がある通り、手の内が明らかでないほうが有利のハズ。
だが、彼に言わせれば、
「人間ってね。知らないものに追い込まれても、『そんなのもあったのか』で済ませられる部分があるんだ。
でも、
…………そっちの方が、精神的なインパクトはずっと大きい。
これはカードだけじゃなくて、対人戦のメンタルの話でもあるけどね」
カードを手札のように構えて、続ける。
「たとえば、手札から見たこともないカードが飛んできて追い込まれたら、そりゃインパクトはある。
でも、その驚きには
「限度、ですか?」
「だって手札は、原則として
「あ」
「何を持ってるか分からない。知らないカードが飛んでくるかもしれない。
それ自体は、最初からゲームの前提に含まれてる」
「……なるほど」
「だから銀弾は強いんだけどね。
『手札から想定外の回答が飛んでくる』っていう、未公開情報の強みを限界近くまで使えるから」
けれど、と。
今度は、盤面を指差した。
「
場に出てるカードは、もう見えてる。効果も読んだ。役割も分かった。
少なくとも一度は、
だから。
「人は一度確認したものへの警戒を下げて、そのぶんを手札みたいな
全部を同じ熱量で警戒してたら、
当たり前の話だった。
一度確認したものより、まだ見えていないものを警戒する。
誰だってそうする。
だからこそ。
「そこで――
「…………!」
「《スルト》はフィニッシャーだと思ってたのに、最後には壁になった。
《
効果は既に全て公開されていた。
カードも知られていた。
なのに――――意味だけが変わる。
それは。
未知のカードを叩きつけられるのとは、まるで違う。
「一度でもそれを見せると、相手の頭の片隅には、自然とこういう疑念が引っかかるようになる。
『また、同じような手を打ってくるんじゃないか』
『自分は確認済みになったつもりでいるだけで、何か見落としてるんじゃないか』…………ってね」
一拍。
「ここで大事なのは――――手の内が割れた結果、仕方なく警戒
相手自身に、自分から警戒
「警戒…………
「そうそう。
一度、そういう裏目を見せておくと、それだけで牽制になる。
むしろ上手い相手ほど効くよ。一度見せられた裏目を、次から無視できなくなるから。
それだけで、以降の相手のアクションはかなり変わるよ」
相手は考える。
今、攻めていいのか。
このカードを使っていいのか。
盤面に見えている脅威は、本当に見たままの脅威なのか。
まだ見えていない手札と組み合わさった時、別の意味を持たないか。
「本来なら、見えているカードは一度処理を終えられる。
でもそこに、『本当にこの使い方だけなのか』って疑いまで持たなきゃいけなくなる。
…………全部をケアしようとしたら、キリがない。
それでもケアするなら、万全を期すしかない」
盤面を整えて。
手札を蓄えて。
多少の裏目なら踏み越えられるだけの余裕を作って。
それから、ようやく攻める。
「万全を期すってことは――――
「……………………あ!」
「察したかな」
嬉しそうに、フツオが笑った。
「裏目を避けようとして、テンポを失う。
つまりゲームレンジが自ずと伸びる。
場にあるカードの意味を変えるというのはね。
長期戦を自分の土俵にするコントロールにとって――――
「…………!」
別に、ターンを飛ばしてるわけじゃない。行動を禁止してるわけでもない。
相手はいつだって攻められる。
ただ。
攻めた先に裏目があるかもしれないと、思わせる。
だから。相手が、自分から待つ。
「もちろん、本当に行動を封じてるわけじゃない。
でも
『動いたら裏目がある』って状況を積み重ねて、相手の取れる行動を実質的に狭めていく。
秘宝やクリーチャー…………
「…………私とは、少し方向が違いますね」
「うん。君はパーミッション使いだから。
盤面へ残して圧を掛けるより、手札から直接相手の動きを潰す方が得意だしね」
それでも。
「覚えておいて損はないよ。
コントロールにおける奥義の一つ…………と言ってもいいくらいの技術だから。
第三位もコントロール使いだったでしょ?
コントロール相手にはビートでテンポを押し付けて長期戦になる前に殴り倒すか、逆に
今回の僕は、無限ターンっていう、彼女よりさらに重く、さらに長いゲームレンジを押し付ける側だった。
だからこそ、コントロール使いの彼女には、ここまで致命的にハマったんだ」
さらりと。
彼はそうまとめた。
「…………」
聞いたドロシーは思わず言葉を失う。
カードゲーマーにとって、カードをどう悪用できるか考えるのは、もはや本能のようなものだ。
書いてある効果を、想定された用途とは違う形で利用する。
そんな発想自体は、珍しいものではない。
けれど。
だからといって。
相手を倒すために立っていた《スルト》を、壁へと変えて。
自分へ莫大なアドバンテージをもたらすはずの追加ターンを、相手に与えて。
しかも、それを成立させたのは、相手の知らないカードではない。
すでに見えていた。
効果も知られていた。
一度は
その警戒の隙間を縫い。
そして最後には、コンボそのものの意味まで反転させた。
自分だけが永遠にターンを得るはずだった無限ターンを、相手だけが永遠にターンを繰り返す牢獄へ作り変えた。
ゲームを決着させるはずのコンボによって、ゲームレンジそのものを
そのまま、相手を完封した。
そんな男が駆使した技術に、説得力がないはずがなかった。
つい先ほどまでの、見ているこちらまで気恥ずかしくなるような空気はどこへやら。
ひとたびカードの話を始めてしまえば。
フツオはそんなことなど忘れたかのように、立て板に水とばかりに理屈を並べ立てていた。
しかも、その内容は。
ここにいる世界ランカー達ですら、思わず耳を傾けるほどのもので。
その、一連のやりとりを横目に見届けて。
カド達の意識は、再びセトへと戻った。
こちらに向けられた視線を受けて。
セトは、ほんの少しだけ困ったように笑って。
――――ほら。こういう子なんですよ。
…………とでも言いたげな表情を浮かべていた。
「小さな火種を、誰が災いと呼ぶだろう。
――――いかなる大火も、ひとつの火から始まると知っているはずなのに」
――――〈災火の前触れ〉
前回の投稿から、気づけば二週間以上空いてしまいました。
お待たせしてすみません…………
書いてたら、こう、なんかめちゃくちゃ膨れ上がってしまいまして。
プロット当初はこの辺りを一話にまとめるつもりだったのですが、流石に一話に詰め込むのがヤバそうな文章量になってきたので、何話かに分割して投稿することにしました。
というわけで、間が空いたぶん、現在はある程度書き溜めができている状態です。
今週中に最低でももう一話。
進み具合次第では、さらにもう一話くらい投稿できそうです。
お待たせしてしまった分、どうか楽しんでいただければと思います。
面白かった、続きが気になる、と思っていただけましたら、
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