OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた   作:檻@102768

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エピローグ13 星明かりの届かぬ深奥

 

 

 

「前の人がやったとこから始められるってことはさ」

 

 

 

 リオが声を弾ませる。

 

 

「おにーさんも、そ(・)う(・)い(・)う(・)の(・)がいっぱい貯まってるところで覚えたってことでしょ?

 

 おにーさんが初代になれる天才だったら別だけどー、違うんでしょ?」

 

 

 してやったり。

 リオの顔に、そんな笑みが浮かぶ。

 

 

「……………………あー、まぁ、そうだね…………」

 

 

 ちょっと口を滑らせたかもしれない。

 カードのことになると大分熱く語っちゃうからなぁ僕。悪い癖だ…………

 

 …………理詰めで分析されたら、そういう疑問も出てくるか。

 

 

「どこなのか教えて欲しいなって。ラスールのアタシでも聞いたこともないようなトコだし!」

 

「どこ、かぁ…………」

 

 

 どこ。

 

 そう聞かれて、ほんの少しだけ考える。

 

 

 言える範囲で、それを言葉にするのなら。

 

 

 

 

「…………ガ(・)ラ(・)パ(・)ゴ(・)ス(・)、かな」

 

 

 

 

 それが、前世で通っていた行きつけのカードショップの名前。

 

 僕の本拠地(ホーム)だ。

 

 

「ガラパゴス?」

 

「うん。絶海の孤島(ガラパゴス)」

 

「なにそれ? …………どっかの島? の名前だっけ??」

 

 

 

「僕の古巣の名前だよ」

 

 

「「!!」」

 

 

 

 その回答に驚愕したのは、リオだけではなかった。

 

 聞き耳を立てていたランカー達も揃って、その一言へ意識を奪われる。

 

 

 

 ――――『僕の古巣』。

 

 

 

 世界三位に食らいつけるほどのファイターが技術を学び、育ってきた場所。

 

 彼らには、そうとしか聞こえなかった。

 

 

 そして、『絶海の孤島(ガラパゴス)』。

 

 

 外界から隔てられた場所という慣用句でもある。

 

 その名が意味するものまで考えれば。

 

 

 彼らがここまで積み上げてきた推測と…………あまりにも符合する。

 

 世界上位にさえ知られず、独自の理論を育て。

 世代を跨いで技術を蓄積してきた、未知のコミュニティ。

 

 

 もしも。

 

 そんな場所が本当に存在するのなら――――

 

 

 

(…………やはり)

 

 

 

 これまで伏せられていた札が、また一枚、彼らの中で、表を向いた。

 

 独学ではない。

 偶然でもない。

 

 彼には確かに、今の彼を形作った、母体(ルーツ)がある。

 

 

 

「おにーさんの古巣!?」

 

 

 

 そんな彼らの思考など知る由もなく。

 

 リオはさらに身を乗り出した。

 

 

「なにそれなにそれ! どこにあるの?

 アタシ、行ってみたい! 紹介してー!」

 

「…………うーん」

 

 

 やっぱりそうなるよなぁ。

 

 でも、今は――――

 

 

「僕には、もう行けない場所だから…………

 僕が色々話す……って形じゃダメかな?」

 

「…………もう行けない?」

 

 

 ぱちりと、リオちゃんが目を瞬かせる。

 

 

「ああ。そうなんだよ…………」

 

 

 そういえば。

 

 

 

「ユウキちゃんとは、少し話したことあったかな」

 

「え? …………え!? わ、私ですか?!」

 

「うん」

 

 

 突然話の矛先を向けられたユウキちゃんが、わたわたと目を泳がせる。

 

 けれど、そんな彼女の動揺を待つでもなく。

 僕は、そのまま話を続けた。

 

 

「『カードゲームは一人だけだと強くなれないんだから』…………って言ったこと、覚えてる?」

 

「…………あ」

 

 

 ああ。

 その反応で、覚えていてくれたのがわかった。

 

 

「僕が知ってることも、できることも。大半はそこで覚えて、磨いてきたものだよ。

 

 …………沢山、友達がいたからね」

 

 

 口にしてから。…………少しだけ、懐かしくなる。

 

 もう、随分と昔のことなのに。

 今の僕にとって、そこはもう――――

 

 

 『海を隔てた』なんて言葉では到底足りないほど、遠い場所になった。

 

 

 

 絶海の孤島(ガラパゴス)。

 

 

 …………いや。

 

 

 

 

 今となっては――――『絶界の孤島(ガラパゴス)』とでも呼ぶ方が、きっと正しい。

 

 

 

 

 もう、きっと帰ることはできないだろう。

 

 

 それでも。

 

 そこで過ごした時間まで、なくなったわけじゃない。

 

 

「楽しかったよ。思い出の場所だ」

 

「………………」

 

 

 ふと。

 

 さっきまで止まることなく飛んできていた声が、途切れていたことに気づいた。

 

 

「…………おにーさん?」

 

「ん?」

 

 

 声の主を見る。

 

 

 リオちゃんは、何かを言おうとしていて。

 

 けれど、ほんの少しだけ。

 言葉を探すように、こちらを見ていた。

 

 

(…………あー)

 

 

 ちょっと浸りすぎたかな。

 

 

 

「まあ」

 

 

 

 ――――なので。

 

 僕は、いつもの調子に戻すように、少し笑った。

 

 

「秘密がある方が魅力的なのは、女性だけの特権じゃないそうだよ?」

 

 

 冗談めかしてそう言って。

 

 少し重くしてしまった空気ごと、冗談の中へ紛らわせる。

 

 

「いつか話す気になるかもしれないからさ」

 

 

 そのいつかがいつになるのか。

 僕自身にも分からないけれど。

 

 

「今日のところは、これで許してくれない?」

 

「…………むぅ」

 

 

 むーっと露骨に、リオちゃんの頬が膨れてる。

 

 まだ、聞きたいことは山ほどある。

 そう思っているのが、誰が見ても分かる顔をしていた。

 

 

「…………うーん」

 

 

 けれど。さっきまでなら、間髪入れずに次の質問を投げてきそうなものなのに。

 

 今度は、すぐには口を開かなかった。

 

 

 

「…………ま。いっか」

 

 

 

 そう言って、名残惜しそうにしながらも引いてくれた。

 

 

「今日はここまでにしといてあげる」

 

「助かるよ」

 

「でも!」

 

 

 びしり! と、すぐさま指を突きつけられた。

 

 

「いつか話すって言ったからね!」

 

「話す気になるかもしれない、ね」

 

「そこ誤魔化さない!」

 

「あはは。わかったわかった。忘れないようにしておくよ」

 

 

 最後に笑って。

 

 その場は、それで終わった。

 

 

 僕と、リオちゃんの間では。

 

 

 

「………………」

 

 

 

 そのすぐ近くで。

 

 今しがた交わされた会話の一言一句を、別の意味で受け取っている者達がいることなど。

 

 

 僕には、知る由もなかったのだった。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 十二位の思わぬ突撃によって、これまで推測でしかなかったものに、確かな輪郭が与えられた。

 

 

 彼には、今の彼を形作った、長い積み重ねがある。

 

 そして――――その積み重ねを生んだ、明確な母体(ルーツ)がある。

 

 

 そこまでは。今しがたの言葉でほぼ確信に変わった。

 

 

「…………いや」

 

 

 だが、一つの答えが出たからこそ。

 

 それまで何気ない一言に過ぎなかったものが。

 今度は、妙に引っかかる。

 

 

「そうなると…………今度は、別の発言が気になる」

 

「なんデス?」

 

「奴は、こう言っていただろう。

 

 『僕には、もう行けない場所だから』」

 

「…………それが?」

 

 

 

 

「なぜ、もう行けない?」

 

 

 

 

 

 行かない、ではない。

 行きたくない、でもない。

 

 

 行けない(・・・・)。

 

 

 本人が、そう言ったのだ。

 

 

「…………一度外へ出た人間は、戻れない?」

 

「秘匿性を考えるなら、有り得なくはないデスね」

 

 

 一度、組織の外へ出た者を、再び内部へ戻さない。

 外へ出た時点で、以後は外部の人間として扱う。

 

 これだけ高度な技術を抱える集団なら、そうした厳格な規則が存在していても不思議ではない。

 

 

「あるいは。何か戻るための条件でもあるのか?」

 

「じょーけん?」

 

「任務。実績。資格。

 外で何かを果たすまで帰還を認めない――――そういう規則デスね」

 

 

 いくつかの可能性が並んでいく。

 

 だが、そのどれもが。一つの前提を共有していた。

 

 

「もっと単純かもしれない」

「もっと明確かもしれない」

 

「…………?」

 

 

 ――――古巣(ガラパゴス)は、今も存在している。

 

 

 誰もまだ、その前提には触れていなかった。

 

 

 

「もう――――戻(・)る(・)場(・)所(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)が(・)な(・)い(・)」

 

「もう――――帰(・)る(・)場(・)所(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)が(・)な(・)い(・)」

 

 

「………………」

 

 

 一瞬、言葉が途切れた。

 

 

 

『沢山、友達がいたからね』

 

 

『楽しかったよ』

 

 

 

 思い返せば、彼は、どちらも過去形で語っていた。

 

 

「…………もう消滅してる、ってこと?」

 

「既に技術体系(あんなの)が完成してるんだ。

 研究に区切りがついて、解散ないし休止した可能性もあるな」

 

「何かアクシデントが起きて、構成員が散り散りになった可能性もあるデス」

 

 

 誰も、すぐには否定できなかった。

 

 

「…………仮に。集団そのものが、もう存在しないとしても」

「…………仮に。組織そのものが、もう存在しないとしても」

 

「そこで育った人物まで、消えるわけじゃない」

「そこで育った技術まで、消えるわけじゃない」

 

 

「今そこにいる通り、人物は残っている」

「今語られていた通り、技術は残っている」

 

 

 あれだけの実力。

 あれだけの知識。

 

 そして、他人へ伝えられるほどに、整理された言語化能力。

 

 

「…………今までのを見る限り、本人だけでも知識を伝えるには十分そうだな」

 

「そういうことになるデスね」

 

 

 結局。…………今ある情報だけでは、どれとも断定できない。

 

 今も存在するが、何らかの事情で戻れないのか。

 それとも。帰るべき場所そのものが、既に失われているのか。

 

 

 明確になったのは、ただ一つだけ。

 

 

 かつて、今の彼を形作った何かが、確かに存在した。

 

 そこだけはもう、疑いようがなかった。

 

 

「…………ただよ」

 

「? なにー?」

 

「あれだけの技術を持った連中が、単に解散して世界中に散ったってんなら。

 それはそれで変じゃねぇか?」

 

「…………むしろ。散ったのなら、痕跡は増えるはずデスね」

 

 

 もし、そんな技術を身につけた者達が、各地へ散っているのなら。

 彼らが持つ技術もまた、一緒に世界へ散らばっているはず。

 

 

 形を変え、場所を変え――――どこかにその痕跡が残るはずだ。

 

 

 

 まして、ここにいるのは世界の頂点に立つ者達。

 

 世界各地の有力なファイター。

 新しい戦術。異常な技術体系。

 

 そうした情報が、嫌でも耳へ入ってくる立場にいる。

 

 それなのに、誰一人としてその片鱗すら知らない。

 

 

 となると――――

 

 

「世界のどこかへ散ったのなら。

 私達の誰かが、何かしらの痕跡を掴んでいてもおかしくないデス」

 

「それすら何もねぇ。

 となると、古巣そのものが消滅したって考えるより――――」

 

 

「彼の側に、帰れない理由がある」

「彼の側に、帰れない事情がある」

 

 

「…………そっちの方が、まだ自然か」

 

「なるほどー…………」

 

 

 完全に答えが出たわけではない。

 

 それでも。

 

 いくつか並んでいた可能性の中で一つだけが、少しばかり現実味を増した。

 

 

「だな。

 

 あのミサイルみたいな第一位が着弾して、丸ごと消し飛ばしたとかならまだしも」

 

 

 

「「「「「……………………」」」」」

 

 

 

 冗談めかして放たれた言葉だった。

 

 

 だが、あの第一位(覇手)なら、本当にやりかねない。

 

 そう思えてしまうのが、まったく笑えなかった。

 

 

「…………ちょっと今の無しにしてくれ」

 

「デスね…………」

 

 

 ともあれ、彼の古巣――――《ガラパゴス》が、今も存在しているのか。

 

 そして。なぜ彼が、そこへ戻れないのか。

 

 

 今ある情報だけではこれ以上、答えは出せない。

 

 ならば一度。そこに関しては切り上げてしまえばいい。

 

 

 

 ――――だが。

 

 

 考えるべきことが、なくなったわけではなかった。

 

 むしろ。根源(ルーツ)の存在が確かになったからこそ、新たに浮かび上がってくる違和感がある。

 

 

「…………デスがもう一つ、まだ説明のついていないことがあるデス」

 

「…………ああ」

 

 

 答えが見えかけたからこそ。

 逆に浮かび上がった、新しい疑問。

 

 

「何代にも渡って、技術を積み上げてきたとしても――――

 

 一(・)つ(・)の(・)集団(グループ)だ(・)け(・)で(・)、あそこまで広い分野を網羅できるもんなのか? ってことだよな」

 

 

「…………それも、そうだねー」

 

 

 構築。実戦。理論。

 

 そして今まで彼が何気なく口にしてきた、数え切れないほどの細かな技術。

 

 

 一つ一つ掘り下げるだけでも、人の一生を費やしかねないクオリティだ。

 

 

「これほどの蓄積を生むには、相当な母数が必要になるデス」

 

「何人。何十人。

 

 …………いや。

 下手すりゃ、何百人って話になるか」

 

「どれだけ人間を集めれば――――これほど広範な技術を、実戦で通用する水準まで磨き上げられるんデスかね?」

 

 

 彼は言っていた。

 

 

『僕が知ってることも、できることも。大半はそこで覚えて、磨いてきたものだよ』

 

 

 覚えてそれでおしまいではない。

 更に鋭く磨き上げる作業が残っている。

 

 

「教わった人も…………ただ、その技術を使うだけじゃないってこと?」

 

「使い、試し、問題を見つける」

「磨き、検証し、問題を直す」

 

 

「「そして――――次へと渡す」」

 

 

 十人が使えば、十人分の試行が生まれる。

 百人が使えば、百人分。

 

 使った結果。試した結果。直した結果。

 その全てを、次の人間の足場へ変えていく。

 

 

 ならばこの方式の強さは、積み重ねた年月だけでは決まらない。

 そこへ参加した、人間の数にも左右される。

 

 

「積み重ねた年月だけではない」

「積み重ねた人数だけではない」

 

「その両方があってこそ」

「その双方があってこそ」

 

「一組織だとしても…………尋常な規模じゃ済まねぇな」

 

「…………そこを踏まえれば、問題は、人数だけでもなくなりマス」

 

「?」

 

 

 構築も実戦も理論も。

 

 必要とされる専門性が、あまりにも散らばりすぎている。

 

 

「仮にそれだけの人数を抱えていたとしても。

 一つの部門で、全てを賄っているとは考えづらいデス」

 

「じゃあ…………でっかい組織の中に、専門部門がいっぱいある?」

 

「構築専門。実戦専門。理論専門…………って感じか」

 

 

 それなら一応は説明できる。

 

 一つの巨大組織があって。

 

 その内部に。

 構築を研究する部門。

 実戦を磨く部門。

 理論を積み上げる部門。

 

 それぞれの成果を共有する仕組みがあればいいのだ。

 

 

「…………しかしそれは、一つの暗黙の前提で成り立っている」

「…………しかしそれは、一つの無意識の前提で成り立っている」

 

「どういうことだ?」

 

 

「「ガラパゴスを――――一(・)つ(・)の(・)組(・)織(・)だと考えていること」」

 

 

「えっとー…………どーいう意味………………?」

 

 

「「そもそも、ガラパゴスとは、島一つを指す名称じゃない」」

 

 

 その言葉に。

 

 何人かが、同時に目を瞬いた。

 

 

「いくつもの島が集まっている、群島を指す」

「いくつもの島から成り立っている、群島を指す」

 

 

「…………!」

 

 一つの名称。一つの古巣。

 

 そこから、彼らはいつの間にか、一つの巨大な組織を思い描いていた。

 

 

「待て。…………名前だけを根拠にするには、飛躍しすぎじゃねぇか?」

 

 

「飛躍しているのは百も承知」

「憶測であるのは百も承知」

 

 

 対になる声が、間を置かず続く。

 

「だが、一つの組織だけでは」

「だが、複数の組織でなければ」

 

「これだけ広い専門性を賄うには、無理がある」

「これだけ広い専門性を備えるには、無茶が過ぎる」

 

 

「なら…………一つの巨大組織に、いくつもの部門があるんじゃない。

 別々の集団そのものが、互いに連なっている。

 

 そう考えた方が筋は通る…………って訳か」

 

 

「…………じゃあ、それって」

 

 

 その先を促すように。

 ぽつりと、声が落ちる。

 

 

 一つ一つは、別々の島。

 それぞれが、異なる分野を育てる、異なる組織。

 

 

 もしそれらが、互いの成果を共有し合っているのだとしたら――――

 

 

 

「いくつもの島が連なって」

「いくつもの集団が連なって」

 

「「一つの群(・)島(・)を成す」」

 

 

「そして、その群島全体をつなぐ共(・)通(・)の(・)名(・)称(・)が――――ガラパゴス。

 

 …………そういうことデスか?」

 

 

 誰も、すぐには否定できなかった。

 

 むしろそう考えた方が――――奇妙なほど辻褄が合う。

 

 

 一つの組織ではない。それぞれが専門も役割も思想も違う。

 地続きですらない。独立した、別々の島。

 

 

 けれど。同じ海に浮かび、互いの成果を提供し合っているとすれば。

 

 

「…………一つの組織の名前じゃなくてー、いくつもの組織をまとめて呼ぶ名前ってこと??」

 

「そう考えれば、専門性がここまで散らばっていることにも説明はつくデス」

 

「…………」

 

 

 だが。

 

 

「それだけじゃ、まだ足りねぇな」

 

「「…………何?」」

 

 

 複数の組織が、それぞれ異なる分野を担っている。

 

 それならば。

 あれほど広い専門性を持つ理由には、説明がつく。

 

 だが。

 

 広(・)さ(・)を説明できたことと。

 深(・)さ(・)を説明できたことは、同じではない。

 

 

「情報交換は必須だが…………ただ情報を交換しているだけで、ここまでの体系になるか?」

 

 

 構築で生まれた理論が、実戦へ渡る。

 実戦で見つかった問題が、構築へ戻る。

 

 そこで修正されたものが、また別の誰かへ渡り。

 使われ、試され。さらに磨かれていく。

 

 それが、一度や二度ではない。

 何代にも渡って、繰り返されている。

 

 

「一時的に成果を提供するだけではなく。

 互いの試行結果を継続的に、互いの技術へ還元している…………ということデスか」

 

「組織の垣根を越えて、な」

 

 

 それが偶発的な交流ではなく。

 

 技術を”次へ”渡すための、恒常的な仕組みとして存在しているのなら。

 それはもう――――ただの情報交換網という言葉では足りない。

 

 

 そして、ここまで来て。

 

 二人の声は。ほとんど一つになり始めていた。

 

 

「一つの組織ではない」

「組織は一つではない」

 

「複数の組織が」

「複数の集団が」

 

「互いに結びつき」

「互いに支え合い」

 

「人物を成長させ続ける」

「技術を発展させ続ける」

 

 

 

「「言うなれば――――《連盟》」」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 ぞくり。

 

 空気が、また一段冷えた。

 

 

 

 もしも、そんなものが――――本当に存在するのなら。

 

 茂札フツオという、一人の少年の背後にあるもの。

 

 

 その規模は…………彼らが最初に想像していたものより、遥かに大きい。

 

 

 

 だが、そこまで辿り着いたからこそ。

 

 今度は、残った一つの疑問が、どうしても無視できなくなる。

 

 

 

 

 ――――な(・)ぜ(・)?

 

 

 

 

 なぜ、それほど巨大な仕組みを作ってまで。

 

 世代を跨ぎ。組織の垣根すら越えて。

 

 

 

 技術をひたすらに、積み上げ続ける必要がある?

 

 

 








「空を覆うほど枝葉を広げた大樹ならば。

 その足元――――地の底には。
 それに見合うだけの根が、広がっているはずだ。

 巨躯を支える根が、木陰に収まる訳もない。


 ただの影ならば、星明かりが払うだろう。


 だが、大樹が根を張る大地もまた、一つの星であるのなら。

 星が落とす影には、別の星明かりも及ばず尽きる」


     ――――〈大樹の影〉



――――――――――




 ランカー達が推測し、ここまで警戒する連盟《ガラパゴス》。
 一体どんな怪物コミュニティなんだ…………!?


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