OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた   作:檻@102768

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エピローグ14 星霜の巨人は、星に届く

 

 

 

 複数の組織が連盟を組み、技術を磨き上げ続けている。

 

 その仮説に対して浮かぶ、当然の疑問。

 

 

 

「ほんと…………なんでなんだろうな?」

 

「エエ。これだけの技術を共有する連盟など――――」

 

「そ(・)っ(・)ち(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)ん(・)だ(・)よ(・)」

 

 

 途中でその言葉を切った。

 

 連盟の有無ではない。

 存在するという推測が正しいとして、なお残る疑問。

 

 

「気になってるのは――――な(・)ん(・)で(・)共(・)有(・)で(・)き(・)る(・)の(・)か(・)、だ」

 

 

 技術とは力だ。

 

 優れた構築理論。優れた実戦技術。

 誰にも知られていない、独自の知識。

 

 ましてやそれが、自分達で時間を掛けて開発し積み上げたものなら。…………本来、外へ渡す理由などない。

 

 

「組織が違うなら、普通は隠す。

 よそにいくらカネを出されたところで、虎の子まで渡すか?」

 

「確かに…………考えるべきはそちらデスね」

 

 

 全員が手を取り合えば、より大きな成果を得られる。

 

 ――――そんな理屈で、人も組織も国も争わなくなるのなら。

 とっくの昔に世界から戦争など消えている。

 

 

「組んでいたとしても。…………相手には出させておいて、自分達は本当に重要なものを伏せる。

 普通はそうなるデショウね」

 

「ああ。当然、相手も同じことを考える……と『考える』のまでが普通だな」

 

 

 複数の組織が、それぞれの虎の子を互いへ差し出すというのは、あまりに現実味に欠ける。

 

 出しても構わない。知られても構わない。

 互いにその程度の技術だけを持ち寄る。それが現実的なライン。

 

 

「そうして出来上がるのは…………結局、二級品止まり」

「そうして出来上がるのは…………結局、半端物止まり」

 

「それが常識的に関の山だな」

 

 

 

 

 

「…………でもさー? そんなトンデモ理論を、ずーっとしゃべってる人がそこにいるよー?」

 

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「そういえばリオちゃん。

 昔、マナカーブの話したの、今でも覚えてる?」

 

「もち覚えてる! デッキ組む時ちゃんと計算してるってー!」

 

 

「じゃあ『両面カードの場合のマナカーブの計算方法』も説明しとこっか」

 

 

 両面カードについて一通り説明したところだし。

 ならこっちも今のうちに語っておいたほうが、両面カード採用でデッキ組む時やりやすいだろう。

 

 

「あー? …………あー! そっかー!

 

 両面あるってことは普通のカードと計算方法違うんだ!?

 言われてみればどういう計算するのかぜんっぜんわかんないー!」

 

 

「素直で大変によろしい。こっちもちゃんと計算式あるからさ。

 

 まず、メインで使う向きを決めてから――――」

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 また講義が始まっていた。

 今度は『両面カードを組み込んだ場合のマナカーブ計算』。

 

 マナカーブというのは初耳だが、どう考えても――――

 

 

「…………どう考えても、あんなライトに語るような内容じゃないよな」

 

「…………彼個人の気質があ(・)あ(・)な可能性もありますケドね」

 

 

 あれほど専門的な知識すら、彼にとっては秘匿するほどのものではないらしい。

 

 それが旧知の相手だからなのか。

 それとも――――更に底知れない理論を他にも持っているからなのかは知れないが。

 

 

「組織が閉鎖的な場所にあるだけで、中の交流自体は活発とかも考えられる、か?

 

 それでも、出しても構わない程度の技術交換で、あ(・)そ(・)こ(・)ま(・)で(・)行(・)け(・)る(・)とはとても思えないけどよ」

 

「なら。互いに相当深いところまで開示しているはずデスね」

 

 

「「同時に――――」」

 

 

 双子が。

 揃って僅かに、目を細める。

 

 

「別々の研究を重ねる者達を、同じ方向へまとめ上げる《何か》があるのも確か」

「別々の成果を目指す者達を、同じ方向へまとめ上げる《何か》があるのも確か」

 

 

 全組織が持てる全てを持ち寄れば、一組織では到底作れない完成形へ届く。

 

 その成果(けっか)自体はもう…………一人の男が証明している。

 

 

 それでもなお。それに現実味を感じられないのは…………

 

 互いに手札の全てを晒し合う。

 その途方もないハードルを超えるというのが、現実的ではないからだった。

 

 

 だが実際に、その集大成であろう男を見るに、それを現実のものにする程の”象徴(シンボル)”があったのは間違いない。

 

 

 

「ありえる旗印は…………連盟の首魁のカリスマ?」

「ありえる御旗は…………連盟の旗手のカリスマ?」

 

「研究が明らかに一世代で完結しない規模なのデスよ?

 世代をまたいでいるのだから望み薄デしょう」

 

「共(・)鳴(・)っ(・)て(・)才(・)能(・)に(・)依(・)存(・)し(・)な(・)い(・)強(・)さ(・)を(・)追(・)求(・)す(・)る(・)組(・)織(・)が(・)、ト(・)ッ(・)プ(・)に(・)カ(・)リ(・)ス(・)マ(・)と(・)い(・)う(・)才(・)能(・)を(・)要(・)求(・)す(・)る(・)…………ってのもおかしな話だ」

 

「逆に、重ねた年代が個人ではなく、トップの席に権威をもたらしている可能性もありマスがね」

 

「じゃあさー。みんなでかからないと勝てないくらい強い敵でもいるとか?」

 

「共通意識を持てればいいのなら、敵である必要はないデス。

 

 もっと単純に――――目標(ヴィジョン)では?」

 

 

 そう。彼の最大の特徴。

 

 

 それは決して圧倒的な実力ではなく――――『共鳴使いでない』ことだった。

 

 

 彼のこれまでの発言で、自分のテクニックを共鳴の代用品ではないと認識していることは明白。

 

 そして今。共鳴に頼らずとも、世界最高峰へ到達できる。

 もう一つの完成された体系なのだと、証明できている。

 

 

 だとすれば。

 

 彼と異なる体系で、世界最高峰に君臨している、目標(ヴィジョン)たり得る存在と言えば――――

 

 

 

 

「――――十二聖座(ウチら)とか?」

 

 

 

 

「「「「………………!!」」」」

 

 

 

 それはまるで、遥か頭上。

 

 宙(そら)に瞬く星へ向かって、地上から手を伸ばし続けるような話だった。

 

 あまりにも遠い。

 あまりにも、荒唐無稽。

 

 

 そんなものは妄想だと、切り捨ててしまえばいい。

 

 

 

 ――――目の前に。

 

 

 その妄想を…………否定しきれなくする男さえいなければ。

 

 

「複数の組織が…………単独では届かない世界級(トップランカー)へ到達するために」

 

「組織の垣根を越えて、互いの技術を共有した結果が、彼…………デスか」

 

 

 だがそう考えれば。辻褄が合ってしまう。

 

 

 そして――――その集大成たる彼の存在そのものが、突破口を開いたことを証明していた。

 

 

 これまでは共鳴使いや、それに匹敵する天才――――生まれ持った力を持つ者達が、ほぼ独占してきた…………百命の頂(いただき)、十二聖座。

 

 

 だが、彼は…………生まれ持った才能に頼らずとも。

 

 論理と技術の積み重ねだけで、そこへ届き得るのだと証明している。

 

 

 

 だって、彼は天才ではない。

 

 

 

 才能という再現が難しいものに頼らず。

 

 論理と技術という、誰(・)に(・)で(・)も(・)使(・)え(・)る(・)も(・)の(・)で、ここまで食らいついてきたのだから。

 

 

 

 ――――そこで。

 

 

 

 ふと引っ掛かった。

 

 

 一度そこへ意識が向けば…………自分達が議論を続けていた中、ごく当たり前の前提としてあったもの。

 その前提のもたらす意味が、違って見え始めることに気づく。

 

 

 

 

 共鳴とは特別な才能であり適性。

 

 

 対して…………彼は論理と技術という、特別ではないものを武器にした。

 

 

 

 

「…………待て。待ってくれ………………!」

 

 

 その言葉の意味が、今までとはまるで違う角度から、予期せぬ形で噛み合った。

 

 

「共通規格(ベーシックスキル)って、誰(・)で(・)も(・)使(・)え(・)る(・)んだよな?

 

 …………だとしたら、とんでもねえことになるぞ」

 

「そんなにヤバいの? 強いっていっても結局個人でしょー?」

 

 

 

「気(・)に(・)な(・)っ(・)た(・)の(・)は(・)、(・)そ(・)っ(・)ち(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)」

 

 

 

「?」

 

 

 一拍置いて。

 

 

 

「再(・)現(・)性(・)だ(・)」

 

 

 

 完成したものが一人いる。

 

 だがそれは決して――――たった一人しか作れないという意味ではない。

 

 

「もし。あいつ一人が、突然変異みたいに生まれた怪物(てんさい)なら――――まだいい」

 

 

 一代限り。再現不能。

 同じ天才を、もう一人用意することは出来ない。

 

 それなら…………どれほど強かろうと、その一人のファイターについてだけ考えればいい。

 

 

 実例はある。当代の第一位(覇手)と第二位(魔王)がまさにそういった存在だ。

 

 

「だが。今まで話してきた仮説が当たっているなら違う」

 

 

 巨人の肩に乗る、という比喩がある。

 

 自分一人では見られない高さの景色でも、先人達が積み上げたものの上に立てば届くという意味。

 先人が積み上げた技術を、次の人間が受け取り、そこからさらに先へ進める。

 

 

 それを大規模に、何世代にも渡って。

 幾星霜を重ね、積み上げ続けた…………その結果。

 

 

「組織が持っている技術を受け継いで、あそこまで育ったんだとしたら――――」

 

 

 星にも手が届く高みに上り詰めた、一人目がいる。

 

 なら――――――

 

 

 

「今となっては…………二(・)人(・)目(・)を(・)作(・)れ(・)な(・)い(・)理(・)由(・)が(・)な(・)い(・)と、そう言いたいのデスか!?」

 

 

 

 『誰でも使える』。――――彼が口にしていたその言葉。

 

 

 それが今。

 

 別の意味を持って、彼らへ突き刺さっていた。

 

 

「「そ、れは…………!」」

 

 

 その言葉が、腑に落ちた瞬間。

 先ほどまで幾分かは残っていた、好奇の色が消し飛んだ。

 

 これはもう…………正体不明の少年がどこからか現れたのかというだけの話ではない。

 

 

 理屈通りなら、確かに彼は天才ではないし、天才である必要もない。

 

 

 いやむしろ――――天(・)才(・)で(・)あ(・)っ(・)て(・)は(・)困(・)る(・)だ(・)ろ(・)う(・)。

 

 誰にも真似できない才能ありきでは、次へ繋がらなくなるのだから。

 

 

 しかし、次へと繋がる道で、こ(・)こ(・)までたどり着いたというのなら――――

 

 

「最悪の場合――――彼と同格の者が、これからは次々と現れるという事!?」

「最悪の場合――――彼と同等の者が、これからは続々と現れるという事!?」

 

 

「でもー…………育てるのにすっごい時間かかるんじゃないの?

 横で聞いてるだけで覚えられる中身に思えないよー?」

 

「それでも、十二聖座(われわれ)級の才能の持ち主を探して回って育て上げるより、遥かにスマートに違いないデスよ…………!」

 

 

 特別な才能を要求しないのだから、候補になり得る人間の裾野は、桁違いに広い。

 

 

 今、果たしてどれだけいるのか。

 

 そして、これからどれだけのペースで増えていくのか。

 

 

 既に完成品はあるのだ。

 これまで生まれ持った才能に、大きく左右されてきたトップカテゴリ。

 

 その領域へ、ファイターの才能を問わず押し上げるための育成ドクトリンが、既に確立されているのだとしたら。

 

 

 二人目三人目が既にいても、何もおかしくはない。

 

 

 

 

 

 トップレベルへ至る道が、『優れた原石として生まれた者だけに開かれたもの』ではなく、『磨き上げれば辿り着けるもの』へ変わったのなら。

 

 選ばれた者だけが頂点へ届く。

 そんな、これまでの前提そのものが崩れれば…………世界のパワーバランスが、丸ごとひっくり返りかねない。

 

 

 

 

 ――――生まれ持った才能で、世界の頂点が決まる時代。

 

 

 

 

 どこか遠くで、その終焉を告げる鐘の音が、鳴ったような錯覚を抱いた。

 

 

 







「悪魔が人を暴走させるのではない。
 その加護を過信した人間が、自らの意思で暴走するのだ。

 そして意に沿わぬ結末へ辿り着いた時。
 誰もが口を揃えてこう言う。


 ――――ああ、私は悪魔に惑わされたのだと」


     ――――〈ネヴァー・エンド〉別イラスト版



――――――――――




 止まらないランカー達の推測…………!
 なお真実。



 前話への感想で、頂いた感想が500件を超えました!

 ここまでたくさんの感想をいただけるとは、書き始めた頃はとても想像できませんでした。
 書いている私も、皆様の感想をいつも楽しく読ませていただいています。

 考察回では予想外の反応に思わず笑ってしまったりしてますね。
 感想通知が来るたびに「ああ、ちゃんと読んでもらえてるんだなぁ」と実感できて、モチベが大幅に上がっております!

 改めて、読んでくださっている皆様に感謝を。
 完結までの大筋はできているので、どうか最後までお付き合い頂ければ幸いです!


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