OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた 作:檻@102768
昨日から二日続けての投稿ですー!
なので、昨日の分を未読の方はそちらをお先にどうぞ!
「…………なあ」
「何デス?」
「さっきあっちの方で、本人を無理に探ったら、あの“セイテン”と
「…………エエ」
短い返事。
だが、それだけで十分だった。
何を言いたいのかは、もう伝わっている。
十二聖座でも上位に君臨した古強者。
十二聖座へ最速で駆け上がった麒麟児。
その二人をみすみす敵に回しかねない軽挙妄動は慎む。
それが、推測を始める前に彼らが共有していた大前提だった。
だが、今となっては――――
「
「…………」
「…………」
「…………確かに、ロウド師範と地柩セトの二人で済む方が、まだ遥かに見通しが立つデスね」
フツオ自身が、既に十二聖座上位へ食い込み得る領域にいる。
そして何より。
先ほどまでの推測が正しいのなら――――それは、
二人目。三人目。
同じ技術体系を受け継いだ人間が、これから現れても何ら不思議ではない。
仮にもう一人、同格が敵として現れれば。
ロウドとセトの二人を敵に回す危険とすら天秤に掛けられる。
さらにもう一人増えれば――――天秤は決定的に傾く。
それを思えば、『迂闊に探るな』という牽制だけで引き下がるわけにはいかない。
敵対を避けるにも。交渉するにも。万一に備えるにも。
相手が何者か分からなければ、どうやっても後手を引く。
次の一人が現れてから、正体を探し始めるのでは手遅れになる。
不用意に踏み込むことは控えても――――《ガラパゴス》が存在し得るのは何処なのか。
その輪郭だけは、掴んでおく必要があった。
「では仮に。これほどの技術体系を、秘匿しつつ研鑽できる勢力が存在するとして」
「では仮に。これほどの技術体系を、秘密にしつつ蓄積できる勢力が存在するとして」
「…………どこから当たる?」
「何を根拠に、候補を絞るデス?」
これまでは、存在するかどうかすら分からなかったものへ輪郭を与える作業だった。
だが今は違う。
彼らの中では既に、《ガラパゴス》と呼ばれる何かが存在するという仮説は、かなりの重みを持ち始めている。
ならば次は…………その正体へ、具体的な名を当てはめる番だった。
「三大メガコーポみたいな
これなら事実上、企業群そのものが一つの連盟に近い。
企業同士ならば、本来は技術を囲い込む。だが同じグループに属するなら話は別だ。
互いに成果を持ち寄ることで、最終的にグループ全体の利益が増すのなら――――虎の子を共有する動機としては、十分に成立する。
「他にはぁ…………《クーヴァディス》とかぁ?」
「Lifeの国連管理機関か」
「うん。世界中のカード情報が集まるところでしょー?」
Lifeにまつわる情報を一元的に管理する、国連管理機関――――《クーヴァディス》。
集積する情報があまりにも膨大だからこそ、外部からではその全貌を追いきれない。
隠されてはいなくとも、事実上、秘匿されているに等しい情報もあるだろう。
世界中から情報が集まるその内部に、彼らしか把握していない技術や傾向が蓄積されていても不思議ではない。
「後は……………………表側じゃない組織の産物…………って線も残ってるな」
《
世界の表側に立つ十二聖座だからといって、裏側まで知り尽くしているわけではない。
長く地下へ潜り続けてきた組織ならば、表には決して出ない人材や技術の流れを、独自に蓄積しているだろう。
規模。情報。人員。
そして、世界上位の目からすら全貌を隠せるだけの閉鎖性。
方向性こそ違えど…………条件に当てはまり得る勢力は、いくつか存在した。
そうしてどれが最も現実的か、検証しようとした矢先。
「フツオくん。ちょっといいかな?」
――――少し離れた場所で放たれた声に、何人かが揃って顔を向けた。
「ん? …………どうかしました? セト店長」
リオちゃん達との話が一段落したところで、セト店長がこちらへ歩いてくる。
ただし、一人ではなかった。
その傍らには、白に近い色彩を纏った一人の女性がいる。
「その、話し中にごめんね?」
「大丈夫ですよ。ちょうど区切りも良かったですし。…………どうしたんですか?」
「君と少し話したいって頼まれてさ。
こっち、ボクが箱舟教会にいた頃の同期で――――」
促され、彼女は静かに一礼した。
「先のエキシビションマッチでも名乗りましたが…………改めて。
「ああ…………」
その名前なら、もちろん知っている。
さっき戦ったし、その前にもカド市長から聞いたことがあった。
店長の元ライバルで、現世界第五位。
「じゃあこっちも改めて。茂札フツオです。空葬さん…………で、いいですか?」
「可能ならば、”
「わかりました。よろしくお願いします。ノアさん」
そして――――現在、《
その光景を見て。
「…………あ」
組織の検討をしていた一人が、小さく声を漏らした。
「…………あー、そういやぁ……………………」
「…………こっちも有り得そうでシタね」
候補なら、既にいくつも浮かんでいた。
巨大企業。国際機関。反社会勢力。
だというのに。
あまりにも巨大で。あまりにも有名で。
世界のどこにでもその名が届いているがゆえに。
かえって、一つの大勢力が思考から抜け落ちていた。
――――箱舟教会。
一国に収まらず、世界各地へ支部を持つ巨大勢力。
長い歴史。膨大な人員。独自の教育体系。
複数の土地へ拠点を分散させ、それぞれで異なる研究を行い、成果を共有することも可能だろう。
まるで――――
「…………支部ごとにバラバラでもぉ。結局、ぜーんぶ《箱舟教会》なんだよねぇ?」
「エエ。わざわざ未知の連盟を一つ仮定せずとも、最初からそれに近い構造を持っているデス」
「…………候補としては、むしろ真っ先に出てきてもおかしくなかった側か」
そして箱舟教会には、《聖地》や《聖域》と呼ばれる場所まで存在する。
外部の人間が容易には立ち入れない閉鎖空間。
世界上位の人間であろうと、内部のすべてを把握しているとはとても言えない巨大な組織。
「…………《
「…………」
条件だけなら、奇妙なほど噛み合っていた。
だが。
「…………それは、我らへの侮辱ですか?」
「…………それは、我らへの冒涜ですか?」
「え?」
空気が変わった。
箱舟教会に属する二人が、明確に不快感を露わにする。
「「よりにもよって――
「いや。まだそうだって決めたわけじゃ――」
「共鳴を尊ぶ箱舟教会が」
「共鳴を仰ぐ箱舟教会が」
「共鳴を失った者をそのまま捨て置き、戦力として仕立て上げると?」
「共鳴を奪われた者をそのまま捨て置き、戦力として仕立て上げると?」
「「ありえません」」
「…………」
「…………」
その反論は、あまりにも真っ当だった。
箱舟教会は、共鳴を尊ぶ。周知の事実だ。
共鳴を失った者を救おうともせず。
その欠落を前提に、非共鳴の技術を磨かせる。
確かにそれは、彼女らの思想からすればあまりにも不自然だ。
しばし、言葉が途切れ――――
(…………待て)
(どうしまシタ?)
(そもそも箱舟教会だって、実際は一枚岩でもないだろ?)
(…………!)
世界各地に無数の支部を持ち。
聖地や聖域すら複数抱える、巨大な宗教組織。
先ほど、《群島》のような構造だと考えたばかりだ。
ならばその全てが――――寸分違わぬ思想で動いていると考える方が不自然だった。
(…………支部ごとの方針差。派閥。教義の解釈違い。
その程度なら、あって当然デしょうね)
(だよな)
そして…………共鳴を尊ぶ教会だからこそ。
共鳴を失った者を救うための知識もまた、蓄積しているはずだった。
(縛り手をどうにかする部署があるなら。過去の縛り手について、一番詳しいのもそこじゃねぇか?)
(…………治療記録。症例。共鳴を失った後、彼らがどう生きたか。その辺りまで?)
(そういうことだ)
もし。解呪の見通しが立たない者へ、せめてもの救いとして。
過去の縛り手達が、共鳴なしでどう戦い、どう生き延びてきたのか。
その蓄積を渡した者がいたとしたら。
(…………教会全体ではなく。一部の人間が、独断で?)
(あり得なくはねぇだろ)
無論、許される行為ではない。
それでも――――治せない者へ、せめて生きる術を渡す。
…………そう考える人間が一人くらいいても、不思議ではなかった。
そしてその行為が、後になって問題になった。
あるいは…………別の派閥へ露見しかけた。
その結果、記録は隠され。関係者は切り離され。
当事者である彼自身もまた――――巻き込まれる形で、居場所を追われたとするのなら。
『僕には、もう行けない場所だから』
その言葉に、今度は別の形で意味が与えられる。
(…………それなら。教会が組織として“縛り手を育てた”ことにはならないデスね)
(だろ?)
むしろ教会としては、とても表へ出せないだろう。
縛り手を救済するため蓄積してきた情報が、内部の独断によって持ち出され。
挙げ句には、その技術を受け取った人間が…………今や十二聖座へ食い込み得るほどの実力者になっているなどと。
「…………」
もし本当にそんな経緯なら――――失態という言葉では、生温い。
教会所属の人間ですら知らされていない方が、むしろ自然だった。
(…………否定材料の筈が、逆に説明ついちまったぞ)
(こじつければ、何でも合うデス)
(自分にも言い聞かせてるだろ)
(…………少しハ)
では。
そんな事情まで把握している可能性があるとすれば――――
(知っているとしたら。相応の立場にいる人間だけデしょうね)
(…………たとえば)
二人の視線が、ゆっくりと動く。
その先にいるのは。
箱舟教会最強。
そして、教会内部でも相応の立場にある世界第五位。
“
彼女であれば知っていても、何の不思議もない。
「…………にしても、タイミング良すぎだろ…………」
「考えすぎデス。…………たぶん」
「最後ちょっと自信なくなってなぃ?」
あくまで、推測に推測を重ねただけのもの。
これで箱舟教会が関わっているとは、とても断言できない。
ただ、いくつもの候補を並べた、その矢先。
条件に奇妙なほど噛み合う一大勢力――――箱舟教会。
その中枢に近い人物が、向こうから彼へ接触してきたことは事実だった。
そして――――その第五位が次に切った一枚だけは。
その場の誰一人として、読むことができなかった。
(…………僕に何の用なんだろう。わざわざ紹介を頼んでまで)
目の前にいる第五位を見ながら、昔聞いた話を改めて思い出す。
箱舟教会にいた頃のセト店長とは同期。
八十八星座から十二聖座まで、抜きつ抜かれつ順位を上げてきた、昔からのライバル。
エキシビションマッチで第五位の名を聞いた時にも、記憶に浮かんできた情報。
ただ。
(そんな人がなんでわざわざ、僕に顔合わせを? …………まさか)
少し嫌な予感がする。
(共鳴使ってないことに、物申されるとか…………?)
相手は、よりにもよって箱舟教会最強のファイター。
共鳴を神聖視してる教会の人間から見れば…………
共鳴を使おうとしない上に、世界ランカー達を相手に、延々と非共鳴の理屈を語っている僕というのは。
…………アレ?
これ結構、ヤバい??
(いや、仕方ないだろ!? 僕、縛り手なんだから!)
使わない以前に…………今は、使えないんだし。
(…………まあ。その縛り手の方が僕には合ってるから、普通に便乗してるところはあるけどさ…………!)
そこを突かれると、流石に否定しづらい。
一体何を言われるのかと身構える僕の前で。
ノアさんは、咎めるでもなく。問い質すでもなく。
少しだけ、こちらの顔を確かめるように見つめてから。
予想とは、まったく違う言葉を口にした。
「沈黙の向こうに何があるのか。
秘された真実か。葬られた罪か。
あるいは――――本当に、何もないのか。
それでも。届かないことを承知で、そう問い続ける者達もまた。
発言も空想も、誰にも咎められぬひとつの聖域にいる」
――――〈白銀の静域〉別イラスト版
さーて、ようやく書きたかった山場の一つにこれました!
教会最強である彼女の思惑は…………!?
ちなみに、第五位のキャラデザは、『FGO』のモルガンをベースに冠と杖を金系の色違いにした感じで。
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服装は、『カルネアデス』のジェーン・ドゥのイメージです。
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面白かった、続きが気になる、と思っていただけましたら、
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なお、基本的に次話を書き上げてから感想返信をしているので、返信が来たら次の投稿も近いかも…………?
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