OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた   作:檻@102768

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エピローグ17 予定調和のその先に

 

 

 

(共鳴で手札事故をなくしても、勝敗から運そのものが消えるわけじゃない。

 ただ、別(・)の(・)場(・)所(・)へ(・)ス(・)ラ(・)イ(・)ド(・)す(・)る(・)だ(・)け(・)だ(・)。

 

 けど、これ…………共鳴使いにそのまま言って、うまく伝わるか?)

 

 

 

 んー…………まずは、『安定』って言葉から分解した方がいいな。

 

 

「ノアさんの言う、『共鳴を取り戻せば安定する』って話ですけど…………

 それが『手札が安定する』って意味なら。その通りだと思います」

 

 

 欲しい札を引く。必要な時に、必要なカードへ手を伸ばす。

 それが運に頼らずできるのだから、当然だ。

 

 

「でも、それで本当にファイトが安定するかっていうと。

 僕は、そうは思ってないです。…………いや、安定はするんですが。

 

 下(・)手(・)し(・)た(・)ら(・)悪(・)い(・)方(・)向(・)に(・)安(・)定(・)す(・)る(・)ん(・)で(・)す(・)よ(・)ね(・)」

 

「…………悪い方、ですか? 何故です?」

 

 

「テーマ次第で、カードパワーの格(・)差(・)があるからですよ」

 

 

 共鳴使いがテーマの実力を100%引き出せる。

 けど、共鳴使いだからって全員同じ強さになるわけじゃない。

 

 共鳴で、テーマから引き出せる強さを10点満点まで引き上げられたとしても。

 肝心のデッキが7点なら、70点。6点なら、60点が上限に収まる。

 

 

「さっき、バベル使いじゃない共鳴使いの上限が80点って話をしたじゃないですか。

 

 でもあれ、共鳴使いは全員80点を取れるって意味じゃないんですよ」

 

 

 トップメタであっても、単一テーマでは8点が上限(りろんち)である以上。

 Tier.2、Tier.3であれば、8点の上限からどんどんとパワーは落ちていく。

 

 共鳴使いの強さの大部分は、『適応できるテーマに巡り会えるかどうか』と、『適応したテーマ自体の強さ』に大きく左右される。

 

 

「なら、今81点を狙える非共鳴(ぼく)なら、多少下振れしても60点や70点の相手には押し負けないってことです。

 そのムラをカバーするところまで織り込み済みでデッキを組んでますから」

 

 

 そして実際。この理屈は、上位の顔ぶれを見れば分かりやすい。

 

 この世界では、大半のファイターが共鳴を使う。

 それでも、誰もが同じ場所まで登れるわけじゃない。

 

 

 差になるのは――――共(・)鳴(・)を(・)持(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)か(・)ど(・)う(・)か(・)じゃない。

 

 何(・)に(・)共(・)鳴(・)で(・)き(・)る(・)の(・)か(・)だ。

 

 

 共鳴使いだから、トップランカーになるのではない。

 

 ランカーまで登れるだけの強いテーマに、高い適性を持った共鳴使いだけが、上へ進んでいく。

 

 

 つまり。…………共(・)鳴(・)だ(・)け(・)で(・)は(・)、足(・)り(・)な(・)い(・)。

 

 

 どれだけ完璧にテーマを引き出せても。

 そのテーマ自体に、上へ届くだけの力がなければ。

 

 

 共鳴は――――そこを越えてまでは、連れていってくれない。

 

 

(まぁ、共鳴あったほうが強いって思うのは、ノアさんだったら自然かもしれないけど)

 

 

 なにせこの人が使っていたテーマは《潔白教団》。

 《未葬教典》が出るまで環境を席巻し続けたトップメタ。文句なしにTier.1だ。

 

 そのテーマと高い水準で共鳴できるからこそ、世界第五位まで辿り着けたのだろう。

 共鳴使いの理論値、80点に届いていると言われても納得だった。

 

 

(ノアさんだけじゃないけどなそれ。

 …………今日闘ったランカーって、ほぼ全員Tier.1(トップメタ)使いだったし)

 

 

 十二聖座のデッキを思い返せば、ほとんどが歴代Tier.1に名を連ねたテーマだった。

 さながら、歴代トップメタの展覧会だ。

 

 そのトップメタの出力を、非(・)共(・)鳴(・)な(・)ら(・)上(・)振(・)れ(・)と(・)呼(・)ぶ(・)よ(・)う(・)な(・)動きで、事故なく繰り出してくる。

 しかもランカー達でメタがバラけている。

 

 となれば…………共鳴使いとしてここまで勝ち進むには。

 自分もまた、トップメタ級のテーマに適応していなければ厳しいだろう。

 

 

(…………僕が今日、なんとか対応できたのも。過去に散々やり合ったことがあるからだしな)

 

 

 トップメタなんて、元の世界じゃ大勢が握る。

 対戦を重ねていれば、ブン回りの相手とぶつかることだって、一度や二度では済まない。

 

 強みも弱みも。そしてマスカンも。…………嫌でも覚える。

 

 

(昔のトップメタなら、自分でも普通に握ってた。要所くらい感覚で覚えてる)

 

 

 だから、なんとかなった。

 知らない強さを、その場で全部見切ったわけじゃない。

 

 知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)強(・)さ(・)が(・)桁(・)違(・)い(・)の(・)精(・)度(・)で(・)飛(・)ん(・)で(・)き(・)た(・)。

 

 エキシビションの大半は、そういう相手だったのだ。

 

 

 例外は…………ドローの共鳴が出来ないリオちゃん。

 あと、複合テーマでオリジナルデッキの使い手だった第四位。

 それに、トップメタ以上に強かったが、ミラー適性の関係で環境には立てなかった《未葬教典》使いの第三位くらいか。

 

 

(第四位と第三位の相手はマジで大仕事だった…………

 

 第四位のオリジナルも初見で捌くの一苦労だったけど。

 第三位の共鳴なしじゃ成立しないムーブとか、よく勝てたなぁ僕!)

 

 

 でも、ランカーじゃない人には、トップメタ適性がない人もいる。

 …………というか、そちらの方が遥かに多いだろう。

 

 Tier.2、Tier.3やそれ以下のテーマのほうが、トップメタのテーマより遥かに多いのだから。

 

 

(僕が共鳴できそうなナイトレイダーとかゴブプラとかミラーリングフェアリーとか、どれもトップメタとは言えないし。

 これで共鳴復活させれば今ほど強いかと言われたら…………まぁ、無理だな)

 

 

 …………ん? でもナイトレイダー+ゴブプラ+ミラーリングフェアリー、組んだら面白いか?

 今でも組んだり使ったりする分には、共鳴とかないままでいいし。

 

 全部カスタム性高いっていうか、カスタム前提みたいなテーマばっかだしな。

 うん。今度ちょっと試して――――

 

 

(…………いやいやいや)

 

 

 今はそういう話じゃない。悪い癖でてるぞ僕。

 

 気を取り直して、ノアさんに向き合う。

 

 

「共鳴がもたらす安定性って要するに、『手札事故を減らして、理想の動きの再現性を上げる』能力なんですよね。

 

 誤解を恐れずかなり乱暴に言えば、『めちゃくちゃブン回ってる』くらいの範囲に収まること、多いじゃないですか」

 

 

 

 ――――それでも、十分とんでもない力だけど。

 

 でもそれは非共鳴でも、運が良ければ起きる程度のことだ。

 初手が完璧。右手が光ったような必要札が連続で来る。

 

 もちろん、それを高確率で起こせるのだから破格だろう。

 

 

「でも、カードやってたら裏目引くのなんて当たり前なので。

 

 だから僕らは、裏目を引く前提で、リカバリできるよう組むんですよ」

 

 

 肩を竦める。

 

 これが仮に、第三位くらいまで行けるんだったら、話は変わる。

 

 

「もし、共鳴を極めた人間が誰でも…………とまでは言わずとも。

 僕(・)で(・)も(・)あそこまで行けるっていうなら、僕は少し考えるかもしれません」

 

 

 あれは共鳴なしじゃ無理だ。

 運でも構築でもプレイングでも、絶対に再現不可能だ。断言できる。

 

 デッキに丸ごと戻したカードの中から、毎回欲しい一枚を狙って引き直す…………なんて。

 

 

(…………あれ、多分。最初からできたわけじゃないんだろうな)

 

 

 前例のない、カウンター主体の共鳴使い。

 

 教わる相手もいない。何が正解かも分からない。

 

 

 ならせめて――――自分にできることだけは、絶対に取りこぼさないように。

 

 

 そんな風に。共鳴によるドローを、ひたすら磨いたんじゃないだろうか。

 

 磨いて。磨いて。…………あそこまで持っていった。そんな感じがする。

 

 

(…………だとしたら。やっぱり、とんでもない人だよな)

 

 

 才能が凄い。でもそれだけじゃない。

 

 その才能を、世界第三位へ届く強さにまで仕上げたのは――――彼女自身だ。

 

 

 あれが努力で到達できるラインなら、共鳴が万能でなく制限をもたらす才能と知ったうえで。

 手を伸ばすに一考に値する。

 

 テーマを、予定調和のように完璧に動かす。必要な時に、必要なカードがある。

 自分の行動に限って言えば、未来まで決まっているかのように。

 

 

 そこまで行けば…………カードゲームにおいては、ほとんど神の所業だ。

 

 

 

 しかし。いや、だからこそ。

 

 

 ドローに運が介入する余地が消えるからこそ。

 その前(・)の運の要素が顕在化する。

 

 

 

 それは、あの神域と言っていい第三位ですら逃れられない『運の要素』だ。

 

 

「テーマごとにパワー格差があって、あとはテーマ同士にも相性があります。

 ビート・コンボ・コントロールみたいなね。

 

 そして、共鳴によってドローから運の要素を、完全に取り除けるのなら――――」

 

 

 もし双方が、毎回理想通りにデッキを動かすとすれば。

 同じ状況では、同じ最善手を取るのが自然になる。

 

 ドローによる上振れも、下振れも、何一つ存在しない。…………介入する余地がない。

 

 

「その条件で、一回戦って勝てる相手には、百回やってもほとんど同じように勝てるでしょうね。

 逆に…………一回戦って勝てなかった相手には、百連敗が普通にありえる」

 

 

 そこに、手札事故という運は介入しない。

 

 しかしその先に待っているのは――――

 

 

 

「『誰とマッチングするか』の段階で、ほぼ勝敗が決まるということになります」

 

 

 

 本来なら、相性の悪い相手を引いてしまっても。

 そこからまだ、ドローというもう一段の不確定要素が残っている。

 

 相手が崩れるかもしれない。

 こちらが上振れるかもしれない。

 

 その余地まで消してしまえば。

 

 

 

 結局――――誰(・)と(・)当(・)た(・)っ(・)た(・)か(・)と(・)い(・)う(・)、も(・)っ(・)と(・)ど(・)う(・)し(・)よ(・)う(・)も(・)な(・)い(・)運(・)の(・)比(・)重(・)が(・)大(・)き(・)く(・)な(・)る(・)だ(・)け(・)だ(・)。

 

 

 

「それは安定でしょうけど…………

 勝てる相手には安定して勝てる代わりに、勝(・)て(・)な(・)い(・)相(・)手(・)に(・)は(・)安(・)定(・)し(・)て(・)勝(・)て(・)な(・)く(・)な(・)る(・)。

 

 それが共鳴を突き詰めた先の『安定』っていうのなら、別に惹かれないですね。

 

…………あまりにもロマンがない」

 

 

 ドローという運を消した結果。

 

 対戦相手。デッキ相性。

 もっと大きな…………もっと自分ではどうにもならない場所へ、勝敗を左右する運が偏る。

 

 

 それは、運の要素をなくしたのではない。

 運の居場所をひとまとめに移しただけだ。

 

 

 もちろん、裏目を引きたいわけじゃない。

 負けたいわけでもない。

 

 どんな相手にも食らいつけるように。

 少しでも事故を減らして。少しでも負け筋を潰して。

 少しでも多くの相手へ勝てるデッキを作ろうとする。

 

 そんなのは、当たり前だ。

 

 

 

(そして、それを突き詰めた極致が――――理論値のバベル使いなんだろう)

 

 

 

 全てのカードに共鳴できる。

 全てのカードを所有している。

 

 そしてその全てを――――あらゆる裏目まで把握したうえで、常に最適にプレイできるだけの実力まで備えている。

 

 

 文句なし。掛け値なしの、100点満点。

 

 

(…………憧れがないかって言われたら。そりゃ、嘘になるけど)

 

 

 そんなもの――――カードをやっている人間なら、一度くらい夢見るだろう。

 

 

 どんなカードでも使えて。

 どんな状況にも答えがあって。

 どんな相手にも、最善を返せる。

 

 

 

(でも、きっと――――憧れたままでいるくらいが、一番幸せなんだろうな)

 

 

 

 そんな確信もある。

 

 

 だって、自分と同格のバベル使い相手(ミラーマッチ)でもない限り。

 

 

 

勝(・)利(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)が(・)、予(・)定(・)調(・)和(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)ゲ(・)ー(・)ム(・)なんて。

 

 

 

 きっと何も楽しくない。

 

 

 普通の共鳴使いならまだ、誰と当たるかという運が残る。

 

 けれど、理論値のバベル使いまで行けば。ごく一部の例外(ミラーマッチ)でもない限り――――

 

 

 誰と当たるかという運すら、勝敗を揺るがせない。

 

 

 誰と当たっても。何を使われても。勝ち切るような”答え”を持っている。

 

 そんな、懸絶した理論値。

 

 

(共鳴を追い求める、その先が――――そ(・)う(・)だっていうなら)

 

 

 やっぱり、僕には合わないな。

 

 

 …………いや。

 

 僕だけじゃないか。

 

 

 僕がカードを覚えた場所では。

 勝つために、少しでも事故を減らして。少しでも負け筋を潰して。

 

 それでも最後には。

 

 どうしても揺らぐものが残っていた。

 

 

 そして多分…………みんな、それを百も承知でカードをやっていた。

 

 

 互(・)い(・)の(・)最(・)善(・)だ(・)け(・)で(・)決(・)着(・)し(・)な(・)い(・)――――最(・)後(・)の(・)最(・)後(・)に(・)、運(・)が(・)入(・)り(・)込(・)む(・)余(・)地(・)が(・)僅(・)か(・)に(・)残(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。

 

 

 そんなゲームを。

 

 

「共鳴を使わないのなら、実力で勝ってても負けることがある。僕もちょくちょく負けてます」

 

「…………そう、なのでしょうね」

 

 

「だから――――逆もあります」

 

 

 勝てそうにない相手にも勝てる。

 負けそうにない相手にも負ける。

 

 そこには、確かにドラマがある。

 

 

 最善と信じた一手でなお、裏目を引くかもしれない。

 最強と信じた構築でなお、相性不利の天敵を相手取ることになるかもしれない。

 

 

「それでも。運(・)だ(・)け(・)で(・)決(・)ま(・)る(・)わ(・)け(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)」

 

 

 構築で。プレイングで。読みで。

 運に抗える余地が残っている。

 

 

 だからこそ、熱くなれる。

 

 

 もちろん。そんな『運』まで、勝ち筋に数えるのは甘えだ。

 運で拾える一勝があるからって、最初からそれを当てにしてどうする。

 

 だから――――磨き上げる。

 事故率を下げる。負け筋を潰す。初動を増やす。腐る札を減らす。

 

 それでも、ドローの運で台無しになる危険性は常にある。

 

 初動を引かなかったら。

 メタカードが腐ったら。

 

 

 何より――――相手の方が上振れたら。

 

 全部どうにもならないことはある。当然ある。

 

 

「でも、勝ちたいなら。まず、自分でどうにかできるところを詰めるべきだ」

 

 

 それが僕の知っているカードゲームの楽しみ方、向き合い方だった。

 

 

「ブン回りじゃなくても戦える。事故っても、裏目を引いても、それでも粘れる」

 

 

 Tier.1がTier.1たる理由も、本来はそこにある。

 

 最高出力が高いだけではない。多少テーマの性能(スペック)が劣ってたところで、理想のムーブができるのなら大抵のテーマは強いのだ。

 

 しかし、Tier.1ほどの性能を備えているのなら。

 多少の裏目程度は、理想通りとはいかずとも、地力で押し切れるし、崩れても立て直せる。

 

 

(だから僕なら、その地力を土台にする)

 

 

 Tier.1単一のテーマで理想を追うんじゃなく。

 そこへ別テーマのカードを、必要な役割だけ適材適所で足していく。

 

 そうやって、理想から外れた時に拾える選択肢まで増やす。

 

 

 共鳴を使っていれば、それは難しい。テーマの枠から、外れていくことを意味するからだ。

 もし実現させるのなら――――共鳴を前提にした構築ではなくなるだろう。

 

 

 

 でも、それは………………誰(・)と(・)当(・)た(・)っ(・)た(・)か(・)だ(・)け(・)で勝敗がほとんど決まるような、無機質なゲームより――――

 

 

「僕は、そっちの方が好きですね。

 理想じゃない手札を引いて、じゃあこれでどうしようかなって考える方が。

 

 僕にはよっぽど、性に合ってます」

 

 

 

 

 勝てる相手には当たり前のように勝つ。

 負ける相手には当たり前のように負ける。

 

 百回やっても同じ結果。何のドラマもカタルシスもない。

 

 

 

 

 

「カードがもし、そんな答(・)え(・)の(・)知(・)れ(・)て(・)る(・)ゲームだったなら――――――

 

 

 僕はこんなにも、カードを好きになれなかった。…………そう思います」

 

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 …………ずいぶん長々と喋った気がする。

 

 

 

 でも。結局のところ。

 言いたかったことなんて、そんなに難しくない。

 

 共鳴が別に嫌いなわけじゃない。

 強くなりたくないわけでもない。

 

 ただ。

 

 強くなるために、好きなカードの遊び方まで手放したくない。

 

 

 それだけなのだ。

 

 

「だから、ノアさんの言う通りにすれば、今より『安定して』強くなれるのかもしれません」

 

 

 それは、多分、本当なのだろう。

 

 

「でも僕は、今みたいにカードをやるのが好きなんです。

 運で負けるかも知れないゲームを受け入れるなんて、そっちからすれば理解不能かも知れませんが」

 

 

 実力で勝っていても、運が悪くて負ける。

 

 そんな因果から、逃れることは出来ない。

 そんなことはこれから先も、いくらでも現れるだろう。

 

 

「でも――――」

 

 

 少しだけ笑う。

 

 

 

「『運も含めてのカードを楽しんでる』ってことなら。

 僕はこの世界の、誰にも負けてないつもりですよ」

 

 

「…………ええ。あなたが、なぜ共鳴を望まないのか。よく理解できました」

 

 

 

 好きなカードを使う。

 好きなデッキを組む。

 好きなように戦う。

 

 

 僕にとっては結局――――そこへ戻ってくる。

 カ(・)ー(・)ド(・)ゲ(・)ー(・)マ(・)ー(・)な(・)ん(・)て(・)、そ(・)こ(・)か(・)ら(・)カ(・)ー(・)ド(・)を(・)始(・)め(・)る(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)当(・)然(・)だ(・)が(・)。

 

 

 だから。少し重くなった空気を切り替えるつもりで。

 笑いながら、何気なく聞いた。

 

 

「まぁ、やっぱり好きなカードで遊びたい…………っていうのが一番ですけどね。

 

 ノアさんは、好きなカードで遊びたいと思わないんですか?」

 

 

 

 ――――――正直に言おう。

 

 

 軽率な一言だった。

 思慮が浅かった。

 迂闊だった。

 

 

 自分はさっきから、共鳴を拒む理由について。

 彼女の予想を外す答えばかり返していたくせに。

 

 

 

 まさか――――まさか。

 

 

 

「好(・)き(・)な(・)カ(・)ー(・)ド(・)で(・)遊(・)び(・)た(・)い(・)と(・)思(・)わ(・)な(・)い(・)の(・)か(・)」。

 

 

 

 そんな問いに――――

 

 

 

 

 

「好(・)き(・)に(・)決(・)ま(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)」と(・)は(・)違(・)う(・)答(・)え(・)が(・)返(・)っ(・)て(・)く(・)る(・)な(・)ん(・)て(・)。

 

 

 

 

 

 僕の方が。

 

 

 考えもしなかった。

 

 

 









「神に与えられた道を歩むなら、きっと迷うことはない。
 終着点へ至る扉など、一つあれば事足りる。


 それでも人は、いくつもの扉を欲しがるものだ。


 与えられた楽園だけでは終われなかった、原初(はじまり)の二人のように」



     ――――〈閉ざされる未来への扉〉 プロモ版


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