OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた 作:檻@102768
スルトは、動かない。
召喚したターンは動けない。だがそれでも十分に圧倒的、威圧的だった。
ただそこに在るだけで、盤面の全てを支配する。
灼ける熱。押し潰すような質量。
それらが場を覆い尽くしているにもかかわらず――
「此方のターン……」
彼女は、一切それに触れなかった。
「
カードを起こし、手札を引く。
色彩を置き、マナを生み出す。
淡々と、次の手順へ移る。
まるで。
そこにある巨人の存在の強大さなど、計算のうちとでも言うかのように。
「色彩から、2コストを生成。クリーチャーを召喚します」
カードが、静かに置かれた。
盤面の中央。
巨大なスルトの影の中に、収まるように。
そして、告げる。
宙空に、紫電が走った。
薄く滲む雲が卓上に広がり、そこから幾多の鎖が這い出す。
絡み合い、重なり合い、中央に――ブォン、と低く唸る音。
六芒星が灯る。
それは、巨大ではなかった。
むしろ、あまりにも小さい。
鎖に絡め取られた、人型の影。
角も翼もない。ただ、未完成の輪郭だけがそこにある。
だが。
場に出た瞬間、空気の温度が変わった。
スルトの出現した時の、呼吸で肺の奥まで焼けそうな熱量。
巨躯による圧迫感。それとは全く違う。
重くなるのではない。
――――――凍る。
呼び出されたクリーチャーのコストは、僅かに2。
スタック1/1。
あまりに軽い。
あまりに小さい。
〈スルト〉の前では、塵芥に等しい。
だが、そのカード枠の下に記された二文が、盤面を支配する。
(
「確認しておきます。……効果は、ご存知ですか?」
「ええ、存じ上げてます」
「それは結構。ですが、改めて言わせて頂きましょう――――――」
それは、世にも稀なルール介入型クリーチャー。そして耐性持ち。
『
――――――ただいるだけで、
相手からは勝利を奪い、自分からは敗北を奪う。ああなんて一方的。
だがそれも当然だ。――――悪魔の天秤は古今東西、不平等だと決まっている。
―――――《縛なるもの
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