OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた   作:檻@102768

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8 水面に映るは二度目の月

 

 

 

 コンボとは、要所さえ潰せば片手落ちになるもの。

 

 勝利が形になる、その直前。

 そこに差し込むべき一枚を見極め、潰し続ければいい。

 

 

 ――――そんな見通しは、楽観が過ぎたのだと。嫌でも思い知らされた。

 

 

 

 

 ブラフではない。

 そんな生易しいものではない。

 

 

 通しても即死はしない。

 けれど、通せば次の受けが死ぬ。

 

 それは本命ではないまま、本命に限りなく近い鋭さを持った脅威だ。

 

 

 相性と手数でこちらに傾いていた天秤が、凄まじい速度で押し返され、水平に近づいていく錯覚が止まらなかった。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「〈終焉の巨人 スルト〉で〈縛なるもの 終焉未達体(ネヴァー・エンド)〉を攻撃」

 

 

 盤面の中央で、終焉の巨人が身を起こす。

 

 残り時間を容赦なく削るその拳を、彼は惜しげもなく叩き込む。

 敗北を拒む悪魔を消し飛ばしてから、彼は次の勝ち筋へ手を伸ばす。

 

 

「続けて、メイン2。〈灰燼は天蓋へ舞う〉をプレイ。通れば焼き切ります」

 

 

「対応します。〈白銀の静域(ダメージメタ)〉をプレイ。此方は次のターンまでダメージを受けません」

 

 

 当然の如く、コンボを止めます。幾度となく繰り返した攻防。

 

 

(〈ネヴァー・エンド〉が破壊された今、妨害でも対処できましたが……

 今の(・・)攻め方で、妨害を切るのは…………!)

 

 

 

 

 

「〈白銀の静域〉に対応します。…………手札から、〈揺月の水面鏡〉をプレイ!」

 

 

「!」

 

 

 

 

 

 ――――ここまで彼は、ひたすらに対応には応手せず、次のコンボで畳み掛けてきました。

 

 それがここに来て、ついに新手。対応に対応を仕掛ける(・・・・・・・・・・)というコントロールのムーブ。

 

 

 プレイされたのは…………スタック上の呪文を対象にするコピーカード(・・・・・・)

 

 

 今までの九戦でも見せていた、オドが十分に溜まってきた中盤以降に切れ味を発揮する、彼の隠し玉。

 

 コンボパーツ自体の代用に加え、妨害に対して撃てば、擬似的な妨害としても機能する汎用性。

 そして、更に備わるもう一つの能力(・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 それをここで使うということは…………

 

 

「対象は…………〈灰燼は天蓋へ舞う〉! 通りますか!」

 

「!」

 

 

 プレイした〈白銀の静域(ダメージメタ)〉を解決する前に再び焼き払う腹積もり。

 

 ならばこちらも応戦せざるを得ません!

 

 

「通しません! そのコピーに対応、妨害します!!」

 

「対応はなし。ダメージは通らずです。では続けて(・・・・・)――〈焦熱の供犠(バーン)〉をプレイ」

 

「!」

 

 

 ダメージは、既に通らない。

 〈白銀の静域(ダメージメタ)〉が解決した今、此方は次のターンまでダメージを受けない。

 

 ならば。

 通らない火力を、なぜ撃つのか。

 

 そんなのは、決まっている――――――!

 

 

「させません! そちらも妨害します!」

 

 

 切腹加速(自傷バーン)

 

 

 此方の勝ち筋がデッキ切れであるのならば、ライフを詰められて負ける率はかなり低い。

 なら自傷のリスクはあってないようなもの。色彩が伸びた中盤以降、さらに自傷でオドを増やし、畳み掛けてくる算段。

 

 通しても負けではないけれど(・・・・・・・・・・・・・)、ここは通せません…………!

 

 

 

「対応はありません。…………僕はこれでエンド」

 

「…………エンド時に、《停滞の福音》を。全ての墓地をデッキに戻します」

 

 

 

――――――――――

 

――――――――――

 

――――――――――

 

 

 

「メイン1。〈時渡りの階段〉をプレイ。ターンを得ます」

 

 

 プレイヤー一人に追加ターンを与える呪文。秘宝とループが成立すれば無限ターン。

 

 

「対応、妨害します」

 

 

対応して墓地起動(・・・・・・・・)。〈時渡りの階段〉を対象に、〈揺月の水面鏡〉をプレイします! 」

 

 

 

 

 ――――これが、〈揺月の水面鏡〉の最後の能力。

 

 墓地起動。

 

 沈んだ月は、消えたわけではない。

 ただ、水底からもう一度、同じ光を映すだけ。

 

 一度使われ、墓地へ落ちたはずの鏡が、再びスタック上の呪文を写し取る。

 

 

 元より長期戦をも想定したコンボデッキ。

 しかも〈スルト〉のような、墓地を爆発的に増やすカードが組み込まれているのなら、そこをアドバンテージにするカードも入っていて当然です。

 

 

 

 

「妨害、します…………!」

 

 

 

(絶対にスルーできないコンボに、妨害を二枚も…………!)

 

 

 手札消費が、重い。

 

 妨害一枚で一つの勝ち筋を止める。

 それがパーミッションの基本であり、此方がこれまで守り続けてきた均衡だった。

 

 けれど今は違う。

 

 

 一枚を止めたはずなのに、墓地から同じ脅威がもう一度立ち上がる。

 同じ勝ち筋を止めるために、こちらだけが二枚目を差し出させられている。

 

 

(それでも、止めるしかありません)

 

 

 盤面は動いていないはずなのに。

 

 ついた差が、距離だけが、詰まっている。

 

 一歩。

 また一歩。

 

 ジリジリと、何かが削れていく音がしたような気がした。

 

 

 それは歩み寄る彼の足音か。

 それとも、此方の守る壁が刻一刻と削れている音なのか。

 

 その違いすら、もう判然としなかった。

 

 

 

――――――――――

 

――――――――――

 

――――――――――

 

 

 

「〈灰燼は天蓋へ舞う〉をプレイ。バーンループです!」

 

「〈白銀の静域〉で対応! 次のターンまでダメージを受けません!」

 

「対応はしません! 続けて、〈閉ざされる未来の扉〉をプレイ! デッキを削り切ります!」

 

「こちらも対応はなし。エンド時に〈停滞の福音〉を起動。墓地を山札へ――――――」

 

 

 

「〈停滞の福音〉に対応。手札から〈揺月の水面鏡〉!」

 

「!!」

 

 

 

 コンボパーツや妨害を対象にしてきたこれまでと違い、〈停滞の福音(デッキ修復)〉をコピーしにかかってきた…………!

 

 罠だと分かっていても、踏まざるを得ない。

 もし通せば、ここまで凌いで削ったデッキが全て水の泡になる。

 

 

「させません! 妨害です!」

 

 

 その瞬間。

 

 彼の口元が、わずかに動いた。

 

 

 

 防ぐんだ。

 

 

 

 そう言われた気がしました。

 

 デッキ修復のコピーを見過ごせば(・・・・・・・・・・・・・・・)こちらにもメリットがある(・・・・・・・・・・・・)

 それでも防ぐなら。

 

 防がずにはいられないのなら――――――それが、見透かされているのなら!

 

 

「対応して2枚目です! 墓地起動で〈揺月の水面鏡〉! 〈停滞の福音〉をコピー!」

 

 

「~~~~~~!!」

 

 

 

 喉の奥で、声にならない音が詰まった。

 

 これは、コンボではない。

 必殺ではない。

 

 防がなくても、この瞬間に負けが確定するわけではないのです。

 

 

 けれど。

 

 

 通せば、間違いなく拮抗が崩れる…………!

 

 でも、でも…………!

 

 

(マナが、もう……足りません!)

 

(此方のターンの〈空位の補白(ルーター)〉に、〈ネヴァー・エンド〉の再召喚に、〈白銀の静域(ダメージメタ)〉に、妨害を2枚……!)

 

 

 枯渇寸前のマナで、これ以上に、対応(どうにか)するならば――――――

 

 

 

「ッ…………代用コスト(ピッチスペル)です! 〈白閃の聖句〉! 1コストで妨害します!」

 

「!!」

 

 

 

 もう、もう仕方ありません、虎の子を切ります!

 

 

「…………対応はありません。手札からプレイした〈揺月の水面鏡〉は墓地へ。

 墓地起動した方は追放されます」

 

 

 凌ぎ切りました! …………危なかった。

 余りにも手痛い消費ですが、ここはやむを得ません……!

 

 

 

「こちらも処理します。…………〈白閃の聖句〉と、手札一枚(・・・・)を追放します」

 

 

 手札1枚を追放することで、極めて軽いオドで妨害できる呪文。

 ただしリスクも応分のもの。〈白閃の聖句〉はピッチスペル関係なく使用後に追放されますし、妨害できるサイズもかなり制限があります。

 

 2:1交換の妨害など、パーミッションにとっては余りにハイリスク。

 本来なら、この手札コストには手札に温存の〈ネヴァー・エンド〉を充てる想定だったのです。

 

 いつ致死のコンボを叩き込んでくるかわからない相手でなければ。

 もし〈ネヴァー・エンド〉を常時出さずとも済むような相手であれば、手札の分の追放は避けられる算段でした。

 

 だから、これは本当に手痛い。

 

 

 本来なら、〈停滞の福音(デッキ修復)〉のコピーは見逃しても良かった。

 

 

 墓地起動した〈水面鏡〉は追放される。

 デッキに戻らない。

 

 つまり、〈デッキ修復〉の撃ち合いが長引けば長引くほど、彼の墓地起動札は少しずつ消えていく。

 

 超長期戦になれば、むしろ此方が有利。

 そのはずだった。

 けれど……!

 

 

(〈スルト〉のデメリットを踏み倒し状態にされた上に、もう一体〈スルト〉が来て色彩が潤沢であれば、絶対に防ぎきれません…………!)

 

 

 〈スルト〉一体なら、まだ受けられる。残り山札を削らせればいい。

 

 たとえ秘跡(妨害不可)の〈強襲〉で二体目を呼ばれても、今のデッキ残量ならガス欠が先になる。

 その暴力は、相手自身の寿命を削る鋭さあってこそ。

 

 

 けれど、山札が戻るなら話は別です。

 

 終焉の巨人が二体。

 その代償を支払うだけの山札が戻り、そして長期戦で伸びきった色彩が揃えば。

 

 間違いなく押し切られる。もう、墓地起動で消えていく分の有利なんて言うまでもなくねじ伏せられる。

 

 

(手痛い出費ですが、これで抑え込みました…………!

 詰め寄られてはいても、此方の優勢はまだ、崩れていません!)

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 必殺のコンボに加え、非殺のカードまで切って、なおも凌がれた。

 

 実に順調な巻き返しだ(・・・・・・・・・・)

 

 

 

(これまでは、勝利がほぼ決まる決定機を徹底的にマークされてたからなぁ。

 ここまでアドで盛り返せば、大分状況も変わってくる)

 

 

 墓地起動で手札を浮かした〈水面鏡〉二枚と、〈白閃の聖句(ピッチスペル)〉でざっと三アド。

 ここまでやれば――――――

 

 

 

 

これでようやく(・・・・・・・)二アド差くらいか(・・・・・・・・)?)

 

(ま、相手は凄腕のパーミ使いだ。後の展開を思えば(・・・・・・・・)、どれだけ詰めれても一アド差までが限度だろう)

 

 

 いまだ不利だが、空いていた距離はこれで大分詰まった。

 

 だが、まだ追いすがれる。残り時間も限られているからには、途切れず畳み掛ける必要がある。

 ハイリスクは承知の上だ。身を切る覚悟もなしに崩れるほど、(やわ)な相手な訳もない。

 

 

 対応力(パーミッション)故の柔軟さはあっても、か弱さなど欠片ほどもない。そういう相手だ。

 

 そんなの相手に二アド差前後なら御の字だろう。

 

 

 

エニグマはもともとアド損要素多めだしなぁ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。構築上、仕方のない話ではあるんだが)

 

 

 エニグマはその性質上、コントロール相手にはアド差が開きやすい。

 パーミッションにはなおさらだ。

 

 

 一般的(スマート)なコンボなら、必要な札は二枚か三枚。

 揃えば勝ちに近づき、止めるべき場所も分かりやすい。

 

 だから速い。

 だから鋭い。

 だから、アド損も少ない。

 

 だが同時に、どこを潰せばいいのかも明白になる……というリスクとトレードオフだ。

 

 

 エニグマは違う。

 

 複数のルートを同時に走らせる。

 勝ち筋を切り替える。

 盤面に残ったパーツから、別の暗号を組み直す。

 

 その分、プレイする枚数は増える。

 勝利しなかったルートに投じた札は、ハンド消費だけを見れば無駄にも見える。

 

 だが、それでいい。

 

 

 アドバンテージの差は、あくまで有利不利であって、勝利そのものではない。

 

 どれほど手札差をつけられていようと、コンボが通れば勝つ。

 

 

 ならばエニグマは、畢竟――――

 

 勝利でアドバンテージ差を踏み倒すデッキ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)だった。

 

 

 そういう意味では、構築の段階でハンドアドバンテージで不利になるのを見越している。

 言い換えれば、さほど目先のアド差を重視してないのが構成(コンセプト)だと言えるだろう。

 

 

 一般的なコンボが持つ鋭さ、速度とアドバンテージを、継戦能力とブラフの余地という深みに振った構築。

 

 

(そりゃ高速コンボの方が要求枚数少なくて使い勝手いいけど、ハイレベルの相手にすんなり勝ちまで持っていけるわけないしな。

 共鳴なんていうサーチ能力を備えてるなら尚更。絶対妨害や除去を構えるだろう。

 第一、相手も高速コンボの使い手だったら相手のほうが共鳴の分コンボの完成も早いはず。

 

 初見ならまだしも、手の内が割れたらあっさり勝てなくなるのが見えるな)

 

 

 エニグマは継戦能力に長けたコンボデッキ。

 この場合の継戦能力とは、一度のファイトだけの話ではなく、手の内が知れてなお戦える連戦能力(・・・・)も含めた表現だ。

 

 もしこのエキシビション、高速コンボを握って挑んでたら二勝も怪しかっただろう。

 

 

(ま、踏破しなかったルートの分が丸損になるっていうのはオーバーな表現だけどな。

 個々のパーツで共有やシナジーしてるんだから、実際には展開するだけで結構なパーツが仕事はしてるんだ)

 

 

 大体、コンボ相手なら決まる直前(マスカン)に妨害すればいいなんて言うのは当たり前の話だし。

 

 更にアド差がつくのを織り込み済みなら、そこから詰める手段くらい組み込んでおくのは義務とすら言える。

 その為に採用している一種が〈揺月の水面鏡(コピーカード)〉。

 

 手札と墓地。

 どちらにあっても、必要な呪文の形を写し取る。

 

 だから〈揺月の水面鏡〉は、エニグマの中でも特に融通が利く。

 勝ち筋にもなり、受けにもなり、時にはこうして、相手の受けそのものを歪ませる。

 

 

 

 序盤から中盤にかけては、コンボ故の鋭さでアド差を投げ捨ててでも早期決着を狙う。

 凌がれてもつれた中盤以降は、〈揺月の水面鏡〉などの墓地起動で失ったアドバンテージを取り返していく。

 

 そして終盤では――――――……終盤でこそ価値を持つ一手が、輝きを帯びるようになる。

 

 

 

 まぁそれはまだ後だ。今はまだ中盤以降。付けられた差のねじり直しに奔走するタイミング。

 なんとか相手にもアド損を承知でのプレイを強いているが、まだ追いつけはしない。

 

 

 だが、それでいい。

 

 パーミッション相手に、相性不利で圧勝など出来はしない。

 

 

 この勝負は、紙一重の差で決着するだろう。

 

 

 

 

 

 

 しかし――――……

 

 

(それにしても……あの〈停滞の福音〉のコピーまで、わざわざ妨害してくるか)

 

 

 今ほど状況が煮詰まっていなければ、スルーもあり得た。

 見逃して済むなら、そうしたかったはずだ。

 

 こちらの〈デッキ修復〉が通れば、墓地起動した〈水面鏡〉は追放されたまま戻らない。

 超長期戦に持ち込めば持ち込むほど、墓地起動札は一枚ずつ消えていく。

 

 だから、あちらにも見逃すメリットはあった。

 

 それでも止めた。

 リスクのあるピッチスペルを切ってまで。

 

 

(つまり、今はもう、見逃せない理由ができた。

 あっちは超長期戦の構えだが、それでもデッキ修復の応戦でのさらなる泥沼は拒んできた)

 

 共鳴とて結局は身体能力の一種。

 底なしに見えても、限界はある?

 

 

 

(――――まずないな。

 そんな手ぬるい相手が、『最強の共鳴使い』に上り詰められるわけがない)

 

 

 

 だが、それを勝ち筋として数えるのは甘すぎる。

 こうして一戦だけに全力を注ぎ込めるようなエキシビションマッチとは違う。

 

 ランキングで上り詰めるには、試合のシステム上時間も空けすぎれない。自ずと連戦も強いられるはずだ。

 それで上位に君臨しているのだから、一戦に限れば、どれだけ泥沼になっても共鳴力が枯渇することはないはず。

 

 

 あるいは、ターンが進んで色彩を全部出し切って、秘跡がついた重いカードで畳み掛けてくるようになれば、妨害だけじゃ凌ぎきれない?

 デッキ破壊のデメリットが事実上消失した〈スルト〉を二体三体出しての畳み掛けでは、流石に処理量を超える? …………こっちが一番ありそうだな。

 

 

 どちらにせよ、底はもう割れてきている。

 

 

(まぁ底が割れた程度で勝てるわけもないんだけどなぁ!

 僕だって九連戦で手の内が殆どバレてるけど、それで負けてやる気なんかサラサラないからな!)

 

 

 自分のような無名(アマチュア)とは違う。

 世界の上位にいる以上、デッキの中身を隠し続けることなどできない。

 

 研究される。

 対策される。

 手札にないカードまで、あるものとして読まれる。

 

 それでも勝つ。

 読まれた上で、なお通す。

 知られた上で、なお崩す。

 

 

 だからこそ、世界ランカーは頂点たりうる。

 

 

(しかし、ここに来て使えるカードタイプによる差が顕著になってきたな。

 

 ――――――やっぱり、あちらは墓地起動を使ってこない。いや(・・)使えないんだ(・・・・・・)

 

 

 〈停滞の福音〉。

 墓地をデッキへ戻す、超長期戦のための修復札。

 

 それはイメージ通りにプレイできるのなら、間違いなく強い。

 ライフも、山札も、敗北までの距離も巻き戻せる。墓地に落ちたカードも無限に使い直せる。

 

 

 だがその代わり、墓地を墓地のまま利用するカードとは相性が悪い。

 

 

(墓地起動は一枚で二枚分の仕事ができるカード群。

 …………パーミッションには垂涎で、敵対するには最悪だろうに)

 

 

 墓地起動持ちのカードは、〈停滞の福音〉を撃つたびに、使う前にデッキへ戻ってしまう。

 

 セレヴィアは、共鳴で山札から望む札へ届く。

 だが、墓地に落ちた札を墓地に置いたまま使うことはできない。

 

 対して、こちらは共鳴を使わない。

 山札から欲しい札を引き込む精度では、どう足掻いても彼女に劣る。

 

 

 その代わり――――

 

 

 墓地に落ちたカードなんて、引き直すまでもない。

 墓地に落ちたまま使えばいい。

 

 無限に再利用できる必要はない。

 

 一枚が二度、交換を要求する。

 それだけで、1:1交換を前提にした防御は歪む。

 

 

(そして、今の〈白閃の聖句〉。あれもまた、同じだ)

 

 

 ただの緊急用ピッチスペルではない。

 あのカードは本来、手札で余った〈ネヴァー・エンド〉に役割を与えるための札。

 

 場に出た一枚が敗北を拒む。

 手札に残った一枚が、防御札の代用コストになる。

 

 複数展開に意味を持たない〈ネヴァー・エンド〉が手札に詰まった時、それに意味を与えるカード。

 

 

 

(収録してたテーマが、当時のトップメタのコンボ(・・・・・・・・・・・・)に対抗馬としてデザインされた〈ネヴァー・エンド〉を中心にしたものだったから、多方面からシナジーするカードが多数なのは当然だよな)

 

 

 パーミッションでありながら鉄壁と呼べるこのテーマ。

 実装された発端は確か、前の環境でコンボの嵐が吹き荒れてた反動だったはず。

 

 

 勝敗ロック。

 ダメージ遮断。

 デッキ修復とライフゲイン。

 軽量妨害と除去。

 そして、追放不可に意味を与えるカード群。

 

 かつての記憶を思い返す。

 

 

 

 あのテーマ(・・・・・)は、そういうテーマだった。

 

 

 







「水面に映る月は、空の月を奪わない。
 ただ、波紋ひとつでカタチを変える」


     ―――――〈揺月の水面鏡〉





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