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調べてるうちにケイが可愛いと気づいた今日この頃
ミカと共にトリニティの図書館で調べた結果、めぼしい情報は『忘れられた都市』という一冊の古書だけだった。ウイに聞いても「そんな本、知りません」と言われ、誰が寄贈したのかも分からず、リストにも載っていない。そのため、一旦私が預かることになった。
その後は目撃情報や噂話程度の僅かなものさえない、平和そのものの日々が続いた。
情報収集は片手間にしつつ、デスクに溜まった書類仕事を片付けなくてはならない。
“今日は徹夜かな。終わったら、この本を読んでみよっかな”
本を棚にしまい、一人黙々と書類仕事に精を出していると、控えめに扉をノックして一人の生徒が入ってきた。
「先生、ユウカちゃんに代わって私が来ました」
セミナーの書記、ノアだ。確か今日の当番はユウカだったはずだが。
“でも、どうしてノアが? ”
「それが、ユウカちゃんが熱を出してしまったみたいで。代わりに私が来ました」
“そうだったんだね。あとでモモトークに連絡を入れておくよ”
「ふふふ、ユウカちゃんも喜ぶと思います。……さて先生、仕事手伝いますよ」
“ありがとう、ノア”
ノアは山積みになっている書類を手際よく分類し、私の倍以上のスピードで処理していく。生徒に不甲斐ないところを見せるわけにはいかないので、私もなんとか食らいつくように集中してペンを走らせた。
“ふぅ〜……ノア〜、そろそろ休憩しよ〜”
限界を迎えて私が机に突っ伏すと、ノアは時計を見て柔らかく微笑んだ。
「ふふ、そうですね。お昼にしましょうか。先生の分のお弁当も作ってきたんですが、一緒に食べますか? それともカフェに……」
“せっかく作って来てくれたんだ、そこのソファーで食べようか”
二人でソファーに並んで座り、ノアがお弁当箱の蓋を開ける。
中には、彩り豊かで栄養バランスまで完璧に計算された、まるでお店で出てくるような美しいおかずが並んでいた。
“うわぁ、凄い! これ全部ノアが作ってくれたの? すごく美味しいよ。特にお肉の味付けが最高だ”
「口に合って良かったです。ユウカちゃんからは、先生は少し野菜が不足しがちだと聞いていたので、そちらも多めに入れてありますよ」
“あはは、耳が痛いな……。本当に、ノアが来てくれて助かったよ。今日は徹夜を覚悟してたからね”
「いえ。先生もいつもより休憩を取らずにお昼まで進めましたから。ほら、このペースを維持出来れば、夕方には終わる分量ですよ」
“えー、無理だよ。このペースを保ちながらやるのは死んじゃうよ”
私が情けないことを言いながらも、ノアは「頑張りましょう」と聖母のように微笑んでくる。お昼ご飯を食べながら、他愛のない雑談に花を咲かせるこの時間は、紛れもなく平和な日常だった。
お日様の光が窓から差し込んでくる。
お昼を食べ終え、午後の仕事に取り掛かる前に、私は眠くならないようコーヒーを淹れることにした。
“ノアはコーヒーいる? ”
先に席に戻って仕事をしているノアに声をかける。
「はい。お願いします」
コーヒーを淹れ、ノアのデスクにマグカップを置く。そして自分の席へ戻ろうとした、その時。
ふと、窓の外を見た。
“……? ”
「どうしました?」
一瞬立ち止まった私を、ノアが不思議そうに見上げてくる。
“いや、外でなにか光った気がして”
ノアも座ったまま、私につられて窓の外を見た。
遥か上空、青空の中でキラッと不自然な反射光が見えた気がした。だが、それが何なのか脳が認識するより先に。
「先生!!」
叫ぶように何かに気づいたノアが勢いよく立ち上がり、焦った表情で私を床に押し倒し、その小さな身体で覆い被さった。
次の瞬間。
シャーレの執務室は、鼓膜を突き破るような轟音と灼熱の爆風と共に、無惨に吹き飛んだ。
◇
ピ──ー、という耳鳴りが響いている。
しばらく気絶していたのだろう。ぼやける視界の中、辺りを見回す。
酷い惨状だった。壁は崩れ落ち、書類は燃え上がり、むき出しになった鉄筋から火花が散っている。何が起きたのか全く分からない。ガス爆発? それともテロ?
“ノアは! ……っ! ”
咄嗟に、覆い被さって私を庇ってくれたノアを探そうと腕をついて起き上がろうとした。その時、鋭い痛みが左腕に走った。見れば、酷い火傷と裂傷を負っている。
だが、自分の怪我などどうでもよかった。
うつ伏せになり、右腕の力だけで這って進み、瓦礫の中でノアを見つける。爆風で吹き飛ばされたのか、柱に叩きつけられ、頭から血を流して気絶していた。
“ノア……! しっかりして……! ”
生徒を助ける一心で、激痛を無視して立ち上がる。ぐったりとしたノアを肩に担ぎ上げ、燃え盛る執務室を抜け出して廊下に出た。エレベーターは使えない、下の階を目指して階段を降りるしかない。
“アロナ、誰が襲撃したか分かる? ”
火災で黒い煙が立ち込める中、私は咳き込みながらシッテムの箱を起動し、襲撃者について調べようとした。
『先生、すみません! 周囲一帯に強力なジャミングがかかっていて……それに、生徒さんへの救援要請の通信も妨害されています!』
孤立無援。
一体、誰がこんな真似を? ヘルメット団の流れ弾が当たってしまったのか? それともカイザーコーポレーションの仕業か? あるいは、私を恨んでいる生徒が……?
極限状態の中、最悪の可能性ばかりが頭を支配する。
『情報が足りません! それに、生徒を疑うなんて先生らしくありません!』
アロナの必死な声で、ハッと我に返った。
“……そうだね。私としたことが、生徒を疑うなんて”
再び歩き出そうと足に力を入れたが、そのままその場に倒れ込んでしまった。
煙を吸いすぎた。一酸化炭素中毒寸前で、意識が朦朧とし、足元がおぼつかない。ノアをかばうように抱きしめたまま、視界が急速に暗くなっていく。
『先生! 先生! しっかりして下さい! 先……し……て……先生!』
アロナの声も、ノイズ混じりに遠のいて聞こえる。
もう……私……ダメだ……意……意識が……。
完全に意識がブラックアウトする直前。
遠くから、複数の足音が、こちらに向かって駆けてくるのが聞こえた。
◇
濃密な黒煙を切り裂くように、四つの影が飛び込んできた。
ウサギの耳を模した特殊なヘッドセット、硝煙の匂いを纏う重武装。一切の無駄がない動きで煙が充満する廊下へ駆け込んできた彼女たちは、床に倒れ伏す大人の姿を認めた瞬間、その統率された足並みをわずかに乱した。
「っ! 先生!」
「先生、しっかりしろ!」
張り裂けんばかりの悲痛な叫び。だが、彼女たちの行動は迅速だった。倒れている大人のバイタルを瞬時に確認し、燃え盛る階からの脱出ルートを確保する。
「急いで外へ運びましょう、下の階の安全な部屋へ移動して、ラペリングで一気に地上まで行きますよ!」
隊長である『RABBIT1』が、意識を失った大人の身体を自身の背中へと素早く、かつ丁寧に固定する。
彼女たちは炎の手が回っていない階下へ移動、そこで待ち伏せてたかのように二名がいた、一人は左手に鉄の棒とフードで顔を隠しラフな格好の長身な生徒、もう一人は無骨なマスクをしてフードで完全に顔を隠し厚手の服を何枚も着込み肌の露出が無い小柄な生徒。
試しに読みやすく改行してみました
半分まで終わったので投稿していきます。
リアルが忙しいので土日に1、2本投稿予定。
感想で【裏】から【表】へ干渉できるのなら、【表】から【裏】に干渉できるのでは?(思いつき)とありましたが情報は出てます。分かりづらかったら加筆します。