神と転生者達が送る自作自演(仮)   作:晴天桜花

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リアルが超忙しくて投稿が出来ず申し訳ありません。

章が追加されましたが、後々分かります。


シャーレ襲撃2

 

 爆発の煙が激しく渦巻くシャーレの上層階。天井の各所に設置されたスプリンクラーから不毛な水が容赦なく降り注ぎ、けたたましい非常警報のサイレンが鳴り響く廊下において、意識を失った先生の身体を背負った四人の少女──

RABBIT小隊は、一刻も早い離脱を求めて懸命に駆け抜けていた。

 

 視界を最悪な形に変貌させる分厚い黒煙。それを強引に切り裂くようにして、二つの不気味な人影が廊下の行く手を完全に遮った。

 無骨な金属マスクと漆黒の重装備で全身の輪郭を完全に隠したカラス。

そして、タクティカルベストのフードを深く被り、不敵な気配を隠そうともしないセツナ。二人の全身から放たれる、物理的な圧力を伴うほどの圧倒的な殺気と威圧感に、小隊長であるミヤコは即座に足を止め、愛用のサブマシンガンの銃口を向けた。

 

「……シャーレを襲撃したのは、貴方達ですか」

 

「ん。そうだよ」

 

 重装甲の奥から響くカラスの、一切の拒絶を孕んだ冷徹な肯定。

 その短い返答の最後の音が空気へ溶けるよりも早く、ミヤコの無駄のない戦術指示が激しいサイレンの音を圧して廊下に響き渡った。

 

「目標確認! 第一優先は先生の安全確保! 敵を牽制し、離脱経路を確保します!」

 

「「「了解!」」」

 

 SRT特殊学園が誇る精鋭小隊の一糸乱れぬ完璧な同時射撃。四方向から寸分の狂いもなく放たれた濃密な弾幕が、狭い廊下の空間を完全に埋め尽くし、二人の侵入者をハチの巣にするべく襲いかかった。

 だが、前方に躍り出たセツナは全く動じなかった。パーカーのポケットから引き抜いた両手で、無造作に握った『ただの鉄の棒』を、肉眼では目視不可能なほどの超高速で回転させる。

 

 ガキンッ、ガガガガガガッ!! 

 

 廊下に激しい火花が咲き乱れる。放たれたアサルトライフルやサブマシンガンの銃弾が、鉄の棒が形成する絶対的な防御円によって、ことごとく弾き飛ばされていく。セツナはその超人的な身体能力のまま、弾幕を正面から突き破るようにして踏み込み、SRTの射撃の間合いを強引に潰しにかかった。

 

「嘘だろ! ……弾幕を真っ向から防いで距離を詰めてくるとか!」

 

 ポイントマンであるサキがその光景に戦慄し、即座に前に出て近接格闘で応戦しようとした、まさにその時だった。

 後方に控えていた重装甲のカラスが、上着の懐から二丁の大型拳銃──マグナムを、滑らかな動作で引き抜いた。

 

 ズドンッ!!! 

 

 大砲の砲撃かと錯覚するほどのすさまじい轟音が廊下を激しく震わせる。

 放たれた超高威力の弾丸は、サキが咄嗟に身を隠した分厚いコンクリートの柱を木端微塵に粉砕し、そのすさまじい衝撃波だけで彼女の身体を十数メートル後方へと派手に吹き飛ばした。

 

「敵の戦闘力が想定以上だ! このままじゃ先生の命に関わるぞ!」

 

 サキが痛みに耐えながら叫び、背後の外壁へと飛び退いた。戦闘を継続しながら、懐からブリーチングチャージを取り出し、外壁へ貼り付けようとする。ここを爆破して外へ逃れ、ラペリング降下で一気に地上へ先生を連れて離脱する算段だった。

 だが、その目論見は冷徹に打ち砕かれる。

 

 ズドンッ!! 

 

 カラスの放ったマグナムの弾丸が、サキの手元にあった爆薬そのものを正確無比に撃ち抜いた。爆薬は適正な起爆を待たずにその場で激しく爆散し、サキの身体はすさまじい爆風によって壁へと叩きつけられる。外への脱出経路は、完璧に阻止された。

 

『──カラスさん、セツナさん!』

 

 その時、二人のインカムに上空のカムロから緊迫した通信が入る。

 

『広域ジャミングの限界まであと三分を切りました! これ以上長引くと他学園かヴァルキューレが押し寄せます! 先生ごとシッテムの箱の奪取を急いでください!』

 

「チッ、急かされちまったな。おい、カラス、一気に畳み換えるぞ!」

 

「……ん。カムロ、上空から援護を」

 

『了解! ちょっと危ないですから、二人とも下がっててくださいね!』

 

 直後、シャーレの割れた窓の外に、カムロが操縦するカイザーの小型ヘリが猛烈な勢いで急接近してきた。ヘリの側面に搭載されたガトリング砲の銃口が、不気味に回転を始める。

 

 ──ギシャシャシャシャシャシャアアアアアアッ!!! 

 

 鼓膜を引き裂くような掃射音が響き渡り、無数の弾雨が窓ガラスを木端微塵に粉砕しながら廊下へと狂い込んできた。

 すさまじい密度の弾幕がコンクリートの床や壁を激しく削り取り、すさまじい火花と粉塵が視界を白く染め上げる。カラスとセツナはあらかじめ遮蔽物の陰へと退避していたが、RABBIT小隊の四人もまた、その圧倒的な破壊力の前に完全に身動きを封じられ、遮蔽物の裏へと釘付けにされた。

 降り注ぐガトリングの弾雨。壁が削られ、このままでは遮蔽ごとハチの巣にされるのは時間の問題だった。

 だが、この極限の絶望状態にあっても、ミヤコの瞳は死んでいなかった。

 

「正面の撃ち合いも、通常の離脱も不可能……なら、プラン・オメガを実行します!」

 

「は、はい……!」

 

 粉塵の中、ミユが涙目で決死の牽制射撃を再開する。ヘリの銃口を狙った精密な一撃がカムロの操縦を僅かに狂わせ、ガトリングの射線がブレた。

 その一瞬の隙を見逃さず、モエがニヤリと笑って背中のリュックから大量のスモークグレネードとスタングレネードを取り出す。

 そして彼女が取った奇想天外な方法。それは、廊下の隅の充電ステーションで待機していたシャーレの備品──『五台の自動掃除ロボット』の背中に、それらを粘着テープで手早く括り付けるという暴挙だった。

 

「いっけぇ〜!」

 

 モエが掃除ロボットの起動スイッチを次々と叩き入れ、敵のいる廊下へと蹴り放つ。

 ウィィィィン、という間の抜けた電子音と共に、爆弾を背負った五台の円盤型ロボットが、猛烈な勢いでセツナとカラスの足元へ向けて無軌道に走り出した。

 

「……は?」

 

 流石の手練れである二人も、殺気ゼロで足元をウロチョロと動き回り始めた掃除ロボットたちを見て、一瞬だけ動きを止めて呆気にとられた。

 そこへガトリングの弾丸が誤射で着弾し、ロボットの爆弾が誘爆を起こす。

 

「引っかかったね!」

 

 モエの起爆スイッチと同調するように、パァンッ、シュ────ッ!! と激しい閃光と濃密な白煙が廊下を埋め尽くした。

 ヘリからのガトリング掃射によって極限まで脆くなっていた外壁。サキはその煙幕に紛れ、痛む身体を鼓舞して崩れかけの壁を全力で蹴り破った。

 

 ドゴォォォンッ!! 

 

 今度こそ、白昼の空へと繋がる大穴が完全に開く。

 敵の視界が完全に遮られている隙に、RABBIT小隊の四人は先生の身体を強固に固定し、吹きざらしとなった外壁の穴から一切の躊躇なくその身を投げ出した。アンカーを素早く打ち込み、壁面を滑るようにしてラペリング降下で一気に地上へと離脱していった。

 

 ◇

 

 白昼の強風と火災の煙の臭いが複雑に入り混じる中、地上へと無事に降り立った四人は、すぐさま安全なアスファルトの上へと先生の身体を慎重に横たわらせた。

 だが、周囲の様子が明らかにおかしい。いつもであれば多くの生徒や往来の人々で賑わっているはずのシャーレ正面広場が、不気味なほど閑散としており、静まり返っていたのだ。

 

「救急車を呼びます!」

 

 ミヤコが焦燥を滲ませて素早くポケットからスマホを取り出すが、画面には無情にも『圏外』の二文字が冷たく表示されている。

 

「圏外……強烈なジャミングです。通信が完全に遮断されていて、どこまでが敵の妨害範囲内なのか全く分かりません。下手に救急車を呼びに私がこの場を離れるのは、各個撃破の危険があり得策ではないですね」

 

 ミヤコは瞬時に現在の最悪な状況を分析し、緊迫した声を響かせて小隊のメンバーへ次々と指示を飛ばした。

 

「サキは即座に先生の心肺蘇生を始めてください! モエとミユは、さっきの二人組が上から追ってきても対応できるように、周囲の徹底的な警戒をお願いします! 私は先生の裂傷や火傷の応急処置に当たります!」

 

「「了解!」」

「了、了解……!」

 

 極限の絶望的な状況下であっても、彼女たちは訓練通りの完璧な戦術連携を見せ、それぞれの役割へと迅速に散開した。

 

 ◇

 

 サキの悲痛な叫びが響き、周囲の空気はさらに冷たく凍りついた。

 だが、絶望に身を委ねている暇など一秒たりとも残されていない。サキは両手を重ね、先生の胸骨の中央に真っ直ぐ自身の体重を乗せて、絶え間なく深い胸部圧迫を開始した。

 そのすぐ横では、ミヤコもまた必死の形相を浮かべながら戦術医療キットを地面に広げていた。震える手を強引に抑え込みながら止血剤と包帯を取り出し、先生の身体の各所に刻まれた無数の裂傷を次々と的確に処置していく。爆風の直撃によって生じた痛々しい火傷の箇所には冷却ジェルを迅速に塗り込み、無菌ガーゼで保護するその一連の動きは、迅速かつ正確そのものだった。

 

「先生、お願い……っ! 目を開けて、戻ってきてください!」

 

 ミヤコは心の中で激しく祈りを捧げながら、最後の一箇所となる腕の包帯を素早く巻き終えた。

 一方で、休むことなく一定のテンポで深い胸部圧迫を続けているサキの額からは、じわっと嫌な汗が大量に滲み出ていた。訓練学校で使用していたプラスチック製のダミー人形とは根本的に違う、刻一刻と冷たくなっていく『本物の命』のあまりの重さに、彼女の手のひらは微かに震えを帯び始めていた。呼吸の音すらしない。

 

「サキ、代わって。私の止血と応急処置はすべて終わりました」

 

 ミヤコがサキの肩を強く叩き、鋭い声で告げた。心肺蘇生の質を疲労によって落とさないための、戦術的な交代だ。サキが膝立ちの体勢のまま一歩後ろへと下がると同時に、ミヤコが間髪入れずにその位置へと滑り込み、一定の正確なテンポで深く先生の胸部を圧迫し始めた。

 

「サキは……次に何をするのか分かっていますね?」

 

 規則正しく胸を押し込みながら、ミヤコが前方を見据えたまま短く問う。サキは荒くなった自身の息を無理やり整えながら、先生の頭側へと素早く回り込み、その顎をそっと持ち上げて空気の通り道である気道を確保した。さらに、指先で鼻を強く摘む。

 

「……人工呼吸だ」

 

 短く、それだけを答えた。

 血の気が完全に失せ、うっすらと紫がかり始めた大人の唇がすぐ目の前にあった。そこに自身の唇を重ねるという医療行為に、サキの頬が不可抗力で微かに赤らむ。だが、それはほんの数秒の躊躇いに過ぎなかった。

 サキは己の中の不純な迷いを強引に振り払うように強く目を瞑ると、その冷たくなりかけた唇に、自分の唇を強く押し当てた。

 深く、深く、自身の肺にある限りの空気をその胸の奥へと送り込んでいく。

 サキが口を離すと同時に、ミヤコが再び正確な胸部圧迫を再開し、規定回数が終わればサキが再び息を深く吹き込む。その絶望的な作業が繰り返される。

 

「先生! 起きてくれよ!」

「先生、戻ってくださいッ!!」

 

 二人の必死な悲鳴に近い呼びかけが、誰もいない閑散とした大通りに空しく響き渡る。

 どれほどの絶望的な時間が経過しただろうか。サキが三度目の息を吹き込もうして、その顔を極限まで近づけた、まさにその瞬間だった。

 

「……っ、カハッ……ッ、ゴホッ!」

 

 先生の胸が突如として大きく跳ね上がり、喉の奥から激しく空気が漏れ出す音が大通りに響いた。

 サキとミヤコの二人が、弾かれたように互いの顔を見合わせる。

 

「先生……!?」

 

 ミヤコが即座に胸部圧迫の手を止め、食い入るようにしてその顔を覗き込んだ。

 ひどく弱々しく、今にも再び消え入りそうな微小な震え方ではあったが、先生の瞼が僅かに上へと動いた。まだ焦点が全く合っていない虚ろな瞳がゆっくりと虚空を彷徨い、やがて、目の前で大粒の涙をボロボロと流している少女の姿を辛うじて捉える。

 

「……サ……サキ……? ミ、ミヤコ……?」

 

 その掠れた、しかし確かに生きている人間の声を聞いた瞬間、サキの目から決壊したようにさらなる涙が溢れ出し、彼女は先生の胸元に顔を激しく伏せてそのまま子供のように泣き崩れた。ミヤコもまた、限界まで強張らせていた両肩の力を一気に抜き、天を仰いで深く、長い安堵の溜息を吐き出した。

 しかし、先生は辛うじて意識を取り戻したものの、身体に受けた爆風のダメージは深刻であり、まだ頭は正常に働かず、指揮を執れるような状態には程遠かった。それでも、自分が今、命の危機に瀕しているという最低限の状況把握だけは完了していた。

 ジャミングは依然として空間を支配しており、スマホは使えず、救急車も生徒たちもここには届かない。

 

「……ここから、どうやって逃げるか……手段を、講じないと……」

 

 先生が掠れた声で、必死に状況を打破するための言葉を絞り出す。ミヤコがそれに応えようと、周囲の地形から安全な逃走ルートを模索し始めた、その時だった。

 ──ドゴォォォォンッ!!! 

 

 遥か上空から、文字通り空気を踏み潰すような、すさまじい着地音がアスファルトを激しく激震させた。

 すさまじい衝撃波と共に、周囲一帯に濃密な土煙が激しく舞い上がる。

 ミユとモエが即座に武器を構えて身構える中、徐々に晴れていくその土煙の中心から、信じられない光景が姿を現した。

 およそ五階建てのビルの高さに相当するシャーレの上層階から、パラシュートも命綱も一切なしで、ただ一人の少女が地上へと飛び降りてきたのだ。

 赤髪の──セツナが、その両腕に重装甲のリーダーであるカラスをしっかりと抱えた体勢のまま、アスファルトをクレーター状に陥没させて、そこに傲然と立ち塞がっていた。

 

「よっと。お、カラス、あいつら先生の蘇生に成功したみたいだぞ」

 

 セツナが抱えていたカラスを地面に静かに降ろし、パーカーのポケットに両手を突っ込みながらニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。カラスは金属マスクの奥から、冷徹極まりない瞳で、ようやく息を吹き返したばかりの先生の姿をじっと見つめる。

 

「……ん。丁度いい。シッテムの箱と一緒に、先生ごと連れて行く」

 

 最悪の刺客たちの降臨。未だ体に力が入らない先生を背後に庇いながら、ミヤコをはじめとするRABBIT小隊の面々は、その絶望的な実力差を前にして、冷や汗を流しながら再び武器を固く握り直すしかなかった。





評価と感想オネシャス。

段々シリアス寄りになるはず

神と転生者達が送る自作自演(仮)のタイトルを変えたい今日この頃。
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