神と転生者達が送る自作自演(仮)   作:晴天桜花

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不定期です。
タイトルに意味はありません多少あるかもしれませんが誤差です。
作者のタイトル案がゴミなだけです。



これから始まるのは②

 

 大型ショッピングモールの一階、無残に大破した婦人服屋の瓦礫が、内側から激しく弾け飛んだ。

 煙を上げ、ひしゃげた鉄骨を退けて立ち上がったセツナの口から、どす黒い血液が滴り落ちる。ツルギの奇襲による脇腹への一撃は、彼女の強靭な肉体をもってしても致命的な衝撃だった。呼吸をするたびに、折れた肋骨が内臓を突き刺すような激痛が走る。

 だが、休む時間は一秒すら与えられなかった。

 

「アハハハハハハハッ!!」

 

 瓦礫の煙を切り裂き、血走った眼光のツルギが再び躍り出てきた。二丁のショットガンが容赦なく至近距離で火を噴く。セツナは咄嗟に鉄の棒を盾にして

散弾を弾くが、その硬質な金属音に重なるようにして、頭上から強烈な質量が降ってきた。

 

「――そこ、邪魔だよ」

 

 トリニティの聖園ミカだった。

 およそ少女のものとは思えない、文字通りビルを粉砕するレベルの怪力が込められた拳が、セツナの頭上から真っ直ぐに振り下ろされる。

 セツナは辛うじて半身を翻して直撃を避けたが、ミカの拳が叩きつけられた大理石の床は、まるで池に石を投げ入れたかのように激しく爆裂し、巨大なクレーターを形成した。その衝撃波だけで、セツナの身体が数メートル横へと弾き飛ばされる。

 キヴォトスにおける「最強」の一角に数えられる少女たち。それが、一切の手加減なしに、完璧な連携を持って自分一人を圧殺しにきている。

 セツナの戦闘直感があらゆる警告をしていた。

 中距離からはツルギの狂気的な掃射が退路を削り、近距離ではミカの理不尽な質量攻撃が骨を砕きにくる。防戦一方。鉄の棒を振るう隙すら与えられない。受け流すだけで精一杯の攻防の中、セツナの顔が焦燥で歪み始めていた。

 

 ――ここにはいられない。

 

 セツナは即座に戦術を「撤退」へと切り替えた。モールの三階へと続く吹き抜けのガラス手すりへと跳躍し、この包囲網から一時的に離脱しようと身体を浮かせた、その瞬間。

 

 ピシィィィン――ッ!!!

 

 モールの巨大な天窓を突き破り、二条の超高威力弾が、セツナの頭上と足元を正確に貫通した。

 トリニティの羽川ハスミ、そしてミレニアムの角楯カリン。

 モールの外、遥か数百メートル離れた高層ビルの屋上から放たれた、絶対的な精度を誇る同時精密狙撃だった。

 弾丸そのものは直撃していない。だが、セツナの跳躍の軌道を完全に予測し、その「走り出しの次の一歩」を踏み出すスペースをピンポイントで消し去る戦術的足止め。

 

「チッ……!」

 

 空中での制動を余儀なくされ、着地のワンテンポが致命的に遅れる。

 その、わずか零点数秒の隙を、あの「約束された勝利の象徴」が見逃すはずがなかった。

 

「見ぃぃつけたぜ、あの時のリベンジマッチだァァァァッ!!!」

 

 爆音と共に床を蹴り、弾丸のような速度で肉薄してきたのは、ミレニアムの美甘ネルだった。

 かつて一度刃を交え、煮え湯を飲まされた相手。その瞳には、並々ならぬ執念とリベンジの炎が狂おしく燃え盛っていた。

 遅れた着地の瞬間、セツナの視界はネルの身に纏うスカジャンの赤一色に染まった。

 間合いはゼロ。完全なインファイト。ネルの両手に握られたSMGが、セツナの胸元へ容赦なく叩きつけられた。

 

 ドババババババババッ!!!

 

 至近距離での超高速連射。セツナは鉄の棒を無理やり割り込ませて防御を試みるが、ネルの打撃を交えた容赦のないゼロ距離射撃は、その防御ごとセツナの肉体を壁へと押し込んでいく。

 

「前はよくもやってくれたなぁ! あぁ!?」

 

 ネルの猛攻は止まらない。銃撃の合間に放たれる鋭烈な蹴りが、セツナの膝を正確に捉えて体勢を崩させる。

 さらに、セツナが体勢を立て直そうとしたその死角から、巨大な盾が滑り込んできた。

 

「……そこまでだよ。これ以上、おじさんたちの先生に触らせるわけないでしょ」

 

 アビドスの小鳥遊ホシノだった。

 普段の弛んだ雰囲気は微塵もない。冷徹な戦術家の瞳をしたホシノは、低いトーンの声と共にシールドの質量を完璧に利用した突進を繰り出し、セツナの鉄の棒を強引に弾き上げ、そのガラ空きになった胴体へ、至近距離からショットガンの一撃を容赦なく叩き込んだ。

 

ズドンッ!!!

 

「が、はっ……!」

 

 衝撃で跳ね上がったセツナの身体を、再びネルの超高速の拳と銃撃が迎え撃つ。

 ホシノが盾で完璧にセツナの反撃の軌道を殺し、姿勢を崩したところへネルが確実に致命打をねじ込んでいく。一寸の狂いもない、あまりにも完成された最高峰の連携。

 右からホシノのシールドバッシュが肉を潰し、左からネルのSMGがヘイローごと叩き割るような衝撃を刻みつける。

 受けることも、避けることも、逃げることも許されない。

 ショッピングモールの壁がセツナの身体で激しく砕け、崩落する瓦礫の中で、彼女は一方的にボコボコへと叩きのめされていった。かつてあれほど圧倒的な強者として振る舞っていたセツナの肉体は、キヴォトスの理不尽なまでの「圧倒的武力」たちの前で、ただの無力な標的へと変わり果てていく。

 

 

 

 ------

 

 

 

「やはり生徒に化けるのは得策では無かった」

 声の音帯自体はノアのそれと同じだった。しかし、抑揚が完全に死んでいる。機械的な冷淡さが狭いキャビンを満たした。全体的に、その雰囲気は得体の知れない、何を考えているのか分からない、底が全く見えない不気味な存在として先生には写っていた。

 

「ここはそうですね。話すのに適切ではない」

 

 ノア?は淡々と言い、小さく右手の指を鳴らした。

 

 パチン、と、乾いた音が響く。

 その瞬間、時間と空間が止まった。

 激しいローターの重低音も、バイタルセンサーの電子音も、すべてが唐突に消失する。音が、空気が、完全に停止した。窓の外を見れば、猛スピードで流れていたはずの雲の断片が、空中でピタリと静止している。

 あまりの超常現象に息を呑みながら、先生はある不吉な記憶へと、思い至る。

 

「……まさか、君は。私がトリニティに行こうとしていた時の、あの、白い子なのか?」

 

 ノア?はただ、曖昧に微笑んだ。目元は一切笑っていない。

 

「そう思いたければどうぞ。先生がどんな姿を私に当て嵌めて喋っても、所詮は『ガワ』の話ですから」

 

 先生は冷や汗を流しながらも、最も聞かなければならない核心を突きつけた。

 

「君は……セツナたちと関係があるのか? もし関係があるのなら、なぜこんな事を生徒に……」

 

「キヴォトスの生徒たちを巻き込み、傷つけ合い、狂わせるような真似を――」

 

 先生は、ノアの姿をしたモノを強く睨みつけ、喉の奥から絞り出すような声をぶつけた。

 

「裏世界でキヴォトスを守るために、誰にも相談出来ないで、大人も信用してないような子たちが……! どうして、どうしてそんな重荷を彼女たちに背負わせるんだ!!」

 

 先生の言葉は、ただの弾劾ではなかった。

 自分を襲撃し、キヴォトスに混沌をもたらしたセツナたちのことすらも、誰かに利用され、過酷な運命を強制されている「子供」として案じている――。その底なしの、自由で、あまりにも傲慢なまでの大人の責任感が、掠れた声の中に確かに滲んでいた。

 その強い拒絶を受けても、ノア?の皮を被った「何か」は、微動だにしなかった。

 ただ、感情の消えた硝子玉のような瞳で、じっと先生の顔を見つめ返す。

 

「重荷、ですか」

 

 ノア?は、先生の言葉の響きを確かめるように、その単語を無機質に繰り返した。

 

「先生、あなたという存在は、どこまでも奇妙で…… 影に潜む者すら、その天秤に乗せようとするのですね。あなたを殺しかけたあの子供たちすら、あなたは救うべき『生徒』として定義する」

 

 感心しているわけでも、嘲笑っているわけでもない。ただ、事実を淡々と読み上げるような口調。それがかえって、この存在との間に横たわる、決して相容れない絶対的な断絶を物語っていた。

 

「歪み、傷つけ、狂わせる。それは人間の道徳という狭い枠組みの上でのみ成立する解釈です。彼女たちはただ、そうあるべき『役割』を与えられ、それを忠実に履行しているに過ぎない。大人が信用できないのであれば、そのまま利用すればいい。それだけのことです」

 

「役割……だと?」

 

「ええ。キヴォトスという歪な箱庭において、因果を正しく回すための、ほんの些細な装置。先生、あなたが彼女たちを憐れむのは自由ですが……それは私の目的においては、考慮に値しないただの誤差なのです」

 

 底が、全く見えなかった。

 どれだけ言葉を尽くそうと、目の前の存在は、人が築き上げてきた倫理や感情の枠組みの外側にいる。セツナたちを使い捨て、キヴォトスの全学園を敵に回すような事件を引き起こしておきながら、その胸中には一欠片の罪悪感も、勝利すらも存在していない。

 

「これ以上の問答は、現在のあなたのバイタルには不適切です」

 

 ノア?はそう言うと、椅子の背もたれに静かに身体を預けた。

 

「舞台は整いつつあります。先生……あなたがいくら抗おうとも、定められた結末が変わることはありません」

 

 

 

 

 

それでも――

 先生は酸素マスクを完全に引き剥がし、血の混じった息を吐き出しながら、ノア?に向かって叫んだ。

 

「苦しんでる生徒を見なかったことには出来ない……! 抗って、抗って、抗って! 結末は自分の手で変えてみせる! 私の生徒には、ハッピーエンドで笑ってる方が絶対にいいんだ……!」

 

 それは、合理性も因果もすべてを無視した、ただの泥臭い人間のエゴだった。

 バイタルセンサーの警告音が鳴り響くような満身創痍の身体で、それでも「生徒を不幸な結末にはさせない」と執念だけで言い放つ。

 その真っ直ぐな瞳の光を、ノア?の姿をした「何か」は、ただ静かに見つめ返していた。

 

 しん、と。

 完全に停止した空間の中に、長い沈黙が降りる。

 やがて、ノア?の凍りついたような無表情の輪郭が、わずかに揺らいだ。

 それは、これまで見せていた機械的な冷淡さとも、歪な微笑とも違う――まるで、お気に入りの玩具の新しい遊び方を見つけた子供のような、唐突で、あまりにも異質な『好奇心』の気配だった。

 

「……本当に、結末が変わるのか。試してみたくなりました」

 

 その言葉と同時に、ノア?が先生に向けてそっと右手をかざした。

 少女の細い指先から、空間の闇を塗りつぶすほどの、圧倒的な純白の光が溢れ出し始める。

 

「今の時間軸では、結末は二つ。そして、どちらもバットエンドです」

 

 光の輝きが増していく中で、彼女の声が耳元に滑り込んでくる。

 どこか楽しげで、それでいて冷酷な宣告。

 

「私の今の力では、先生が襲撃される一~二日前にしか戻せません。――今度は間違えないで下さいね」

 

 あまりにも理不尽で、あまりにも突然な言動の変化。この存在が何を意図し、何を企んでいるのか、先生には全く理解できなかった。これは甘い罠なのか、それとも気まぐれな遊戯なのか。

 

 だが、ノア?の放つ光が濁流のように押し寄せ、先生の全身を包み込んでいく。

 熱いような、冷たいような、肉体の感覚が内側からバラバラに分解されていくような凄まじい衝撃。急速に遠のいていく意識の中で、先生はただ、強く、強く拳を握りしめた。

 罠だろうが、何だろうが構わない。

 もし本当にやり直せるチャンスがあるのなら。

 今度こそ、誰も傷つけさせない。

 自分がその運命の前に立ちはだかってやる。

 

(今度こそ……絶対に、救ってみせる……!)

 

 確固たる決意が胸を焦がした瞬間、世界の光が最高潮に達し、視界が真っ白に染まり、急速に闇へと暗転していく。

 その、意識が完全に消失する刹那。

 ノアの皮を被った深淵の、どこか寂しげで、けれど確かな質量を持った声が、頭の芯に直接響いた。

 

「――『忘れられた都市』。今度は絶対に、読んで下さいね」

 

 

 





バッドエンドルートを2つ書くか
そのまま本編に進むか、どっちがいいでしょうか。

ノア?の正体はなんなんでしょうか?
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