ここから本編開始です。
先生やキャラの口調、解釈が違う場合は感想にて具体的に教えて下さい。
『時計仕掛けの花のパヴァーヌ』と呼ばれる一連の事件が幕を下ろし、ミレニアムサイエンススクールはいつもの日常を取り戻そうとしていた。
だが、事態は水面下で静かに進行している。
『名も無き神々の王女』、そして『無名の守護者』。それらを凌駕するキヴォトスへの脅威。
生徒会長のリオは、『名も無き神々の王女』や『廃墟』を調べていくにつれ、古い文献から「キヴォトスには反転世界が存在する」という推測を立てていた。
未来に短時間だけ観測されるであろう、未知のエネルギー反応を見逃さず、古代の技術や遺産を調べて対抗戦力を飛躍的に向上させ、本当の戦いに備えようとしていたのだ。
しかし、彼女の「ミレニアムとキヴォトスを守りたい」という想いは、冷徹な合理的判断を引き起こし、結果として彼女は全体を敵に回すことになった。リオは失踪する直前、すべてのデータを特異現象捜査部の明星ヒマリに託していった。
そして現在。
シャーレの先生である『私』は、ミレニアム郊外の立ち入り禁止区域へと足を運んでいた。
隣を歩くのは、『Cleaning&Clearing』——通称『C&C』の部長、美甘ネル。
ミレニアムの生徒会(セミナー)直属の秘密組織であり、一人一人が校内トップクラスの戦闘能力を有する優秀なエージェント集団だ。
今回、ネルに単独での依頼が入り、せっかくなら私もいた方が話が早いということで呼び出されたのである。
“やぁ、ネル。体調は万全のようだね”
「当たり前だろ。それより、依頼の内容は聞いてるか?」
一応、道すがら聞いておいた。今回ネル一人に依頼を出した人物は、特異現象捜査部の部長である明星ヒマリだった。
特異現象捜査部とは、科学的に証明しがたい事象を追求・研究する部活。いわゆる、オカルトやオーパーツ案件の研究と解決である。
なぜヒマリがC&Cの他のメンバーに協力を仰がなかったのか。それは、アリスの事件からまだ日が浅く、皆が平穏な日常を楽しんでいるため、秘密裏に処理できるならそうしたいという彼女なりの配慮からだった。ちなみに、エイミも別任務で出払っており、ヒマリ自身はエイミのバックアップに回っているらしい。
依頼の内容は、ミレニアム近郊に位置する正体不明の立ち入り禁止区域——通称『廃墟』の調査。
ここでアリスと出会ったのもいい思い出だ。ヒマリによると、この廃墟で短時間だが異常なエネルギーと波長を感知したらしい。調べてみると、カイザーPMCや街中で見かけるロボットとは違う、未知の『マネキン型の機械』が五体、廃墟内を徘徊しているという。
危険度の調査と、意思疎通は可能か。可能であれば連れ帰る、無理なら破壊。
更に、その五体の最奥に◇(ひし形)のノイズがかった空間が存在しており、それの調査も依頼されている。ヒマリには見当がついているらしく、にわかには信じがたいが、いわゆるワープゲートのようなものらしい。
“もちろん”
「なら、行くか」
今回の調査がアリスの事件と関連しているなら、私も本気を出して裏で何が起きているのか調べないといけない。
先日のアリスの事件があくまで始まりに過ぎず、リオが言っていた「反転世界からの侵略」が本当に起こるとしたら……。
突然、前を歩いていたネルから声がかかった。
「先生。先生が今何小難しいこと考えてるか分からねぇが……裏で何が起きてるか知りたいなら、手っ取り早く目の前のやつに聞けばいい」
“それってどういう——”
私が言い終わる前に、物陰から一体の『マネキン型機械』が飛び出してきた。
そいつは左手に持っていた無骨なナタを振り下ろすが、ネルは危なげなく後ろに回避し、カウンターで顔面に強烈なハイキックをお見舞いする。
しかし、マネキンは少しのけ反る程度でダウンしなかった。
「硬えな! おい、お前言葉通じるか?」
ネルは二丁のサブマシンガンを引き抜き、銃口を向けながら問いかける。しかしマネキンは首を傾げ、言葉が通じているのかいないのか分からない不気味な反応を示した。
いきなり戦闘が始まったため、私は物陰に隠れ、『シッテムの箱』を起動して戦術指揮画面に切り替えた。
物陰からネルに指示を飛ばす。
“ネル! 相手の間合いを潰して接近戦で仕掛けて! なるべく関節部分を狙って! 私はその間、最善手を解析するから”
「分かった! こっちはまかせろ!」
さっきの攻撃からして、相手の武器はナタ一本と機動力のみ。ネルなら上手く対処してくれると思うが、同じのがあと四体いるはずだ。ここは短期決戦で相手の機動力を潰し、体力を温存しておかないといけない。
ネルは二丁のSMGを乱射しながら、壁や柱、天井を縦横無尽に駆け回り、マネキンより速いスピードで翻弄する。だが、私の指示通り関節を狙うものの、銃弾が当たってもマネキンは意に介さずネルに追い縋ってくる。
「チッ、先生の言う通り、接近戦(こっち)で片付ける方がいいな」
“ネル、気をつけて!”
マネキンの目が赤く光った。
直後、目から放たれた光線がネルの移動地点を撃ち抜く。「ロマン砲かよ!」とネルは身体を捻ってギリギリで回避したが、今度はマネキンの腹部からロープが射出され、彼女の手足を拘束してしまった。
「舐めんな」
わずか二秒。ネルは力技で拘束を引きちぎって抜け出す。
再度距離を詰めようとした瞬間、今度はマネキンの口から鋭いカッター刃が飛び出し、そいつは今まで見たこともないような奇妙な動きを見せ始めた。
瞬歩——。いきなりネルの目の前に現れ、刃を振りかぶった。
“左に一歩! 相手が捕まえる姿勢になったら前のめりになる、そこがチャンス! 脚の関節を狙って!”
シッテムの箱による解析を終えた私が指示を飛ばす。ネルは迷わず実行し、的確な蹴りでマネキンの脚を狩り、地面に這いつくばらせることに成功した。動かないよう、その背中を強く踏みつける。
「銃弾も格闘も効かないとなると、これしか手はないんだが……あんまやりたくないんだよな」
ネルは独り言を呟きながら、マネキンの顔面を両手で掴み、力任せに逆方向へと捩じ切った。バキィッという嫌な音と共に、マネキンは機能を停止して動かなくなる。
“ネル、お疲れ様”
「先生もありがとな。こういうのはアカネとかアスナの領分だから、少し手間取った」
“ううん、ネルがいてこその勝利でしょ”
「そうか? そうかもな」
“ところであのマネキン、戦ってみてどうだった?”
「耐久力は異常だ。素手でコンクリ破壊できるレベルの奴じゃないと、格闘戦は厳しいな」
ネルは顎を擦りながら分析する。
「機動力はまあまあ。瞬間的な動きには驚くが、先生の指揮があったらこけおどしに過ぎない。ただ、関節は脆かったな。何度か銃弾が掠めた時、関節だけは守りたいのか回避行動をしてた」
“なるほどね。ありがとう、次からはもっと適切な指示が出せると思うよ”
「あぁ、頼りにしてるぜ」
ネルはニコッと笑い、こちらに拳を合わせるように突き出してきた。
“こっちも頼りにしてるよ”
ゴチン、と拳を合わせて笑い合う。絆を深め、残る四体の捜索へと向かう。
◇
先生とネルが、最初の一体のマネキン攻略で手こずっていた頃。
残りの四体のマネキンは——すでに壊滅状態にあった。
一体は、地面に激しく叩きつけられ機能停止。
一体は、四肢をもがれて機能停止。
一体は、顔面が数十メートル先まで吹き飛び、膝立ちのまま機能停止。
最後の一体は、何度も機能停止になるまで顔面を殴打され、見る影もないくらいの損傷具合だった。
「たく、最後の一体はどこにいるんだよ」
四体を一箇所に集めるため、鉄の棒を肩に担いだ『何者か』が歩き出す。
黒いフードを目深に被ったその足音が、『廃墟』の奥深くで静かに響いていた。
先生とネルとの邂逅は、近い。
マジ評価あざす。
3人からの評価嬉しいっす。
感想もなんでもいいのでくれると喜ぶっす!うっす!
誤字報告を受けましたが該当部分、誤字どころか文法がおかしかったので一部変更しますた。