かつてアレキサンダー大王と呼ばれた余が、現代日本に転生して女子高生に!?〜二千三百年後という未知の世界にて、余は再び征する〜   作:西谷慎一郎

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第5話「余、新たな戦場へ」

 

それからの余はーー

 

 

「ちょ、ちょっとアレクシア!?あなた何しようとしてるの!?」

 

「何って⋯この丁度よい大きさの石を担いで鍛錬をしようとだな⋯」

 

「それ石じゃないから!モニュメント的な物だから!というか絶対持ち上がらないから!」

 

 

 日々夏美との合同訓練に勤しみーー

 

 

「父上よ!余はこれより古の龍の討伐へと赴く!余と共に戦場へ馳せ参じる覚悟はあるか!?」

 

「ははっ!勿論でございます我が王!この命燃え尽きるまでお供致しますぞ!」

 

「うむ!その意気や良し!既にクエストの受注は完了しておる⋯征くぞ、征服だ!」

 

 

 時には父上と戯れーー

 

 

「あら、この服もいいわねぇ〜!ねぇアレクシアちゃん、これも試着してみましょ?」

 

「は、母上よ⋯余はこのような服装はその、どうも性に合わんというか⋯」

 

「あら!あの服もいいわぁ〜全部試しちゃいましょ!ね?」

 

「う、うむ⋯」

 

 

 またある時は母上の慰みものにされーー

 

 

「いやいや!だからさっきから言ってんじゃないっすか!これ部活のやつっすよ!?」

 

「あのねぇ君⋯普通は袋に入れて持ち運ぶでしょ?何で抜き身で往来歩いてるの?アホなの?いいから、ちょっと来なさい。親御さんに連絡するから。」

 

「いや!?マジそれだけは勘弁!ちょ!あぁぁぁぁ〜⋯」

 

「⋯連れ去られていきおった。多少できそうな気配がする男だったが⋯気のせいか?」

 

 

 別の日には、なんとも滑稽な男を見かけたーー

 

 

「ふっふっふ⋯ようやく見つけたぞ⋯探し求めていたものを⋯っ!これが無ければ王として真に完成とは言えぬからな⋯では参るぞ。ワンクリック⋯購入だっ!」

 

 

 余の極秘計画も着々と進みーー 

 

 

こうして余は、この奇妙な世界に少しずつ馴染んでいったーー

 

 

 そしてついに迎えた、高校とやらの入学式当日ーー

 

 

「ついに⋯この日がきたか」

 

 余は、これから通う事になる高校⋯稜征学園の制服に袖を通す。

 

「ここから始まるのだ⋯余の征服が」

 

 姿鏡で身だしなみを確認する。⋯うむ、完璧だ。

 

「これはその第一歩よ⋯まずは学園を余の手中に⋯っ!」

 

 余は拳を強く握りしめる。⋯ふふ、新たなる戦場に滾りよるわ。

 

「⋯おっと、こいつを忘れるところであったわ」

 

 部屋の隅に置かれている紙袋を持ち、余は玄関へと向かった。

 

 

「ではな、行ってくるぞ母上」

 

 余は玄関で靴を履くと、振り返り母上にそう言った。

 

「ええ、気をつけてねアレクシアちゃん。パパとママも用事を済ませたらすぐ行くからね。⋯ところでその紙袋はなぁに?」

 

 母上は余の持つ紙袋を不思議そうに見つめている。

 

「これか?ふふ、これはな⋯余の魂だ」

 

「そ、そう⋯よく分からないけど、あまり変な事しないようにね?」

 

 母上の疑惑の眼差し。心配は要らぬ、断じて変な事ではないぞ。

 

「なんだか不安だけど⋯⋯学園までの道順は大丈夫?駅から電車に乗って、三つ先の駅で降りればすぐ近よ。」

 

「うむ、心得ておる。」

 

 その程度は既に調査済みよ。戦場までのルートを知らねば、勝てる戦も勝てんからな。

 

「それでは、向こうで待っているぞ」

 

「ええ、また後でね」

 

 そうして余は家を後にし、駅とやらへ向かった。

 

 

 駅に着くと、その民衆の多さに驚いた。まるで祭り事でもあるかのようではないか⋯ぶつからずに器用に進むその様は、さながら統率の取れた軍の様であるな。

 

 余も上手く躱しながら進んでおると、程なくして関所の様なものが見えてきた。読めたぞ、あれが音に聞く自動改札機という物か。

 

「確か⋯これを使うのであったな」

 

 余は懐から一枚の板切れを取り出す。ICカードというものらしい⋯これであの改札機とやらに触れると、通行することが出来るという仕組みよ。

 

 余はカードを持ち、人の並びへと入り順番を待つ。決して横入りなどしてはいかん、豪に入れば郷に従えというやつよ。王とてルールは守る。

 

そう間を置かずに余の番が来た。このカードで何処に触れるのかは前の民の動きを見て把握済みよ。そら、ここだ。

 

 ピーッ ガシャン

 

 音が鳴り、門が閉じた。

 

「⋯何故だっ!?」

 

 訳の分からぬ余が立ち往生しておると、後ろに並んでいた者がひょこっと顔を出してきた。

 

「あれ〜?もしかしてそれ、残高不足かも〜?」

 

 見ればなんとも愛らしい女子ではないか。しかし言っている事がよく分からん。

 

「むぅ⋯そうなのか?このままでは通れぬのか?」

 

「チャージすれば通れるようになるよぉ〜。着いてきて〜。」

 

「う、うむ⋯」

 

 並びから外れ、余はその女子の後へと続いた。

 

「ここだよぉ〜」

 

 そうして辿り着いた先は、自動券売機と書かれた機械の前だった。

 

「あ、現金って持ってる〜?」

 

「現金⋯これのことであるか?」

 

 余は懐の財布⋯この国の貨幣をしまう物を取り出し、中から一枚の紙を出す。⋯初めてこれを見た時は大層驚いたものよ。

 

「そう、それ〜。じゃあここにカードを入れて〜」

 

「ふむ、こうか?」

 

「こっちにお金入れて〜」

 

「成程成程」

 

「ぽちっ」

 

「ポチッ」

 

「はい、出来上がり〜」

 

 そうして女子にカードを渡される。見た目には変化が無いようだが⋯読めたぞ。先程入れた貨幣が、このカードに記憶されたのだな?

 

「これでさっきと同じようにすれば通れるよ〜」

 

「おお、そうであるか」

 

 余は再び改札機へと戻り、同じ動作を行う。⋯どうやら大丈夫のようだな。

 

 改札機を通り抜けると、続けて女子もやってくる。

 

「いや、助かったぞ。礼を言う」

 

「いいよぉ〜。困った時はお互い様だもんね〜」

 

 そう言って女子は屈託のない笑顔を見せた。

 

 何とも間延びした喋りだが、これが不思議と心地よい。よくよく観察してみると⋯肩程の長さをした明るい茶色の髪に赤い髪留めをした童顔の女子だ。余と同じ制服を着用している事から、恐らく同じ学園の子なのであろう。

 

「そういえば制服同じだね〜?もしかして私と同じ入学生さんなのかな〜?」

 

「いかにも。これから稜征学園の入学式へと赴くところである」

 

 余がそう言うと、女子の顔がパッと笑顔になった。⋯いや元から笑顔であったわ。更に輪をかけて笑顔になった。

 

「やっぱりそうなんだ〜!早速お友達が出来て嬉しいなぁ〜」

 

「む、友達⋯友人、か⋯」

 

「え〜?だめ〜?」

 

「⋯いや、駄目ではないぞ。友達、望むところよ」

 

「良かったぁ〜!これからよろしくね〜!」

 

 ⋯なんの思惑もなく喜んでおる姿を見ると、心が癒されるようであるな。この出会いは大事にせねば。

 

「そういえば⋯その方、名をなんと申す?」

 

「私はね、柊心春っていうの〜。あなたは〜?」

 

 心春と名乗った女子は、余に名を聞き返してきた。

 

「余の名は、アレクシア・九条である」

 

「へぇ〜、最初に見た時からそうかなって思ってたけど、やっぱり外国人さんなんだね〜」

 

「うむ、まぁ生まれも育ちも日本ではあるがな」

 

「なるほど〜通りで日本語上手なわけだよ〜。それじゃ、シアちゃんって呼ぶね!」

 

シアちゃん⋯ふむ、悪くないな。

 

 そうこうしていると、遠くから心春の名を呼ぶ声が聞こえた。

 

「あ、お母さんだ〜。それじゃあ私は行くね〜また後で〜!」

 

「うむ、心春よ。また後程会おうぞ」

 

 そうして心春はちょこちょこ走り去っていった。さて、余も電車とやらに乗らねばな⋯行くか。

 

 

 ホームという場所で暫しの間待っていると、遠くの方から⋯何かが⋯

 

「な、何だあの化け物は⋯」

 

 いや、インターネットで調べてその姿は知っていた。知ってはいた、が⋯実際に見るのとでは大違いであった。

 

 轟音を立てながらとてつもない速度でこちらへ向かってくる。車とやらにも驚きであったがあれはその比ではないな⋯見渡せば他の者は皆平然としておる。恐るべき日本の民よ。

 

 それは少しずつ速度を落としてゆき、それ程間を置かずに完全に停止した。そして目の前の扉が開かれる⋯これも自動ドアというやつか。恐るべき技術よ。

 

「の、乗るのか⋯?これに⋯?」

 

 思わず二の足を踏んでしまったが、王たるものここで怖気付いて退く事は出来ぬ。余は堂々と、電車の中へと足を踏み入れた。

 

「むぅ、狭いな⋯」

 

 元々沢山の民が乗っていたが、余が乗った後からも次々と民は増えていき⋯やがて身動きがとれぬほどになった。

 

 こ、これはある意味⋯戦場の乱戦より辛いものがあるやもしれぬ⋯

 

 そして永遠とも言えるような苦行を耐える事十数分⋯何とか目的の駅で降りる事に成功した。余は⋯生き延びたのだ⋯

 

「これを毎日繰り返すのか⋯?気が重くなるわ⋯」

 

 まぁ、あまり考えぬ事としよう。今は学園に向かわねばな⋯

 

 そうして余は自動改札機を抜け、駅の外に出た。すると、目的地である学園はもう視界に入る距離のようだった。

 

「では、赴くとするか。余の戦場である、稜征学園へ⋯」

 

 

 

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