いつからここが尸魂界だと錯覚していた?   作:yvrararara

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二十三話

 拠点となる井戸の周辺では、柴田や白波たちが汗を流しながらテントの設営や周囲の探索を行っている。

 

 無事に拠点へと合流を果たした私たちのもとへ、一之瀬帆波が小走りでやってきた。

 

「テントの準備ができるまで、少し作戦会議をしたいんだ。……神崎くんも呼んでるから、四人で話そう」

 

 一之瀬、私、ひより、そして神崎隆二の四人は、他の生徒たちから少し離れた木陰に集まった。

 

 Bクラスの頭脳とも言えるメンバーでの、極秘の作戦会議だ。

 

「まずは、学校から支給された300ポイントの使い道なんだけど……」

 

 一之瀬が真剣な表情で切り出した。

 

「試験後、残ったポイントはそのままクラスポイントに加算されるから、できるだけ節約したいと思ってる。でも、最低限の設備として『仮設トイレ』と『簡易シャワー』だけは設置しようと思うんだけど……どうかな?」

 

(まあ、それは必須だろうな。いくらポイントを節約したいからって、衛生面を整えておかないと、この真夏の無人島で一週間なんて絶対に耐えられるわけがない。特に女の子も多いんだし、そこをケチって体調不良者が出たら元も子もないからな)

 

 私は内心で深く頷き、一之瀬の提案に賛成しようと口を開いた。

 

「――泥に塗れた器では、勝利という名の美酒を注ぐことは叶わない。……淀みを払い、己を清く保つことこそが、この過酷な盤面を支配するための最初の布石だ」

 

(訳:大賛成。衛生環境を整えるのは絶対に必要だから、トイレとシャワーは買おう)

 

「『衛生環境の維持は必須です。トイレとシャワーの設置に賛成します』とのことです」

 

 ひよりがいつも通り、淀みない笑顔で完璧な翻訳を告げる。

 

「ありがとう、藍染くん! よし、設備の件はこれで決まりだね!」

 

 一之瀬がパッと明るい笑顔を浮かべた。

 

「ああ。最低限の出費で最大のパフォーマンスを維持する。理にかなった判断だ」

 

 神崎も深く頷き、周囲を警戒するように声のトーンを一段階落として口火を切った。

 

「では次は、この試験の最重要事項である『リーダー』を誰にするか、だ」

 

 神崎は腕を組み、私と一之瀬を交互に見据える。

 

「定石通りなら一之瀬か藍染だろうが、他クラスの連中も当然そこへ狙いを定めてくる。仮面を剥がされればマイナス50ポイントだ。……絶対に悟られない生徒を据える必要があるな」

 

「うん。だから、目立たなくて、でもしっかり役割を果たしてくれる子がいいと思うんだけど……」

 

 一之瀬が顎に手を当てて悩む。

 

(……確かに俺や一之瀬がリーダーになれば、他クラスから当てられるリスクがある。ここは、存在感が薄く、それでいて常に一歩引いた視点からクラス全体を俯瞰して見ている生徒が適任だ)

 

 私の脳裏に、Bクラスのメンバーの顔と性格が高速でリストアップされていく。

 

 そして、一人の女子生徒の姿が弾き出された。

 

「――光の届かぬ深淵で、静かに盤面を見下ろす孤独な観測者。……彼女ならば、誰の目にも触れることなく、この箱庭の王冠を守り抜くことだろう」

 

(訳:姫野ユキをリーダーにするのがいいと思う。目立たないし、全体をよく見てるからね)

 

「『姫野ユキさんをリーダーに推薦します。彼女は目立ちませんし、常に一歩引いて周りをよく見ているので適任です』とのことです」

 

「姫野さん……!」

 

 一之瀬がハッとして手を打った。

 

「確かに! 彼女なら他クラスからマークされることもないし、冷静にキーカードの更新作業もこなしてくれそう! さすが藍染くんだね!」

 

「ああ。異論はない」と神崎も頷いた。

 

 私たちはすぐに姫野ユキを呼び出し、リーダーの役目を打診した。

 

「……えぇ。私が? 面倒なのは嫌なんだけど……」

 

 姫野はあからさまに嫌そうな顔をしたものの、一之瀬の必死のお願いと、私の「――君の孤独な瞳に、この世界の行く末を託そう」という謎の威圧感に押し切られ、最後は渋々ながらも了承してくれた。

 

 これで、リーダーの選定は完了した。

 

 次に私は、先ほど洞窟で仕入れてきた特大の情報を三人に共有することにした。

 

「――さて。我らが玉座の守りは固まった。……次は、哀れな愚者たちの首の話をしようか」

 

(訳:実はさっき、Aクラスのリーダーを見抜いてきたんだよね)

 

「なっ……!?」

 

 ひよりの翻訳を聞く前に、私のポエムのニュアンスだけで神崎が驚愕に目を見開いた。

 

「『先ほど、Aクラスのリーダーの正体を見抜きました』と仰っています」

 

「ええっ!? 藍染くん、もうAクラスのリーダーが分かったの!?」

 

 一之瀬も信じられないものを見るような目を向けてくる。

 

 私は静かに頷き、洞窟での葛城と戸塚のやり取り、そして「慎重な葛城が自ら最前線に出向くはずがない。リーダーは戸塚だ」という推理を、オサレな言い回しで(ひよりの完璧な翻訳を交えて)説明した。

 

「……! 葛城の性格を逆手に取ったカモフラージュか。さすがは藍染だ、完璧な洞察力だ」

 

 神崎が、深い感銘を受けたように唸る。

 

「よし、それなら最終日に戸塚の名前を書いて、50ポイントいただきだな」

 

「――待て」

 

 私は、逸る神崎を片手で制止した。

 

「――風はどこから吹き込むか分からない。この蜜の味は、我々四人の舌の上だけで留めておくべきだ。……もしこの情報が漏れ、奴らの耳に届けば、王の首は容易くすり替えられる」

 

(訳:この情報は俺たち四人だけの秘密にしておこう。もしどこからか情報が漏れてAクラスにバレたら、リーダーを変更されるかもしれないからね)

 

 私の言葉をひよりが翻訳すると、神崎が怪訝そうな顔をした。

 

「リーダーの変更? だが、真島先生のルール説明では『正当な理由なくリーダーを変更することはできない』と言っていたはずだ。情報の漏洩対策でリーダーを変えることなど、できないんじゃないか?」

 

(……ふふふ。神崎、お前は真面目すぎるんだよ。ルールの抜け穴ってやつを教えてやろう)

 

「――ならば問おう。……玉座に座る王が、病に倒れ、あるいは深手を負って戦場から退場せざるを得なくなった時……残された国は、王なきまま滅びるのを待つとでも?」

 

(訳:例えば、リーダーが体調不良や怪我をして『リタイア』しなきゃいけなくなった場合はどうなると思う?)

 

「『もし現在のリーダーが、体調不良や怪我でリタイアを余儀なくされた場合は、どうなると思いますか?』とのことです」

 

「あっ……!」

 

 一之瀬が息を呑み、神崎の顔色が変わった。

 

「そうか……! 病気や怪我でのリタイアなら、『正当な理由』としてリーダーの変更が認められる可能性が高い! つまり、もし我々が戸塚をリーダーだと見抜いたことがAクラスにバレれば、彼らは最終日直前に戸塚を意図的に体調不良にしてリタイアさせ、リーダーを別人に変更するかもしれないのか……!」

 

(その通り!だから、情報を隠しておく必要があるんだ)

 

「――左様。ゆえに、我々が引鉄を引くのは『最後の瞬間』だ。……七日目の朝、あの哀れな従者が、己の足でこの盤上に立っていることを確認してからで遅くはない」

 

(訳:だから、戸塚がリーダーだっていうのは最終日まで内緒にしておこう。最終日に、戸塚がリタイアせずに島にいるのを確認してから指名すれば確実だよ)

 

「『戸塚くんがリーダーであることは伏せておき、最終日に彼がリタイアせずに島にいることを確認してから、指名しましょう』と仰っています」

 

「すごい……そこまで考えていたなんて。藍染くん、本当にありがとう!」

 

 一之瀬が、尊敬の眼差しで私を見つめる。

 

 こうして、Bクラスの初期の防衛と攻撃の布陣は、完璧な形で整えられたのであった。

 

 作戦会議を終え、皆と合流してテントの設営や薪拾いなどの作業を進めていると、静かな森の奥から、下品な笑い声と共に、招かれざる客がやってきた。

 

「ギャハハ! お前ら、クソ暑い中ご苦労なこったな!」

 

 現れたのは、Cクラスの石崎、小宮、近藤の不良三人組だった。

 

 先日、私の裁定によって一週間の停学を食らったばかりの連中だ。彼らの手には、なぜか冷えたコーラのペットボトルが握られている。

 

「こんな試験でポイント節約してサバイバルなんて、馬鹿らしいぜ! なぁ?」

 

「全くだ。俺たちは今、最高のバカンスを満喫してるからよ!」

 

 石崎たちはゲラゲラと笑いながら、一之瀬に向かって一枚の紙を突き出した。

 

「おらよ。龍園さんからの『招待状』だ。……砂浜まで来いってよ。本物のバカンスってやつを見せてやるからな!」

 

 そう言い残し、石崎たちはコーラを飲みながら去っていった。

 

 残された私たちは、顔を見合わせた。

 

「龍園くんからの、招待状……? 砂浜って、私たちが最初に降りた場所だよね」

 

「罠かもしれない。無視するのが賢明だと思うが」と神崎が警戒する。

 

(……いや、罠にしては堂々としすぎている。それに、あいつらが飲んでいた冷えたコーラ。この島でそんなものを手に入れるには、ポイントを使って学校から購入するしかないはずだ)

 

「――神崎、君はここで羊たちを守っていてくれ。……私と一之瀬、そしてひよりで、あの愚か者たちの狂宴を覗いてくるとしよう」

 

(訳:神崎は拠点のまとめ役をお願い。俺たち三人で、ちょっと様子を見てくるよ)

 

 神崎に井戸の拠点を任せ、私、ひより、一之瀬の三人は、再び灼熱の砂浜へと向かった。

 

 森を抜け、白い砂浜に出た私たちの目に飛び込んできたのは――異様な光景だった。

 

「な、なにこれ……!?」

 

 一之瀬が絶句する。

 砂浜には、色とりどりの巨大なパラソルが何本も立ち並び、ふかふかのデッキチェアがズラリと並べられていた。

 

 中央には巨大なバーベキューセットが置かれ、極上の肉が豪快に焼かれている。クーラーボックスには氷水と共に大量のジュースや炭酸飲料が冷やされ、水着姿のCクラスの生徒たちが、音楽を流しながら海で泳いだり、肉を食らったりと、まさに『本物のバカンス』を盛大に満喫していたのだ。

 

 そして、その中心。

 最も豪華なデッキチェアに深く腰掛け、サングラス越しにこちらを見て嗤っている男。

 

「ククク……よく来たな、Bクラスの優等生ども」

 

 Cクラスの独裁者、龍園翔である。

 彼は冷えたミネラルウォーターを飲み干し、私たちに向かって嘲るように言った。

 

「どうだ? 泥水啜ってテント張るサバイバルに比べて、俺たちのキャンプは最高だろ? ……お前らみたいなケチくさい連中が、ちまちまポイント節約して苦労してる間に、俺たちは与えられた『300ポイント』を惜しげもなく使って、最高のバカンスを楽しんでるんだよ」

 

 龍園の言葉に、一之瀬が目を見開く。

 

「300ポイントを……全部使ってる!? そんなことしたら、試験終了時にもらえるクラスポイントがゼロになっちゃうじゃない!」

 

「ククク。ハハハハ!」

 

 一之瀬の言葉に、龍園は腹を抱えて笑い出した。

 

「お前らみたいな真面目な優等生は、そうやってビクビクしながら点数をかき集めるんだろうがな。……生憎だが俺は、こんな下らねえ試験で、チンケなポイントをちまちま稼ぐ気はねえんだよ」

 

 龍園はサングラスを外し、蛇のような瞳で私たちをねめつけた。

 

「貧乏くさいサバイバルごっこは勝手にやってろ。俺たちはこの最高のバカンスを、最後まで骨の髄まで楽しみ尽くしてやるよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間。

 私の脳髄に、強烈な閃きが走った。

 

(……チンケなポイントを稼ぐ気はない? 300ポイントを全部使い切る……? いや、待てよ。ポイントがゼロになったら、それ以上ペナルティで引かれるポイントもないってことか?)

 

 私の『藍染スペック』の思考回路が、瞬時に試験のルールと龍園の言動を照らし合わせる。

 

(……なるほど! そういうことか!)

 

 私は内心で強く手を打った。

 

(最初から節約なんかする気がないんだ。ポイントを使い切って豪遊し、リタイアしても痛くない生徒たちをわざとリタイアさせて船に帰す。そして、島には数人のスパイだけを残し、他クラスのリーダーを探り当てる『情報戦』だけに全振りする気だ!)

 

(マイナスが存在しない状態から、他クラスのリーダー当てでプラス150ポイントだけをかっさらう、悪魔の作戦……。リーダー当てなんて、自分で作戦をペラペラ喋るわけがない。こいつ、この豪遊で他クラスの目を欺きながら、裏で確実に他クラスの首を狙ってるんだ。……めちゃくちゃ頭いいな!)

 

 常人には思いつかない、ルールの盲点を突いた極端な戦略。

 私は、敵ながらその大胆な発想に感心していた。……が、口から出るのはやはり、最高にオサレで傲慢なポエムである。

 

「――フッ。……狂気の宴、か。沈みゆく泥船の上で、豪奢な晩餐に酔い痴れる姿は、涙を誘うほどに滑稽だよ」

 

(訳:ポイント全部使い切ってリタイア前提でリーダー当てに絞る作戦か。すごい大胆だね!)

 

「……安酒に目を細め、己の喉笛がすでに私の刃の下に晒されていることにも気づかない。……君の紡ぐその薄っぺらな策略など、私の視界ではチリ芥に等しい」

 

(訳:でも、その作戦はもう見破ったよ! 俺たちには通用しないからね!)

 

 私の、まるで全てを見透かしたかのような見下しポエムに、龍園の額に青筋が浮かんだ。

 

 彼はギリッと奥歯を噛み締める。

 

「……あァ? てめぇ、俺の何が分かったってんだ?」

 

「――これ以上、死人の戯言に付き合う義理はない。せいぜい、最後の晩餐を楽しむことだね」

 

 私はそれだけ言い捨て、クルリと背を向けて森へと歩き出した。

 

「行くぞ、ひより、一之瀬」

 

「あ、はいっ!」

 

「ま、待って藍染くん!」

 

 背後から「てめぇ……! 調子乗ってんじゃねえぞ!」という龍園の怒号が聞こえたが、私は優雅な足取りを崩すことなく、Bクラスの拠点へと帰還した。

 

「藍染くん。さっきの龍園くんの作戦って……どういうことなの?」

 

 森を歩きながら、一之瀬が不安そうに尋ねてきた。

 

 私は足を止め、先ほど看破した龍園の『ゼロポイント作戦』――ポイントを使い切り、最終的に大多数をリタイアさせてペナルティを無効化し、リーダー当てのボーナスポイントのみを狙うという戦略を説明した。

 

 ひよりの完璧な翻訳を聞き、一之瀬はハッと息を呑んだ。

 

「そんな……! ポイントがゼロなら、マイナス30ポイントのペナルティも痛くない……ルールの穴を突いた作戦なんだね」

 

「――ああ。そして、影に潜む愚者は、必ず自らの手駒を他者の玉座へと這わせるものだ。……偽りの血に塗れた毒蛇を、我々の聖域へと放つだろうね」

 

(訳:ああ。他クラスのリーダーを探るために、奴は必ずスパイを各クラスに送り込んでくるはずだ。怪我や体調不良を装って、俺たちの拠点に潜り込もうとしてくるぞ)

 

「『他クラスのリーダーを探るために、彼らは怪我や体調不良を装ったスパイを私たちの拠点に送り込んでくるはずです』とのことです」

 

 私の的確な(そしてひよりの分かりやすすぎる)予言に、一之瀬はゴクリと喉を鳴らした。

 

 そして。

 その予言は、夕暮れ時になって見事に的中することとなる。

 

「おい! 誰か来てくれ! 怪我人だ!」

 

 森の探索から戻ってきた柴田が、一人の男子生徒に肩を貸しながら拠点へと駆け込んできた。

 

 泥だらけになり、足を引きずっているその生徒は――Cクラスの金田だった。

 

「彼、森の中で足を滑らせて崖から落ちそうになってたんだ! 見過ごせなくて、連れてきちゃったんだけど……」

 

 柴田が申し訳なさそうに言う。

 人の良いBクラスの生徒たちは、「大丈夫!?」「水飲む?」と口々に金田を気遣い、テントの中で休ませようとした。

 

(……来たな、スパイ。龍園の野郎、わざわざ怪我までさせて送り込んできやがったか)

 

 私はゆっくりと金田の前に歩み寄り、冷徹な視線で見下ろした。

 

「――猿芝居はそこまでだ。……這い寄る蛇よ、直ちにこの清らかなる聖域から立ち去れ」

 

(訳:お前、龍園が送り込んだスパイだろ? さっさと拠点から出て行ってくれ)

 

 私の言葉に、Bクラスの生徒たちがギョッとする。

 ひよりの翻訳を聞いた金田は、ビクッと肩を震わせた後、涙目で私を見上げた。

 

「す、スパイなんかじゃありません……! 本当に足を滑らせたんです! お願いです、少し休ませてください……! 今リタイアなんかして船に戻ったら、後で龍園くんに何をされるか……ボコボコにされてしまいます……!」

 

 金田の迫真の泣き落とし。

 

 同情した一之瀬や柴田が「藍染くん、怪我してるみたいだし、少しだけなら……」と庇おうとする。

 

(いやいや、こいつの言葉は嘘だ。龍園の暴力への恐怖を煽って、同情を買うスパイの常套手段! ここは俺が、生徒会副会長の権限を使って追い返してやる!)

 

 私はフッと鼻で笑い、前髪をかき上げた。

 

「――何だ、その程度の幻影に怯えていたのか。……ならば、私がその陳腐な悪夢を終わらせてやろう」

 

(訳:なんだ、そんなこと心配してるのか。それなら俺が解決してやるよ)

 

「……もし君の主が、その牙を君の肉に立てるというのなら。……この『藍染惣右介』の名に懸けて、その首を即座にこの箱庭から追放してやろう。……クラスメイトに暴力を振るうような下劣な獣に、この学園を歩く資格はないのだから」

 

(訳:もし龍園が暴力振るうなら、俺が生徒会副会長の権限でそいつを退学にしてやるよ! だから安心してスパイ辞めて帰りな!)

 

「『もし龍園くんがあなたに暴力を振るうようなことがあれば、私が生徒会副会長の権限で、彼を直ちに退学処分にします。ですので、暴力の心配はいりません。安心してリタイアしてださい』と仰っています」

 

「「「…………っ!!」」」

 

 私の圧倒的な威圧感と、逃げ道を完全に塞ぐ『生徒会副会長』という絶対権力からの最後通牒。

 

 金田は顔を真っ青にして絶句した。

 これ以上ここにいれば、スパイであることがバレるだけでなく、龍園の退学問題にまで発展しかねない。

 

「あ、あ、あああ……っ!」

 

 金田は怪我をしているはずの足で器用に立ち上がると、脱兎のごとく森の奥へと逃げ去っていった。

 

 その見事な走りっぷりを見て、柴田も一之瀬も「……本当にスパイだったんだ」と呆然としている。

 

「さすがです、惣右介くん。見事に追い払ってしまいましたね」

 

 ひよりが、パチパチと拍手をして微笑んだ。

 

(ふふふ……俺のハッタリポエムと副会長の肩書きのコンボ、最強すぎるな! これで龍園の作戦も一つ潰したぞ!)

 

 沈みゆく太陽が、無人島の森を赤く染め上げていく。

 各クラスの思惑が入り乱れるサバイバル試験の初日は、魔王の絶対的な盤面支配により、Bクラスにとって完璧な形で幕を下ろそうとしていた。

 

 

 

 




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