いつからここが尸魂界だと錯覚していた? 作:yvrararara
三学期の特別試験に向けた不穏な生徒会会議から数日後。
季節はすっかり冬の冷気に包み込まれ、高度育成高校は二学期の終業式を迎えていた。
暖房が効いているとはいえ、底冷えのする体育館。全校生徒が整列する中、ステージの上では新生徒会長となった南雲雅が、自信に満ちた態度で長々と締めくくりの挨拶を行っていた。
(はぁ……良かった。今日の終業式は南雲の挨拶だけで、副会長の俺の出番は一切無しだ。全校生徒の前でオサレポエムを朗読するという公開処刑を免れただけで、今日は最高の一日と言えるな)
私は内心で安堵の溜息を吐きながら、微動だにせず、完璧な魔王の立ち姿で南雲の背中を眺めていた。
終業式が終わり、Aクラスの教室に戻ってのホームルーム。
担任の星之宮が冬休みの注意事項を軽く説明して教壇を降りた後、一之瀬がパンッと手を叩いて皆の注目を集めた。
「みんな! 二学期も本当にお疲れ様でした! 色々あったけど、誰も欠けることなくAクラスをキープできたのは、みんなが頑張ってくれたおかげだよ!」
一之瀬の明るい声に、クラス中からパラパラと拍手が起こる。
「それでね、せっかくの冬休みだし、……十二月二十四日のクリスマスイブに、クラス全員で『クリスマスパーティー』をやらないかなって思って!」
「おおっ! マジか!」
「賛成! やろうやろう!」
クラスメイトたちの顔が一気に明るくなる。
「ありがとう! 場所は、ケヤキモールの中にある広めのレストランを私が貸し切りで押さえておくね。参加費とは別に、みんなそれぞれ『2000ポイント程度』のプレゼントを用意してきてほしいな。途中で、プレゼント交換会をしようと思うの!」
(おおおっ! クラス全員でクリスマスパーティー! しかもプレゼント交換会まであるのか! なんて青春なんだ……!こういうのを待ってたんだよ俺は!)
私は内心でガッツポーズを決め、ウキウキとした気分でその日のホームルームを終えたのだった。
翌日の十二月二十三日。
私は、冬休みに突入したばかりの賑やかなケヤキモールを、ひよりと共に歩いていた。目的は当然、明日のパーティーに向けた『プレゼント』の調達である。
「惣右介くん、明日のプレゼント交換、何を選ぶか迷ってしまいますね。誰に当たっても喜ばれるもの……本や栞が良いでしょうか?」
白いダッフルコートに身を包んだひよりが、楽しそうに隣を見上げてくる。
「――万人の心を打つ完璧な書物など存在しない。だが、香りの芸術ならば、誰の部屋の空間をも彩るだろう」
(訳:本は好みが分かれるから、俺は誰がもらっても使えるようなお洒落なルームフレグランスとか、雑貨にしようと思ってるよ)
「なるほど、お洒落な雑貨ですね。私も参考にさせていただきますっ」
私たちは雑貨屋に入り、それぞれのプレゼントを吟味した。
ひよりが真剣な表情でマグカップのコーナーを眺めている隙に、私はそっと彼女の背中から離れ、アクセサリーの陳列棚へと向かった。
(明日のプレゼント交換とは別に、せっかくのクリスマスなんだ。大親友であるひよりにも、日頃の感謝を込めて何かプレゼントを贈りたい。……うん、これなんかどうだろう)
私の目に留まったのは、雪の結晶をモチーフにした、細工の細かいシルバーの髪飾りだった。控えめだが上品な輝きを放っており、ひよりの美しい銀糸の髪に絶対に似合うはずだ。
私はその髪飾りを素早く手に取り、ひよりに気づかれないようにこっそりと会計を済ませてポケットに忍ばせた。
買い物を終え、夕日に染まる帰り道を二人で歩いている時のことだ。
ひよりが少しだけ歩調を緩め、もじもじとコートのポケットを弄りながら私を見上げてきた。
「あの……惣右介くん。先日お約束した、明後日……二十五日のクリスマスですが、何時頃にお部屋へお伺いしてもよろしいでしょうか……?」
私は立ち止まり、夕日を背にしながら、彼女に向けて優雅に微笑んだ。
「――我が玉座の扉は、君のためならばいついかなる時も開かれている。君の望む刻に来るがいい」
(訳:時間はいつでもいいよ! ひよりの好きな時間においで!)
「ふふっ。ありがとうございます。それじゃあ……お昼前くらいにお伺いしますねっ」
私のポエムを完璧に理解したひよりは、夕日よりも赤く頬を染め、嬉しそうに微笑み返してくれた。
十二月二十四日、クリスマスイブ。
ケヤキモール内の広めのレストランを貸し切り、一年Aクラスのクリスマスパーティーが盛大に開催された。
「それじゃあみんな、メリークリスマース!!」
「「「メリークリスマース!!」」」
一之瀬の元気な乾杯の音頭と共に、グラスが打ち鳴らされる。
テーブルにはチキンやピザ、色とりどりのサラダが並べられ、店内はクリスマスソングとクラスメイトたちの笑い声で満ち溢れていた。
私はジュースのグラスを片手に、クラスメイトたちと適度に歓談を楽しんでいたが、ふと、少し離れたテーブルの隅で、一人退屈そうにジュースのストローを弄りながら溜息をついている少女の姿に気づいた。
姫野ユキだ。
(姫野は元々、こういう大人数でワイワイ騒ぐのが苦手なタイプだからな。少し話しかけてみよう)
私は彼女の隣の空いている席に腰を下ろし、グラスを傾けながら声をかけた。
「――喧騒は、静寂を愛する者の耳にはひどく障るようだね。君は、この虚飾の光に満ちた祝祭を疎んでいるのかな?」
(訳:退屈そうだね。こういう賑やかな雰囲気、やっぱり苦手?)
「……はぁ? 何言ってんの、藍染くん」
姫野は露骨に怪訝な顔をして、面倒くさそうに私を見た。
すかさず、ひよりがふわりと歩み寄り、笑顔で翻訳を入れる。
「『退屈そうにしていますが、こういう賑やかなパーティーはやっぱり苦手ですか?』と仰っているんですよ、姫野さん」
「ああ、そういうこと……。相変わらず椎名さんは通訳ご苦労様」
姫野は小さく息を吐き、頬杖をつきながら店内を見回した。
「別に、嫌いなわけじゃないけど。……まあ、私は一人のほうが静かで落ち着くし、楽だから。でも、たまにはこういうのも悪くないかなって、ちょっと思ってるだけ」
素直じゃない彼女なりの肯定の言葉に、私は満足げに頷いた。
「――ならば、その小さな光の欠片を大切にすることだ」
(訳:そっか。それなら良かったよ)
食事が一通り落ち着いたところで、いよいよメインイベントであるプレゼント交換会が始まった。
全員が持ち寄ったプレゼントをテーブルの中央に集め、音楽に合わせて円になりながら時計回りに回していく。
曲が止まった瞬間、手元にあったものが自分のプレゼントだ。
「わぁっ! これ、すっごくお洒落な砂時計とルームフレグランスのセットだ! 誰のかな?」
小橋夢が、ラッピングを開けて目を輝かせた。
「――それは私が選んだものだ。君の時間を優雅に彩ることを祈ろう」
「えっ、藍染くんの!? さすが、選ぶセンスもお洒落だね! ありがとう!」
(よしよし、女子ウケもバッチリだな)
私が安堵していると、手元に残った少し重みのある四角い包みに気づいた。カードには『神崎隆二』と書かれている。
(おお! 真面目な神崎のプレゼントを引き当てたぞ。一体何が入ってるんだろうな。実用的な文房具とかかな?)
私はワクワクしながら包装紙を開けた。
中から出てきたのは――漆黒の表紙に銀色の文字で『深淵なる魂の咆哮』『孤独という名の玉座』と書かれた、ひどく重苦しいハードカバーの【ポエム集】が二冊だった。
(ぶっ!? なんだこれ!?)
私が目を剥いていると、神崎が真剣な顔つきで歩み寄ってきた。
「俺のプレゼントは、藍染に渡ったか」
「神崎……これは……」
「ああ。実は最近、お前の難解な言葉の真意を少しでも深く理解するために、こういう哲学的な詩集や文学にハマっていてな。視野を広げるには最適の本だ。ぜひ読んでみてくれ」
(神崎ィィィ!! お前、真面目すぎるが故に俺のオサレ病に完全感染しちゃってんじゃねーか!! 戻ってこい!!現実の世界に!!)
私は内心で頭を抱えながらも、表面上は「……そうか」と受け取るしかなかった。
その後もパーティーは和やかに進み、最後は一之瀬が前に立った。
「みんな、今日は本当に楽しかったね! 三学期も過酷な特別試験が待ってると思うけど……私たちAクラスなら絶対に乗り越えられる! これからもトップをキープできるように、みんなで頑張ろうね!」
「「「おおーっ!!」」」
クラス全員の心が一つにまとまった、最高のクリスマスイブの夜だった。
そして翌日、十二月二十五日。クリスマス当日。
ひよりが私の部屋に遊びに来るのは昼前の予定だ。私は午前中のうちに、彼女に振る舞うためのクリスマス用の特別な食材を買い出しに、一人でケヤキモールへと向かった。
買い物を終え、両手にスーパーの袋を提げて歩いていると、ふと前方のカフェのテラス席に、見知った顔を発見した。
Dクラスの綾小路清隆、佐藤麻耶、平田洋介、そして軽井沢恵だ。
(おおっ! 清隆のやつ、平田たちと一緒にダブルデートか!? 普段は感情死んでるような顔してるくせに、しっかり青春してやがるな!)
私は思わず声をかけようとしたが、佐藤が清隆の顔を熱っぽい視線で見つめているのを見て、思いとどまった。
(いや、待てよ。あんな良い雰囲気のところに、俺が『――平穏なる虚構の海で、微睡みを貪っているようだな』とか言いながら乱入したら、間違いなく空気が凍りつく。魔王のオーラはダブルデートには劇薬すぎる。ここは静かに立ち去ろう)
私は彼らの青春を見守りつつ、寮へと帰還した。
自室に戻った私は、すぐにエプロンを身に着け、キッチンで料理の仕込みを始めた。
ビーフシチューをコトコトと煮込み、サラダの野菜を切り揃え終わったところで、インターホンが鳴った。
扉を開けると、昨日のダッフルコートとは違う、清楚な白いニットワンピースに身を包んだひよりが立っていた。
「メリークリスマス、惣右介くん」
「――よく来たね、ひより」
(訳:いらっしゃい!外は寒いね!)
「ふふっ。お邪魔します、惣右介くん」
私たちは一緒に昼食を食べながら他愛のない会話を楽しんだ。
昼食後は、ひよりが淹れてくれた紅茶を飲みながら、向かい合って静かに読書の時間に没頭する。外の寒さを忘れるほど、部屋の中は暖かく、穏やかな時間が流れていた。
(ああ……ひよりといると本当に落ち着くなぁ……)
私は本から顔を上げ、窓の外でうっすらと降り始めた雪を見つめた後、ひよりに声をかけた。
「――宵闇が天を覆うまで、君の時間を私に預けてはくれないか? この祝祭の晩餐も、共に味わいたい」
(訳:夕食も食べて帰るかい?)
「はいっ。ぜひ、ご一緒させてください」
ひよりは本を胸に抱き、本当に嬉しそうに頷いてくれた。
夕食を二人で平らげ、食後のティータイム。
私はついに、ポケットに忍ばせていた小さな箱を取り出した。
「――受け取ってほしい。君の銀の輝きを、さらに引き立てるための欠片だ」
そう言って箱を開け、雪の結晶のシルバーアクセサリーを差し出す。
「わぁ……っ! 凄く綺麗……! 私に、ですか?」
「ああ。いつも私を支えてくれる君への、感謝の印だ」
「ありがとうございます……! 私、一生大切にしますっ」
ひよりは頬を桜色に染め、瞳を潤ませながらアクセサリーを胸に抱きしめた。
そして、彼女もまた、自身の鞄から綺麗に包装された紙袋を取り出した。
「私からも、惣右介くんにプレゼントがあります。その……手作りなんですけど」
私が紙袋を開けると、中には、私の普段の服装に似合いそうな、シックなダークブルーの手編みのマフラーが入っていた。
(て、手編みのマフラー!? うおおおおおっ!! めちゃくちゃ嬉しい!! これは家宝にするしかない!!)
私は内心で小躍りしながら歓喜の雄叫びを上げ、表面上は「……素晴らしい。私の首元を温めるのは、君の紡いだ糸だけで十分だ」と最大限の感謝を伝えた。
ひよりは照れくさそうに「えへへ」と笑ってくれた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、門限の時間が近づいてきた。
「――月明かりが帰路を照らしている。君の城の扉まで、私がエスコートしよう」
「はい。よろしくお願いします」
ひよりが立ち上がり、白いコートに腕を通す。そして、部屋の扉へ向かおうとしたその時だった。
「あ、あの……惣右介くんっ」
ひよりが振り返り、少しもじもじと身をよじりながら、上目遣いで私をチラチラと見つめてきた。
(んん? なんだ? 忘れ物でもしたかな? それにしても、上目遣いのひよりめちゃくちゃ可愛いなぁ……)
私が完全に気を抜いて和んでいた、次の瞬間。
「……私、惣右介くんと……本を読んだり、おしゃべりしたりする時間が、本当に大好きです。惣右介くんはいつも自信に満ちていて、皆を守る強さがあって……でも、私にはすごく優しくて、温かくて……」
ひよりの、透き通るような、それでいて震えるような声が、静かな部屋に響いた。彼女は自身の胸元で両手をギュッと握りしめ、まっすぐに私の瞳を見つめ返してくる。
「気づいたら、ただの親友としてじゃなくて……もっと特別な想いで、惣右介くんのことを見つめるようになっていたんです。私……惣右介くんのことが、好き…です」
「…………」
(………………は? え? 好き……? ひよりが、俺を……?待って待って! 友達としてじゃなくて、恋愛的な意味で!? いや、だって俺、普段から意味不明なポエム垂れ流してるだけの痛い奴だぞ!? なんでこんな大天使が俺のことを!?)
まさか、ひよりが自分に対して恋愛感情を抱いているなどと微塵も思っていなかった私の脳内は、完全にショートし、真っ白になった。
魔王としての威厳など完全に吹き飛び、私は目を丸くしたまま、声を発することもできず、ただ無言で立ち尽くしてしまった。
その沈黙が、勇気を振り絞った彼女にとってどれほど残酷なものだったか。
「あ、その……」
私の硬直した反応を見たひよりの顔から、さっと血の気が引いた。彼女の大きな瞳にみるみると涙が溢れ、今にも泣き出しそうな表情に歪む。
「ご、ごめんなさい……! 私、急に変なこと言ってしまって……! 困らせてしまいましたよね。忘れてください……っ、おやすみなさい!」
ひよりの目から一筋の涙が零れ落ち、彼女は弾かれたように背を向け、逃げるように玄関のドアノブに手をかけた。
その涙を見た瞬間――私の体は、思考よりも先に反射的に動いていた。
私は手を伸ばし、ひよりの細い腕を掴んで強く引き寄せると、そのまま彼女の背中から、両腕でしっかりと抱きしめた。
「あっ……惣右介、くん……?」
腕の中で、ひよりの華奢な体がビクッと震える。
(俺は……なんて馬鹿なんだ。こんなにも真っ直ぐに、勇気を出して想いを伝えてくれた彼女を、不安にさせて、悲しませてどうするんだ)
(ひよりと出会ってから、いつも二人で一緒に本を読み、穏やかな時間を共有してきた。高校に入ってからも、痛々しい俺のポエムをいつも隣で笑顔で翻訳してくれた……)
(『ただの親友だ』『今の関係を壊しちゃいけない』って、必死に自分に言い聞かせて誤魔化してきたけれど……そうか。俺はずっと前から、ひよりのことが好きだったんだな……。いつから好きだったかなんて分からない。ただ、彼女の悲しむ顔だけは見たくない。ひよりには、いつだって俺の隣で幸せそうに笑っていてほしい。……そんな願いを、俺はずっと前から抱いていたじゃないか)
私は背中から回していた腕をそっと解き、ひよりの華奢な肩を優しく引いて、ゆっくりと私の方へと振り向かせた。
まだ涙の痕が残る彼女の大きな瞳と、正面から真っ直ぐに視線を交わせる。
当然、極限まで緊張し、感情が高ぶった私の口から飛び出したのは、これまでの人生で最もクサく、最もオサレな特大ポエムだった。
「――君がこのままの平穏な関係を望めば、そこに確かに恐怖はないだろう。だが、傷つく恐怖のない世界では、人はそれを退けて新たな希望を探す事をしないだろう」
「――人はただ生きるだけでも歩み続けるが、それは恐怖を退けて歩み続けることとはまるで違う。だから人はその歩みに特別な名前をつけるのだ。――『勇気』と」
私は、戸惑う彼女の手を優しく握りしめた。
「今の関係が壊れる恐怖を退け、私に想いを伝えてくれた。君が示してくれたその尊き勇気に……私は報いなければならない」
(もう、ごまかさない。俺の本当の気持ちを、正面から全部伝えるんだ!)
「――私にとって君は鏡花水月の如く、ただ眺めるだけの決して触れてはならない存在なのだと自らに言い聞かせていた。だが……私との間にある境界線を越え、君が示してくれたその無垢なる勇気が、私の臆病な幻を打ち砕き、君という光を確かな『現実』として私の掌にもたらしたのだ」
「……この愛おしい物語の続きは、もはや私一人では紡げない。これからの私が歩むすべてのページを、君と共に綴ろう」
「っ……!」
私の言葉を聞いた瞬間、目の前に立つひよりの体からすっと力が抜け、彼女は私の胸に飛び込むように顔を埋め、その体重を預けてきた。
そして、私の胸からそっと顔を上げた彼女の表情には、もう悲しい涙はなかった。
花が咲き誇るような、これ以上ないほど幸せそうな、満面の微笑みがそこにあった。
「はいっ……。喜んで、惣右介くんの隣に座らせてくださいっ」
(……うわああああっ!めちゃくちゃ恥ずかしいポエム言っちゃったよ俺!! まさか人生最大の告白シーンで『BLEACH』最終話の激エモ名言をパクってドヤ顔で語るとか、痛すぎるだろ俺!!でも……でも、ひよりがこんなに幸せそうな顔で笑ってくれたんだ。結果オーライ、いや大勝利だ!!)
私は腕の中の温もりを感じながら、胸の奥底から湧き上がるどうしようもない幸福感に包まれていた。
その後、私たちは門限ギリギリまで、部屋の玄関で他愛のない、けれど今までとは少しだけ違う甘いおしゃべりを楽しんだ。
いよいよ本当に別れの時間となり、私が彼女を部屋まで送るために扉を開けた時。
「あの……惣右介くん」
ひよりが、少しだけ頬を赤く染め、右手を出してきた。
「お部屋まで……手を繋いで帰ってもいいですか……?」
「――ああ。私の手でよければ、君を導こう」
私は彼女の小さな手を、しっかりと握り返した。
私たちは部屋を出て、ひよりの部屋がある階まで、静かな廊下を並んで歩く。
冷たい冬の廊下で、繋いだ手から伝わる温もりだけが、異常なほど熱い。
魔王の呪いとオサレポエムに塗れた私の高校生活に、かつてない最高のクリスマスプレゼントが舞い降りた瞬間だった。
いよいよ原作発売日ですね!!
不安要素は多々ありますが、帰ってから読むのが楽しみです!
誠に勝手ながら、感想欄でのネタバレになるようなコメントはご遠慮いただけますと幸いです。皆さんと一緒に、安心して発売日を楽しみ尽くせればと思います!