いつからここが尸魂界だと錯覚していた?   作:yvrararara

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九十七話

 タブレットに開示されたランキングを確認し終えると、葛城がマップを見ながら口を開いた。

 

「ここからなら、【B5】に『大グループ枠解放』の課題が出ているな。指定エリアとは反対方向になるが、そこに向かうか?」

 

(そうだね!指定エリアは最悪スルーしても問題ないし、ペナルティになりそうなら俺がクリアするよ!一之瀬たちもすぐに合流できるように一緒に向かおうか。結成には腕時計でリンクさせる必要があるからね!)

 

「――星の導きなど、今は気に留める必要はない。万が一、理不尽な天罰が下ろうとも、私が打ち砕こう。……さあ、一之瀬。君たちも共に来るといい。我らが新たな盟約を、この時の盤面に刻み込むためにね」

 

「『指定エリアは最悪スルーしても問題ありませんし、ペナルティになりそうなら私がクリアします。大グループ結成には腕時計をリンクさせる必要があるので、帆波ちゃんたちもすぐに合流できるように一緒に向かいましょう』とのことです」

 

「ああ。分かった」

 

「うん!そうしよう!」

 

 私のオサレな提案をひよりが翻訳し、葛城と一之瀬が力強く頷く。

 

 私たちは早速移動を開始し、【B5】の課題会場へと向かった。

 

 到着した会場で行われていたのは、三人参加の学力テストだった。

 

 一之瀬たちには待機してもらい、私、ひより、葛城の三人で課題を受ける。結果はダントツの一位。これで私たちは『三人分の参加枠拡大』の権利を獲得した。

 

 課題終了後、一之瀬たちと腕時計をリンクさせ、正式に大グループを結成する。

 

 タブレットの表示が更新され、二つのグループの得点が平均化されて『105点』へと変動した。

 

「すぐに枠拡大の課題を取れたのは大きいね!」

 

「ああ。だが、龍園たちや南雲会長たちも大グループを結成して枠を確保するだろうからな。ここからの動きが重要だ」

 

 喜ぶ一之瀬に対し、葛城が気を引き締めるように言う。

 

「九時の指定エリア発表がもうすぐありますから、その後に詳しく決めましょうか」

 

 ひよりが微笑みながら提案した直後、葛城の持つトランシーバーから通信が入った。

 

『――こちら坂柳です。早々に大グループを結成出来たようですね』

 

「ああ。予定通りにな」

 

『すでに綾小路くんたちや南雲先輩のグループも、大グループを結成していると報告を受けています。私たちの同盟の中で得点の低いグループを救済するために、得点に余裕のあるグループには、今後も大グループの枠が報酬の課題には積極的に参加してもらおうと思っています』

 

「ああ。それがいいだろうな。俺たちは予定通り、一位を狙って得点を重ね続ける。下位に沈みそうなグループの救済はお前に任せる」

 

『ええ。お任せください』

 

 通信を終えた葛城が、坂柳の意向を私たちに共有する。

 

「うん!坂柳さんに任せよう!私たちはこのまま一位を狙って動こう!」

 

 一之瀬も気合を入れ直した。

 

 そして、午前九時。タブレットの通知音が鳴り、指定エリアが発表された。

 

「今回の指定エリアは【D6】ですね。……どうしますか?距離的には着順報酬を狙えないこともないと思いますが、手分けして課題を取りに行きますか?」

 

 ひよりの問いに、私は頭の中で素早くマップと課題の配置を整理し、三つの部隊に分ける最適な盤面を構築した。

 

(そうだね!俺は【B7】に出ているビーチフラッグを単独で取りに行くよ!配点が高いからね!ひよりは一之瀬たちと行動して、【C4】の数学の課題を狙ってもらえるかな?葛城と神室は指定エリアを目指しつつ、時間に余裕があればエリアを踏んだ後に、【D7】に出てるクイズの課題を狙って欲しい)

 

 ――私の完璧な作戦を、ひよりが皆にわかりやすく翻訳して伝えた。

 

 一之瀬と葛城もその方針に納得し、私たちは課題をクリアした後にトランシーバーで連絡を取り合うことを約束して、三手に別れた。

 

 

 私は森を駆け抜け、予定通り【B7】のビーチフラッグの課題会場に到着した。

 

 エントリーを済ませ、参加枠が埋まるのを待っていると、見知った顔が現れた。

 

「藍染様……!!よもやこのような最果ての地で、貴方様の御姿を拝見できるとは……!」

 

 池寛治が、両手を胸の前で組み、崇め奉るように挨拶をしてきた。

 

「…………。俺はもう、何もツッコまねえぞ……」

 

 その後ろで、須藤健がげっそりとやつれた顔で頭を抱え、深々とため息をついている。

 

(お!寛治と須藤じゃん!時任は別の課題かエリアを目指してるのかな?それに、寛治たちも現時点で五位なんて凄いね!……って、須藤めちゃくちゃ疲れた顔してるじゃん!? 寛治と時任っていうアクの強い二人に囲まれてのサバイバル生活で、相当メンタル削られたんだろうな……。心中察するよ、本当にご苦労様……!)

 

 完全にツッコミを放棄するほどに疲弊しきった須藤の姿に、私は内心で深い同情を寄せていた。

 

「――奇遇だね、寛治、須藤。君たちという風が上位の座を掴み取っていること、喜ばしく思う。君たちがさらなる高みへ昇ることを期待しているよ」

 

「おおおお……!もったいないお言葉、光栄の極み……!それと藤泉から、藍染様からの『伝言』はしっかりと受け取っております!時が来れば、我らはなんなりと……!」

 

 池が感極まったように声を震わせ、忠誠を誓ってくる。

 

(要経由で伝言はしっかり伝わってるみたいだな。もちろん自分たちの試験と順位を優先して無理はしないでほしいけど、こっちの事情に巻き込んでしまうのは申し訳ないな……)

 

 私は内心で彼らを気遣いながらも、静かに口を開いた。

 

「――君たちの進むべき盤面に、私の影を落とすことになってしまうね。背負う必要のない重荷を預けてしまうこと、すまなく思うよ」

 

「滅相もございません!我らがクラスの生徒を守ることもまた、我々の使命であります!藍染様はどうかお気になさらず!」

 

 私がオサレに詫びると、池は背筋をピンと伸ばして力強く宣言した。

 

 その後ろでは、事情を知らない須藤が「あ?なんの話だ?」と頭に疑問符を浮かべて首を傾げている。

 

(本当にありがとう!寛治!)

 

 頼もしい彼の言葉に内心で深く感謝しつつ、私はフッと不敵な笑みを浮かべてみせた。

 

 間もなく課題が開始された。

 持ち前の身体能力を誇る須藤や、気合十分で挑む寛治も素晴らしい健闘を見せていたが――結果として、私の敵ではなかった。

 

 私は彼らをも置き去りにする圧倒的な力を見せつけ、誰よりも早くフラッグを掴み取って、見事一位を獲得した。

 

 これで10得点と、副賞の食糧を確保できた。

 

「我らはこれより、別たれた闇の試練へと向かいます!藍染様より賜りし数々の教えに決して恥じぬよう、この身が砕けようとも必ずや勝利を掴み取ってみせましょう……!どうか、御武運を!」

 

「……行くぞ、寛治。俺はもう限界だ……」

 

 仰々しく一礼をして去っていく寛治と、フラフラな足取りでその後ろをついていく須藤の背中に内心でエールを送りつつ別れを告げた頃には、時刻は午前十時を回っていた。

 

 私はトランシーバーを取り出し、ひよりへ通信を入れる。

 

『あ、お疲れ様ですっ!惣右介くん!こちらも、帆波ちゃんたちと協力して課題で一位を取ることが出来ました!葛城くんたちは指定エリアには到達してくれたみたいですけど、課題のエントリーは間に合わなかったと聞いています』

 

(さすがはひよりだね!葛城たちは少し遠かったから仕方がないね!)

 

「――さすがは私の愛しき光だ。葛城の道程は少し険しかったようだが、指定の地を踏み締めたのなら十分すぎる戦果だよ」

 

『えへへ、ありがとうございます。……とりあえず、合流しますか?』

 

(そうだね!【D6】にみんなで集まって昼ごはんにしようか。ただ、俺はその前に【B4】の綱引きに参加してから向かうつもりだから、十三時の指定エリア発表に間に合いそうにないなら先に食べててね!)

 

「――皆を【D6】へ導き、束の間の宴の準備をしていてくれるかな。私は【B4】の星を狩ってから向かう。もし太陽が傾くのが早ければ、私を待つ必要はないよ」

 

 私がオサレに次の行動を告げると、通信の向こうでひよりが少し心配そうな声を上げた。

 

『……かなり遠くないですか?惣右介くんなら大丈夫だとは思いますけど、無理はしないでくださいね?』

 

(うん!心配してくれてありがとうね!)

 

「――君のその声がある限り、私の翼が折れることはないさ」

 

 私はトランシーバー越しに甘く囁くと、次なる課題に向けて砂浜を蹴り出した。

 

 

 私は急勾配の山道を駆け上がり、【B4】の山頂付近の開けた平地に設けられた『綱引き』の課題会場へと到着した。

 

 無事にエントリーを済ませて周りを見渡すと、見知った無表情の男が静かに佇んでいるのを発見する。

 

(おっ!清隆じゃん!この無人島で直接会うのは初めてだな!)

 

 私は内心で嬉しくなりつつも、外見は極めて傲慢かつオサレに彼へ近づき、声をかけた。

 

「――孤独を愛する男が、よもやこのような険しき峰の力比べに姿を現すとはね。太陽の熱に当てられて、少しばかり血が騒いだのかな?」

 

「……惣右介か。今回は椎名を連れていないのか?」

 

 清隆は私のオサレな挨拶を華麗にスルーし、いつも私の腕の中にいる天使の不在を指摘してきた。

 

(ひよりには一之瀬たちと学力系の課題を取ってもらってたんだ!俺もこの課題が終わったらひよりたちと合流する予定だよ!)

 

「――愛しき月光は今、麓の地で知の泉を汲み上げている。この遊戯が終われば、再び私の腕の中へ帰還する手筈になっているよ」

 

 私の言葉を聞き、清隆は淡々と目を伏せた。

 

(大グループを結成したことで、チーム内で役割分担が可能になる。惣右介が単独行動する時間も必然的に増えるだろうな。……オレや高円寺と直接当たる可能性も、これからは増えそうだ)

 

 清隆が内心で冷静な分析を下しているとも知らず、私はさらに言葉を重ねる。

 

「――君たちもすでに、新たな群れを結成したと風の噂で聞いたよ」

 

「ああ。今は別行動しているがな」

 

 短い言葉を交わしたところで、試験開始のアナウンスが流れた。

 

 この『綱引き』の課題は、非常にシンプルだ。一対一で綱を引き合う純粋な力比べ。

 

 エントリー人数は十六人で、トーナメント形式で行われる。

 

 配点は一位が10点、二位が5点。そして三位決定戦はなく、準決勝で敗退した二人に3点が与えられる仕組みだ。

 

 ランダムで組まれたトーナメント表がタブレットに表示される。

 

(清隆と当たるのは……順当に勝ち上がれば決勝か!)

 

 私はトーナメントの山を見て、内心でテンションを上げた。

 

 そして試験が開始される。

 私と清隆は、他の生徒たちを全く寄せ付けず、一切の労力を使うことなく速攻で圧倒し、順当に決勝戦へと駒を進めた。

 

 山頂の荒涼とした岩場の中央。

 太い綱を挟んで、私と清隆が向かい合う。

 

(純粋な腕力が問われるこの綱引きにおいて、惣右介に勝つのは極めて厳しいだろう。……だが、ここで惣右介が『椎名を抱えて島中を走り回っていたことによる肉体への影響』がどれほど蓄積しているかを確認するためにも、ここは本気を出すしかないな)

 

 清隆が静かに腰を落とし、綱を握る手に力を込めた。その瞳の奥には、確かな勝負師の冷たさが宿っている。

 

(清隆が相手だからな!初っ端から出し惜しみなしの本気でやるぜ!!)

 

「――始めっ!」

 

 審判の合図とともに、互いに全力で綱を引く。

 その瞬間、ギリィッ!と分厚い綱が悲鳴を上げ、足元の土煙が爆発したように舞い上がった。

 

 一瞬――ほんの数秒だけ、綱の中央は微動だにせず完全に均衡した。

 

 しかし、すぐに私の圧倒的な身体能力が勝り、踏みしめた岩肌を削りながら、ズズッ、ズズズッ!と清隆の身体がこちら側へと引きずられ始める。

 

(……やはり、規格外か)

 

 勝敗を悟った清隆は、途中でフッと力を緩め、そのまま引きずられるようにしてラインを越えた。

 

「そこまで!勝者、藍染!」

 

(よし!清隆との直接対決で勝てたのはでかいな!……途中で不利を察して、無駄な体力消費を抑えるために力を緩めたのかな?もう少し本気でやり合いたかったけど、清隆らしい合理的な判断だね。仕方がないか!)

 

 私は内心で少しだけ残念に思いつつも、息一つ乱さずに歩み寄る。

 

「……見事だな、惣右介」

 

 敗北した清隆は、手についた土埃を払いながら私を静かに見つめて言った。

 

「――君の底力、しかと感じたよ。だが、途中で刃を引かれるのは少々寂しいね。最後まで互いの全霊をぶつけ合いたかったものだ」

 

 私がオサレな言い回しで素直な感想を告げると、清隆は淡々とした表情のまま問いかけてきた。

 

「一つ聞かせてくれ。お前は初日から椎名を抱えてこの無人島を走り回っていたというのに、疲労はしていないのか?」

 

(……俺が疲労でペースを落とすかどうかを探ってきてるのかな?)

 

 清隆の合理的かつ鋭い視線に内心で感心しつつ、私はフッと余裕の笑みを浮かべる。

 

「――肉体の摩耗など、心火の前にあっては無に等しいよ。愛しき月の光がこの身を照らし続ける限り、私の内なる力は無限に湧き上がるのだからね」

 

 私が盛大なオサレ表現で愛の尊さを語ると、清隆は真顔で顎に手を当てた。

 

「愛の力、か……」

 

(えっ、なんか凄く真面目に考え込んじゃったよ!?)

 

 予想外に真剣なリアクションをする清隆を見て、私はふと思い出す。

 

(そういえば春休みに、清隆から『恋愛とはどういうものか』って聞かれたことがあったっけ。あの後、どうなったんだろう?)

 

 気になった私は、少しだけ声のトーンを落としてオサレに尋ねてみる。

 

「――そういえば、かつて君は『愛』という感情について問いを持っていたね。あれから、君の心を満たす答えは見つかったのかな?」

 

 私の問いかけに対し、清隆は表情一つ変えずに静かに首を振った。

 

「……相手の都合もある。惣右介といえど、それを教えることはできないな」

 

(うおおお!? 教えることは出来ないってことは、すでに誰かと付き合ってる、もしくはそういう良い感じの相手がいるってこと!? 気になる! めちゃくちゃ気になる!! 誰なんだろう? やっぱりいつも一緒にいる堀北さん? クリスマスにデートしてた佐藤さん?それとも清隆のことを見つめてた佐倉さんかな? 清隆はカッコいいし何でもできるから、きっとモテモテなんだろうな!!)

 

 私の内なる野次馬根性が爆発しそうになるが、ここで無理に聞き出すのは野暮というものだ。

 

(無理して聞くことじゃないか……。清隆には清隆のプライバシーがあるし、相手の女の子への配慮もあるはずだ。ここは幼馴染として、胸の内に留めておこう)

 

 私は沸き立つ好奇心をグッと堪え、静かに頷いてみせた。

 

「――なるほど。秘密という名の蕾もまた、いずれ美しく花開くものだ。その時を楽しみに待たせてもらうよ。また何処かの星で交差しよう」

 

 私はオサレに別れを告げると、報酬の食料を受け取り、すぐにトランシーバーを取り出してひよりへ通信を入れた。

 

『あ、惣右介くん』

 

「――我に敵する者はなく、無事に最も輝く星を山頂で掴み取ったよ。これより、君たちの待つ場所へ帰還しよう」

 

『お疲れ様です!惣右介くん!私たちは葛城くんたちとすでに合流しています。【D6】エリアの中央付近の木陰にいるので、待っていますね』

 

「――太陽が天頂に至る前には、君の元へ辿り着けるだろう」

 

『ふふっ、ゆっくりで大丈夫ですよっ。惣右介くんの分のお食事もご用意しておきますので、気をつけて来てくださいね』

 

「――君のその温情に深く感謝しよう。飢えも渇きも、君の存在一つで癒やされるのだから」

 

『ふふっ。いつも惣右介くんに頼ってばかりなので、私たちにも惣右介くんのサポートをさせてください』

 

「――皆の足跡があるからこそ、私の歩みもより力強いものになる。皆の存在が、私の原動力だよ」

 

『ふふっ。……ありがとうございます、惣右介くん。待ってますね』

 

 通信越しでも伝わってくるひよりの天使のような微笑みに、綱引きでのわずかな疲労も完全に吹き飛んでいくのを感じる。

 

 私は通信を終えると、みんなが待つ【D6】エリアに向けて、険しい山道を軽やかな足取りで駆け下りていくのだった。  

 

 

 十二時前【D6】エリアの指定された合流地点へと到着した。

 

「あ!惣右介くん!お疲れ様ですっ!」

 

 私の姿を見つけるなり、ひよりがぱたぱたと小走りで駆け寄ってきた。

 

(うーん!天使すぎる……!綱引きの疲れなんて一瞬で吹き飛んで癒されるね!) 

 

「藍染くん、お疲れ様!」

 

 ひよりの後ろから、一之瀬や神崎たちも労いの言葉をかけてくれる。

 

「……すまないな、藍染。お前が単独で二つも課題をクリアしてくれたというのに、俺たちは指定エリアを踏むだけで、クイズの課題枠を取ることが出来なかった」

 

 葛城が申し訳なさそうに頭を下げる。指定エリアから【D7】までは距離があったため、タッチの差で参加枠が埋まってしまったのだろう。

 

「――星の巡りは時に我らを突き放す。だが、君という堅牢なる盾が指定の地に至っただけでも、我らの盤面は十分に保たれている。運命の気まぐれに、君が首を垂れる必要はないよ」

 

「『距離も遠かったですし、受付ができるかは運の要素もあるので仕方がないですよ、気にしないでくださいね』とのことですっ」

 

 私がオサレにフォローし、ひよりが可憐に翻訳する。

 

「そうだよ、葛城くん。私たちは大グループだし、お互いカバーし合っていけばいいんだから!それに、指定エリアのポイントを確実に取ってくれただけでも凄く助かってるよ!」

 

 一之瀬も明るい笑顔で葛城をフォローした。

 

 葛城は「……そうだな、助かる」と少しだけ表情を和らげた。

 

「ふふっ、お話はこれくらいにして、お昼ご飯にしましょう!惣右介くんの分も、ちゃんと用意してありますよ!」

 

 ひよりに促され、私たちは木陰に敷かれたレジャーシートに腰を下ろした。

 そこには、課題で手に入れた食材を活用した、彩り豊かな食事が並べられていた。

 

 全員で手を合わせ、早速いただくことにする。

 

「――君たちの手によって紡がれたこの糧は、神々の食卓に並ぶ神酒にも等しいね。我が身に刻まれた戦いの熱が、優しく溶けていくのを感じるよ」

 

(訳:すごく美味しいよ!疲れが取れる!)

 

「えへへ、お口に合ってよかったですっ」

 

 私のオサレな食レポに、ひよりが花が咲いたように嬉しそうに笑う。その笑顔が最高のスパイスとなり、食事はより一層美味しく感じられた。

 

「とりあえず、十三時の指定エリア発表まではここでゆっくり休憩だね!」

 

 食後のコーヒーを飲みながら、一之瀬がホッと息をつく。

 

「ああ。今後も指定エリアは俺が確実に向かい、課題を分散して取りに行く方針でいいだろう」

 

「そうですね。……それと、そろそろアメニティ類が減ってきましたし、今日か明日くらいには一度、本部拠点に寄りたいですね」

 

 ひよりが自分のリュックを確認しながら提案した。

 

「うん!私たちは初日からずっと本部に寄れてないから、出来たら今日寄りたいかな」

 

「そうですね!指定エリアが遠かった場合でも、三回連続でスルーしない限りはペナルティもないですし、思い切って今日寄りましょう」

 

「――英気を養うための休息もまた、次なる飛躍には不可欠なものだ。我らが帰還の道標を、女王の待つ玉座へと向けようか」

 

「『休息も大切ですし、今日本部に寄りましょうか』とのことですっ」

 

「有栖とも今後の擦り合わせをしておきたいし、いいんじゃない?」

 

 神室も同意するように頷く。

 

「そうだな。では、その方針で今日は動こうか」

 

 葛城の言葉で、今日の午後からの大まかな動きが決定した。

 私たちは十三時のエリア発表を待ちつつ、木陰を通り抜ける心地よい風を感じながら、午後からの本部帰還に向けた休息の時間を過ごすのだった。

 

 

 

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