ある方に感化され、自分も小説を書いてみました!
数分ばかり、物語にお付き合いください
私には、これしかなかったんだと思う。
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私は人間関係を継続させることが苦手だ。巷でいう「人間関係リセット症候群」を持っている。
別に誰かと話すこと自体は嫌ではないし、数か月間いつも同じ友達と仲良くすることだってあった。でも、実は嫌われてるんじゃないかとか、別に関係を続けなくても良くないかとかいろいろ考えてしまった結果、突然関係を断つことを何度もしてきた。
学生時代であれば、それで問題なかったが、社会人となればそうはいかない。仮に同じ職場で働き続けるのなら、年単位で上司や同僚と人間関係を構築しなければならない。私にとっては、あまりにもハードルが高かった。新卒で入社した会社は半年と持たずに退職してしまった。退職した後からエージェントになるまでの期間は、よく覚えていない。
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エージェントと聞くと、専門スキルを持ったすごい人みたいに考える人がいるかもしれないが、全くの別物である。仕事内容を説明すると、デスゲームの参加者をスカウトしたり、会場へ送迎したりしている。自分で説明しておきながら言ってしまうが、聞いても意味が分からないと思う。とにかく、非合法な組織の一人だと思ってくれればいい。
この仕事は私にすごくあっていると思う。送迎中は無理に話さなくていいし、デスゲームという関係上、送迎した子が一回きりで死んじゃうことが多い、というか私が会場に送った子はみんな死んでしまっているので、人間関係リセットなんてことしなくてもいい。給料面も高くはないが、最低限の生活は保障されているので、餓死しちゃうかもなんて心配は無い。私にはこれしかなかったんだと思うくらいには、自分の身に合っている。
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「ゲームクリアおめでとうございます。」
「あ…ありがとう…ございま…す」
今日も私は仕事に励む。今は珍しく、会場から自宅に参加者を送迎している。青色と赤色が綺麗に輝く宝石のような瞳、それを引き立てる白と黒のコントラストが綺麗なメイド服を身にまといながらも、常にオドオドとした態度を取っている。なんだか庇護欲を掻き立てられてしまう不思議な魅力を持つ彼女。名前を〈青井〉という。
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青井は今回のデスゲーム『GHOST HOUSE』を生還した一人である。罠が張り巡らされた館から脱出するというシンプルなものであるが、6人中3人は確実に死ななければならないというとんでもない仕掛けが施されている。正直、このルールを作って無理やり死に様を作り出そうとするゲーム企画者はセンスが無いと思う。そんな理不尽な仕様を持つこのゲームについて、何が起こったかを要点をまとめて話そうと思う。
要点は三つ。一つ目、黒に赤いメッシュが入った髪の毛が印象的な〈黒糖〉が罠にかかり死亡。脱出に必要な鍵をなかなか見つけられなかった中、解決の糸口を見つけていた。MVPだと言えるくらいの活躍だったので、もったいなかったと思う。
二つ目、金髪のツインテールが印象的な〈金子〉の死亡。天井から丸鋸が迫る中、腕輪の鍵を解除するというミニゲーム的なものがあった。鍵を順番に回せば全員助かるようになっていたが、案の定取り合いとなった。幽鬼、紅野、桃乃の順で解錠され、残りは二人。なんと、二人とも腕輪がついた手を切り取り、鍵を取り合う展開となった。ここで体格差が顕著に表れた。金子はあまりにも体が細く、奪い合いの土俵には立てなかったのだろう。彼女の悲鳴は脳裏に焼き付いている。
三つ目、なんかもういろいろすごい特徴を持っている〈桃乃〉の死亡。訳あって体を部分的に切り落とす必要があり、全員が片足で何とか歩みを進めていたのだが、出口には最後に一人殺さないと出られないことを示唆するランプがあった。すると幽鬼は、一番近くにいた桃乃の喉を一突き。数センチ距離感が違えば、紅野、青井が標的になっていただろう。こればかりは運が悪いとしか言いようがない。明らかに彼女を贔屓していた紅野は、流石に我慢できなかったのか、その場でうずくまり嘔吐を繰り返していた。
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そんなことがあったデスゲーム帰り、気まずい空気が流れていた。会場に送るくらいの時間なら耐えられたが、同じくらいの時間をもう一度過ごせるかと聞かれると疑問が残る。それに加えて、デスゲームに参加するような子の素性に興味があり、つい声が出てしまった。
「…普段は何をしているんですか」
「えっ…、……のを…」
「はい?」
「あっ…編み物を…してます…」
「へぇーすごいですね」
素直に凄いと思った。私が編み物をしようものなら、糸くずに早変わりしてしまう。普段の趣味にできるほどならよっぽどすごい腕前の持ち主なのだろう。デスゲームなんて参加せずにそれで生計立てればいいのに。
「凄くなんか…ないです。何の役にも立たないですし…」
「うーん…自分で手袋とか作れるんじゃないですか?自分好みのデザインに出来たり」
「えっ…たしかに…」
思ってもみなかったことらしく、とてもびっくりしていた。とてもかわいらしい。なんて考えていると、また静寂が訪れそうだったので、すぐに別の質問をしてみることにした。
「編み物って他にどんなものを作れるんですか?」
「!…えっと、マフラー、ティッシュケース、それと…」
話してみると、とても面白い子だと思った。いろんな知識を持っていたし、すごく楽しそうに話している。リアクションも見ていると自然と笑みがこぼれるような愛らしいものだった。コミュニケーションが苦手そうだとは思ったが、話せないわけではなさそうだ。
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もう少し話を聞きたいが、自宅に送還する前に睡眠薬を飲んでもらう時間となってしまった。
「すみません。決まりなので」
「…分かりました」
「では、少し説明を。あなたが次に目覚める前に自宅に送られます。衣装もプレゼントされるので、どうするかはあなたにお任せします」
「はい」
話が弾んでいたことが嘘かのような話し方をしてしまった。もうちょっと明るく言えばよかったかな。
青井は話し疲れてしまったのか、睡眠薬を飲んだとたん、すぐにウトウトし始めた。
「それでは、さようなら」
「……え?」
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エージェントである私が言うのはおかしいと思うが、誰しもがこの裏世界に踏み出すべきではないと思う。普通の世界で生きていける能力を持っているなら、まっとうに生きて欲しいと思う。この世界で生きていくのは、本当に何も持ちえない私みたいな人だけでいい。それに、私はまた人間関係をリセットしてしまうだろう。『たまたま話した他人』同士の関係でいいのだ。本当は『また今度』って言いたいけれど、それは胸の底にしまっておくことにした。
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月明りが差し込む薄暗い部屋で、青井は目覚める。あの出来事は夢だったのか、一瞬一瞬を思い出してみる。あまり現実感は無い。しかし、事前に教えられた裏口座には確かに7桁の数字が刻まれている。
「ほ…ほんとにもらえちゃった」
この感情は喜びなのか、安堵なのか、14歳の少女には理解しがたいものだった。でも今は、理解する必要はないのかもしれない。お金とかデスゲームそのものよりも、彼女は会話したことの方がよっぽど印象に残っている。
「幽鬼さん、優しかったな…」
「あと…名前聞いてないや…すごく褒めてくれたな」
「また会いたいな」
彼女は話し相手と会うために、再びデスゲームに参加する
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読んでいただき、ありがとうございました!
全5話くらいでつくる予定です
きっとまだ、気づいていないだけ