青井のエージェント、縁を切られる   作:エテクロ

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ページを開いていただき、ありがとうございます!
スクラップビルみたいなゲーム考えてみたいけど、難しいね汗

ではしばし、お付き合いくださいませ


1.バレル・キャノン

予想外が起きた時にこそ、人は狂う

 

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 青井は、とある理由でデスゲームに参加することにした。

お金に余裕が無いからではない。記録を伸ばしたいわけでもない。合法的に人を殺したいわけでも、死に場所を求めているわけでもない。実際の理由は、とある話し相手2人と再び会うためである。

 一人は、初めて参加したデスゲーム〈GHOST HOUSE〉で出会ったプレイヤー〈幽鬼〉。青井にとって、家族以外で初めて話に耳を傾けてくれた恩人である。幽霊みたいに生気を感じられないものの、彼女からかすかなぬくもりを青井は感じ取っていた。また出会えたら、もっと話すだけでなく、ちゃんと感謝を伝えたいと思っている。が、なかなか同じゲームに参加できていない。ゲーム外で探すことも考えたが、見当もついていないのに探し回るのは悪手だろう。

 もう一人は、ゲーム会場に送迎してくれるエージェントである。編み物の話題で盛り上がり、たくさん褒めてくれたことが青井にとってかけがえのないものになっている。敬語を使って話すので硬い印象はあるものの、いいところを探してくれるので、つい話したくなってしまうことを青井は自覚している。幸い、エージェントとの再会は二回目のデスゲーム会場への連れていかれる時であった。

 

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「お久しぶりです…!えっと…」

「…」

 エージェントは少し険しい顔をしていた。ついこの間、もう参加してほしくないと思っていた子を再び会場に送らなければならないからである。いや、冷静に考えれば『さようなら』でこの真意が伝わるはずはないのだから、彼女を責める道理はない。青井は機嫌が悪いことを感じ取ったのか、少し委縮してしまった。

「な…名前…聞いたこと…なかった…ですから…なんてお呼びすれば…」

「…トウダ」

「!…トウダさん…よろしくお願いします」

そういうと、青井は高級な旅館のホテルマンのような綺麗なお辞儀をする。あまりにお手本のようなお辞儀だったので、つい会釈を返してしまった。

 

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 車を発進させ、さっそく前回の話の続きを…とはならなかった。私は『どうして戻ってきたんだ』という想いが先行し、あまり話す気分にはなれなかった。ほとんど逆ギレのようなものなので良くないとは思いつつ、苛立ちをごまかすことは出来なかった。青井はおそらく、今話しかけていいかどうか判断しかねているのだろう。私が青井の立場なら、話しかけない選択を取る。

 

 一回目と同じような気まずい時間が流れる。こういった空気は、人生の先輩である私が打開しなければいけない。溜息まじりの深呼吸を一度行い、青井に話しかける。

「どうして戻ってきたの?」

自然とこの言葉が出てしまった。口に出してから、まずい、と思った。いい大人が子供に突然責めるような言葉を投げかけるなんて、それでは会話なんて出来るわけはない。

「…私には、これしかなくて」

「そうですか。覚悟してここにいるのなら、問題ないと思います。」

そんなわけはない。立派な趣味があるじゃないか。それにさっきしてくれた綺麗なお辞儀もそうそう真似できるものではない。彼女はもっと、自分のいいところを自覚した方がいいと思う。

 

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 彼女は二回目のゲーム〈Barrel Cannon〉に参加した。参加者は14人。全員海賊の下っ端衣装に着替えさせらいる。そして、会場は大船、海の上である。周りに島はなく、青と白だけの色味が物足りない景色である。突然、NPCである船長が告げる。

「今日は宴だ!祝いの花火を上げよう!ただ、普通の花火じゃ面白くないよな?あれ持ってこい!!!」

そういうと、真上に発射できそうな砲台が複数運び込まれる。

「そうだ!お前らも花火になれ!試しに上げてみるか!よーく見とけよ?」

 すると、別のNPCが船長につかまり、砲台の中に突っ込まれる。その後、砲台の横に空いた穴を何個かいろいろなサーベルで差し込んでいる。そして、黄色のサーベルを差し込んだとたん、突然そのNPCが空高く打ち上げられた。全員の視線は打ち上げられたNPCに釘付けになる。そして、空中で綺麗に花火が…なんてことはなく、そのまま高速で落下してくる。

「おい逃げろ逃げろ!!!」

 

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 ルールは簡単に説明すると、自分が黒ひげにもなるし、刺す側にもなる黒ひげ危機一髪である。まず、一人が大砲の中に入り、後ろの番のプレイヤーが、側面の穴へサーベルを刺す。はずれだった場合は大砲から退出し、サーベルを刺したプレイヤーが大砲の中に入る。もし、あたりが引かれた場合は空高く打ち上げられ、何も出来ずに船の床にたたきつけられてしまう。下手すれば落下に巻き込まれるので、打ち上げた後も油断できないようになっている。これを4回打ち上げられるまで続ける。

 

一見するとただの運ゲームに見えるが、実際には黄色のサーベルが差し込まれた場合に必ず発射される仕組みになっている。このことにいち早く気付けると有利になるが、サーベルは乱雑に、そして山積みされているため、サーベルの山からかき分けて黄色を選んでしまうと疑われてしまう。もしバレようものなら、次の番のプレイヤーに黄色を刺されて地獄まっしぐらである。

 

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青井はこのからくりに気づくのが早かった。「よーく見とけよ?」と言われた時に、打ち上げるまで刺されたサーベルの色と刺された穴を確認していた。そして、青井より先の番のプレイヤーが、船長と同じ穴にサーベルを刺した際にはずれ、別の穴に黄色のサーベルが刺された時に当たりだったため、黄色が攻略の鍵だと気づいた。そこで、青井は『黄色を取らせないこと」に集中した。一番上のサーベルを取り出すときに、必要であれば、【他の色】を【黄色】に覆い被さるように自然に崩したのである。そうすれば、少なくともパッと取ったサーベルで打ち上げられる可能性は下げられる。

 

「警戒するのは後ろの人だけでいい…大丈夫」

 

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ゲームは進み、あと一回打ち上げれば終わりという場面。幕は青井の手によって降ろされることとなる。

青井は黄色のサーベルを手に取る事ができた。青井以外にこのからくりに気づいている人物はいないようだ。もう消化試合のようなものである。しかし、青井本人が手を下すのは初めてのこと。彼女に人は殺せるのだろうか?

なんて考えていたが、青井は躊躇なくサーベルを差し込んだ。あまりにもあっさりと刺した。彼女にいつしかのプレイヤー、幽鬼の影が見えた。

 

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 私は初めて人を殺した。自分が生き残るために。恐ろしいくらいの罪悪感。たかだか、話したい人がいるから参加しているだけなのに。そのために人を殺した。本当に私が?

 

 幽鬼さんはあの時、冷酷に桃乃さんを殺した。その時の真似をするみたいに、躊躇せずに刺してみた。正気なんか保てない。そりゃそうだ。私は幽鬼さんじゃない。私はただ、呆然とするしかなかった。私の居場所はここじゃない…?

 

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「はは…ははは!!!」

この時には、他人がこの世界に足を踏み入れることを拒んでいた自分は消え失せていた。私はこの子を助けるために生きてきたんだ!あんなに趣味について話していた普通の子が!遠慮できるようなあの子が!デスゲームになったらあんな冷酷なプレイヤーになれるなんて!なんてちぐはぐなんだろう!守ってあげたくなるくらい愛らしいのに!なんて残酷なんだろう!ああ、早く彼女と話したい!家に送った後は、今すぐ彼女の専属にしてくれって頼みに行かないと!

 

自分はなんて視野が狭かったんだ!!!彼女にはデスゲームしかないじゃないか!!!

 

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「お疲れ様でした」

「は…はい…ありがとう…ございます…」

心なしか声が震えているように感じたが、興奮しているのだろう。

「自然な演技、お見事でした。私が拝見した限り、からくりに気づいていたのはあなただけでしたね」

 

このあとはコミュニケーションというより、一方的に褒める形になってしまった。この前の愛らしい反応とは少し違うが、急に褒めてしまったためにびっくりしているのだろう。

 

 もう少し話をしたいが、睡眠薬を飲ませる時間となってしまった。あまりにも時間が惜しい。

 

「そういえば、次から専属エージェントがつくことはご存じですか」

「はい…」

「お願いなのですが、今後も私が担当させていただいてもいいですか?」

「!…は、はい」

心の中でガッツポーズをした。こんなに嬉しいことはいつぶりだろう。今度こそ、関係を手放したりなんかしない。

 

 前と同じように青井に睡眠薬を飲んでもらった。今は彼女に本心を。

 

「それでは、また今度」

 

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「もう、人を殺すのは…」

「でも、あんなに嬉しそうな顔されたら…」

「幽鬼さんにもまだ会ってないし…」

「あと1回…あと1回だけ…」

「私にはこれしかないんだから…」

 

結果的に、トウダは青井を、期待で縛り付けることになる。

 

(11/11)




ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
あと3話は作ります

すれ違いって怖いね
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