今回はどっちか言うと青井さんメインです
それでは、お付き合いくださいませ〜
自分のいい所は、他人の方が知っている。悪い所は、自分の方が知っている。
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青井はデスゲームプレイヤーだ。もうすでに5回参加し、生還している。3回目は探検家の衣装で、迫りくるワニの大群を撃退するゲーム。4回目は鑑識官の衣装で、1人の犯人を見つけるゲーム。5回目はゾンビの衣装で、自衛官側の領地に足を踏み入れるゲーム。青井は特に問題なくゲームをクリアした。
ただ、本人は常に思い悩みながらゲームに参加していた。こんな世界にいるのはおかしい、私がいるべき場所じゃないと思っている。しかし、「必要があるならば、人を殺す事は仕方ない」と割り切っているかのように、身体は躊躇せずに武器を持ち、相手を人だったものに変えてしまう。知らない誰かに操られているのではないかと錯覚するほどに。望んでいないのに、彼女はこの世界に慣れ出してしまっている。
それに、外の世界に彼女の心の支えとなる人は、この裏の世界にしかいないのだ。
「嫌だなぁ。私には本当にこれしかないのかなぁ…」
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「あの子はデスゲームの申し子ですよ」
青井のエージェントは、同僚と自身の担当について自慢しあっていた。名前をトウダと言う。と言っても、名前はエージェントになる前に捨て去ったので、偽名ではあるのだが。
「確かにな…1回目で死ぬと思ってたけど、2回目からは人変わったみたいに冷静だったもんな」
「あのためらいの無さは見事なもんですよ!絶対他のゲームでも活きる!」
正直、デスゲームの送迎をしながら一緒に話しているだけではあるのだが、青井が褒められていると自分まで嬉しくなる。
「トウダさんってさ〜、あの子の専属になってから変わったよね〜。なんか明るくなったっていうか…」
トウダも、そうなっている自覚はあった。今までも同僚と話すことはあったが、ちょっと機械的にしゃべっていた。今は素の自分を出せている気がする。この世界に入っている方が、よっぽど普通に生きられている。はみ出し者には、はみ出し者の世界が必要だ。
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青色とオレンジ色が混ざり合う時間に、青井は図書室で本を読んでいた。友達がいない青井にとっては、ここが心を安らげられる避難場所なのだ。
本は色々な事を教えてくれる。私には考えつかないような事に気付かせてくれる。たくさん話を聞かせてくれる。お礼に素敵なお話を返してあげられないことが時々嫌になってしまうけど、それでも本は、青井と友達になってくれる存在なのだ。
「どんな本を読んでるんですか?」
突然話しかけられ、肩を跳ねさせながら目を合わせる。
濃い綺麗な黄色の目、短く切られた黒い髪、ちょっと首が痛くなりそうな高い背丈。いつしか出会ったあの人にどことなく似ていた。学校の先輩だろうか。
「いきなり話しかけてすみませんね!いつもいるから本好きなのかなと思って。」
「えっ…えっと……古代文学です…」
「へぇ〜凄い!難しくないですか?」
「そうですね…でも、だんだん面白くなってきます」
「へぇ〜、どんなところが好きですか?」
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その人は、ずっと話を聞いてくれた。たくさんリアクションしてくれて、心地よかった。ちょっと話しすぎて、気づけば10分くらい経っていた。
「ご…ごめんなさい」
「いや、感動しましたよ…凄いな…これしか言えない…」
「べ…別に凄くなんかないですよ…」
つい癖で、自分を落とすようなことを言ってしまう。辞めたいとは思っているけれど、なかなか治らない。ましてや、相手は真っ当に生きている人間だ。デスゲームに手を出すような人じゃない。
「い〜や凄いですな!私、文章読める人は皆尊敬してます」
「そ…そんな褒められることでは…」
「いやいや!だって私には出来ませんからね!」
なんだかすごく褒められている。しかも本を読んでいることに対して。青井には到底理解が追いついていなかった。
「それに、本って言いたいことを一方的に投げてくるじゃないですか?それに反論したり出来ないのがなんか嫌なんですよ。だから、それを受け入れて、そういう考えもあるねって受け取れるのは凄いと思いますね」
私と真反対な存在だな、と青井は思った。この人は私と違って、些細な事を凄いことだと考えている。さらに、本を「話しかけてくれる友達」ではなく、「言いたいことを言う他人」と捉えている。でも、それは素敵な考え方だと思う。
「私は…凄くないです…」
「そんなに謙遜しなくても…凄いところが無いんじゃなくて、自分で気がついていないだけなんじゃないですかな?」
「…!」
何故か心がスッとしたような気がした。
「その表情をみるに…あっ、やべ。塾の時間…行こう。間に合わなかった時はサボるか…じゃあ、ありがとう!」
そう言うと、彼女は図書室を急いで出ていってしまった。
ありがとうを言いそびれてしまった。
「私って…もっと出来ること…あるのかな…」
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「素敵な方だったんですね」
そう言う話を青井から聞いた。そういう人が、誰かを救う人なんだろうと心から思った。
「初めて言われて…、トウダさんに褒められた時のこと思い出しました」
いやいや、その人ほど上手く褒めることは出来ていない。流石に過大評価だ。なんて思っていると、そろそろ眠らせるように指示が来た。
「時間です。薬を飲んでください。今日も話せて楽しかったです。」
「はい…私も楽しかったです。また…よろしくお願いします」
「こちらこそ。それでは、また今度」
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「あんなに人と会話を嬉しそうに話すのに、ゲームでは…たまらないな…!」
今回も興奮が収まらなかった。今回のゲームではペアを組んで攻略していったのだが、最後の最後で片方と殺し合いをする必要が必要が出た。しかし、流石は青井、一方的な殴殺で終わらせたのだ。使い方は違うが、つり橋効果的なものである程度は情が湧くはずなのだ。しかし、今までのこととは別と言わんばかりに平気で頭を叩き割った。やっぱりイカれている。でもそれが素晴らしい。
「彼女の生きる道はここしかない!ここしかないんだ!」
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その後も彼女は、次々とゲームをクリアしていった。プレイヤーをトロッコで轢き殺すこともあれば、首を掻っさばくことも。心臓を一突きする事だってあった。しかし、不必要な殺人は決してしなかった。あくまで、生き残るための必要な殺人のみをこなしていた。だからこそ、彼女は殺人鬼ではなく、プレイヤーである事を指し示していると思う。しかも、観客の間で続々と人気が上がってきているようだ。1人でも多く、彼女の姿を目に焼き付けてほしい。1人でも多く、彼女に目を向けてほしい。
そのためには、なんだってやってやる。
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「私って、デスゲームじゃないと駄目なのかな…」
青井は薄暗い寝室で眠れずにいた。デスゲームから帰ってきて、目覚めた時間から時間がたっていないからということもあるが、この事で頭がいっぱいだったからだ。
デスゲームに参加していれば、トウダさんに褒めてもらえる。幽鬼さんにも出会えるかもしれない。それに、何も考えなくとも、身体が勝手に判断を下してくれる。きっと、この世界のほうが得意なのだろう。
でも、心は普通に生きたがっている。殺人なんてしたくない。趣味の本を読んだり、編み物をして過ごしたい。それに、まだ一人だけど、普通の世界の人に私を認めてもらえたんだ。私も普通に生きられるかもしれない。
「私は褒められたくて、この世界にいるのかな…。誰かのために生きていたいのかな…ならデスゲームに参加し続けた方がいいのかな…」
ひとまず青井はそういうことにしておいた。
それが、違う事に気付くまではもう少し時間が必要だ。
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読んでいただき、ありがとうございました!
青井さん、苦しい思いさせてごめんね