初めての二次創作も最終話となりました。
それでは、数分間だけお付き合いくださいませ。
「考えても仕方ない事」が大きな希望になるのかもしれない。
(0/11)
「ゲームクリアおめでとうございます。」
「はい。ありがとうございます。」
いつも通りの言葉を交わし、青井を車に乗せる。ファンタジーに出てきそうな衣装なのに、文明の利器の権化のような乗り物に乗せられる様子は、少しシュールだ。そんなことをつい考えてしまったが、そんなことよりしなければならない事がある。
「青井さん、運転しながらで申し訳ないのですが」
「はい?」
「あの時、怒鳴ってしまってすみませんでした」
「…」
「辞めたいって聞いた時、そんな様子を感じたことは微塵も無くて…びっくりしてしまいました。それに、デスゲームで活躍するあなたをずっと見ていたいと思っています。青井さんの存在にとても助けられていた部分もあって、それが無くなってしまうことが怖かったんだと思います。」
本当に情けなく思う。大人が道を奪うなんてあってはならないことだ。私はあの時から本当に成長していない。
「本当にすみませんでした」
「いいですよ」
許してくれなくていいと思う暇もないほど、青井はそう答えてくれた。
「私も一人で抱えてしまったんです。ずっとずっと抱えて、限界になってからトウダさんに話してしまいました。私も、もっとトウダさんを頼ればよかったって思っています。」
話を聞くと、2回目のデスゲームから悩んでいたことを打ち明けられた。ここまで気づかないなんて、なんて私は駄目なんだろう。
「お互いさまです。仲直りしませんか」
(1/11)
「ゲームクリアおめでとうございます。幽鬼さん…何かありました?」
「うん…面と向かってお別れを告げられてさ。この世界なら、貴重な機会だなと思って」
「そうですね。…すごくいい表情な気がします」
「そうかな?」
幽鬼は青井に対して、何か特別な感情を自覚してはいないが、妙に心に残る人物として刻まれているようだった。
「青井。グッドゲーム」
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「トウダさん。私…」
覚悟は出来ていた。彼女はもう自分でどうするか決められる。私がいなくても、立派に歩いていけるだろう。どんな道を選択しても、真正面から受け止めよう。
「デスゲーム辞めます」
(3/11)
私は、何も言わずに人との関係を切ってきた。記憶をいじってもらって、無かったことにしようとしてきた。その方が楽だったし、辛い思いも少しで済んだ。そうやって、必要な痛みから逃げてきた。
でも、青井はさようならを直接伝えてくれた。昔のことを正直に伝えてくれた。一人で抱えて、無かったことにはしなかった。辛い思いをたくさんしただろうけど、逃げなかった強い青井はずっとそこにいた。私よりずっと、ずっと大人だ。
それに、この別れは私に対する「罰」だと思った。私が関係を切りたくない人。支えとなってくれた人。こんなはみ出し者の世界で出会えた、奇跡的な出会いをした人。そんな人に、別れを直接告げられる。何も言わずに離れられるより、よっぽど残酷だ。
(4/11)
「分かりました…」
デスゲームを辞めるプレイヤーに対して、「また参加したくなったら、連絡してください」のような声掛けをするように運営から言われていたが、そんなことを言うつもりは無かった。
「こんな何もない私に、幸せな時間をくれてありがとうございました」
「いえいえ。それに、何もない事無いですよ。初めて送迎してくれた時、褒めてくれたじゃないですか」
それは、青井が凄いだけじゃないかと思う。
「編み物のことを褒められたのは初めてで…言われるまで、長所だと思ってなかったんです。それに、今回はここが良かった!って些細なことをたくさん褒めてもらいました。だから、トウダさんは、『長所をたくさん見つけられること』が長所なんだと思います」
「!」
そんなこと、言われたことが無かった。
「えへへ、お互い長所に気づいてなかったんですね」
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その後は、時間が許す限り、いろいろなことを話した。内容を言ってもいいけれど、この時間は、最後の二人の時間だった。何でもない普通の話、これだけは秘密ということにさせてもらいたい。
(6/11)
「では、睡眠薬を飲んでください」
「はい…」
青井は錠剤を押し込むように、口に入れようとする。しかし、中々手が口元に届かない。
「ごめんなさい。これを言ったら、また寂しくなっちゃうと思うんです…けど、いいですか」
「はい」
「また、会えますか」
この世界から離れるために、幽鬼とトウダには聞いてはいけないことだと分かっていた。でも、忘れてもダメだと思うから。結局二人に聞いてしまった。
「…えぇ。ここではないどこかで」
「…はい!では、さようなら!」
青井のエージェントは、縁を切られてしまった。
(7/11)
バックミラーには、すやすやと眠る青井の姿がある。ここからは、ただ静かにプレイヤーを施設に送り届ける時間だ。その施設は、プレイヤーを元居る世界に返すために、着替えさせたり、手足を引っ付けたりするところである。
この時間も最後になってしまうことを自覚するなり、また寂しい思いでいっぱいになってしまう。もっと話しておけばよかったな。遊園地とかどこかに連れて行ってあげても良かったかもしれない。次の子に対しては、そうしてあげられるかもしれない。しかし、もう青井に対しては不可能になってしまった。時間は残酷だなと改めて思った。
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「青井さん、辞めるの!?」
「うん」
青井を自宅に送った後、同僚と話す時間があった。自分の様子を見て心配してくれたのだが、案の定のリアクションをされた。
「もったいないな~。99回行けそうな雰囲気合ったのに」
「…」
「まぁ、どうするかはプレイヤーの自由だし。仕方ないか」
「そう思いたいんですけど、いざいなくなると…応えますね」
「そりゃあねぇ…自分も愛着沸いた担当が死んじゃったら辛いもん」
「しばらくは仕事休みたいです」
「そうしよ。ついでに自分も休んじゃお」
こんな普通の会話も、青井がいなければ今も出来ていなかったと思う。本当にたくさんのものをもらったな。
(9/11)
数か月がたった頃、観客たちはある話題で持ち切りだった。無論、青井の姿が一向に見えないことである。
「青井ちゃん辞めちゃったの~?」
「そうらしいんですよ。もう見られないって」
「賭けの安定枠だったのに…また探さなきゃな」
「は?そんな目でしか見てなかったんですか?プレイヤーとしての素晴らしさを全く理解していない?」
「どうした急に」
「楽しみ方が違いますよ!本来の楽しみ方を教えてあげます!!!」
青井の姿を見なくなってから、観客たちは驚きを隠せないでいた。反応は様々だったが、戻ってきてほしいという意見は一致しているようだった。抜けた穴はかなり大きいように思えた。
(10/11)
さらに数か月後には、青井に関する話題は一向に見られなくなっていた。人の噂も七十五日という言葉は割と信憑性が高い言葉だと思う。でも、彼女はこちらの世界の住人ではないのだから、それでいいんだ。
そんなことを思っていると、あるプレイヤーが車に向かって歩いてくる。新しく担当することになった少女で、かなり引っ込み思案なプレイヤーである。でも、罠を見極める力が高く、今回はそれを活かしてうまく立ち回っていた。
「すごかったですね」
「!……ありがとう…ございます」
今は、いいと思ったことを隠さずに、出来る限り伝えるようにしている。
私は長所をたくさん見つけられる力がある。教えてもらったことを、存分に活かしていこう。
(11/11)
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!!!
いざ書いてみると、文字だけで伝えることの難しさが身に沁みました。それに、自身の語彙の無さも痛感したので、もっといろんな本を読もうと思います。
もしよろしければ、Xの方で感想をいただけると嬉しいです
改めて、ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!!!
エテクロ