満ちる月を越える者   作:業火の跡地

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伊織の一口メモ
かぐやが来てからかぐやが深夜配信を決行した時は少しでも静かにと言うことで伊織の部屋で寝かしていたり伊織の部屋でやらせてはいた
が、伊織の見積もりが甘かった


彩葉の限界、イオリ道場

伊織は今日もバイトである

本日は立川駅近くで行なわれているイベント警備。と言っても海ほど治安は悪くないため出番は無い。はっきり言って暇だった

その間、上司と話に興ずる

 

 

 

「隙じゃ」

「警備が暇なのは良いことだぜ伊織君。そう言えばこの間の海の女の子達は友達かい?」

「おう。よか友じゃ」

「いやぁ、最近の子は派手だねぇ。あんな長い金髪なんかあんまり見ないし。あ、もしかしてこの手の話嫌だった?」

「よか」

 

 

 

そしてもうすぐで昼休憩、というところで伊織の携帯が鳴った。着信元はかぐやである

 

 

 

「すいません。ちょっこ離れます」

「おう。任されたぞ〜」

 

 

 

ささっと裏へと向かい、電話に出た。一言でかぐやの声は焦りが分かった。只事ではない

 

 

 

『伊織!彩葉がアチアチで!』

「どした?あちあち?・・・わからん。落ち着け。一つずつぞ」

『えっと、外で蹲っちゃって、体とっても熱くて、汗も酷くて』

「かぐや、熱中症の症状ぞ。近くに涼しい場所か日陰はあっか?」

『えっと・・・あ!入れそうなビルがある!』

「一度そこに避難させい。俺も行く。場所だけ送ってくれ。平気ば言うても絶対動かすな?」

『分かった!』

 

 

 

伊織は即刻上司に早退の旨を伝え、その場に置かれていた熱中症対策用品を持たされ快く送り出された。感謝である

そして、自分を激しく責める。無理しているのは分かってたのに何故コレを止められなかったと

 

 

 

「すんません。今度お礼は」

「伊織君一人居なかったくらい平気だ。早く行ってやりなさい」

「助かりもす!」

 

 

 

丁度かぐやの現在地が送られてきた

近くのビルのエントランスへと避難したらしい

ここからそう離れていない。その間に芦花と真実へと連絡を飛ばす

 

 

そして少し走ってかぐやの待つビルのエントランスへ。気を利かせたビルの人が水をくれたらしくそのお蔭で顔色は大分良くなっていた

 

 

 

「助かります。んじゃかぐや、帰っぞ」 

「伊織?彩葉、大丈夫?」

「多分の。周りに助けられた。後は俺らの番ぞ」

 

 

 

伊織がさっと彩葉を背負う。少し冷えたようだが大分暖かい。体が弱って一気にガタが来てしまったのだろう

伊織が体を揺らさないように小走りで家に帰る

 

 

 

===彩葉の家=== 

 

彩葉はいつかの父親の背中に背負われていた温かく心地が良かった。だがソレは夢、夢は醒める

 

 

「お、目ば覚ましたか」

 

 

氷嚢を取り替えていた伊織と目が合う。ゆっくりと上体を起こそうとしたが伊織に抑えられた

 

 

 

「・・・伊織?ヤバい。バイト!」

「あ、彩葉、しんどい?」

「平気、」

「んな訳なか。この程度振りほどけんのじゃろ」

 

 

 

伊織が額に指を置いている。それでも彩葉は上手く力が入らない。起きれない

 

 

 

「バイトの連絡ならかぐやにさせた。着替えと汗拭ば芦花にやってもろた。今は休め」

「ここまで伊織が運んでくれた・・・彩葉ぁ、もう休んでぇ」

 

 

 

彩葉がバイト先へのメッセージを確認すると、確かに連絡が入れられていた

 

 

 

「あ、ありがと」

「あと!病院、病院行こ!」

「これ以上休めない。全部ギリギリで予定組んでるから何日も休んだらもう追いつけないよ・・・

そしたら奨学金も・・・出ないかも」

「だから今は薬飲んで休め。疲れば取って万全で復帰せい。そんほうが後から楽ぞ」

「・・・彩葉、なんで彩葉はそんなに一人で頑張らないといけないの?」

 

 

 

かぐやが涙を零しだした。伊織も伊織なりの優しさを込めて言葉を紡ぐ

 

 

 

「確かに、彩葉に滅茶無理言っちゃったし

彩葉ぁ、死んじゃやだぁ〜!」

「べ、別に死にゃしないよ」

「映画とかだと人間って直ぐ死ぬじゃ〜ん」

 

 

 

ジタバタするかぐや。そして、根負けした彩葉が語り始めた。家族の事、なんで東京に来たのか、どうして一人で頑張るのか

 

 

 

「───それで、学費も生活費も一人で賄うならって折り合いついたんだよね」

「えらく簡単に言ってるけど、皆そんな事してなくない?」

「お母さんは、それくらいのこと平気でしてたし、私も譲らなかったし」

「・・・」

「今でもこの部屋で最初に目を覚ました時の事、覚えてる。今日から一人で生きるんだって。ラッキーって思った」

「いややっぱり彩葉のお母さん激ヤバ可笑しいってー!おーかーしーいー!」 

 

 

騒ぐかぐやをみて、ふと彩葉が溢す

 

 

「・・・かぐやには、ううん」

「分からん、か?そいはそうぞ」

 

 

 

今まで黙って聞いていた伊織が口を開いた。彩葉の言葉を否定はしない。が?

 

 

 

「どんな時に何を思うたか、心の内は他人には分からん。俺も酒寄彩葉の事がよう分からん。逆もまた然りじゃろ。じゃっどん、何となく分かる事もある。そういうもんぞ。多分考えることが大事なんじゃろう」

「結局何にも言ってなくない?」

「理解しようとするのは辞めてはいかん。ちゅう話ぞ。こうやって腹割れるならよかけどの」

「ねぇ、伊織は、どうなの?」

「どうとは?」

「伊織はさ。なんであんなに強くなろうとするの?」

「・・・聞いて気持ちの良い話ではなかぞ?」

「聞かせて!伊織の事も」

 

 

 

かぐやに聞かれた伊織も話し出す。両親と妹の事、そしてそれを喪い壊れたこと。忌み子扱いで一人で生きてきたこと。人を信じられなくなった事、しかし全ては話さなかった。思い出したく無かった

 

 

 

「北海道に、今の義実家に引き取られてからじゃの。優しい人に触れて一段と厳しい自然に触れて、少しずつ人に戻ってった。んで、社会勉強してこい言うちここん放り込まれた。強さを求めるんは性分ぞ。理由なんぞ当の昔に擦り切れとる」

「伊織も、大変だったんだ」

「もう全ては過去の話ぞ。今更蒸し返すもんでもなか」

「伊織は、やっぱり強いよ」

 

 

 

彩葉が言った。しかしまだ弱いと伊織は言う

そんな話をしていると、鍋が吹きこぼれた

 

 

 

「あ!」

 

 

 

かぐやが急いで火を止め、作っていた料理を皿に盛りつける。料理の中には伊織が持つ北の大地で採れた熊の胆や鹿茸などをかぐやの料理に混ぜさせた。少しは体の負担を軽減出来るだろう

 

 

 

「かぐや、後任せていいがか?」

「うん!かぐやに任せんしゃい!」

「よか返事じゃ。後ば任せた」

 

 

 

そして伊織は自分の部屋へ。芦花と真実に彩葉の無事を連絡し伊織は一人、ツクヨミへ

そしてRANSEへ。彩葉を倒れさしてしまった自分に嫌気が刺していた。フォローはしていたつもりだった。これもただの八つ当たりに過ぎないのは理解している

これからどうしていけばいいのやら

そんな事を考えながら無心で目の前や死角の敵に棍棒を振るう。なんか途中雷やおこってるも居た気がしたが気付かず打ち倒したらしい

 

 

これを数度繰り返していると、真実から連絡。プライベートスペースへの招待状が添えられていた

 

《彩葉回復したみたい。改めてお礼言いたいみたいだし来てほしいな》

 

(行くか。後で現実でも平気か見極めんとの)

 

 

そのまま招待状を受諾しツクヨミ上の真実のプライベートスペースへと転送された

 

 

===真実のプライベートスペース===

 

「お疲れさん」

「あ、伊織じゃーん、おつー」

「私の家にいらっしゃ~い」

「酒寄、もう平気なんか?」

「うん。もう大丈夫。今夜はきっちり休ませてもらいます」

「ならよか」

「そこのお転婆兎も、ちいと自制しい」

「うん・・・分かった」

 

 

 

露天風呂に入っているかぐや、思ってた反応と違った。余程堪えたようだ

そして、ROKAが話を変えた

 

 

 

「でもねーヤチヨカップも良いところまで行ってんだけどね。やっぱつよいね。黒鬼」

「とーぜん!帝様だも〜ん」

「真実の裏切り者〜」

「二推しでかぐやも推してま〜す」

「いや〜!かぐやだけにして!」

「帝か・・・」

「んー?KASSENでなんかあったん?」

「呼び付けられて性根が気に食わんかったから叩き斬っちょった」

「ぐぬぬぅ、帝出てこい!勝負しろー!」

「ならかぐやvs帝ってのは?世紀の竹取合戦」

「それだ!」

 

 

 

ナイスアイデア、とそれを採用しようとしたが

 

 

 

「マジで無し!相手はプロゲーマーだよ。格が・・・イオリとは釣り合うか」

「俺も嫌ぞ。あいつの面は当分見たくなか」

 

 

 

保護者2人がこの様である。帝が兄である事に気がついている彩葉と家族への価値観の違いで一方的に斬り伏せた伊織。ツクヨミ内でも殺気が漏れていて、帝様と一体何がとあたふたとするまみまみ

かぐやを横目にソファに飛び込むイロ

 

 

「むー、このままお迎えが来てもいいの?!」

「来るなら来てくれー、早く連れて帰ってくれー」

「あー、また意地悪言ってるー!」

(・・・心にも無いこと言っとるの。じゃっどん)

「かぐや、帝に関わりたくないんは2人の総意ぞ。こればっかりは諦めい」

「うーーーー、あそれハッピーエンド!あそれハッピーエンド!」

 

 

諦められないかぐやの小躍りとツンッとしたイロ、刀に手を掛けているイオリ

心配そうに見つめるROKAと魚釣ってるまみまみ

 

そんな中、かぐやの元へ一通のメッセージ

目を輝かせるかぐや、メッセージを覗き意識を手放すイロ、それを受け止めるイオリ、大物を釣り上げたまみまみ。そのメッセージに目を通して、更に怒りを覚える伊織

帝からのKASSENコラボの誘い。と言うか求婚

 

 

 

「かぐや、先言っとく。俺は出ん」

「えぇーーー!何で!」

「かぐや、己の力で勝ちたか?」

「勿論!」

「じゃあ尚更ぞ」

「あー、そういう事?」

「どしたの芦花?」

「イオリは強いよ。でもイオリが出たらイオリが勝ったって思われちゃうからってこと?」

「ほー?」

 

 

 

今ばかりはイオリの強さが原因だった。

KASSENのルールによるがSENGOKUでも負けはない。だが面白い勝ち方は出来ずイオリが出てしまったら出来レース扱いになりかねない

 

 

 

「相違なか。そうじゃ、真実、もう一人はお前が出い」

「えぇっ!?私が帝様に!?」

「おう」

(諫山の普段見とると、多分平常心は保たれん。

それでよか。上手く嵌まれば・・・)

 

 

 

数年前にやった悪事を思い出していた

 

 

 

===RANSEプライベートマッチ===

 

マップの中にある湖上のステージの上。かぐやと付き添いのいろP

だがかぐやは正座させられていた。 

 

 

 

「格上の敵に手の内見せる阿呆が何処におる」

 

 

 

正座の理由はその一言に尽きていた。実力差は圧倒的。ならば初見殺しや戦略で戦うしかない

しかしかぐやはイオリの授業を配信していた。本当に勝つ気があるのかとかぐやに対してが上の言葉である

 

 

 

「まあ、イオリ。良いんじゃない?前のも好評だったみたいだし」

「イロもか・・・まあ、よか。かぐや、最初は座学ぞ」

「はーい!」

「よか返事じゃ。まず黒鬼で一番警戒しないで良かのはアレ、帝ぞ」

 

 

〈は?

〈は?

〈あー、そゆこと

〈帝だぞ?

 

 

 

「アレが落としやすいんはランカー共通認識ぞ」

 

 

 

〈そうですよねぇ

〈怖ぁ

〈そんなん言えるのお前らだけ定期

 

 

 

イオリ曰く、スキルはあるし動きも良い。だがどちらかと言えば前衛で正面から来る

乃依や雷より前に出てくるので落としやすく搦め手も使ってくるがタイマンなら

と言うのがランカー達の総意であった

 

 

 

「たまに雷がアイツ餌にするから油断は出来んがの」

「えーっと?つまり正々堂々くるからあんまり身構えないでいいってこと?」

「まあの。次、乃依。イロ、お前は乃依どうやって落とす?」

「えっと、鈍足矢もあるしエイムも良いし奇襲で一気に決めたいかな」

「正直かぐやは一番相性が悪か相手ぞ。じゃっどん鈍足矢は鏃が当たらんと効果はなか。斬るなり叩き落とすなり無問題じゃ。掴んで突き立てれば相手に鈍足返せるしの」

 

 

 

〈それが出来るのイオリだけだろ

 

 

 

「そんな事なか。杖おじもランナもやっとる。飛び道具無しでまともに張り合うのも面倒なんじゃよな。何もないならイロの言う通り奇襲、急襲した方が圧倒的に狩りやすい。後は矢を弾き続けるとかの」

「弾き続けるかぁ、それ中々大変だね」

「んじゃ最後、雷。雷は一番の警戒対象ぞ。帝や乃依が目立っとる内に勝ち筋組み立てちょる。何度か黒鬼と刃交えとるが一番厄介なのは雷じゃった」

 

 

 

過去にイオリが黒鬼3人と戦った時に真っ先に狙ったのは雷の首だった。現実の延長線にあるイオリ流ツクヨミ戦闘術において芦花のネイルファンネルや雷の扇ビットは現実に存在しない故に少し対処に迷う武器種なのだ

 

 

 

「たまの地雷も、死にゃせんが鬱陶しか

じゃっどんやりようはある。扇なら大味、懐入り込めばどうってことなか。錫杖は浮いとるパーツの間縫って首狙えばよか」

 

 

 

意図的に言っていないこともあるが一対一の対応策はざっとこんなもんである

 

 

 

「うーん、分かったような、分からないような?」

「雷以外の戦闘スタイルなら真似れっど。あとはひたすら実戦形式ぞ」

 

 

 

そして、イオリ道場開幕。取り敢えずイオリ基準で抵抗出来るだろうくらいには鍛え上げるつもりだ

そして何度かかぐやの首が胴体とバイバイした

 

 

 

「だぁー!イオリ強い!」

「こっでもアレ基準に落としとる。次ぞ」

 

 

何度か射抜かれた

 

 

「ぜってー負けねー!」

「威勢もよか。動きも鋭くもなっとる。イロ!おまんももう少しかぐやを頼れい」

 

 

 

何度か倒された

 

 

 

「やぁっー!」

「よか攻撃じゃ。じゃっどん見えとるぞイロ!」

「くっ、」

「かぐや!当てたと思うて気い抜くな!そん慢心は命取りぞ!」

 

 

 

 

イオリが激を飛ばす。数度の模擬戦の果て、そしてが配信終了

 

 

 

「ふむ。二人ともよか。瞬殺されることは無くなったじゃろ」

「えへへぇ、褒めてぇ」

「よか」

 

 

 

配信外の真実のプライベートスペースを借りて2人に少しのアドバイスをし始めた。かぐやが頭を擦り付けてきたのでそのまま撫でてみる

 

 

 

「アレはいつも言っとる。夢見せなきゃいかんちな。それはよう分からんがアレは負けず嫌いぞ」

「ウンウンそれで?」

「自分が有利ん間は舐めてかかられる。そいを上手く使え」

「舐められてるのを、上手く使う・・・」

「おう。かぐや、お前は阿呆じゃ。じゃっどん頭ば回る。配信では上手く隠しとるんじゃろ」

「フムフム、それを武器に、うん!ありがと伊織!」

「イロも、こんな無茶によう付き合うたの」

「いつか決着は付けないとって思ってたし、丁度良かったのかも」

「ならよか。イロ、また倒れそうなったら遠慮なく言うてくれ。止まり木くらいにはなろうさ」

「・・・ありがと」

「あ〜。彩葉照れてるー」

「ちょっとかぐや!?」

(騒がしいの。じゃっどんこれもよか)

 

 

最近、視界がどんどん色彩を取り戻し始めていた

それと同時に自分の変化にも恐怖がある

だが弓の先生に言われた。この雑念は良きものではないか。と何か腑に落ちたが、よく分からないままなのだ

 

 

 

(かぐやのせい、いや、お陰なのかの。そいにしても、良く似とるのぉ)

 

 

 

かぐやの動き方がヤチヨと酷く似ていた。ヤチヨのほうが洗練されているが根本が同一だと伊織は感じ取った。まるで近しい縁者のような

 

 

 

 

(俺、かぐや、ヤチヨ・・・月見ヤチヨは一体なんぞ?ないでこんな事が?)

 

 

 




次回 かぐやVS帝 世紀の竹取合戦開幕
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