満ちる月を越える者   作:業火の跡地

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伊織の一口メモ
伊織は観察力が高い。故に芦花や真実も気づかなかった彩葉の本質に勘づいている。だが感情を推し測るのは苦手であったが、最近何となく感情も分かるようになった

因みに今の伊織をスパロボ風精神コマンドで表すと
集中
分析
閃き
???
???



コラボライブ 伊織の進む先

===三人の家===

引っ越しから数日、明日はヤチヨとのコラボライブ本番。最近色々ありすぎた

伊織がキッチンで食器の片付けをしている傍らでかぐやは彩葉のパソコンを弄っていた

三人での生活はとても楽しいもので、暖かく、久しいものだった

 

 

 

「お、なにこれ?・・・すっげー!」

「どした?」

「伊織ー!凄いよコレ!」

 

 

 

かぐやが伊織の耳にイヤホンを押し込む

そこからメロディが再生された。明るい曲調に心が惹かれる。が、一部のリズムに聞き覚えがある

そして、ファイル名を見ると

 

 

 

「・・・彩葉と共作?」

「なんか途中までなんだよねぇ」

「かなり前のもんじゃの。もう1回聞いてもいいか?」

「うん」

 

 

 

多分本人が京都に住んでいた頃だろう。ファイル名から推察するに、亡くなった父親と作っていた曲だろうか?

もう一度聞いた。やはり最近聞いたことのあるリズムが混じっている。だが、どこでこのリズムを聞いた?

 

 

 

「本人に聞いてみぃ。俺は何も分からん」

「わかった!」

 

 

 

そう言って階段を駆け上がり、彩葉の部屋へと突撃していった

 

 

 

「最近聞いたと言えば、かぐやか?いや、流石にそんなら直ぐ分かるな」

 

 

 

食器乾燥機に入れて一段落

かぐやの曲なら振り付けを見るときに一緒に聴いているので分かる。そこ以外で、記憶に残る聴き方をした・・・

ライブ?違う。かぐやの配信?かぐやが気付かん言う事は無いか?それよりも前・・・彩葉・・・あ

 

 

 

「彩葉ん子守歌?確か・・・りめんばー?」

 

 

 

手元の携帯で検索、数度聴き返して『大切なメロディは流れてるよ』そこのリズムと完全に一致している

 

 

 

「まさか・・・の」

 

 

 

疑念が形を持ち始める。あの曲はいつ作られたものなのか、それだけ確かめておこう

その日の夜、彩葉の部屋を訪ねた

 

 

 

「彩葉、良いかの?」

「かぐや寝てるから、小声でね」

「やっぱ彩葉と引っ付いとるんか」

「これじゃ寝室分けた意味ないよねー」

「じゃの。じゃっどん良か寝顔じゃ」

 

 

 

幸せそうに彩葉の布団で寝るかぐやの頭を撫でる伊織、そして話を切り出した

 

 

 

「気になったんじゃがかぐやが言っとった曲、アレはいつ作ったもんなんじゃ?」

「いつ?えっと・・・もう、10年くらいは経つかな」

「ふむ・・・」

 

 

 

10年前、偶然の一致か、否か。彩葉の父親が何かしらの形で月見ヤチヨと関わりがあったのか?

 

 

 

「ありがとの。考えが纏まりそうじゃ」

「そう?なら、良かったけど。どうしたの?」

「少し、気になることがあっての。じゃっどん今話せる様な話でなか」

「んー?じゃあまた聞かせて?」

「よか。また明日の。彩葉」

「おやすみ、伊織」

 

 

自室に戻り、布団に入る・・・が、眠れない

なんだ?この胸騒ぎは、何かが近づいているようなおかしな感覚が近頃強いのだ

 

こういう時は刀を振るに限る。彩葉やかぐやを起こさないよう家を出て、近所の公園で一心不乱に木刀を振った。だが振り切れない

 

かぐや、ヤチヨと同じ根幹を持つ二人

月から来たお転婆娘と自称8000歳のAI

 

 

そして、日付は回る

 

 

===ライブ当日===

今から準備を整えてログイン、と言った所

 

 

「彩葉ガチガチだよー」

「そ、そりゃ緊張するよ!」

「ふむ」

 

 

 

緊張してか彩葉の動きが全体的に固い。彩葉は上手くやるだろうが、少し手を出す事にした

ゆっくり近付き、呼吸や本人の様子を見てタイミングを掴み、首筋に中指と人差し指を当てた

彩葉が驚きで少し固まる

 

 

 

「そんままゆっくりと深呼吸せい。ゆっくりと大きくの」

 

 

 

彩葉がそのまま深呼吸、本人も脈拍も少しずつ落ち着きを取り戻す

 

 

 

「ありがと、伊織。落ち着いた」

「伊織ー!今の何!?」

「人も獣も大体こんで落ち着くど。宇宙人に効くかは知らん」 

「すっげー!」

「かぐや、後で教えちゃる。今は気持ちば散らすのはよくなか」

「そうだった。よし、いつでもイケる!」

「そん意気ぞ。んじゃ邪魔になるのも申し訳ない。俺の部屋から見とるど」

 

 

そして、ツクヨミへ

 

 

 

===ツクヨミ===

ライブの控え室にイオリとイロ、かぐやが待っていた。準備は万端である

 

 

 

「ダラララララッうさぎ!ダラララララッキツネ!」

「はいはい、可愛い可愛い」

「練習しすぎてお腹減ったー。終わったらパンケーキ食べよ?」

「私は緊張しすぎてお腹入らんかったよ」

「元気じゃのぉ。でもよか。それがかぐやぞ。お?」

「だららららららどっじょう!」

 

 

 

どこからから突然ヤチヨが出てきた。平然と気付く伊織である

 

 

 

「うわぁ!や、ヤチヨ!?」

「おう、ヤチヨ、お疲れさん」

「パンケーキいいな〜、ヤチヨも食べたいなぁ〜」

「一緒に食べる?」

「うぅ、ヨヨヨ〜ヤチヨは電子の海の歌姫なので食べられないのです〜」

「えー!?何それなんの拷問!?かぐや絶対耐えられない!」

「・・・」

 

 

伊織はそんなヤチヨを見て、まるで大きな仮面を被っている。と印象を覚えた

もう間も無く、ライブが始まる時間である

 

 

 

「では、参ろうか」

「おう、いってらっしゃい。しっかり見届けるど」

「行ってきます!伊織!しっかり可愛いかぐやちゃんを目に焼き付けてね!」

「じゃあ、行ってくるね。伊織」

 

 

 

三人を見送った。その後ライブ会場に近い建物の屋上にテレポートし、そこに居たROKA、まみと合流した

 

 

 

「おつー、伊織」

「見送ってきた〜?」

「おう。かぐやも彩葉も必死こいて練習しちょった。楽しみにしとれ。これは凄いど」

 

 

巨大なステージの中央に、先ほど見送ったエレベーターが到着、薄暗いが三人がいる

そして、ステージ全体が照らされた。三人の衣装が変わる

 

 

ヤオヨローー!

皆ー!生きるのどーですかー?

 

良いことあった?それとも泣いちゃいそう?

 

各々の歓声や感想が飛び交う

 

 

うんうん。ぜーんぶ大丈夫

どんなに孤独な道のりでも楽しかったなーって思い出が、足元を照らすよ

この時間を忘れられない思い出にしたいから

どうか、一緒に踊ってくれる?

 

 

 

 

───世界で 一番お姫様 そう言う扱い

 

 

───心得て よねっ!

 

 

 

 

確かにこの瞬間、この世界は三人に魅了され歌姫達のモノとなる

 

 

 

「演出すげー!」

「彩葉もかぐやも超可愛いー!」

「かぐやも彩葉も楽しんどるの。よかよか」

 

 

 

イオリも笑顔で聞き入る

その横ではまみとROKAがサイリウムを振っていた

 

 

 

「世界一好きになっちゃっても良いよー!」

 

 

 

───世界で 一番お姫様

 

 

 

───気が付いてねぇねぇ? 待たせるなんて論外よ?

 

 

 

 

 

曲は流れる。案の定、かぐやは振り付けの幾つかを即興で変えたり、嫉妬して自分のパートを放棄して彩葉を取り合ったり、何処から取り出したのやら星型のサングラスをしたり

 

 

 

 

───ヘイベイビー

 

 

 

 

 

彩葉のヘイベイビーでROKAが撃沈しかけたのをなんとか繋ぎ止めたりして、一曲目が終了

 

 

 

「お次は新曲!いっくよー!」

 

 

 

そのままステージは暗転、三人の衣装が光る

 

次の曲《Ex-otogibanashi》

 

 

 

 

───今は昔 誰もが知る物語 かの有名なかぐや姫はこう言った

 

 

 

───そんな結末ちぃっとも望んでないし! 運命だからって君、それで頷くの?

 

 

 

決められた竹取物語ではなく、かぐやと彩葉、伊織の物語を書く

それは太古の物語か、それとも今の物語か

 

ゆっくりとしたテンポから、一気にサビに向けて駆け上がる

かぐやも興奮で、彩葉も笑顔でキーボードを弾いている

 

 

 

 

───君と今見てるこの景色 何億回思い出したろう?  

 

 

 

───七色煌めいて 

 

 

 

───EX-Otogibashi

 

 

 

 

激しい踊り。かぐやに言わせてもクソむじい

伊織もかぐやと何度も練習に付き合った。何とかギリギリ何とか形に出来た

そして会場の熱気も限界を突破している

 

 

「うむ。良か」

 

 

 

 

───きっと永遠だった 逢いたいと願うまで

 

 

 

───そうよ 

 

 

 

 

三人がステージの中央で彩葉、かぐや、ヤチヨが向かい合う。そして徐々にステージの照明が落とされる

 

 

 

(泣いとる?)

 

 

 

月見ヤチヨの目に涙が浮かんでいた。あれは汗ではない。間違いなく、涙だ

何時もの取って付けたような涙ではなく、本心から流している涙だ。悲しみでは無い。ならば、それは───

 

 

 

───そんな

 

 

 

───おとぎ

 

 

 

───ばなし

 

 

 

 

曲が終わり会場が再び熱を取り戻す

ROKAも真実も感動の涙を流していた。だが伊織だけは別の何かを見ていた。

 

 

 

「すげー!私達の親友すげー!」

「彩葉、凄く楽しそうだった!」

(なんじゃ?俺の中に何が出来とる?)

「おう、隣からかぐや喜ぶ声ばよう聞こえる。楽しかったようで何よりぞ」

 

 

 

何か告白まで聞こえてきたし、何か彩葉もそれに答えてるし・・・

その直後、ぞわりとした感覚が背筋に流し込まれる。己に向けられた殺意では無い。しかし何かが来る

体が本気の戦闘状態へと切り替わった。スマコンが青く光り、槍を手にした

何か、部屋の中に異質なモノが混じっている

 

 

 

「!?」

「ど、どしたん?」

「い、伊織?」

 

 

 

漏れ出る殺気に困惑し慄く二人よ他所に、伊織は片目を開きその気配の正体を探る。

 

─己の脇差

 

直ぐに手に取って鞘から抜いた。月明かりの反射ではない。明らか自発的に、七色に輝いている

困惑した。今までこんなことは一度もなかった

 

 

 

「なんじゃ、これ」

「イオリ!なんか、変!」

 

 

 

まみの声に目を瞑りツクヨミに意識を戻す。空は雲に覆われ、ツクヨミ中でライブを中継していたモニターは月を映し出して、ライブ会場のモニターには

 

 

2030/9/12 2030/9/12 2030/9/12 

2030/9/12 2030/9/12 2030/9/12

 

 

赤い文字で、そう記されていた。まるでこの日に何かを起こすという予告のように

そして、眼下の街ではプレイヤーアバターが謎の赤い灯籠頭の真っ白なスキンへと変貌、それが数を増して三人の待つステージへと昇っている

 

 

 

「い、伊織、これも演出?」

「聞いちょらん、こんなん知らん」

「ちょっとイオリ!?」

 

 

 

既に手には印字槍が握られている。投げの構えだ

灯籠頭の一体がイオリの死角からステージに上がっていた。弓を引く時間も惜しい

二人の静止を無視してその槍を投げた

そもそも今武器を使える方が異常なのだ

 

 

イオリが何故か使えるウルトを使用し、ステージへとかっ飛ぶ

 

 

投げた槍が灯籠を貫くのよりも早く、灯籠頭がかぐやの手に触れてしまう。その直後に投げた印字槍が突き刺さり、そのまま地面へ縫い付けた

 

灯籠頭に触れられたかぐやの様子が可笑しい。力の抜けたような、放心している?

 

その周りには後から上がってきた灯籠頭の集団

 

向かってきた灯籠頭をイロが撃退する・・・刹那別の黒い物体がステージ上へと舞い降りた

 

 

「伏せぃ!」

 

 

周囲に数個の灯籠が舞い散り、切断面から漏れ出た黒い液体が周囲へと飛び散る

 

薙刀を振り抜いたイオリが、かぐやとイロを守るためにステージ上に立っている

 

 

 

「なんぞ貴様(きさん)ら」

 

 

 

二振りの打刀を握り、構える

今までに無い程の怒気と殺気を込めて、灯籠頭を威圧する。少したじろいだがそれでもにじり寄ってくる

 

イオリの槍に貫かれたのと、頭を斬り飛ばされた灯籠頭は見るに堪えない動きでビクビクと小刻みに震えている。はっきり言おう。非生物的で気持ち悪い

 

 

 

「かぐやば頼む」

 

 

 

目線を動かし場所と総数を把握し

反転し背後の奴を二刀で横薙ぎ、そのまま清く流れる水の如く周囲を取り囲んでいた灯籠頭の首や胴体を次々と斬る

黒い飛沫がイオリに飛び散るが関係はない。放心状態のかぐやと彩葉を守る

それだけを考えていた

 

だが、切った部分も這ってかぐやに近付こうとしている

 

そして、灯籠頭が弾けたように飛ばされた。ヤチヨの管理者権限の行使だ

 

 

 

「おいたはだめだよー」

 

 

 

その声色に遊びはない。指の動きに合わせて灯籠頭が弾かれていく

 

 

 

「モウシワケゴザイマセン」

 

 

 

無事な灯籠頭だけが頭をさげて、ぼふんっと煙と共に消え去った。カランと音を立てて刺さっていた槍がステージへと落ちる

ハッとしたヤチヨがMCで不自然にならないよう場を動かした。まるで全て演出だと言うように

 

その場には放心したかぐやと支える彩イロ、黒いタールのような液体を血飛沫の用に滴らせるイオリがいた。刀身の液体を振り飛ばし、納刀

イロが恐る恐る、ヤチヨに聞く

 

 

 

「ヤチヨ、今のって」

「うーん、バグじゃ無さそうだし、やんちゃっ子のイタズラかにゃぁ?調べとくよ」

「・・・」

(申し訳ございません?なんぞ一体・・・運命の荒波・・・月?今のがかぐやの迎え?)

 

 

伊織は、そんなヤチヨを見て運命の荒波という言葉の真意を考えていた

 

 

 

===現実===

 

真っ先に彩葉とかぐやの様子を見に配信スペースへと向かった伊織、とりあえずの無事を確認した

 

 

 

「かぐや、彩葉、大丈夫か?」

「う、うん。私は平気。でもかぐやが」

「ごめん、なんか立ちくらみしちゃった」

「嘘ぞ」

「本当に大丈夫だから!心配かけてごめんね。伊織もとってもかっこよかったよ!それよりもパンケーキ食べよ。お腹減ったー」

 

 

 

そう言ってキッチンの方へと走っていってしまう

 

 

 

「彩葉、何があった?」

「分かんない・・・けど、あれって」

「「月からのお迎え」」

「本当にそうならあの日付、見えとったか?」

「日付?」

「9/12に何かが起こる。そいが多分本命じゃろ」

「今回のは、小手調べってこと?」

「あん灯籠頭があっさり退いた。そう考えるのが自然な気がすっど」

 

 

 

そんな話をしている内にかぐやが早く食べよー!と声をかけてきた。2人も疲れているだろう。

 

 

 

「風呂ば入れてくる。考えるのはまた今度にしようさ」

「そうだね…」

「・・・」

(参っとる・・・いや、かぐやが居らんくなる事を怖がっとる。それなら俺は)

 

 

 

伊織は、自らの成す事を定めた

 

 

 

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