満ちる月を越える者   作:業火の跡地

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かぐや電撃卒業!奔れ、伊織

===かぐや卒業ライブ会場===

 

このライブの主役であるかぐやが、天守の上に立つ。眼下に広がる広大なKASSENのフィールド

天空にはライブの観戦席が浮いている

 

そして、スポットライトに照らされた

 

 

 

「皆っありがとーっ!」

 

「今日でお別れなんだけど、悲しくはしたくないんだ」

 

「だから!ハッピーに卒業させて」

 

 

開始の挨拶をしたとき、上空から7つの桃が天守の中断へと振り注いだ

 

その中には黒鬼の3人、ROKA、まみ、イロ、そして先頭には4振りの刀を携えたイオリ

 

 

 

「かぐや!ライブの余興・・・もし勝っちゃったら、ドンキで買い出しして、パンケーキ食べよ!」

「もしもじゃねぇ。勝つんだろ?」

 

 

 

やる気マックスの帝達、そして、伊織が鞘に入った脇差をかぐやに掲げる

 

 

 

「後は任せい」

 

 

 

そう言い、イオリはフィールドへと向き直った

それらを見たかぐやは、とても嬉しそうに笑うのだった

 

 

 

「そっかぁ、そっかあ!皆っ自由だ!」

 

 

 

イントロが流れ出す。《瞬間、シンフォニー》運命を受け入れてしまった少女の明るいようで、切ない旋律を奏でる曲

 

呼応してかツクヨミのミラーボールが、変質する

宇宙へと繋がり、月へと変化そこから白い大きな地蔵菩薩のような月人が姿を現した

他にも異形の人型や金魚にも獣にも見える月人などが七人現れた。その中でも異質なのが一体

 

背中に炎のような装飾を纏う青黒い肌?の細身のスポーツマンのような。倶利伽羅剣と数珠が編み込まれた羂索みたいな物を持った奴がいる。名付けるとしたら、ミョウオウ型か?

 

伊織が直感した。あいつが一番強い

 

 

 

「あれが、かぐやの」

「纏めて、撫で斬りぞ」

 

 

 

どんな明日が来ても 笑えるように今を生きていこう

 

 

そうやって決めたのに かわらぬ今日を夢見てしまうよ

 

 

七人の月人と大きな菩薩から次々と灯籠頭が送り出される

 

次々と出陣するかぐやを守る戦士達

イオリも薙刀を持って、走り出した

 

各々が配置に付く

 

まずは、向かってくる雑魚の灯籠頭、もといリョウサン型の首や胴体を斬り飛ばし光へと加工する

 

 

乃依が撃ち込み発生した結晶から飛び出し、戦斧と鉈を携え異形の人型月人達との戦闘を強襲する

見れば帝が管楽器のような棍棒を持った月人を撃破することで彩葉を守っている

 

 

 

───何千年が経ったって

 

 

 

───何万年が経ったって

 

 

 

手始めにROKAを上から狙っていたホテイ型の更に上から鉈で勢いのまま殴りつけ打ち斬った

 

そのまま着地、後方に戦斧をぶん投げて最前線にかっ飛ぶ

 

投げられた斧はまみをシンバルで挟もうとしたコンゴウ型の側頭部に深々と突き立ち、金属のような頭をかち割わった

 

 

 

───きっと その一秒は永遠に続いていく!

 

 

 

一撃で致命を与え、命を刈り取る。慈悲など欠片もない伊織流戦闘術

 

黒い鳥の忌名は、伊達ではない

 

 

 

「油断は出来んぞ。大太刀!」

 

 

 

一言の警告。そして2人を無自覚に囮に使い、油断した所を仕留めた

 

現実世界と仮想世界での同時戦闘という無茶苦茶な修練を重ねて成長した異次元の空間把握能力だ

 

伊織の手元に大太刀が投げ渡され、イオリの手に生成される。鞘を抜き捨て更に雑魚を大太刀で薙ぎ倒しながら彩葉と横並び、更に前へ

 

 

 

───それも運命だと言うのなら

 

 

 

テンニョ型2体の弾幕を身軽な伊織は濃密な隙間を苦も無く潜り抜け、彩葉は雷の瓦の援護を受けて突破

 

乃依の狙撃で一体が結晶に飲み込まれ撃破された。目標を変える。牙付き金魚か牛みたいなの

 

 

蜻蛉の構え。イオリと伊織の猿叫が轟いた

 

 

 

「キェェェェェェァァァァァァ!」

 

 

 

ズイジュウ型の口内から別の腕が伸び、剣を2本持って、交差させる。イオリの一撃を防御した。防御してしまった

 

示現流の一撃は絶大である。その防御ごと捻じ伏せ、ズイジュウ型を両断、撃破した

 

同時にウルトを使ったイロが複雑な光の軌跡を絵描き、もう1体のテンニョ型を双剣で斬り伏せた

 

 

 

「バッドエンドになんて」

「やらせは・・・」

 

 

 

───全部抱きしめてみよう

 

 

 

 

 

「「させない!/せん」」

 

 

 

そこに襲来したミョウオウ型の月人。倶利伽羅剣がイロに振り下ろされていた

すかさずイオリが大太刀のレンジを生かして初撃を難なく弾く

 

 

 

「俺が相手ぞ」

 

 

───ああ、世界が彩りに満ちてゆく

 

 

ミョウオウ型に突進、その間に再び蜻蛉の構え

イオリが目を閉じた。音に頼った空間把握

 

 

羂索が長く伸びて後方から大太刀に絡み付かせようとしている

そもそも振らせない。と言う攻略法も攻略済みであった。カウンターとして縦の両断を狙われているのは音を聞けば分かる

イオリが大太刀を離し、姿勢を低くした

 

 

 

───涙も笑顔も照らしてゆく

 

 

新陰流の無刀取りを軸にした対剣用の戦闘術

振り下ろされた倶利伽羅剣を棟を左右から掌で包み、軌道を逸らした。そのまま顔が付き合うほどの至近距離に飛び込み視線を釘付けにする

いつもならここで首を噛み千切るが

イオリにより出来た死角からイロがブーメランを投げミョウオウ型を斬りつけて撃破した

 

 

 

「流石ぞ」

「とーぜん!」

 

 

 

ネームド級?は全て迎撃した。だがボサツ型の近傍で先ほど撃破された月人達がリスポーンしている。そして、出てくるリョウサン型の数が増えた

 

 

そして、メロディが変わる

 

2曲目が始まった。東京を発つ前に聞いた彩葉と父親が作っていた曲だ

 

 

イオリが、前を見る。目に見えて月人達の動きが違う。さっきまでのは様子見だったか

 

空いた伊織の手元に槍が投げ込まれた

呼応しイオリの手にも十文字槍が現れる

 

そして、一気に壁のように襲い来るリョウサン型と異形の月人達、ズイジュウ型は四つ腕の半竜人のような形へと変身していた

 

 

伊織が肌で感じる。形勢が、変わった

 

 

───瞳映る静かな世界

 

 

突如後方からの殺気、槍の石鎚を後方へ突き出した。ドンピシャリ。テレポートしイオリをシンバルで挟もうとしていたコンゴウ型の額に石鎚が突き刺さる

 

周りでは突如として近傍にテレポートしてきた月人達や、それに気を取られてしまい帝とイロ、イオリ以外が落とされた

 

 

 

───何を見てたんだろう

 

 

 

「銃剣!」

 

 

伊織が叫ぶ

 

そして、目の前にはミョウオウ型、空中にうねる羂索とその後ろに控えている笙持ちのテンニョ型

 

殺り合いが始まる。十文字槍をミョウオウ型に投げ付け、伊織の手に木銃が携えられ、イオリが手に銃剣付きの種子島銃を得る

 

投げた槍はうねる羂索が絡めて折った

その隙に接近したイオリ、突きと斬撃、銃床での打撃を駆使しテンニョ型からの援護射撃下でミョウオウ型と互角に渡り合う

 

一突き、一斬りの間にも伊織の剣はその鋭さを増していく

 

テンニョ型の光弾はモノクロの視界への端的な妨害だった。だがその最中でも伊織は音を頼りに完璧に周囲を把握している。そして引金を引いた

 

振り回されながら放たれた弾丸は精確にテンニョ型の胸に命中

銃剣をワザと羂索に絡め、折れた槍の穂先を蹴り上げ、拾いウルト解放、一気にミョウオウ型の前から離脱

十文字槍の穂先を持ってテンニョ型に急接近し首元を掻っ切った

 

視界の端ではイロがホテイ型に追われていた

そっちに向かう。当然ミョウオウ型が追ってきている

 

 

「弓!後なんか!」

 

 

 

長弓が投げ渡され、速射。ミョウオウ型が大げさに避ける

意図せず刹那の時間が稼げた

 

次は、間合いに入ったホテイ型、イロをあしらい光弾の弾幕を貼る

ホテイ型に撃つが矢は撃ち落とされた

後ろからミョウオウ型の羂索と本体が迫る

 

そして次の得物が投げ渡された。鈍足矢を1本残して弓を捨てる

かぐやの物と柄の長さは変わらないが先端が小柄な槌を受け取ったイオリ

 

勢いそのままホテイ型に殴り掛かる

接近すると、光弾の弾幕も密度を増すが、致命傷になる光弾だけを十文字槍の穂先で弾き逸らし、突き進む

ホテイ型も下の袋のような場所から新たな顔を生やし突撃してきた

 

 

 

「遅か」

 

 

 

だが、これもイオリには届かない

槌でそのまま突き込まれ、至近距離への接近が出来ずに、ただただ自爆した

HPはそこそこ失われたが、欠損は無い。戦闘続行に支障無し

 

その爆風で反転、間合い一歩手前に迫っていたミョウオウ型を近場の岩に蹴りつける

が、防がれた。カウンターの剣撃を回避、槌で足元を狙う

 

 

伊織、月人見ていて気がつく。ミョウオウ型を除き、本気で相手を殺す為の動きをしていない

何というか、戯れている。倒しには来てるが殺す気ではない。と言うかその動きを知らないような

 

 

 

一瞬だけ周りを見る。イロを庇った帝が変身したズイジュウに押されて、鍔迫り合いに体格差で負けかけている

 

 

 

───どこにも無い、カラフル捕まえよう。さあ!

 

 

 

BlackOnyX─チート発動

伊織──抜刀

 

 

父親の太刀を抜いた。今まで使っていた武具とはその重さが違う

 

 

 

───この一瞬が最高のパーティーなんだ!

 

 

 

再び蜻蛉の構え。奔り出す

今度はあっという間に太刀に羂索が絡み付いた。しかし、止まらない

 

 

 

「キエエエェェェァァァアアア!」

 

 

 

猿叫と共に羂索ごと、力任せに太刀を振り下ろした

ミョウオウ型は後ろに回避する。鼻先を掠めるイオリの太刀

そして、蜻蛉返し

返しの攻撃を狙ったミョウオウ型を斬り裂いた。だが、寸の所で致命に至っていない

 

刀を振り上げ無防備になった胴体に倶利伽羅剣が突き立とうとする。しかし

 

ROKAのネイルファンネルが倶利伽羅剣を弾き反らし、まみの金平糖がカラフルに弾けてミョウオウ型を退かせた

そのまま周囲のリョウサン型を薙ぎ払う

 

 

 

「助かった!」

 

 

 

己の脇差を抜いて太刀を上段、脇差を下段に構え、ミョウオウ型に挑む。その太刀筋は烈火の如し

防御を捨て手数と火力に全振りした超攻撃型の剣技。全てが致命傷になりうる

 

天然理心流や二天一流の火、示現流の流れを色濃く汲んだ途轍もない鋭さと重さを持った一刀一刀は鍔迫り合いですらミョウオウ型を消耗させる 

 

そして、持っていた鈍足矢の鏃をミョウオウ型に投げて掠らせる。一瞬動きが止まった所で二刀の右一文字で斬り伏せた

 

だが、余計な時間を使わされた

 

かぐやの元にリョウサン型が殺到しようとしている

 

 

 

───ねぇもっとふざけで 夢だけシェアして

 

 

 

───ありふれてる好きなものにずっとまみれて

 

 

 

「行くぞ彩葉!かぐやだけ見い!」

 

 

 

激を受けたイロとイオリが急ぎかぐやの居る天守へと奔る。

 

 

後ろでは黒鬼の三人がそれぞれネームドと戦っていた

 

 

───君といたあの部屋も電子の海も

 

 

 

大量のリョウサン型を斬り伏せて進む。そして、シンバル持ちのコンゴウ型や笛を持ったテンニョ型がテレポートし前に立ち塞がる

 

 

 

───胸の中詰め込んでタカラバコにしちゃおう

 

 

 

「邪魔ぞ」

 

 

 

前に出た。イロを守りつつ、回避や防御すら許さず一瞬でコンゴウ型を袈裟斬りに

その後ろに居たテンニョ型を弾幕は速度で突っ切りそのまま突きで仕留める

 

二人とも、足を止めない

 

 

───ねぇもっとはしゃいで

 

 

そして、側面から来るホテイ型。近づいて来ず、遠距離戦に徹するので、無視。そのまま振り切る

 

 

そして、次はミョウオウ型、背中の炎が一段と燃えている

 

 

 

「走れ!」

 

 

 

───アンコールないのって

 

 

 

イロに巻き付こうとした羂索を斬り落とす

そしてそのまま鍔迫り合い。イロがかぐやの元へと奔る

イオリの周囲を炎が包む。脇差と太刀を戻し、母親の打刀を手にする。再び斬り結び始めた

 

ホテイ型の光弾が目障りなだけで、当たりはしない

 

羂索が鞭のようにイオリに迫る。だが、常に2つの世界を跨ぎ常に一対十をしていた伊織に同じ世界での一対二程度、対応出来ない訳もなく

 

目の前に降ってきたホテイ型の光弾を打刀の峰でミョウオウ型へ弾く。それで左肩を吹き飛ばした

羂索が制御を失う。それを掴み、構えを変えた

フェンシングの構え。ついでに羂索も思いも思いに動かせるので、活用する

 

倶利伽羅剣の隙間を縫い、少しずつ関節部にダメージを与える

更に右腕に羂索を巻き付け肘の動きを制限

 

大きくバックステップで距離を取ろうとしたが、イオリの方が速かった

 

心臓にあたる場所を一突き、撃破

 

 

 

───おねだりして、とびきり

 

 

 

かぐやの元へと奔る。邪魔なホテイ型は轢き潰す

 

 

そして、再びかぐやの元へ・・・だが、遅かった

 

 

 

 

───煌めいて歌おう

 

 

 

かぐやが天守の上のステージで、中段でイロがリョウサン型に囲まれていた

間に合わなかった。守りきれなかった。その自責が伊織を支配する

 

 

 

間に合わんかった?よわかった?・・・駄目じゃ。かぐやを、俺は!

 

その瞬間だった。伊織が、暖かい何かに包まれる

 

 

 

 

 

 

世界が彩を取り戻す

 

 

 

 

 

 

 

 

===天守閣 中段===

 

メロディが、終わる

目の前には月人達の、壁。見える範囲全てを覆い尽くしていた。伊織でも突破出来ないだろう数

その気になればいつでもこの数を送り込めたのか

彼等にとって、彩葉達の抵抗はただの儀式のような物だったのか

 

 

 

「・・・かぐや」

 

 

 

隙間から見える。いや、見えるように隙間を開けられている。かぐやの悟ったような微笑みが見えた。それは、ヤチヨのようで

 

彩葉の足が止まった。負けたのだ

 

 

かぐやの元に、一際大きかったボサツ型が恭しくお辞儀をしている

その横にはイオリが倒していた不動明王のような月人が───

 

 

横を何か来る

 

 

その時だった。彩葉が諦めたその瞬間、黒い鳥がイロの横に舞い降りた。二刀を駆り周囲の灯籠頭を一瞬で斬り伏せる。そしてただ真っ直ぐに、かぐやの元へと舞い上がっていった

 

刹那、彩葉が黒い鳥の、伊織の目を捉える

宿る鋭さは変わらない。だがその目は何処までも純粋に。真っ直ぐに。かぐやを助ける事一点だけを見ていた

 

 

 

 

 

 

======

 

 

 

イオリはただ奔る。かぐやの為に、彩葉の為に

今手にするのは父親の太刀

 

 

 

曰く───どんな時も足掻き続けろ  

 

曰く───大切なモノを諦めた時人は死ぬ

 

曰く───己の命は無駄にせず、綺麗に散らせ

 

 

 

その意味が今漸く分かった

 

 

 

───大切なモノの為に生きて。守り続けろ

 

 

 

壁となる大量の月人が一斉に光弾を放ち、迎撃

他の月人は密集しかぐやと伊織を隔てる壁となる

 

階段を埋め尽くすほどの光弾だがイオリの障壁にはなり得なかった

今は光弾の色まで見える。階段の上でも斬るのは容易い

 

一つの光弾を弾けば玉突きのように次々と弾けていた

 

そして、分厚い壁に辿り着く

 

踏み込み。だが、勢いが足りない

加速のウルトも使い果たした。

───届かない

 

 

 

そう思ったとき、背中に蹴り飛ばされたような激しい衝撃が二つ。だがとても暖かい

 

 

それで確信した。超えられる。かぐやの元へと辿り着ける

目の前には巨大な月人の壁

 

 

 

「かぁぁぁぐぅぅぅやぁぁぁあああ!」

 

 

 

伊織の剣技、ここに極まれり 

 

 

 

顔の横に脇差を構え渾身の突きを放った。その突きは三つ。それが、重なる

伊織の目の前の空間が揺れる、イオリの目の前の月人の壁がトンネルのように一部崩壊した。その隙間を奔り抜ける

 

 

だが強い突きと謎の衝撃に伊織が保持できず太刀が道場の壁に深々と突き刺さる

 

 

即座に母親の打刀を抜刀、上段の構え

 

目の前にはボサツ型の前に立ち塞がるミョウオウ型。纏う剣気が違う。羂索が凄まじい勢いでイオリに伸びる。倶利伽羅剣も凄まじい気を纏っていた

瞬きするに縮まる間合い

 

 

 

一刀三閃 三枚の花弁を持った斬撃の花が咲いた

 

 

 

全く同時に重なった三度の刺突も、同時に繰り出された三振りの斬撃も、ヤチヨが用意、その道のプロフェッショナル達が伊織特化に調律した地球最高峰クラスのモーションキャプチャが伊織の動きをイオリへと完璧にツクヨミへと反映した

物理法則を超越した絶技を反映してしまった

 

 

 

ミョウオウ型に3つの大きな傷が刻まれる

だが、斬られても驚きはありそうだが、平然としていた。だが、守りは崩れている

 

異常な剣速に打刀が手から離れた。即座に己の脇差を抜刀

 

ミョウオウ型、その胸部へ。人間の心臓がある場所へと突き立てる

 

 

 

(まだ!)

 

 

 

何かに引っ掛かり抜けない脇差を離し、左手で彩波の短刀を抜いた。振り下ろされる倶利伽羅剣を受け止め、鍔迫り合いの末、脇差も手に掛けトドメの一撃をお見舞いする・・・が

 

突如イオリの下から湧いてきた大きく口を開けたズイジュウ型が、ミョウオウ型ごとイオリを一口で飲み込んだ

 

得体のしれないモノの腹の中、イオリの意識は、そこで途絶えた

 

 

 

 

===ステージ上===

 

伊織の抵抗を見届けたかぐや。思わず手を伸ばそうとする。それをボサツ型に優しく止められた

何処か、伊織なら全てひっくり返してしまうのではないかと淡く期待していた

 

 

「伊織・・・」

 

 

この場の月人達は伊織の決死な行動に対して確かに敬意を表していた

 

 

 

「はるばるようこそ・・・逃げちゃってごめん

でも、すっごく、すっごく!楽しかったんだ」

 

 

 

かぐやが去ってゆく。水面のようなステージが天守から、離れてゆく

 

 

 

「皆ー!最っ高のライブでした!お土産いっぱい貰っちゃった!」

「それから───」

 

 

 

配信部屋で、かぐやが、彩葉を抱き締めた

 

 

 

「彩葉、伊織、大好きっ!」

 

 

 

ふっと、彩葉から、かぐやの温もりが消える

 

 

 

ツクヨミでは、かぐやが月人たちに連れられて行く。まだまたしたいことがある。話したいことがある。その願いは届かない

 

 

 

「ばいばーい!」

 

 

 

そして、透明な天の羽衣を着せられたかぐやの目から光が失われた

 

 

 

かぐやと月人達は光の結晶となるように、ツクヨミから去っていった

 

 

 

===鹿児島 道場===

 

ありとあらゆる物を使い潰し、己が命を贄にした烈火のような戦闘を見届けた伊織の師範や近所の強者達

 

突如として伊織の顔がどす黒い絶望に染まった

 

譫言のように守れんかった、弱かったと呟いている

 

感じた。伊織の側に、誰かが居る

伊織の爺さんには薄らぼんやりではあるが、視えた。死んだ筈の孫が、本仮屋彩波が、伊織の背中に優しく抱き着いていた

 

伊織の眼に再び光が宿る。その眼は今までの目的が為に刀を振るう剥き身の刃でも、暴力装置でもない

ただ、大切な何かの為に奔る真っ直ぐな眼だ

 

再び奔り始めた

そして突きの構えを取ったとき、息子とその嫁が、伊織の背中を蹴飛ばしていた

 

そして、熟練の強者達がその現象を肌で感じ取る

 

 

伊織が3度同時に、同じ場所を突いた

空間が軋むような感覚がする

 

更に3回の斬撃を、同時に振った

空間が揺らぐ

 

 

全員が目を疑う。これは剣技と言っていい技なのかと

 

そして、最後に脇差と短刀を振るって動きが止まる。数十秒、微動だにしない

 

そして、突然糸が切れた操り人形のように、道場へと倒れた

 

伊織を心配した全員が駆け寄る。息はある。だが意識が無い

 

 

 

月の光に照らされた脇差が怪しく光る。だがそれに気付く者は居なかった

 

 

 

 

 

 

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