満ちる月を越える者 作:業火の跡地
食生活は食えりゃ良いまで終わっていない。むしろ体作りにマトモな栄養を摂取する。最低限ではあるが料理の心得はある事を叩き込まれている
故にエナドリなどには手を出さないし、彩葉にもその金でもっとマトモなもん食えやと言っていた
さて、かぐいろチャンネル(主にかぐや)の配信内容は歌、ゲーム、料理、屋外企画、まあ思いついた事をひたすらやりやがるので非常に多岐に渡る
伊織がどれだけ警戒しても、かぐやと言う暴風雨は強大であった
予測できないお転婆暴走リニア相手に完全に巻き込まれない事は出来なかったのである。そんな巻き込まれた伊織のダイジェスト集、どうぞ!ご査収下さ〜い
かぐやの初路上ライブ
「伊織!一緒にツクヨミ行こ!」
「なぜぞ」
「いやかぐやがツクヨミで路上ライブするって聞かなくて」
「ダンス教えてくれた伊織に見て欲しいなって」
「・・・分かった。じゃっどん、離れて見とるど」
そして舞台はツクヨミ。イロは狐の着ぐるみを着て紙吹雪を撒いていた
数人しか観客のいない路上ステージライブ。それを近くの建物の上から見ているとたまに斬る顔、忠犬オタ公も居る。強火でライブを絶賛していた
「まだまだ伸び代があるの」
彩葉作曲、かぐや作詞のオリジナル曲《私は私の事が好き》
その踊りを見てそう溢す。まさに天真爛漫な踊り
道行く人を持ち前の明るさとカワイさで堕としている。いつの間にか数人は十数人へと増えていた
かぐやもそこそこ動けているがまだ体の使い方に慣れていないように見える。(コレは伊織式ツクヨミ戦闘術の弊害でもある)
ライブが終わり伊織もSETUNAへ足を向けようとした時、下にいたオタ公に嗅ぎつけられ、呼び止められる
「おやおやおやぁ?イオリさんがこっちに居るの初めて見ましたよ」
「その言い草、ライブの事大方おこってるから聞いとるじゃろワン公」
「オタ公ですって。名前ちゃんと覚えてくださいよ。大体イオリさんも犬じゃないですか」
「お前ほど露骨じゃなか。んでなんぞ。頼みなら勝ったら聞いてやると」
「いやぁ、今はそうじゃなくて。イオリさんもかぐやちゃんに魅力された口ですか?」
「アイツは親戚ぞ」
「成る程保護者でしたか。あ、これ以上詮索する気は無いので悪しからず。またやり合いましょーねー!」
オタ公とまたSETUNAで。と別れて人が散ったかぐやの元へ
「伊織!どだった!」
「よか歌によか踊りじゃった。じゃっどんまだまだ磨けるど」
「かぐや頑張った!頭撫でて!」
「おう」
「彩葉も、撫でてぇ?」
「はいはい」
着ぐるみを脱いだイロとイオリによしよしされたかぐやはとても嬉しそうで、伊織も現実で口角が少し上がっていた
だが、その光景を遠目に見たオタ公は感涙に浸っていた
翌日、かぐやのVRホラゲ配信。ホラゲが苦手な彩葉に懇願され、親戚として伊織がやることに(仮名IORで参加)
やるのはVR版ib。言わずと知れた美術館を舞台にしたホラーゲーム。視聴者からハッピーエンドは凄いぞと勧められたらしい
2人プレイ対応で伊織はギャリーを操作、かぐやがイヴを操作していた
「ぎゃー!助けて伊織ぃ!」
「頑張れ」
そして今は前半、まだイヴとギャリーは合流しておらずかぐやは悲鳴を上げながら絵画や人形から逃げ回りつつ、的確な謎解きをしていた
しかし伊織の名前は全世界に公開される
「おーこっちも来た」
一人青い絵画に襲われた伊織。しかし取られた青薔薇を速攻で奪い返した、逆にボコボコにし始めたのだ
「何してんの?」
「いきなり来たで、蹴り飛ばしちょった」
合流したイヴもといかぐやと視聴者が見たのはプレイヤースキルの暴力で絵画を足蹴にするギャリーであった。
〉俺の知ってるギャリーやない
〉頭踏んで後ろ回る奴初めて見たってか出来るんだ
〉絵画<タスケテ
そんな知のかぐやと暴の伊織、以外にいいコンビかもしれない
あんなヤバい動きをしてたIORは一体何者だと言う疑問を視聴者に残す
その後もかぐやと共にギミックの攻略、襲ってくる奴を全て迎撃
尚エンディングは一番良いEndに行ったもののかぐやはキレた
「これバッドエンドじゃねーか!」
〉草
〉草
〉鼓膜ないなった
次。河川敷でのペットボトルロケット
伊織が勉強中、かぐやが手持ちのペットボトルロケット発射機とロケット本体を持って部屋に押けてきた。思わず迎撃態勢を取ったが、直ぐに警戒を解く
「伊織!ペットボトルロケット作った!動画撮るの手伝って!」
「ごめん伊織。止められなかった」
「体も訛っとったし丁度よか」
河川敷、かぐやが何回か発射をトライ。しかし上手く飛ばずこの悪童、何を思ったのか背を向けていた伊織に向かって撃った。しかもそんなときに限り真っ直ぐ綺麗に伊織の後頭部へ
ヤバいと思った彩葉が声を発する前に伊織に向かうペットボトル
伊織は振り向くこともなく、首を曲げて回避、顔の横で片手でロケットを見ずに先端をキャッチした
〉は?
〉えっ?
〉見えてないよね
「おいかぐや。それは危ない言うちゃよな」
「ちょっとかぐや!何してるの!?伊織、怪我ない!?」
「えっと、当たると思わなくて・・・テヘッ?」
「ちょっと話するど」
彩葉がカメラを地面に向け、録画を停止
伊織に滅茶苦茶叱られた。自分だったから良い
第三者に被害が及んだらどうする気だと
後から彩葉も人傷つけたらマジで追い出すからねと釘をぶち込まれる
あまりに感情はあまり乗ってないが滾々と説教されているかぐや
〉正論しか言われてねぇw
〉あれを止めるIOR何者
〉一切振り向いてなかった。怖っ
辛うじて音声のみ動画に。IORはコイツだと視聴者に確信され謎の親戚は男であると判明したが、とくに何もなかった
その音声は娘を諭す不器用な父親であったと誰か(オタ公)の記録に残っている
IORの部屋の物紹介企画
刀だけは彩葉の部屋に一時避難させてもらっている。形見を衆目に晒すのは少し嫌であった
「伊織ー、これは〜?」
「木銃ぞ。銃剣道の練習道具じゃ。扱い方は槍と似とる」
「あ、扇なんて持ってたんだ。でもこれ重くない?」
「鉄扇ぞ。懐に忍ばせる武器じゃ。たまに護身用に持っとるやつもおるらしいの」
伊織は直接映らない。使い方の基礎をさっと教えてかぐやが実践するという流れ
伊織にねだって着させてもらった黒い胴着と袴に綺麗な金髪の揺れが光を反射しよく映える
「相変わらず飲み込み早えの」
「伊織の教え方が上手なんだよ!」
「動き見せてるだけぞ」
〉かぐやの動きに無駄がねぇ
〉木刀、木槍、弓矢、斧、鉈etc.etc.何ここ武器庫?
〉かぐやちゃん見ただけであの動きできるのすげー
〉本気でIOR何者だよ
〉居合経験者ワイ。多分全部古武術の動きだこれ
「伊織〜、何者かだって?」
「ただこいしか生きる術を知らんかっただけぞ」
「一番得意なのは何なの?」
「得意不得意はなか。選り好みしていざ何もできんは嫌じゃ」
「えー、質問の答えになってないなー・・・一番肌に合うのは刀?」
「おう。特に脇差。一番長く握っとるからの」
自作の木刀を握る。自分の持つ脇差と同じ寸法、鉄を仕込み同じ重心の木製脇差
いつかの誕生日に時の師範から貰ったものだ
〉IORが動いてるの直接見てみたい!
「伊織の動き皆見たいって」
「・・・まぁ、顔だけ隠すど。それでよか?」
「じゃあ!これ!」
かぐやが出したのは狐のお面
「ないでぞ。狐ならいろPじゃろ」
「断られたんだよねぇ。皆どれ振ってほしい?」
〉やっぱ木刀!
〉珍しいし銃剣!
〉槍みたーい!
〉木刀希望by剣道の民
「うーん、木刀が多いかなぁ?」
「おう。かぐや、部屋の隅寄っとれ」
伊織の纏う空気が変わる。得物は木刀。相手は己
少し息を吸う
「・・・・・・キェッ」
蜻蛉の構え。瞬き一つで目に光が無くなる。刹那で振り始めた。離れたかぐやにも伝わる風圧、マイクが拾う鋭い音
示現流の一撃から返しで新陰流の流れを汲む返し、反撃を受け二天一流の連撃で更に攻める。更に二、三流派の剣術を交えて攻め立てていく
「おぉ、凄っ」
突然、伊織の動きが止まる。これ以上乗ると周りが見えなくなる。かぐやが居るのでそれは避けたい
「こんな感じでよかの」
「うん!皆凄いって!」
〉なんか分からんけどすげー
〉薩摩訛りだから示現流と、あとなんだ?
〉コイツこれで高校生ってまじ?
〉YAMA育ちか?
〉この動きどっかで・・・
〉完全に実戦流剣術じゃねーか!
視聴者は呆気に取られていた
込められている殺意の量も、技の鋭さも現代武道とは段違いだ
「凄いでしょー伊織。なんか「かぐや、そこから先は言わん約束ぞ。じゃっどん気付いてるやつは気付いてそうじゃが」
「えー!ぶー!じゃあ変わりに他のも見せて!」
「よか。ここじゃ狭い。外行くど」
自分の範疇なら割と簡単にかぐやの願いを聞き入れる伊織。伊織は不義理に煩い。と言うか本人はそれが大嫌い。度々かぐやに説教しているがかぐやもやっちゃいけないことをしてしまったのを理解はしている
それに事前に言えば悪事で無いなら許してくれるし。だが怪我的に危険だったり他人を巻き込んだら問答無用でお説教である
配信外でも伊織は彩葉、芦花、真実とのお出かけに同行することが多くなった
たまに男避けとして同行したこともあったが最近はかぐやに連れ出されてばかりだ
今日は服屋である。基本的に制服かジャージ、胴着と袴しか着ない伊織には縁のない場所である
それを知っている芦花により着せ替え人形になっていた
「伊織、こんなの似合うんじゃない?」
「動きづらそうじゃの。と言うかかぐやの買い物じゃろ?」
「いいの。伊織もマトモなもの持ってないんでしょ」
美容系インフルエンサーROKAのコーディネートは流石であった。伊織の空気を更に強めたり、逆に緩和したり。アクセサリー一つでそこをコントロールしてみせる
そもそも伊織は素体は悪くない。基本表情が死んでいて周りから変人扱い先に来だけで
今は少しのメイクを施され顔の細かい傷が薄くなっていたり、周りにも与える恐怖を緩和するようなコーディネートをされていた
「わー!伊織かっこいい!」
「すごーい。流石芦花だ」
「ちょっとかぐや!これまだ・・・」
彩葉が息を呑んだ
(ヤバい。凄くカッコいい)
「おーい、大丈夫?彩葉」
「えっ、あっ、うん!大丈夫。芦花凄い!」
「服一つでここまで変わるか。真実もかぐやもよう似合っとるど」
「ありがと!彩葉が選んでくれたんだ〜」
「よか目をしとるの」
「これを気に伊織も服とかちゃんと選びなよ〜」
「それはそれ、これはこれぞ」
上手いこと煙に巻いた伊織、その後5人でカフェへ
「ねー伊織って最近表情増えたよね〜」
「ほうか?」
「そう!今みたいなの。前まで声に変化なんてなかったし、最近笑ってるの見るようになったし」
真実が指摘した伊織の変化。声に抑揚が生まれ、表情が顔に出るようになってきた・・・らしい
芦花が続く
「そういうのって自分で気づかない物だよー。これもかぐやちゃんのお陰かな?」
「ムフフッ!」
得意げなかぐや。確かに最近は調子が変わっていたのは分かっている
「確かに、かぐやに会ってからかも。伊織が笑ってるの」
「ふむ・・・まぁ、最近かぐや相手に良くも悪くも感情は揺さぶられとるからの」
自分でも自覚していなかった変化、伊織は少しだけ恐怖を覚えるのだった
その後もかぐやはツクヨミで路上ライブをしたり彩葉共々時折伊織と色々な事をしでかしていく
===どっかの家===
7色に光る箸を持ち、眼鏡を掛けた男が、かぐやの配信を見ていた
「ぶっ壊れてんな〜」
なにげに配信活動初期からかぐやを見ていたこの男、当然IORの事も知っていて?
「・・・あの薩摩訛り・・・まさか、な?」
そして、IORの部屋公開配信で
「あの声にあの動きの鋭さ、間違いない。アイツ、イオリか!?」