満ちる月を越える者 作:業火の跡地
伊織の成績は文系以外悪く無い。北海道から贈られてくる食材を提供する変わりに主に文系科目を彩葉に師事していた
逆に理系科目はそこそこ得意。一度見た動きは忘れない延長で数学や科学は得意であった
伊織は海岸に居た。伊織の仕事は海岸警備である。おいたした奴を絞めたり溺れてるのを助けたり。そしてその日に合わせて彩葉とかぐや、芦花真実が遊びに来ていた
この四人は美人揃い。当然寄ってくる男も多いわけで。そこで伊織の仕事が結構あった
「よ〜ネーチャン達、俺らと遊ばなーい?」
「看板を見ぃ。こいでそれは禁止ぞ?」
伊織の少し怒気を入れた冷たい目、大半はそれだけで退散していく。一度だけ伊織に喧嘩をふっかけた奴が居たが手刀による側頭部への打撃で意識を刈り取りそのまま御縄頂戴である
そして、伊織は上司から午後休を言い渡された。曰く「青春は一度だけだぞ?」とのことらしい
「おまんら誘蛾燈か何かか」
仕事上がりの伊織が合流、呆れて声を掛ける
午前中だけで5組の集団を追い払った。その分仕事料も上乗せされたので悪かないが
「仕方ないって。真実も芦花も可愛いし」
「彩葉も美人じゃーん。かぐやちゃんも可愛いしねぇ」
「伊織、助かるよ。しっかし、伊織も良い体付きしてるよねぇ」
彩葉の言葉に真実が突っ込み、芦花は怪しい目で伊織の体を観察する。海パンのみの伊織、体に古い傷跡が残っているがそれでも戦闘に最適化されたフォルムは美しさを覚える
「伊達に鍛えてなか」
「しっかしもっと筋肉付いてんのかと思ってたよ」
「必要以上に付けるとバランスが狂うからの」
「洗練されたバランスって事ですなぁ」
「触んな真実、くすぐったい」
「うっわ腹筋硬ったい」
「うひへへへ、よいでは無いか〜よいでは無いか〜」
「うぬぬぅ、どうすれば良いのだぁ、ヌヌヌ」
視線をずらすとスマホ片手にかぐやが唸っている
ヤチヨカップの集計サイトには1位ブラックオニキスと堂々表示されていた。まさに王者だ
「結構色々やったしねぇ」
「ここは彩葉が着ぐるみを脱ぐことで新たな需要をだねぇ、って今の無し無し!」
それを聞いた彩葉は真実の焼きそばを平らげた。伊織が嗜める
「行儀悪かぞ」
「やっぱ歌!ヲタクもみんな喜んでたし!」
「オタク言うな」
「彩葉ぁ新曲作ってよ~。伴奏もして~
伊織ももっと配信でてぇ〜」
甘えた声を出すかぐや。しかし、2人は断った
「これ以上勉強とバイトの時間は減らせません!」
「俺も刀振る時間は減らせんの」
かぐやの懇願にきっちりと断る彩葉と伊織
「でも海来てんじゃん!」
「フッ マジなエリートは遊びも疎かにしないはず
睡眠時間削ってでも遊ぶ」
「俺は警備ついでぞ」
「倒錯してるなぁ」
真実がそう零す。それには伊織も同意だ
そして、かぐやは落としやすい彩葉に狙いを定めた
「このままじゃ優勝できない・・・かぐやのこと助けて。彩葉に伴奏してほしい」
「うっ・・・まぁ、時間が、空いてたら」
「よっしゃー!もっともっと配信するぞー!」
「ちょろ葉〜」「ちょろ葉だ〜」
血に伏せる彩葉。やはり垂れ目、かぐやに勝てないのはその血の定めなのか。伊織も呆れ顔である
そして次のターゲット、伊織。しかし難を示す
「伊織も、もっと手伝ってほしいなぁ」
「んー・・・諫山、彩紬。こげなことの先輩として本音聞くど、俺は何が出来ると?」
「そりゃぁダンスでしょ。かぐやちゃんの曲全部振り付け覚えてるんでしょ?」
「うんうん!」
芦花がそう言い真実が頷く。しかし伊織のダンスは戦闘術の延長、ただの精密動作なのだ
「伊織のダンスって、気持ちが籠もってないんだよなぁ」
「そうなの?」
「なーんか、ただそう動いてるだけな感じ?昔のロボットみたいな?」
伊織のダンスの問題点もかぐやは理解している。でもどうせなら一緒に楽しみたいのがかぐやの本音なのである
「じゃあ、やっぱKASSEN?でも伊織って黒い鳥なんでしょ?」
「中途半端に名が売れとる。動き辛い」
「SETUNA、RANSE最強が下手に絡むとどうなるか分かんないね〜」
「IORとして下地あるし良いんじゃなーい?今も謎の激強お父さん扱いじゃん」
伊織もかぐやの配信について真面目に考えてはみるが根本知識が少なく手詰まり感が凄い。スマコン以外の普通のコントローラーは苦手である
「ならさ、伊織のKASSEN授業、何てどう?」
「授業?それって楽しいの?」
「伊織ってさ、色んな武器の色んな使い方知ってるんでしょ?当然その落とし方とかも」
勉強、その2文字にかぐやは「うぇー」したが、芦花の真意を何となく掴んだらしい。直ぐにハッとして伊織に詰め寄った
「ないごて?」
「伊織!強くなりたいんだよね?」
「おう」
「じゃあ、皆が強くなれば伊織ももっと強い人と戦えるんじゃない?この間私に教えてくれたみたいに!」
「・・・ほうか・・・成る程。自分で育てるち考えは持ってこんかったの。問題はあっが、些事じゃな。よか」
伊織は常に教わる側であった。確かに教えることで得る何かもあるかもしれない。伊織はそれに乗った。かつてまでの伊織なら乗らなかっただろう
そして少し先に行われるIORによるSETUNA及びRANSE講座
一度リストアップした内容を芦花真実にランカー共しか出来ないようなことは除外。基本的には初心者〜中級者向けの内容に仕上がった
IORがかぐや、いろPに教えて実践するのが流れ。流石に2人の持ち武器に内容は偏ってしまった
だが「お前しか出来ねえよ馬鹿」が少しある以外は好評でこれから先KASSENやるならまずこれ見とけ的な扱いをされる
かぐやによりトップ層人外連中向けの配信も企画されている。実施予定は未定だ
「うわっ、何!」
「岩陰に居た!集めて軍隊作る!」
いつの間にやらかぐやがカニを集めていた。それが彩葉に殺到している。見かねた伊織が脇に手を入れ持ち上げて救出
カニ達は伊織の殺気にビビったのかザザザっと海へ帰っていく
「酒寄、足怪我しとらんか?」
「平気。ありがと」
「タッパの小さい真実より軽るか。もっとしっかり食えい」
「二人とも、明るくなったよねぇ」
「前までふらっと消えちゃいそうだったしねぇ」
「「どんな魔法、使ったの?」」
彩葉と伊織を見ていた芦花と真実がかぐやに寄りかかり、かぐやは「?」と顔を浮かべたが直ぐに「!」に変わり私は私の事が好きの続きを再生しだした
「・・・伊織、そろそろ降ろして、恥ずかしい」
「おう」
「それはそうとして、女性に体重の話はダメ!」
「不健康な生活ばしとる奴には言われたかねぇど」
「うぐっ、」
(・・・青い海は久々だの・・・青い海?)
伊織は視界の異常に気が付く。何か薄っすらと色ついている?彩葉を持ち上げたままそのままじっと波を見た。気の所為ではない。薄いが色が見える
今頃気付いた自分の変化に伊織は強く戸惑うのだった
次回、かぐや初KASSENダイブ