花屋夢想~猫耳少女の願い事~   作:くろゐつむぎ

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第四章 二人の冒険
二人の冒険(1/11)


「さて、少し早いが一度ここで休憩を挟むか」

 

「うん、了解」

 

 翌日、早朝から家を出て冒険に出かけたゼノンとクィーリアは、森の中にある湖のほとりに辿り着いた。

 

 切り開かれたように湖の周囲には草原が広がり、森の中とは打って変わって見晴らしがよくなっている。周囲には小さな花が咲き、穏やかに風が吹き抜けるここは、確かに休むには格好の場所となっている。

 

 クィーリアが湖を覗き込むと、自分の顔が鏡面のように湖に映し出された。それだけ綺麗な水飲み場なのだろう。湖の向こう側では、水を飲みにやってきた小動物がちらちらとこちらの様子を窺っている。

 

「けっこう綺麗なところね。これで魔物がいなければ最高だったんだけど」

 

「湖にはあまり近づくなよ。ああ見えて底なしだからな」

 

「うげっ、それ先に言ってよ」

 

 湖のほとりでくつろごうと腰を下ろしていたクィーリアは、ゼノンの言葉を聴いてぱっと湖から飛び退いた。

 

 そんな彼女の横で、ゼノンはバッグから携帯食料を取り出し、一つ口に放り込む。

 

 それを見たクィーリアが、不思議そうな顔をした。

 

「それにしても、本当にこれでよかったの?」

 

「何がだ?」

 

「だって、これまでの道中、私達魔物を避けてここまで来たじゃない? 魔物の討伐も依頼のうちに入っていたのに、魔物と戦わなくていいのかなって」

 

 ここまでの道中、二人は魔物との接触を避けながら冒険を進めていた。

 

 その甲斐あって、この湖に到着するまで二人は魔物と一切交戦していない。順調に進んでいくのはいいことではあるのだが、こうもとんとん拍子に進まれるとかえって不安になってくる。

 

「それに関しては問題ない」

 

 そんなクィーリアの疑問を、ゼノンはあっさりと切り捨てた。

 

「俺達の今回の目的はあくまで調査で、魔物の討伐は可能であれば、だ。優先順位を変えてまで魔物と戦闘を行う必要はないどころか、戦闘で消耗して調査ができなかった方が問題だ」

 

 ゼノンの言う通りだった。今回の目的はあくまで魔物の調査で、戦闘はおまけに過ぎない周囲の音に神経をとがらせながらの冒険だったのでいくらか気疲れているが、実際に魔物と戦うよりはだいぶましだ。

 

 湖に到着したのも、予定ではもっと遅い時間になるはずだった。それが

 

「それに、もっと喜んだらどうだ?」

 

「何が?」

 

「ここまで順調に進めたのは、クィーリアの能力があったからこそなんだぞ?」

 

「それは、そうかもしれないけれど……」

 

 ゼノンの言葉に、どこか引っかかったような表情で俯くクィーリア。ここまで二人が魔物との接触を避けられたのは、クィーリアの鋭い聴覚を用いた索敵のおかげだった。昨日の打ち合わせ通りの行動が上手くいっている現状を思い浮かべ、それでもなお彼女は首を横に振った。

 

「うん、だめ。やっぱりそんなに喜べない」

 

「なぜ?」

 

 聞き返すゼノンに、彼女は浮かない表情で答えた。

 

「だって、戦いとは関係ないところで能力を役立てられても、魔物との戦いで役立てられなかったら意味ないじゃない。能力は戦うためにあるのに――」

 

「術式は、できないことをできるようにするためにあるものだろう?」

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