超いろは姫!!!   作:ノーばでぃ

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ここから始めよう”ツクヨミ”

パンケーキを食べてから何時間も彩葉に似合うであろう服を探して着させてから帰って来た。家の前には、今日のこれからの予定の為に仕入れておいた『ソレ』が置き配されていた。

 

いやはや、物価高のお陰でびっくりするほどに高かったが背に腹はかえられぬ。仕方ないことだ、お金なんてアルバイトでなんぼでも補えると信じよう。最悪おじいちゃんに土下座する。

 

「よ~し、彩葉準備開始っ!」

「はいっ!」

 

意気揚々に、エプロンを羽織る。いざ尋常に、調理!!!――――の間に、雑談を交えよう。

 

ツクヨミ

 

201X年に公開され、現在では日本国内のみならず、世界中で広く利用されるソーシャルVRプラットフォーム。その技術力と世界への没入感は既存のそれらを遥かに超越しており、2030年に突入しても匹敵する物はない。これまではあくまでも視覚や聴覚を利用して仮想空間を観ていただけだったものを、通称スマコンを利用する事で”五感”を伴ってアクセス出来るようになっており、比喩ではなく別世界を現実と同様に体感することが可能で、世間ではツクヨミを第二の現実と呼ぶ事もある。

 

現実よりも非現実的で、非現実的なのに現実のように味わえる。老若男女分け隔てなく楽しめて、何かしらの事情で現実では余り動けない場合なら現実以上に生の実感を感じられる。しかも有料なのはゲームや特別な体験だけで、殆どが無料で公開されているのだから、これが人類に受けないはずがなく年々利用者数は増加しており、現在では世界人口の5億人から6億人のアクティブユーザーを抱えているとされている。

 

当然このビッグウェーブを逃さないのが企業である。特にゲーム業界は主要な企業は軒並み参入しており、規則としてリアルな戦争系やグロ系以外のゲームは大抵ツクヨミで遊べる。マインクラフトやモンスターハンターだって楽しめる。となると、配信者や実況者がポンポン生まれて来るのは自明の理。元々ツクヨミ管理人が、「一人一人が表現者、スターになろう!」と勧めているので、めちゃくちゃ激戦区となっている。しかも日本国内ではふじゅーが手に入るのでもっと凄い。

 

「―――がツクヨミなの。かぐや的にはゲームも面白いけど、最初に入るツクヨミを探索する事が一番楽しいかもっ。1番広いしヤチヨに会えるし!」

「なるほど、あっ、これはこれで良いですか?」

「ん、それで良いよー」

 

アパレルショップをハシゴしている最中に買った代物であるエプロンを2人は身にまとっていた。それぞれのイメージカラーに合わせたエプロンによって、小柄な彩葉からは愛らしさを、大人びたかぐやからは圧倒的な女子力を感じさせた。家に帰って来たのは午後5時、太陽が僅かに地平線の向こうに沈もうとして、見事なオレンジ色の夕日に空を染めた頃である。今日の夕ご飯はかぐやが独り立ちしてから一番豪勢なものになる予定、帰る前に業務用スーパーで色々と買っておいたのだ。

 

今はお家で調理中だ。一緒に調理を進めていく。本当は座って待っててと止めるつもりだったが、今日教えて頂けないと明日の家事が大変になるという理由に負け一緒に行っている。なので、米の研ぎ方だったり、包丁の持ち方など注意する事を逐次丁寧に教えながら進めている。危なかっしい包丁の切り方だった彩葉も、メキメキと成長してスパスパと食材を切っている。覚えが早いな、これで生後4日弱だよ?

 

「これでポタージュ完っ成。味見をどうぞ」

「い、頂きます。ぅんん!!」

「彩葉は分かりやすくて助かるわ。」

 

分かりやすいもので、頬を緩ませてニコニコしている。もしゲームなら後ろにぽわぽわした感じのエフェクトが付与されていると思う。その笑顔に思わず方言が漏れてしまった。いかんいかん

 

これで1品目が完成、結構簡単だった。続いてクックパッド先生の指示通りに作り、ゴボウとアスパラをカリカリに炒めて千切りにしたキャベツの上に乗せて完成。最後に、トマト煮込みハンバーグと付け合せのズッキーニも完成させる。普通のハンバーグにちょっと過程を加えるだけでここまで美味しそうな匂いを放つとは、ごくり。

 

そう言えば、独り立ちして、自炊の面倒くさに気づいてからは節約と時短を兼ねて適当な料理しかしていなかった。もやし炒めに蕎麦、バ先の賄いぐらいしか料理に記憶がない。あれ……最後にまともなご飯を手作りしたのは何時だっけか……やめよう、考えるのは。

 

あー楽しみだなっ。ご飯っご飯!!

テーブルにご飯を並べて、いざ実食!

 

「うっま」

「おいしっ」

 

美味すぎる。最近は何を食べても舌の上に絶縁体があるみたいに鈍くなっていた様な感じだったけれど、これはしっかり味を感じられる。お料理にお金がかかる理由が今理解した気がする。この三大欲求を満たす瞬間ってなんて気持ちがいいのだろうか。久しぶりに思いだした。

 

涙が、涙が零れる

 

「美味しいよぉ…ひくっ」

「え、え、その、かぐやさん!?」

「大丈夫、大丈夫。美味すぎて涙出ただけっ」

 

余計に心配させてしまった。何やってるんだ、私。

彩葉と一緒なら、ずっとこんなご飯を食べられるのだろうか。一人寂しく、味気のないご飯を無感動に食べて、いつの間にか作業のようになってしまった時間にが色鮮やかな時間に変わってくれるだろうか。気づいたら目の前のお料理を食べ切っていた。お腹いっぱいで、全身に甘い眠気に似た感覚を覚える。血糖値が幸せな上昇をしているのを感じる。

 

勝手に言葉が漏れていた。

 

「月に帰んないでさ、ずぅっと此処にいて欲しいな。いろは~お願い~」

「…………………はっ!?、自分から帰りはしませんから、ずっと此処に居たいぐらいですよ。何卒何卒ー」

「ふふっ、やったやったー!!」

 

妙な沈黙があったがどうしたんだろう。ずっとこっちの顔を見てて黙っちゃって地雷を踏んだかと思ったよ。頼むから何も起こらないで欲しいものだ。本気で

 

食べ終わったら一緒に手を合わせて「ご馳走様でした」。その後は一緒に食器を洗う。相変わらず彩葉は可愛いし賢い。何でも1回で覚えてテキパキ仕事をこなす。隠れてアルバム用の写真をパシャリ、横顔が綺麗に写っている。お気に入り設定も忘れない。更にその後はメインイベントに備えて先にお風呂を沸かす。

 

当然一緒に入ったよ?

沐浴させた事はあるけど流石に怖いからね。でも次からは一人で大丈夫らしい、これが親離れか。悲しい(´;ω;`)

 

 

さてさて、そうこうしていると時刻は19時。すっかり日も沈んでようやく涼しくなって来た頃合い。かぐやは今日を首を長くして待っていた。ふふふ、今日は待ちに待ったヤチヨのライブコンサート(ミニ)が20時に行われるのである!!!

 

ヤチヨはAIライバーとして二日に一回程度の頻度で配信を行っているが、何も配信だけを行っている訳じゃない。ヤチヨはライバーであると同時に生粋の歌手なのだ。その歌声が初めて発揮されたのはツクヨミが一般開放された最初の日、期待に胸を膨らませ多くの人が入場し、その圧倒的なリアリティに圧巻された彼彼女らの前で、ヤチヨは古のボカロのカバー曲に始まり、自分で作詞作曲した『Remember』などのオリソンを何曲も奏でた。

 

それはもうヒットした。各SNSで絶賛の評価を受け、スマコンの売上は天元突破した。それからヤチヨのライブコンサートのチケットは入手困難となり、ずっと先に予定されているライブのチケットも直ぐに完売になるレベルだ。因みにお金を払わなくても数ヵ月後にライブの動画が投稿されるので待つのも有りだ。当然、実際に聞きに行った方が遥かに良いのだが………閑話休題、かぐやは何ヶ月もチャレンジし、ようやく今回のチケットを手に入れたのである。それも握手券付きのペアチケットを!!!

 

「どうしてペアチケット?」

「それは彩葉との出会いを予感して~~じゃなくて、それしか残って無かったんだよね。勿体ないって思ってたけど、残り物には福があるってことよ!!」

「なるほど……あれ?」

 

話を聞いてわかったが、スマコンかそれに準ずる機械が無ければツクヨミにはログイン出来ない。かぐやの分があるのは当然として、自分の分は存在しないのでは……?

 

「かぐやさんかぐやさん」

「なになに?」

「その、スマコンって足りるんですか?」

「…二人分あったから大丈夫!。彩葉の分も当然確保済みよっ、ドヤッ!」

 

まるで新品未使用感のあるスマコンを取り出し、彩葉へ手渡す。使い方から洗い方までトリセツを一緒に読み、その十数分後には準備を終えて装着する。その瞬間、それまで静かだったスマコンが自然に起動する。怪しくオレンジ色に発光して、目の前には設定の画面が表示される。

 

「うんうん、上手くいったね。あれ、どったの?」

「その、手を……」

 

二人で隣り合わせに座る。彩葉がかぐやに手を伸ばして存在を確かめようとする。その姿からは、見た目相応の甘えが見えて―――

 

「此処に居るよ!」

「ありがとう、ございます。」

 

手と手を繋いで、二人はログインと思考してから瞼を閉ざす。まもなく二人は導かれる。彼女の積み上げ過ぎた優しさと後悔に満ちた世界へと

 

二重の意味で放たれた言葉を、かぐやは聞き取れなかった。

 

嘘つき……

 

 

 

△▼△△△△▼▼△▼▼△▼△△▼▼△▼ 

 

 

ざぶん

凪いだ水面に勢い良く小石が投げ込まれた様な小気味よい音が響き渡る。辺りを見渡すと、そこは先程までいたアパートの一室ではなくウユニ塩湖のような空を写した湖面が何処までも続いていて、巡る巡る星々の軌跡と満月を湛えている。どこからともなく、太鼓と笛が奏でる祭りの音がして、その方向を向くと大きな赤い鳥居が鎮座していて、その向こうにある茅葺屋根の古風な小さな家に厳かな空気を与える。とてもとても古そうで、だけど温かみを感じるのは何故だろうか。

 

「―――太陽が沈んで、夜がやってきます」

 

月見ヤチヨ。彼女が顕現する。縁側から立ち上がった彼女は、目を点にする少女を見つけた瞬間、朗らかな笑みを浮かべて走り寄る。当の本人、彩葉は本日二度目、心を奪われる体験をしていて……

 

「ヤオヨロー!初ログインありがとう。私の名前は月見ヤチヨ、こっちのはFUSHI。じゃあ、チュートリアルを始めようか!」

「……………」

「およよ?、ヤッチョに惚れちゃったかなー?おーい?」

「■ ■ ■ ■」

 

「………はっ!?いや、えっと、惚れ、惚れたって訳じゃなくてですね、えっと、うわあぁ、―――――――――何言ってもダメだぁ!」

 

目の前の小さな少女は、表情をころころ変えて早口に呪文を唱える。その様子は過激なファンかオタクのよう。一目見て心を奪われ、一瞬でファン堕ちしたその姿は、傍から見るとその容姿の幼さも相まって愛らしいものだが、ヤチヨの肩に乗っかっているFUSHIだけは隠れて睨み付けていた。

 

「はいっ、そこまで!!ぎゅー!」

「ふぇっ」

 

ヤチヨの柔らかな手が彩葉の手を握る。突如飛来する体温に意識を取り戻す。そうして、ようやく始まったチュートリアル。設定の変更から移動の方法、ツクヨミ内通貨のふじゅ~等の決済手段、他にも多くの説明を丁寧に行い、同意欄にチェック。ここまでは法律上必要な作業だ、ここからが一番面白いし楽しい。

 

「出かける前に、その格好じゃあつまらない!」

「わっ?」

 

キャラメイクを始めよう!。笑顔で満面のヤチヨが、玲瓏な声でそう言いながら指パッチンをするとキャラクターウィンドウが湖面から浮かび上がる。そのメニューは多種多様で、事細かなキャラメイクが行える。気合いを入れて何時間もする人も少なくなく、これからのモチベの為にみんなが必死に行う。ツクヨミ内では、ケモ耳美少女のメイドさんに始まり、のじゃロリ系仙女だか龍女になったり、アニメ▪️ゲームキャラを再現したり―――etcなアバターを作れる。因みにだが、自分で決められない場合はヤチヨの着せ替え人形となり、ヤチヨがキャラメイクをしてくれる。結構人気であるらしい。

 

さてさて、彩葉はどんな姿になるのか……

 

「おおっ、ナイスなセンスだね。」

「ふへへ、ありがとうございます。」

 

今日一日中着せ替え人形にされたお陰で、自身の容姿に合うファッションについては学習していた。かぐや達の会話、店員のオススメ、垣間見たスマホの情報から、彩葉のファッションセンスは並程度の華の高校生を凌駕する物となっている。そんな彩葉が選んだ姿は

 

青を基調としたストリート風。そこに和風の着物のエッセンスを注入しながらも、パーカーとベルトとブーツでカッコよく整えた。和洋折衷の塩梅を整えるべく、狐耳と尻尾でカッコよさに可愛さまで含める。自分の元の容姿を良い感じに使いつつ、あとは気にならない程度に気に入ったお守りなどで装飾する。最後に、目の色は派手でも地味でもない透明感のある緑がかった青色にして完了。

 

「わぁぁ……」

「うんうん、満足いく結果になってヤッチョも嬉しい。因みに、後からでもキャラメイクが出来るから気になった部分を何時でも直せるよ。気に入った人のアバターをコピーする事も出来るから、用法用量を守って使ってね!」

「はいっ」

 

「これでチュートリアルは終了。さあ!ツクヨミの世界へご案内致そう」

「はいっ」

「いい返事、じゃっ行ってらっしゃーーい!!!」

 

ヤチヨが彩葉の手を取り、鳥居へ向かって走っていく。それまで小さな家が向こうにあったのが、ツクヨミの色鮮やかな夜景を映し出すものに変わっていた。鳥居は神社の内側にある神聖な場所と、人々が暮らす外側の場所を別つ境界とされている。ならば、きっと映し出されるツクヨミは神域に該当する領域なのだ。

 

高鳴る鼓動に身を任せ、飛び込んだ世界は本当に美しい世界だった。

 

 

 

 

「あれ、もしかして彩葉?」

「かぐや、さん?」

 

互いに互いの姿を確かめ合う。これもツクヨミでよくある風景だ。そうして褒め合うのもありがちな事だ。特に、彩葉の場合は金髪うさ耳ギャルいかぐやのアバターに度肝を抜かれた。多分、癖と言う癖にぶっ刺さったのであろう。ヤチヨのその姿にも目を奪われたが、かぐやはそれにも負けていない……と思う。

 

「かわいいいい。彩葉のセンスが爆発してるよっ、清楚な感じもするし凛々しいし、可愛くて。写真写真」

「ありがとうございます。その、かぐやさんのキャラもすっごく好きです。ほんとに」

 

「わんっ」

 

「かぐやさん、それは一体?」

「ふふふ、私がプログラミングして作った犬DOGEだよ。よし~よし、じゃ行こっか」

 

かぐやと彩葉が褒め合う最中、時間が迫っていると吠えて知らせる電子ペットの犬DOGE。気がつけば19:30と、ライブが始まるまで30分しか残っていない。本当は隙間時間をツクヨミの散歩や出店の体験に使おうと思っていたのに、これじゃ中途半端になってしまいそうだ。かぐやは彩葉の手を取って、常夜の街へと歩みだしていく。

 

ツクヨミ

何と絢爛で、何と豪華で、何と風光明媚たることか。至る所に人を楽しませる事が目的の施設が立ち並んでいる。世界全部が1日限りのお祭り会場になっているようで、心が浮きたってしまう。かぐやは手持ちの無料ふじゅ~を用いて、射的や金魚すくいならぬ効果音すくいを彩葉と一緒に楽しむ。並び立つ屋台を巡り、時々路地裏の薄暗い奇妙な雰囲気の中行っている心霊屋敷を楽しんだりと遊びに於いて余念が無い。どれもこれも安価な為、苦学生のかぐやでも幾らでも遊ぶ事が出来るのだ。なるほど、これは確かに第二の現実と言われるのも無理はない。

 

「抹茶味、美味しいです!」

「美味しいよね。あっ、下のバニラ頂きっ」

「ああっ」

 

短いようで長い30分だった。最後にかぐや行きつけのお店で、二人で1つのパフェを頬ばる。川沿いのお店で、辺りにはライトアップされた桜並木が川岸を覆い尽くして非常に幻想的だ。しかも人が少なくて静かでいい。

 

値段は日本円にすると僅か20円である。所詮は電子上の食事で、実際に栄養が取れる訳ではないものの、その満足感は現実のそれと同等だ。現実では金銭的に食べれない高級なものも、ツクヨミなら圧倒的安価に楽しめる。何と素晴らしき世界な事か。これが、かぐやが彩葉をツクヨミに招待した理由である。現実ではどうしても窮屈な思いをさせてしまうと思って、パンケーキを食べさせている最中に注文していたのだ。

 

「ツクヨミは楽しい?」

「はい。月にいた頃と比べたら遥かに楽しいです。んっ、うまうま」

「そんなにがっつかなくても、インベントリに残るから……って聞いてないな、コレ」

 

「ワンワンっ」

 

「おっとっと。もう時間だ、行くよ彩葉!」

「はいっ!」

 

時刻は20:00時。二人はペアチケットを利用して会場までファストトラベル。辺りには同じくライブを今か今かと待ち構える群衆が待ち構えている。誰も彼もが同じ方向にある巨大な鳥居を見つめている。喧騒に満ちる空間が、本坪鈴の鳴らす玲瓏な音色によって打ち払われる。皆が一斉に音の源を見ると、ヤチヨが縄を掴んでガラガラと鳴らしている。

 

彼女が顕現した。

 

「ヤオヨロー!!!」

「神々のみんな、今日も最高だったー?」

 

ウオオオオ!!

 

「よーしよし、今宵もみんなを誘っちゃうよ!!」

 

「Let's go on trip!!!」

 

星降る海(Starry Sea)

 

幾千の時を巡って今

僕ら出会えの

ほら、見失わないように

手を離さないで

 

会場はこの新曲により熱狂の海となる。舞台の中心で、華麗に舞う彼女は正しく歌姫、或いは巫女のよう。妖艶で、魅惑的で、その場の全員を虜にする。ペンライトを振ってライブに没入する者が多数。中には彼女の歌声に感化され涙を流す者も居たりもする。

 

当然ながら、かぐやはその両方である。ペンライトで応援しながら涙を流している。その傍ら、彩葉もフリーズしながら涙を流しながら凝視している。初曲のマジックか、実際の演奏時間よりも引き伸ばされた体感時間で全力で楽しむ。そうして、名残惜しくも4分と少しが経過して歌い終わる。終始完璧な動作に感動しながらも、彼女はまだまだ飽きさせてはくれないようだ。

 

「今日は特別サービスデー!!お次も新曲、聞いてってくれるかなー!!!」

 

聞くううう!!!

 

「よぉーし、感謝感激雨アラモード。では」

 

千代に八千代に(Eight Millennia & One Millennium!!)

 

「聞いてってね!!」

 

風が運ぶ名も知らぬ歌に

懐かしさだけが胸を叩く

見上げた空の色も違うのに

どうしてだろう 君を知っている

幾つもの季節が砂になって

幾つもの星が沈んでも

またここで

またここで

巡る光の果てに

君の声を見つけた

八千年の眠りを越えて

千年の約束を越えて

忘れていたはずの願いが

この胸に花を咲かせるよ

名前さえ違っていても

交わす言葉が変わっていても

遠い約束の続きを

僕らはきっと知っている

 

彼女の歌声は観客に世界を魅せる。懐かしさ、郷愁を感じさせるその曲に、さっきまで浮かされていた人々にまた違う熱を与える。これは、言語化が難しい思いを胸に抱かせる。なんでか分からないが、感動してしまうのだ。

 

それで

 

IROHAはこう言ったの

 

みつけた

 

ってね……

 

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