さて、お腹が満たされたら次は軍資金の調達だ。スマコンを買うには、この「ちょろい保護者」の財布を頼るわけにはいかないからな。
彩葉の「ふじゅ~」の残高はかぐやがスマコンを買うことでほぼ0になる。ということはつまり、俺が買う分がないのだ。
そこで、俺は投資をすることにした。投資なんて簡単なものじゃないという意見もあるが、俺にはこの力がある。この力について出した結論としては、この力は『未来を引っ張ってくる』みたいなものなんじゃないかと考えた。
つまりこの力で、「未来の自分が知っている情報」を、今の自分に無理やり持ってくることができる。
例えば、1時間後のニュース、明日の株価、あるいはこれからバズるネタ……。
この世界の「正解」が、まるで昨日の出来事を思い出すかのように頭の中に流れ込んでくるのだ。
(……見えた。今日の、仮想通貨の急騰銘柄)
俺は彩葉がテーブルに置きっぱなしにしていたスマホを、気づかれないようにそっと操作した。
彩葉の「ふじゅ~」の5万。これを、数分後に暴騰するはずの無名の銘柄に全額突っ込む。
……数分後って運良すぎだな。さす俺だ。
「ちょ、ちょっと! 何勝手に私のスマホいじってんの⁉」
「……ん。ちょっと、お礼。すぐ返すよ」
「お礼って、あんた……」
彩華がスマホを取り返し、画面を覗き込む。
その瞬間、彼女の時が止まった。
「……え? は? ……ええええええええええええええ!? な、なにこれ、残高40万!? 偽物!? バグ!? 詐欺メール!?」
画面の中では、「ふじゅ~」の残高が40万と少しになっている。
「…これ、使っていいよ。ボクのスマコン代と、彩葉への家賃」
「……いや、うん。もういいや。考えるのを止そう」
彩葉はついに思考を放棄したようだ。
当たり前といえば当たり前だ。昨日の今日で赤子が”美”少女になり勝手にスマホを使われたと思ったら、「ふじゅ~」の残高が4倍まで膨れ上がってるのだから。
「もういいわよ、増えたなら……。細かい理屈は後で聞くから」
彩葉は少し引きつった笑顔のまま、震える手でスマホをポケットにしまった。
現実離れした状況でも、目の前の「40万」という数字の説得力には勝てなかったらしい。
「……それじゃ、買い物はネットで済ませるわ。外に出るのも面倒だし、その方が早いでしょ」
彩葉はそう言うと、ソファにどっかと座り込み、再びスマホを操作し始めた。
月の初めということもあって、40万あるとはいえ、今後の生活を考えればあまり無茶な使い方はできない。スマコンは安くても1台10万はする。かぐやの分とボクの分、さらに服や食料……。
「……スマコン、10万オーバーか。うわ、指が震える……。ねえ、本当にこれポチっていいの?」
「……ん。いいよ。それが一番効率的」
「効率的って……あんたね。まあいいわ、せっかくあんたが稼いだお金だもんね」
彩葉は「ひぃっ」と短い悲鳴を上げながら、スマコンを1台、そしてかぐやの服やら何やらを次々とカートに放り込み、決済ボタンをタップした。
「……あー、緊張した。…今日中には届くはずよ」
画面上の残高が勢いよく減ったが、それでもまだ30万弱は残っている。
よかった。これで何とかスマコンが買えなくなる問題は回避だ。
というか早くKASSENの1v1モードをやりたい。映画で見た時も思っていたけど、めっちゃ楽しそうだったし。
「で、いろいろあったから忘れていたけど、帰り方とかわかるの?」
KASSENについて考えてたら彩葉が質問してきた。
「わかんない」
「はあ、なるべく早く思い出してよね。お金は、まああるから問題ないけど」
確かに、いつか帰るんだとしても、自分がどこから来たのかとかわかってないし……
未来の自分を見てみるか?いや、それは面白くない。どうせならこの状況も楽しむとしよう。
―ピンポーン
「ん?」
「ああ、届いたみたいね。とってくる」
なんと、さすが2030年だ宅配便のスピードがマッハだ。
「…スマコン届いたけど今からやる?」
彩葉が首をかしげながら聞いてくる。いとかわゆしだね。
「いや、今日はやらない。明日やる」
「そう?あんたのことだから、今すぐやりたいっていうと思ったけど」
確かに今すぐやりたい気持ちもあるが、あしたはかぐやがスマコンを買うはずだから、
どうせなら一緒にやりたい。
「楽しみは取っておくタイプなんだよ」
ボクは届いたばかりの箱を眺めながら、少しだけ笑った。
次はかぐやが出てくる予定です。