時が経ち大学を卒業した井上ツカサの現在の職業はリサイクルショップ兼パン屋である。
なんじゃその組み合わせ、とも思うかもしれないがこっちだってなんでこうなったのかわからんのである。
なんとなく手慰みで、そしてお金が溜まってきてなんとなくパン作れるオーブンとか購入して、暇潰しに作って並べてみたら案外人気が出てしまったのだ。
多分値段を安く設定したおかげだと思う、アンパン三つで百ディニーはさすがに破格すぎたか。
一応本業リサイクルショップの方なのだが。
「おはよう」
奥の部屋から一人の女性が歩いてくる。
彼女の名前は〝サラ・フローレン〟
正直最初ここに来て名前を聞いたときは「えっ」ってなった。
薄れている記憶にある限りこの人敵じゃなかったっけ、と思ったわけだ。
彼女との出会いはホロウの中だった。
リサイクルショップに並べる商品は他のジャンクショップとかから買ったりして直して陳列したり、ホロウの中に入ってまだ使えそうなのを探し出して引っ張ってくることがほとんどだ。
そしてそのついでに迷い込んだ人たちを助けたり、なんかしたりしてるうちに都市伝説〝通りすがり〟としての噂が広まっていったらしいがそんなのはどうでもいい。
数年前に助けた人の中で、確かにこのサラはいた。
その時の彼女はH.A.N.D.に属していて、ホロウの中で何やら敵性のエーテリアスの襲撃に巻き込まれたのか、通りかかった時彼女の部隊はほとんど壊滅していた。
辺りに人はおらず、気を失っていた彼女を抱えてホロウから脱出した、というのが始まりだ。
幸い外傷の類はなく、とりあえずお店に連れ帰り意識が戻るまで看病していたのだ。
数日間寝込んでいたが、何事もなく目が覚めて、彼女はこちらに感謝の言葉を告げて去っていった…の、だが。
数日経ったある日、彼女は何かしらんが戻ってきた。
そして次は「ここって、従業員とか雇ってる?」と聞いてきた。
理由を聞いてみると彼女は自嘲気味に笑みを浮かべながら、もうH.A.N.D.に自分の居場所はなかったと言ってきた。
どうやらもう死んだものとして扱われていたらしい。
言われてみればホロウ内で行方不明的な感じになってしまったら基本的には生存は絶望的、ツカサが助け目が覚めるまで数日間お店にいたのを踏まえると、そう判断されても仕方がないのかもしれない。
流石に可哀想に思ったツカサはそのまま彼女を住込みで雇ったのである。
パールマンの秘書も黒髪ショートのスレンダー美女に代わってたみたいで、たまにテレビでサラが見かけると彼女に対して苦い顔をしていた。
知り合いだったのだろうか。
「ん、おはよ」
彼女は微笑むと陳列棚にある商品を触りだしちらりと窓の外を見やる。
「それと、外でお客さんが待ってるわよ」
「? まだ開店してないような」
「ええ。三十分くらい前からいるもの」
そう言ってツカサもサラの視線を追いかけた。
先にいたのはぴょこぴょことキツネ耳を動かしながら入り口で突っ立っている星見雅の姿があった。
何をしてんの()
◇
基本的にツカサの店の開店時間は適当である。
商品がない時は仕入れに向かうために休む時もあるし、めっちゃ朝早くから開くときもある。
それでも普段は頑張って午前中の早い段階で開店しようとしているのだが。
入り口を開放してガラス越しに雅と目が合った。
そのままドアを開けて
「何やってんの雅」
「朝食にパンを買おうとしていた。来たときに開いてなかったから、開店まで待つ修行をしていた」
やめてしまえそんな修行()
そんなわけで目の前にいるのはかつて幼いころ交流があったあの星見雅である。
かつて旧都陥落のとき、いろいろ終わったツカサは疲れてしまい保護をされないまま適当にどっか行ってしまったのである。
だから大学で再会した時はタックルめいた抱きつきをいきなり食らったものだ。
そんな彼女が今や虚狩りとは。
お兄さんは鼻が高い。
「全く…いつものメロンパンでいい?」
「ああ。ここのメロンパンはとても値段が安い。味はプロのものよりちょっぴり劣るが」
「比べる対象が悪いよ」
所詮こっちは趣味なのである。
「柳の分も買いたい。アンパンも頼めるか?」
「あいよ」
パンのラインナップはメロンパン、アンパン、サンドイッチにクロワッサン、とパン屋に比べると圧倒的に少ない。
まあ所詮趣味なのでね、あんまり期待はしてくれるなということである。
そんなわけで一袋三個入りのメロンパンとアンパンを雅に差し出し、二百ディニーを受け取る。
「ありがとう。それと…兄上」
「もうその呼び方は恥ずかしいな…」
雅は小さく笑むと呼び方を戻す
「すまない、しかし私にとってはツカサはずっと兄上なのだ。…六課の席は空いているぞ」
「遠慮するよ。ちょっと俺には、六課の肩書は重過ぎる」
「むぅ」
雅は唇をほんの少し尖らせる。
そしてキツネの耳がちょっぴり倒れ、しょんぼりを表している。
可愛い。
「ほら、早く六課に行きな。俺はいつでも大体はここにいるから」
「…そうだな。また来るぞ、ツカサ」
そう言って微笑むと踵を返して歩いていく。
時折ぴょこぴょことキツネ耳を動かしているその姿は、どことなく嬉しそう感じがした。
「…さて。そんじゃこのまま開店と行こうか」
「いっそパン屋に切り替えたら?」
「やだ。まだリサイクルショップでいたい」
レジで作業しているサラの言葉に返しつつ、改めてツカサの店は開店する。
そんな店の名前は───DK堂。
下手すりゃあバレんじゃないの? と思われるかもしれないが今までバレてないのでへーきへーき(慢心)
◇
H.A.N.D.対ホロウ行動部特別調査部隊。
かつてサラが所属していたところだ。
決して楽ではなかったが、それでも市民の笑顔とか、誰かの平和を守れてるとか、そういうのがわかったから、やり甲斐はあった。
だけど、そんな仕事だかは常に死と隣り合わせだった。
明くる日、サラたちは要警戒エーテリアス殲滅作戦に巻き込まれる形でサラの部隊はほとんど全滅。
自分も傷を負い、動ける状態ではなくなってしまい、死かエーテリアス化を待つだけだった。
薄れ行く意識の中で感じたのは、誰かに背負われてる、という感覚だった。
次に目が覚めたのは、ある店の中。
ベッドに寝かされていたサラは、部屋に入ってくる一人の男と目が合った。
名前は井上ツカサ…このお店の持ち主だった。
なんでもマゼンタ色の人から貴女を託され、しばらく看病してた、とのことだった。
託してくれた人は誰? と聞いたらこんな感じの人、と写真を見せられた。
それはここ最近ホロウの中で人助けをしている噂の〝通りすがりの仮面ライダー〟だった。
助けられて、名を尋ねても彼は基本そう返す。
そんな返しからいつしか都市伝説のように直球で〝通りすがりの仮面ライダー〟と呼ばれていた。
まさか実在してたとは驚きだ。
とりあえずサラはご飯にツカサからアンパンを貰いお腹を満たすとお礼を言って、
H.A.N.D.の方へと戻った。
◇
戻った時違和感に気づいたのはすぐだった。
どうにも周りが自分に気づいていないのか、あるいは避けているのか…そんな風に感じた。
「…サラ」
自分に声をかける人がいる。
そちらに顔を向けるとそこには同じ部隊だった一人が立っていた。
「し、シノ…?」
目の前の女性の名前はシノ・ユーティリティ。
先も言ったが、自分と同じ部隊に属していた者だ。
てっきり自分以外に生き残りはいないと思っていたが。
「な、なんだかわかんないけど、よかった。貴女も生きてたのね」
「うん。…色々あって、私は救われたの。ねえサラ。よかったらあなたも来ない?」
「来るって…何を言ってるのシノ、私たちはH.A.N.D.に───」
「無駄だよあんなところに戻ったって。…知ってる? 上層部はね、私たちを死んだものとしたらしいよ?」
えっ、とサラの表情が固まる。
そんな馬鹿な、とも思った。
けど、冷静になって周りを見てみると、自分たちを見る目が変だということに気が付く。
まるで死人でも見たような───
「それどころじゃない、生きてたことすらなかったことにされた。…もうこんな世界に未練なんかないよ。だから行こう? 貴女も…讃頌会に」
「シノ、貴女…」
「まぁ来なくてもいいよ…こんな世界を許すのなら、ね…」
歪な笑みを浮かべて、シノはその場から去っていった。
サラはそんな彼女の背中をただ見送る事しかできず、同時に生きてたことすらも消されてた、とかいう彼女の言葉も思い出す。
───もしかしたらここに留まってしまえば、本当に口封じか何かに消されてしまうのではないか?
そう思うと背筋が凍り、衝動的にサラはこの場から離れるべく走り出した。
◇
これからどうしよう。
その日はとりあえずネットカフェで夜を過ごすと近くのティンズコーヒーでコーヒーを飲んでいた。
もう戻れる所はない、帰る場所も、居場所も。
全部あっという間になくなってしまった。
あてもなく車を走らせてるうちに、六分儀街にたどり着いていた。
ビデオ屋、ラーメン屋台、ゲームセンター。
何でもないはずの場所なのに、どうにか胸が締め付けられる。
いっそ堕ちてしまおうか、讃頌会に───そう考えた矢先、ふととあるリサイクルショップが目に入ってきた。
店の名前はDK堂。
なんだか店名を彩るその文字のカラーリングはどこかで見覚えがあるような───
「…。」
サラはスマホを取り出すと、あの都市伝説の仮面ライダーとやらの画像を探す。
意外と早く写真は見つかった、そしてスマホに移した〝通りすがり〟とやらのカラーリングと、DK堂のカラーリングを見比べてみる。
…なんか似てる気がする。
配色はピンク…? と黒色。
そしてその噂の〝通りすがり〟の配色もピンク? と黒色…ちょこちょこ白も入ってるが、メインはピンクと黒色だろう。
「───、」
けどカラーリングが似てるだけで本人とも限らない…それ以前に、この店主にはさよならを告げたばっかりなのに、なんとなくサラの足はDK堂へと進んでいった。
入り口から出てきたツカサと目が合う。
「ん? あれ、貴女は」
「───ねぇ。ここって、従業員とか雇ってる?」
きっとそれが、分岐点。
◇
意外なことにそれなりに利益を売り上げているのがこのDK堂。
パンがあったらそれも売れるが、リサイクル品やジャンク品も定期的に売れている。
リサイクル品を直すのは結構楽しいし、それが他の人に売れて笑ってくれるのも結構楽しい。
そんなわけで今もホロウから拾ってきたジャンク品を修復し、陳列棚に並べていった。
「いつも思うけど、存外手先が器用なのね」
「まぁね。最初のほうは割と苦戦してたけど、数をこなしていく内にね。継続は何とやら、だよ」
レジのほうでPCをいじっているサラが笑みを浮かべながらそう言ってくる。
正直最初はまぁまぁ四苦八苦してたが、結局のところこういうのは慣れである。
「そういえばサラさんはパソコンで何してるの? 動画とか見てる?」
「たまには見てるけど、基本的には投資ね」
「…と、投資…!?」
初耳だ。
「このお店が維持できるくらいにしか稼いでないわ。あなた、あんまり売上とか興味ないじゃない」
「そ、そうですね…うん」
言われた通りツカサはあんまり売上とかには興味はない。
買ってくれたらうれしいが、それだけだ。
お金が足りなくなったら適当に日雇い探して稼いでいたし。
「お金に無頓着なオーナーだとやっぱり未来が不安なのよ。私のお給金だってね」
「す、すいません…」
「まぁいいけどね。それが貴方のいいとこなのかもしれないし」
「…それじゃあ従業員のために、ちょっくらホロウに行かせていただきます」
「わかったわ。頑張ってね、〝ディケイド〟さん」
ドライバーを持ってツカサはいったん店を出る。
察しているとは思うが店の人には普通に正体をバラしている。
驚かれるかな、なんて思ったけどサラは大して驚かなかった。
驚かないの? と聞いたら 店の文字の色を御覧なさいな、と言われた。
あとやっぱりね、っていう表情も。
そういえばマゼンタと黒色でコーディネートしてたわ、DK堂のやつ。
バレてんじゃねーか、とも思われるかもしれないが、バラしたのは雇ってからだから。
入ってきたときはバレてねーから!(言い訳)
とりあえずなんかでっけぇ落し物ねーかなと思いデッドエンドホロウにでも行ってみっかなぁとツカサはオーロラカーテンを使いホロウへと向かうのだった。
◇
オーロラカーテン。
原典では並行世界への行き来に使用されたりなんかしているが、ツカサの場合はホロウとの出入りにしようしている。
ただ行ったことのあるホロウにしか繋げられない、ファストトラベルみたいな感じになっている。
オマケにカーテンにはディケイドであるツカサしか入れない、というおまけ付き。
だから基本的にホロウに迷い込んだ人を助けるときは結構頑張って出口探したりしている。
そんな時に良く役立っているのがディケイドフォーゼのアタックライドレーダーなのだ。
「しかし今日のデッドエンドホロウは雨強いなぁ、雷もあらぁ」
ツカサは何度かこのデッドエンドホロウに足を踏み入れている。
思いっきり違法行為であるが、人助けも並行しているのへーきへーき()
さて、使えそうなのはないかなー、と適当に歩き出してみる。
キョロキョロと見まわしてみると、何やら戦闘音が耳に入ってきた。
音の出所を探してみる…すると何やら大きめな広場のほうで蛇兎屋の面々と何やらでっけぇエーテリアスが戦っている。
いや、見たことある…あれは確かデッドエンドブッチャーとかだった気がする。
このホロウの主みたいな存在だった気がする、名前冠してるし。
っていうかなんで邪兎屋の連中が戦ってるのあんなんと。
戦う理由がある、とか?
えー。
あのエーテリアスディケイドでも対処しんどいんだけど。
今までも見つからないように基本探索してきたし、見つかっても適当に戦って隙を見て逃亡、を選んでいたし。
けど
念の為、こちらも参戦しておこうか。
ツカサは徐にディケイドライバーネオを取り出すと、それを腰に押し付けて装着する。
そして出てきたライドブッカーから、一枚のカードを取り出し、手慣れた手つきでドライバーを開けて装填。
<KAMENRIDE>
そのまま両腕を交差しながら突き出し、回し返すように顔の前に持っていき十字を作る。
原点のディケイドに変身ポーズはないが、思いつきで作ったものだ。
「変身」
<DECADE>
ドライバーを閉めるとそんな音声が鳴り響き、二十の残像が形成されてツカサに重なり合う。
ライドプレートが頭に装着され、緑色の複眼が発光する。
両手を軽く叩きながら、ふーっと息を吐きだすと、戦っている邪兎屋の連中と合流するべく跳躍した。
◇
「こいつはやべぇ! ちょびっとだけだが、後悔してきたぜ!」
デッドエンドブッチャーの攻撃を搔い潜りながら、ビリーは相手に向かって二丁のリボルバーを放つ。
弾丸は通ってはいるが、決定的なダメージはまだなさそうだ。
そんなビリーの後ろ側からアンビーが飛び出してデッドエンドブッチャーを斬り付ける。
体制を崩すにはまだ浅い。
「集中してビリー! プロキシが来るまで持ちこたえれば、こっちの勝ち───」
距離をとっているニコに向かって、デッドエンドブッチャーは武器を投げつけてきた。
あまりにも急に投げつけてきたために、反応が遅れる。
「! ニコ!」
「親分っ!!」
社員、もとい仲間たちの声が聞こえる。
噓でしょ、まさかこんなところで───
一瞬走馬灯が流れそうになったのも束の間…ニコとその投擲された武器の間に誰かが割り込んでその武器を受け止めてくれた。
「…えっ」
ニコはそんな素っ頓狂な声を上げた。
自分の前に立ち、ブッチャーの武器を受け止めていたのは、あの〝通りすがり〟であったのだ。
「うぅぅらぁぁぁぁぁぁっ!!」
受け止めたそのブッチャーの武器を再び持ち主に投げ返す。
体制が良くなかったからか、その武器は弧を描きブッチャーは武器をキャッチした。
「やれやれ。お前らはなんでこうトラブルを起こしてるんだ」
「と、通りすがり! ナイスタイミングじゃない!!」
「おうよ!! こんなタイミングで助っ人参上とは、流石スーパーヒーローディケイドだぜ!」
テンション上がった様子でビリーが駆け付け、アンビーも後に続いてくる。
通りすがりの仮面ライダーにはいくつかの名前があった。
基本的に彼は〝通りすがりの仮面ライダー〟としか名乗らないため、〝通りすがり〟か〝仮面ライダー〟としか呼ばれない。
だがたまに〝ディケイド〟と名乗る時があったため、そっちの名前も上記二つほど浸透していないが、知ってる人はいるのだ。
「スーパーヒーローとかやめてくれ。柄じゃない。なんであんなのと戦ってるかはわかんないが…まぁ、大体分かった」
「貴方が手を貸してくれるなら、グッと戦いは楽になる。お願いしていい?」
アンビーの言葉を聞きながら、ディケイドはライドブッカーをガンモードに切り替えつつブッチャーに突き付ける。
「オーケー了解、付き合ってやるよ」
そしてそのままライドブッカーの引き金を引くのだった。
◇
ディケイドを加えた邪兎屋は漏れなくブッチャーを退ける。
確実な火力を持っているディケイドは、邪兎屋を大いに優勢に立たせてくれた。
<ATTACKRIDE BLAST>
「ビリー」
「あいよっ!」
そうして放たれたディケイドブラストとビリーの弾丸の嵐がデッドエンドの動きを止める。
続け様にディケイドはビリーの後ろから出てきたアンビーと共に走り出しデッドエンドに接近する。
<ATTACKRIDE SLASH>
「アンビーっ」
「わかってるっ」
ディケイドの強化された斬撃と、アンビーの雷を奔らせた斬撃を受けてデッドエンドは膝をつく。
「ニコ!」
「わかってるわよっ!」
ディケイドの叫びと共に、ニコがカバンを変形させ、そこから特製エーテルグレネードをぶっ放す。
ディケイドもアンビーと共にそこを離れつつ、カードを取り出してドライバーにセットした。
<FINALATTACKRIDE DE DE DE DECADE>
ディケイドの前に十枚ほどのカードが展開され、それをぶち抜くようにディケイドがライドブッカーガンの引き金を引く。
そこから放たれたビームはカードを射抜くごとに強力になり、エーテルグレネードを喰らい弱体したデッドエンドに直撃した。
爆散するも束の間、デッドエンドブッチャーはまだ立っている。
というか腕が肩から生え出している。
マジかよとディケイドは仮面の中で舌を打った。
第二形態とか聞いてない()
「お前ら…、第二ラウンドだ」
ディケイドの呟きに応えるように、ニコ達も身構えるのだった。
◇
強くない? こいつ。
四本腕に増えたデッドエンドブッチャーの猛攻を凌ぎながら、ツカサは仮面の下で愚痴をこぼした。
なんでこんな奴がボスなんて張ってるんだ、もう少し後で出てきてもいいだろうこいつ。
現在のブッチャーは持っていた標識アックスを捨て去り、四本になった腕でのラッシュ攻撃をメインに繰り出してきており、正直捌くのがダルい。
ニコの支援やビリーの援護を駆使しつつ、アンビーとディケイドが前衛を務めている感じである。
攻撃の隙間を搔い潜り、アンビーの斬撃がデッドエンドブッチャーを怯ませる。
「ディケイド!」
「わかったっ!」
すかさず蹴りを撃ち込み、体制を崩すと一枚のカードを取り出しドライバーを開いて入れた。
<FINALATTACKRIDE DE DE DE DECADE>
電子音声の後、ディケイドは右の拳に力を込めて、目の前に出てきたカードを跳躍しながら通り抜けて、デッドエンドブッチャーを殴りつけて吹っ飛ばす。
ディメンションキックならぬディメンションパンチ、というやつだ。
原点では繰り出してなかったけど、キックがいけるならパンチも行けるやろ理論である。
どうにかゴロゴロと相手を転がすが、まだ撃破には至らない。
「お疲れ様通りすがりっ。サプライズが間に合ったわっ!」
「サプライズぅ?」
───間もなく、列車が到着いたします。線の内側までお下がりください。
そんな音声案内とともに、横合いから列車がダイナミック入場をかまし、デッドエンドブッチャーにクリーンヒット。
なんかぶち当たる前の列車の天井にはスカーフ巻いたボンプがいたから、もしかしたらこれが邪兎屋の切り札か?
っていうかあれパエトーンでは?
何回かホロウで一緒に行動したことがある、プロキシとしてかなりの腕の立つ存在だったはずだ。
よく見ると列車は何やらでっかいタンクのようなものをけん引していて、それがブッチャーにぶち当たる。
あれは爆弾か?
「<Fairy、仕事だっ! ───はい。空気中の電荷を測定します───>」
「ビリー、アンビー!」
「任せろ!!」
「うんっ」
ニコの声とともに、まずビリーが弾丸を放ち、タンクに穴を開ける。
そしてアンビーが持ってる剣を一本投擲する。
それらを見て、ディケイドはそうかと察した。
要はあのタンクを爆弾とし、雷を纏ったアンビーの剣を避雷針にすることで落雷を引き落とし起爆させてブッチャーを撃破しようとしてるのだ。
いい作戦ジャマイカ。
「通りすがり、アンタも早く隠れて!」
「俺は大丈夫だ、いいからいけ!」
爆風から身を隠すべく、邪兎屋とパエトーンのボンプが近くの障害物のところに隠れる。
ディケイドも距離を取ってはいるが、万が一の場合に備えておくことにする。
「<臨海電位差到達まで、4、3、2、1、───0!>
パエトーンのボンプからそうカウントダウン。
0になって落雷が来るかと身構えていると…何にも来ない。
「<…何も起きない?>」
パエトーンがそう呟いた。
タイミング間違えた? とか思ったのもつかの間、デッドエンドブッチャーが四本の腕でタンクをよっこいしょぉと持ち上げている。
これアカンやつでは?
「雷か…! だったら!」
ドライバーを開きながら、ディケイドは一枚のカードをセットして閉じる。
<KAMENRIDE BLADE>
<TURN UP>
ディケイドブレイドに切り替えたツカサは、近くの障害物の上に陣取りつつ、もう一枚カードを取り出した。
「何するの!? 通りすがり!」
「こうすんだ、そのまま隠れてろ!」
ニコの言葉に返しつつ、また一枚のカードを取り出してドライバーにセットする。
ちなみに後ろのほうでビリーが「おぉ! 姿が変わったぜ!! まだ見てねぇ姿があるのか!」となんかテンション上がってたがスルーで。
<ATTACKRIDE THUNDER>
ライドブッカーソードモードに、雷が迸る。
そしてそのままアンビーが突き刺した剣に向かって、ディアーサンダーを撃ち込んだ。
刹那、雷は雨の水に反応し、タンクの爆薬やらに引火して───無事に爆発するのだった。
◇◇◇
「あら、お帰りなさい」
オーロラを通して、どうにかデッドエンドホロウから戻ってくると、変身を解除してDK堂へとツカサは帰還した。
「ただいまー…あー疲れた」
ちょっとした探索のつもりだったのになんかえらいことに巻き込まれた気がする。
サラの出迎えもそこそこに、ツカサはその辺の椅子にどっかりと腰を下ろした。
ちなみにサラは水でも飲みながら優雅にテレビを眺めている。
<速報、速報です! あの〝ヴィジョン〟に重大な人命軽視が発覚しました───>
「何見てるの?」
「緊急生放送ですって。ヴィジョンコーポレーションにね」
ほえー、とこっちも売れ残っているパンを摘まみながら適当にテレビを視聴する。
そういえばちょっと前に旧都の列車の爆破解体を、白祇重工から勝ち取ったとか言っていた気がする。
決め手はコストの安さ。
そんでもって流れている報道によると爆破予定地の住民達の立ち退き費用などを削るべく、秘密裏に閉じ込めて諸共爆薬で消し飛ばすという非道な〝コスト削減〟であった事が判明したらしい。
わっる(他人事)
「それで、何か良いモノは拾えたのかしら」
「いや、何やら入った矢先で、ちょっと色々あってね…」
サラからの質問にツカサは苦笑いを浮かべつつ答える。
裏では何やら大きい陰謀が渦巻いていることなど、この時は想像もしていなかったのだ。