ディケイドライバーを携えて   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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ベーグル計画はまぁまぁ面白いですね。
失敗したら全ロスするのは嫌だけど。
ただ最終的にお金というかギアコインで全部どうにかなるので高難易度でも金目のもの物色してそれだけ持ち帰って死に帰りするのが一番効率いいっていう(

それとアキレミやリンレミが好きな人はごめんなさい



3 危うし高楼の夜(中)

とまぁいろいろありましたが、話を戻す。

 

「改めまして、私はフォン・ライカン。ヴィクトリア家政の執行責任者でございます。本日はバレエ・ツインズのオーナー様のご指示で、設備のメンテナンスに参っておりました」

「バレエ・ツインズのオーナー? でもバレエ兄弟って、とっくに破産してるはずじゃあ」

 

うむぅ、と考えながら猫又がボヤいた。

猫又のぼやきも最もだとライカンはうなずきつつ

 

「左様でございます。長きにわたりこのバレエ・ツインズは抵当されておりましたが、近ごろ、当局がラマニアンホロウの活性低下に応じて、共生ホロウの鎮圧を図っています。それが実った暁には、ビルの価値が向上すると読み、ご主人様は手付金を振り込まれました」

「…金持ちは未来見据えてんな…」

 

ほえー、といった様子でツカサがつぶやいた。

早い話別の人がビル買ったってことでいいのだろうか。

金持ちの考えることはわからん()

ツカサの言葉に猫又が彼の近くをくるりと回りながら

 

「でもでも、それのおかげでカリンちゃんとまたこうやって会えたんだけど」

「はいっ。猫又さま、調査員さま…またお二人に会えて、カリンはうれしいです!」

 

そういえば猫又とイアス…もといパエトーンはちょっと前に会ってるのだっけ。

なんかシャイニングのオマージュ的なのしてた気がする。

 

「ところで皆さまはどうしてこちらに? ここはご主人様の私有地ですから、協会のお仕事でいらしたわけでは、ないですよね…?」

 

痛いところをついてきた。

猫又は目が泳ぎだす。

 

「ぎく。…え、えーと」

「カリンちゃんさ。そんなのわかりきってんじゃん」

 

ツカサの隣をキープしながらエレンが口を挟んでくる。

距離近くない?

 

「ね、なんか暇つぶしになりそうなのない? スマホの充電切れちゃって」

「…モバイルバッテリー貸す?」

「いいの? さっすがー」

 

いそいそとツカサは懐からモバイルバッテリーを取るとエレンに貸し渡す。

ツカサから受け取るとエレンは自分のスマホにガッチャーンコ。

しかし電池切れのスマホは充電してもすぐにつくわけではないから結局少しは待たないといけないのだった。

 

「え、エレンさん。それはどういう…」

「ふふ。つまり、お二人は〝調査員〟ではない、ということですわ」

 

リナから告げられる真実にカリンはふぇっと声を漏らしつつ

 

「ふぇぇぇぇっ、お二人は調査員さまではなかったんですか…!?」

 

まぁこれ以上隠せないしね、是非もない。

 

パエトーンも何となく察していたのか、憑依されたイアスが黙っている。

いやンナーくらいは言ってはいるが。

恐らく多少の警戒が混ざっているのだろう。

それを察したのか、ライカンは一足歩みだし

 

「そう軽快なさらずとも。ヴィクトリア家政が責を負うのは、雇い主様に関してだけです。ホロウでご活躍されてる〝非公式〟の方々に、非礼を働くつもりはございません。ましてやあなた様方はカリンの恩人…。胸の内を明かしてくださるのなら、この場を訪ねてくださった〝お客様〟としてわたくし共も可能な限りご協力いたします」

<「そこまで言われてしまったら、白状するほかないな。…僕たちはプロキシなんだ」>

 

やがて観念したのか、イアス、もといアキラたちは顛末をライカンらに話していく。

さすがにレインがハッカーだというのは伏せているが、それでも十分である。

っていうかワンチャンヴィクトリア家政なら察してそうな気もするし。

 

「なんと。あなた様方があの伝説のプロキシ…〝パエトーン〟だったとは。ここへは、失踪されたご友人を探しにいらっしゃったのですね」

「俺も大体そんな感じ。ねぇ、ライカンさん。なんか手掛かりかなんか見てない? 人影、とか」

 

ツカサも便乗させてもらう。

目的は同じなので、たぶん問題ないだろう。

ライカンはふむ、と顎に手を乗せつつ

 

「さっそくお役に立ちたいのですが、当局に配布されたキャロットのデータが古く、私共もまだ、この建物の全容を把握しきれておりません」

 

ふむぅ、とツカサがうなる。

そればっかりは仕方ない、だが人数が増えるのなら見つけられる可能性も高くなるということだ…と、そんな時だった。

イアスからまた別の声が聞こえる、今度は女の子の声…妹のリンだ。

 

<「ごめんね、割り込んじゃって。ちょっとニコ達で面倒なことになっちゃって。今連絡がきたんだけど、裁判の書類に邪兎屋全員で出廷するって書いちゃったみたいで、ビリー達も来るように言われてるんだって」>

「なんてタイミングの悪い…」

 

ツカサがやれやれといった感じで声を出す。

 

「け、けどよ、そしたら店長の人探しはどうなっちまうんだ?」

「俺とライカンさんたちで引き継ぐ。いい? ライカンさん」

「もちろんです。むしろ、こちらも提案をしようといました。プロキシさまは人を探しておられ、私共はデータが古いため難儀しております。そこに、かの通りすがりどののお力が加わるのなら、これほど心強いことはありません。エレンも、貴方に懐いているようですしね」

「ボスうっさい」

<「でも、ぼくたちは部外者だ、君たちのご主人の許可なく入ってもいいのだろうか>」

「もちろんでございます。設備のメンテナンスを行う間、ご主人様よりすべての裁量をお預かりしていますので」

 

ライカンさんすげぇ、と心の中でツカサは思った。

 

「ましてや伝説のプロキシ…パエトーンの名声は、万人の知るところ。そしてもう一人、かの旧都陥落での活躍を残した通りすがりの仮面ライダー…そのお二人とも縁が結べたとあらば、ご主人さまもきっとお喜びになります」

「よしてくれライカンさん。…あの頃の俺は必死だっただけだ」

 

手を振りながら照れ隠しをする。

いや照れてなどいないが、助けることができなかった人も大勢いた。

結局のところ、自分が助けられる範囲なんて手の届く範囲以外にないのだ。

 

「とりあえず、まずパエトーンは邪兎のみんな送ってこい。そっちが全部終わったら、改めて連絡してくれ。俺はDK堂にいるからよ」

「待って。…え、DK堂って…あんたのお店だったの?」

「? そうだけど…それがどうかした?」

「…ぅうん。なんでもない」

 

びちん、とエレンのしっぽが地面をたたく。

何やら考え込んでるみたいなので、とりあえず一旦離れる準備。

 

「パエトーン、もといアキラ。先に戻るぜ?」

<「あぁ、諸々が終わったら伺うよ」>

「わかった、待ってるぜ」

 

そう言って最後にイアスを撫でる。

なでなでなでなで。

はーカワイイナァイアスチャン!!

全然関係ないけどボンプって超可愛くない?

 

◇◇◇

 

とまぁそんなわけで帰り道。

大して体は動かしてないが、それでも疲れるものは疲れるのである。

途中一ディニーボンプがいたから一ディニーを貢いで好き放題撫でまわした後、改めてDK堂の扉を開く。

そこで一番最初に目にしたのは、黒い衣服を身にまとった、黒い羽根が目を引く、ピンクの髪の女の人。

 

「あ、おかえりなさいっ」

 

彼女はこっちを見つけると笑顔になって手を振ってきた。

どうやらカウンター近くに椅子を用意してもらい、サラと会話でもしていたようだ。

サラもこちらへ視線を向けて笑みを浮かべると

 

「結構早かったわね。それとも進展があった感じかしら」

「あぁ、うん。一旦戻っただけなんだ。…なんでこの子が?」

「少し前に来てね。おしゃべりしてたのよ」

 

この子、というのはツカサの近くをキープしている淫乱ドスケベブラックピンクである。

ラミルっていうらしいが。

一年くらい前に何やらふらりとDK堂にやってきて、珍しそうに色々見て回っていたのが何やら印象に残っている。

その時手に取ったのが〝オルゴール〟だった。

手に取ってハッとした時にはもうすごい顔になっていたのである。

まるでもう会うことのできない旧友との再会を思い起こすような、そんな感じ。

一筋の涙が頬を伝うぐらいの衝撃だったのだろう、購入すると言ってきたので、その時のツカサはあげると無料で差し上げたのだ。

そこからちょくちょくラミルはこのお店に遊びに、もとい冷やかしに来るようになった。

たまーにパンも買ってってくれる。

 

「今日はなんか買うものあるの?」

「んーん。友達の顔を見に来ただけだよ。…いけなかったかな?」

 

少し伏し目がちになりこちらを覗いてくるラミル。

いやしかしツラが良すぎるし身体も露出が多いな改めてみると。

ツカサは視線を胸とかに行かないように自制しつつ

 

「別に。いけないなんてないさ。お前の事情は知らないが、少なくとも俺たちがお前を拒むことはない。ま、何かあったらいつでも来なよ。力になるぜ」

「───。うん。うんっ。いざってときは頼らせてもらうね。それじゃあまたね、ツカサさんっ」

 

彼女は出されていたお茶をぐびーっと飲みきると黒い羽根を翻してDK堂を後にした。

出る間際、ツカサやサラに向かってまた笑顔で手を振ると口にマスクを着けて改めて消えるように姿を消した。

どういう力なんだろ、まぁいいか。

 

「…それで、レインの件は大丈夫そう? 必要そうなら手伝うけど…」

「まだ大丈夫そうだよ。この後準備が終わったらパエトーンから連絡来るか、店に来るかあると思う。続きはそこから、かな」

「聞いてる感じ、あなたあの二人に自分がディケイドだって言った感じかしら?」

「うん。まぁ完全に秘匿してるわけじゃないしね」

「貴方がいいならいいけど」

 

そう言ってサラは店の中に残っていた一つの黒い羽根を拾うと、花瓶に入れてカウンターの近くに置いた。

ツカサはその羽根を見るとふぅーっ、とため息をしつつ、ラミルの顔を思い浮かべる。

 

(やれやれ。奔放な天使さまだ)

 

 

レミエール・ダン。

件の、ラミルの本名だ。

彼女はある建物の屋上に座り、足をぷらんぷらんと弄びながら、徐に何かを取り出した。

円形の箱を開けると、青い鳥が羽ばたいて、音楽を奏でるオルゴール。

きっと今あるこれは、〝あの時〟と同じものではないのだろう。

でも、それでも。

 

───あの、これ…買っていいかな?

───ん? あぁ、それ?

 

このオルゴールを買った…いいや、もらったその日のことを思い出す。

 

───いくらかな

───…あー。いいよ、あげる

───えっ? でも、商品なんじゃないの?

───そうなんだけど…そんな顔してる人からは取れないよ。誰かを思い出したのかはわかんないけど…ね

 

ふと気付いたら自分の瞳から頬を伝う涙の存在に気付く。

無意識に〝彼女〟を思い出して泣いてしまっただろうか。

 

───もし亡くなった人を思い出したなら、きっとその人は、君の心の中でまだ生きている。大切にしてあげてよ、その気持ちを

 

そういって彼はレミエールが手に持っていたオルゴールを改めて握らせると、微笑んでカウンターへと戻っていったのだった。

 

それがこのオルゴールをもらったその日の思い出。

レミエールはそれを懐にしまうと、その場を少しだけ名残惜しそうに離れるのだった。

 

◇◇◇

 

あの後アキラが店に来てくれたので、パンを買うついでにそろそろだと言ってきてくれた。

どうやら諸々の準備が終わったようで、改めてバレエ・ツインズ入り口に向かう。

現場に行くと既にヴィクトリア家政の面々とスカーフを巻いたボンプのイアスが到着していた。

 

「ルートとかは?」

「そのことなのですが、プロキシさま、ご友人がB棟の屋上にとどまっていた可能性があるのなら、とりあえずそこを目指してみてはいかがでしょう」

<「こっちとしては願ったりだけど、そちらの仕事に支障はないかな」>

「お気遣い痛み入ります。ですが貴方様は私共がもてなすべきお客様でございます。何より優先するのは当然のこと。ご友人が安全である確証がないのですから、なおさらです。捜索の途上、私共もメンテナンスを行うことができれば、効率としてはベストでしょう」

 

探しながら仕事も行う、確かに効率を考えればそれが一番いいだろう。

すんなりとレインを見つけて退散できれば、そこから彼らの仕事もできるからなおいいかもだが、こればっかりはなんとも言えない。

 

「ガイド様、ツカサ様。バレエ・ツインズの見取り図をご確認ください」

 

そういってリナさんが手書きの地図を広げて見せてくれる。

そこには大まかなビルの構造とB棟屋上までのルートがわかりやすく描かれている。

 

「見取り図を見た感じ、今俺たちがいるのはA棟の入り口、かな」

「えぇ。見取り図を見る限りは、B棟までアトリウムの長ーい渡り廊下を歩く必要がありますわね」

<肯定。エージェントが提示した情報は確かなものです。ひとまずはそこを目標地点とするのをお勧めします>

 

イアスから機械音声みたいな声が割り込んでくる。

フェアリー、だっただろうか。

 

<「それじゃあ、案内は僕に任せてくれ。それじゃあ出発だ」>

 

◇◇◇

 

道中のエーテリアスも始末し終えて、いったん一休みする。

 

「付近のエーテリアスさんは先ほどツカサさまが倒したので最後です」

「そうか。それじゃあ通路の査定とかはパエトーンに任せて、俺たちはいったん休憩かな。何かそっちの仕事があるならそっちを優先してくれても───」

 

ディケイドの変身を解除しながらツカサは言った。

そんな言葉の途中で、ふいに付近の照明がチカチカと明滅した。

道中ここに来るまでにも何回か点滅してたし。

やはり年季が入っているから照明のアレコレがお古なのか?

 

「…しかし、こう定期的に明滅されると鬱陶しいな…」

「そういえば何度かあったね。噂に聞いてた通りだ」

「噂?」

 

ツカサの近くをキープしているエレンが不意にそんなことを言い出す。

咥えていたチュッパチャップス的飴スティックをちゅぽん、と口から取り出し

 

「聞いたことないの?」

「え、エレンさんっ」

「あれ、これ言っちゃダメなやつ? ボスがブリーフィングでよこしたやつ長すぎて読んでないからさ」

 

せめて目くらいは通しておけ()

 

「でもリナもいるしよくない? なんか出てきても物理的ならツカサがなんとかしてくれるよ。逃げ道はプロキシもいるしね」

「話が見えないんだけど?」

 

頭に疑問符を浮かべながらとりあえずエレンに問い返そうとしたとき、リナがふわりとやってくる。

そのまま優雅に着地し、こほん、と一つ咳払い。

 

「改めてご説明させてくださいツカサ様。ここバレエ・ツインズでは、近頃心霊現象が起こるという噂があるのです」

「ほう、心霊」

「実は、バレエツインズがホロウに飲み込まれたとき、有名な舞踏家の姉妹が、この場所で命を落としてしまわれたのです。以来、姉妹の怨霊はバレエツインズの主となり、不届き者が来れば、明かりを明滅させて警告するそうですわ」

 

そういえばそんな話あった気がする。

 

「それでも出ていこうとしない輩には、明かりを消して闇を作り出し…その者の魂を刈り取るために、暗闇から姿を現すのだと…」

「へー…」

 

ふむふむ、とツカサは頷いた。

とはいえにわかには信じがたい話ではある。

 

「と、そんな噂があったのもかつてのこと、だったのです。最近になってここで、噂と似た境遇に逢った、と言われる方が現れるまでは。ご主人様はバレエツインズが事故物件という名の不良債権となることを危惧されました。そこで、表向きはメンテナンスとし、真相の究明を私たちにご依頼したのですわ」

<「なるほど。道理で最初は言わなかったわけだね」>

 

ルートの探索が終わったのか、イアスインアキラがてちてちと歩きながら会話に混ざってくる。

どうでもいいがホロウに入ってる時点で充分事故物件ではと思ったのは内緒である。

 

「当初はこちらとしても与太話だと思っておりましたが、先ほどの状況を鑑みるに、停電は本当なのかもしれません。これは新たなリスクになり得ます…。B棟へと通じるアトリウムの入り口には、防火シャッターが設けられており、停電によって自動で閉じる仕組みになっているのです」

「…となると、もう行ったほうがいいかもしれないな、ライカンさん」

 

ライカンの言葉にツカサが頷く。

腰に巻いたままにしていたドライバーに改めてカードを入れなおしてディケイドに変身すると、明かりの明滅がより顕著になってきた。

 

「急ぎましょう!」

 

ライカンの言葉にその場の一行がうなずいた。

いやエレンはうなずいてはいないが。

 

「ガイドさま、お守りしますわ」

「フォローするぜ」

 

ライドブッカーをガンモードにして、道中の邪魔なエーテリアスを撃ち落とす。

ライカンの蹴りがエーテリアスを吹き飛ばし、イアスの道を確保してそのままイアスをご案内。

優雅だ。

階段はリナがイアスを抱え、道中の雑魚はリナの小さいボンプが一蹴し登りきる。

やっぱ空飛べるっていいな…いや、仮面ライダー次第ではこっちも飛べるけど。

さらに湧いて出るエーテリアスはカリンの丸ノコでズタズタに裂かれエレンのハサミが断ち切っていく。

エグイやられ方ナンバーワン。

 

<「アトリウムはすぐそこだ!」>

 

そうアキラが言った矢先、停電が発生した。

ライカンが見まわし道を見つける…しかしアトリウムへ続く道のシャッターは今にも閉まろうとしている。

これはワンチャンファイズやカブトにでもなって、と思いカブトのカードを取り出した矢先、横合いからエーテリアスが割り込んできた。

危うくカード斬られるとこだった。

すかさず反撃を繰り出し壁に叩きつけ、シャッターの方を見やった。

シャッターは駆け付けたライカンの目の前で無情にも下り切ってしまい、道が塞がれてしまった。

 

「…一歩遅かったようです」

「邪魔が入らなかったらな…いや、言い訳はやめよう」

 

ライカンの近くに来ながらディケイドは軽く息を吐いた。

ヴィクトリア家政の面々も続々合流する。

 

「ライカンさん、手動で開けれる方法とかはある?」

「少々お待ちを。…資料を確認したところ、渡り廊下の向こう側に設置されているご様子。現時点ではここは、遺憾ながら通る術はありませんね」

「やっぱりな。まぁぶっ壊していくのが手っ取り早いんだけど…」

<否定。破壊する方法は推奨されません。アトリウムは二棟を繋ぐ唯一の実体ある構造物ですが、ホロウの影響下のため、不安定な状態にあります。ひとたび衝撃を加えれば、局所的な構造変化をもたらしてしまう恐れがあります>

 

イアスからそんなフェアリーの声が聞こえてくる。

よっこいしょとイアスを抱っこしつつ

 

「となると、ここで一旦積み、か。…どうする、ライカンさん」

「ここは一度離脱し、休息をとりましょう。我々ヴィクトリア家政は、停電の原因を究明し、ここを通る方法を必ず見つけて御覧に入れます」

 

そんなわけで今回の探索はここまでと相成った。

確かに区切りもいいっちゃあいいし、丁度いいかもしれない。

よっこいしょ、とイアスを抱えると

 

「…アキラ、イアスは責任もって送るぜ」

<「わかった。それじゃあ一旦僕も同期を解除して待ってるよ」>

 

そう言ってからアキラの声は聞こえなくなる。

ンナ? とイアスのちょっと怪訝そうなンナが聞こえてくるンナ。

イアスはかわいいなぁ、と思いながらわしゃわしゃ撫でながら、ツカサもヴィクトリア家政とバレエ・ツインズを出るのだった。

 

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