SUMMON NIGHT(サモンナイト)OVRE(オーバー) 作:Wisadm
「そういえば、説明していませんでしたわね」
そう言って、彼女の口から出たのは衝撃の事実。
嘘や妄言と言った方がまだ分かりそうな現実。
「つまり、俺は異世界に来てしまってしかも帰れないと?」
「ええ、召喚石を使わない完全にこちらに引き込む術式でしたから」
「じゃあ、俺の扱いって?」
「そう、ですわね…召喚石がなくて、主人もいない、つまりははぐれ召喚獣ですわ」
いきなり拉致られて、はぐれ扱いって…
挙句帰れない。
「あの、俺の持ってた紫色の石知りませんか?」
「わたくしが預かっていますので安心してくださいませ」
「いえ、今すぐ必要ですんで返してほしいんですが…」
「ダメですわ」
軽やかな笑顔で即答された。
駄目だ、望みが絶たれた…
「それと、お爺様にこの檻から出してもらえるように頼んだのですが…こちらも駄目でした」
少し申し訳なさそうにする彼女を見て思う。
本当にこの娘はあの小人達の仲間なのだろうか?
「それでは、また後できますわ」
彼女はそう言って去っていった。
聞いた話からいくらか推察を交えて現状を把握してみる。
まず、この異世界の名前はリィンバウム。
3つの国があって、それぞれ聖王国、旧王国、帝国であり、今いるここは聖王国から南に行った所にある森の中。
聖王国に仕えていた古くからの召還術師の名家の屋敷の地下…
逃げ出しても、北に逃げれば捕まるし、南に逃げれば海しかなく、この近くの森は危険指定を受けているはぐれの住む森だそうだ。
次に、あの紫の石のことだ。
あの石の名前は召喚石と言うそうで、リィンバウムでは常識らしく、召喚術師が召喚獣を呼び出すときに必要なものとして重宝しているらしい。
色によって呼び出せる世界が決まっているらしく、黒が機械兵士等がいる機界ロレイラル。
赤が鬼や妖怪、龍人の住む鬼妖界シルターン。
紫が天使や悪魔等の霊的なものが住む霊界サプレス。
緑が幻獣や妖精、獣人の住む幻獣界メイトルパ。
無色透明なものが俺がいた世界を含む、名も無き世界と呼ばれる無数の世界。
取り合えず、メルクリウスの召喚石を返してもらえないことにはここから逃げることすら出来ない。
そして最後に、この世界が俺が最近見る夢と完全に同じ世界である可能性が出てきた。
まだ確たる証拠なんかはないけれど召喚術や召喚術師の派閥の話を聞く辺りでそう思った。
「ま、しばらくは、ここで様子見だな…」
あ…トイレとかどうしよう。
『オーン・カルナシアス殿、そちらの研究はどうか?』
レーンを外に出して自室で水晶に向かい研究の報告をする。
あの子にはこんな話は聞かせられない。
「成果は芳しくありませんが、こちらで一体名も無き世界の人型召喚獣を手に入れました」
『ほう!それは本当か!?一度解剖してみたいものだ!』
何でも解剖すればいいと思っているのかこのアホは!
一体しか居らぬと言っておるだろうが!
「しかし一体しか居りませぬゆえ、こちらとしても軽々と手放すのは…」
『ム、そうか…では、一千万バーム出そう。それでどうだ?』
このガキは…本当に分かって言っておるのか?
いくらもうすぐ派閥の総帥になるからといって何でも思い通りになるわけではないんじゃぞ!
しかし、そうは思っても口には出せないのも事実で、研究資金の底が見えてきた自分には渡りに船でもあった。
「仕方ありませんなぁ…それでは、次回の研究費用に少し色を付ける事を追加なら了承もやむなしですじゃ」
『うむ。任されよ!それぐらいは容易だ!引渡しは何時になる?』
「そうですな、5日後でどうでしょう?」
『あいわかった』
「それでは…」
『これからも無色の派閥のために頼むぞ?』
「ハッ」
フッ!せいぜいあのガキには役に立ってもらうとしよう。
コレで待たしばらくあの子に楽をさせてやれる。
レーンは、笑っていられる…
「ククク…確り頼みますよ?」
部屋の片隅から声が聞こえる。
そうだった。あのかたのためにもがんばらなければ…
そう、アノカタノタメニ…
うぅ、さむ…
毛布ぐらいくれよな。凍死しちまうっての。
「もう少しかな…」
時間を確認しようと時計を見る。
23時47分...
もういいか。
ヘアピンを取り出し檻を出る。
さぁて、その辺を散歩がてら脱出経路の下調べと行きますか!
まずは武器庫を探さないとな…
あと、トイレも。