Digimon States~D-1バトラーズ~   作:宮枝嘉助

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第13話 絶望の始まり

 

 

 

 

「出し惜しみは無しだ! 最初(はな)っから全開で行くぞ、アルド!」

「うん、タクト! ドルガモン超進化~──ドルグレモン!」

 

「わたし達も行くわよ、フィアリス!」

「はい、ハルナ! フェアリモン、スライドエボリューション──シューツモン!」

 

「行くよ、レイ。フルパワーだ!」

「ええ、ナオキ! グレイモン超進化~──メタルグレイモン!」

 

「あたし等も行くぜガブール! 目にモノ見せてやれ!」

「ああ、リッカ! ガルルモン超進化~──ワーガルルモン!」

 

 

 琢斗達はパートナーに声を掛けると『Bit Evolution』というアプリを立ち上げ、各々のパートナーにD-オルタをかざす。

 

 その刹那、力を吸い取られてしまったような脱力感に襲われるが、数秒後にはその感覚に慣れ、パートナー達がその姿を変化させる。

 

 “Bit Evolution”──そのアプリは“少し進化”というその名の通り“少しの間だけ進化”させるアプリであって、完全に進化させるアプリではない。

 加えて、そのアプリの発動には原則人間とパートナーの双方の同意を必要とする。

 

 それは何故かというと、答えは単純だ。

 本来はまだ進化出来ない状態なのにも関わらず無理矢理進化する為の代償として、デジモンは自身のデータを削り、人間は“オーバーライト”というデータ書き換え現象を引き起こす為に体力を消耗するからだ。

 仮に双方の同意を得ずに進化した場合は、単純に進化の意志を示した方だけが代償を支払う事になる。

 

 ちなみに、完全に進化させる方のアプリも存在する。

 ドルモンだったアルドが初めてドルガモンに進化した時に現れた“EVOLUTION”というアプリがそれであり、こちらのアプリで進化した場合は本人の意志か、あるいは大ダメージを受けない限り退化する事は無い。

 その為、こちらは進化の条件を満たさない限り全く反応しないアプリとなっている。

 

 そして、残念ながら琢斗達の中にこのアプリで完全体に進化した者は居なかった。

 ハイブリッド体であるフェアリモンの場合は、このアプリでシューツモンになった時こそが完全に力を制御出来た証となる。

 

 更に余談であるが、ギンリュウモン──現在はヒシャリュウモン──はこの戦いには参加していない。

 この1週間の修行により、最大戦闘力が4万を超えた為だ。

 

 これだけあると、ヒシャリュウモンを参加させると簡単に勝ててしまう。

 よって、彼は街の反対側でザンバモンと組み手をする事になっており、そろそろ向こうでも始めている頃だろう。

 

 ──と、その時、遠くで建物が倒壊する時のような轟音が琢斗達の耳に届いた。

 

 

「──さて、向こうも始まったようだし、こちらもボチボチ始めるとするか。ああ、その前に1つ」

 

 

 もう進化も済んで臨戦態勢だったドルグレモン達は怪訝そうに先を促すと、スーパースターモンは琢斗達の方を指差しつつ、二の句を告げた。

 

 

「お前等が持っているデジヴァイスの効果は知っている。──何なら、お前等もかかって来ても構わんぞ」

「なっ──!」

 

 

 その言葉を聞いたアルド達は絶句した。

 確かに琢斗達にはD-オルタの力のおかげで、生身でデジモンと戦えるだけの力がある。

 だが、エリテリスのデジモン達には、人間を巻き込んでしまったという責任感があった。

 

 アルド達パートナーにもプライドがある。

 進化の為に間接的に力を借りているだけでも申し訳ないと思っているのに、その上直接的に力を借りる等という事は受け入れ難かった。

 しかも非常時でないただの訓練では尚更である。

 

 

「ふざけるな! ただでさえ4対1なんだ! お前にはボク達だけで勝つ!」

「ふ~ん……ま、オレ様はどっちでもいいんだがな」

 

 

 声を荒げるドルグレモンとは対照的に金色の星型デジモンは物静かな口調で話すと、突然目の前から消えた。

 一体どこに消えたのか、と琢斗が周りを見回してみると、そのデジモンは何と彼のすぐ右隣に居た。

 

 いや、それはおかしい。

 琢斗の右隣には彼のパートナーであるドルグレモンが立っていたハズなのだ。

 

 

「──────っ!」

 

 

 その異常に気付いた琢斗は完全体のパワーを得た脚力で一気に20m近く跳び退く。

 その跳び退く瞬間、背後から高速道路でブレーキを一切踏まずにトラック同士が正面衝突したかのような音が聞こえて来た。

 

 その音の正体については、考えるまでもなかった。

 成熟期の時とは比較にならない程に大きくなった紅き獣竜が後方に場違いのように聳え建っているアラビア風の宮殿のような建物に叩き込まれる音だった。

 

 

「一応もう1度言っておく。お前達もかかって来てもらって構わんぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相手のスーパースターモンのスピードは凄まじく、琢斗達の陣営の中で最速を誇るシューツモンでようやく食らいついて行ける、という程であった。

 よって、戦いの流れは自然とそのシューツモンが中心となる。

 

「やあああっ!」

「おっと!」

 

 風の十闘士、その内の獣のスピリットを纏った女性型デジモンが猛スピードで迫り、その勢いに任せて蹴りを放つ。

 

 その蹴りを、スーパースターモンはひょいとお辞儀をするようにしてかわす。

 そして屈んだ姿勢から伸び上がりざまに放たれた右拳でのアッパーカットがシューツモンの左脇腹に直撃する。

 

 

「スターアッパー!」

「ぐっ……ぁ……っ!」

 

 

 そのアッパーの威力だけでシューツモンは10m近く打ち上げられ、数秒間呼吸困難に陥ってしまう。

 そこに、いつの間にか跳び上がって来ていた黄金の星型デジモンがシューツモンを地面に叩き落とそうと腕を振り上げた。

 

 ──その時だった。

 

 

「させるか! ──カイザーネイル!」

「しまっ──!」

 

 

 その腕が振り下ろされる直前。

 シューツモンに次ぐ速さを誇る人狼──ワーガルルモンの必殺技が炸裂した。

 

 両の爪が紅色の光を放ち、その爪をクロスさせるように振り抜くというこの必殺技を、スーパースターモンは完全に虚を突かれていたが辛うじて右腕で防御する。

 

 しかし地力に差があるとはいえ仮にも同格の完全体の必殺技。

 スーパースターモンは斜め下に吹き飛ばされ、地面まで叩き落とされた。

 

 

「ゴホッ……すまない」

「いや、気にするな。……ちっ、あの野郎、ほとんどダメージ無しか」

 

 

 ワーガルルモンの見立て通り、スーパースターモンにほとんどダメージは通っていない。

 だがその原因は地力の差だけではなく、シューツモンを助ける為に速さ重視で必殺技を放ったからでもあった。

 その様子を見て取り舌打ちした人狼はすぐさま攻撃を仕掛けるべく駆けた。

 

 

「くっ、しつこい!」

 

 

 しかしそう簡単に追い打ちを許すスーパースターモンではない。

 最初にドルグレモンを吹き飛ばした時と同等の速度を発揮して一気にその場を離脱する。

 

 今のワーガルルモンではその速度に付いていく事は出来ない。

 シューツモンですらその速度になると置いて行かれる。

 なので、スーパースターモンは一旦その場を離れて態勢を立て直す事が出来る。

 

 いかに戦力に差があるとはいえ、4体同時に相手をしたのでは流石に分が悪い。

 なので黄金星はそのスピードを活かし、ヒットアンドアウェイ戦法による各個撃破で行こうと考えていた。

 

 ──しかし。

 

 

「ギガデストロイヤー!」

「なにィ!?」

 

 

 まるで自分がどこまで跳びずさるのか完全に読まれていたかのように、身体の半分近くを機械化させたが身体が耐え切れずに青く腐食してしまったグレイモン──メタルグレイモンの放つ有機体系ミサイルがピンポイントにスーパースターモン目掛けて凄まじい速度で飛来してきていた。

 

 そしてそのミサイルは、避ける間も無くスーパースターモンに直撃し、完全な状態であれば核攻撃に匹敵するとまで云われる爆発で包み込んだのであった。

 

 

 

 

 アニメで実弾系のミサイルを観るとそれほど速くなさそうに見えるが、実際にその目で見てみるとそれはただの演出だったのだと思い知らされる。

 

 琢斗達が目の当たりにしたギガデストロイヤーの弾速は、体感時間と目測からの概算で時速800~1000kmはあった。

 音速は常温で時速1224kmだが、音より遅いとはいえとてつもない速度である事に変わりは無い。

 

 琢斗達は今、全員がスカウターを着用していた。

 それは、本格的な戦闘が始まってからは200m程離れた所から見ている為で、通信機を使わないとパートナーに声が届かないからであった。

 

 

「……ホントはギガデストロイヤーの上から被せるようにアルドにメタルメテオを撃たせるつもりだったんだけど、ギガデストロイヤーの弾速が速過ぎたな」

「でも、あれだけ弾速があるなら囮じゃなくて本命として戦術に組み込めばいいってだけの事ですよ」

 

 

 今の一連の流れは、琢斗と尚貴の思惑に沿ったモノである。

 ただ2人の予想を裏切ったのは、レイが放った有機体系ミサイルの弾速が想像以上に速かったという一点のみだ。

 

 今まで一度も試していなかったのか、と問われるとその通りで、本当に核兵器並の威力があったらと思うと恐ろしくて試射も出来なかったのだった。

 しかし今回の相手はかなりの格上という事で、全て出し切らなければ到底敵う相手ではなかった為にぶっつけ本番で発射したというのが本当の所である。

 

 そうしたら爆風は琢斗達が立っている所まで襲い掛かって来たが、今の琢斗達であれば堪えられない程の風でも無かった。

 通常であれば5mぐらいは吹き飛ばされていたであろうが。

 

 

「何か、あれでもまだ未完成なんだろ? 詩織に観せてもらった奴とはメタルグレイモンって奴の体の色が違うし」

「ええ、あの色は“失敗した”メタルグレイモンらしいわ。だから、もっと強くなったら“成功した”メタルグレイモンに進化出来るとは思うけど」

 

「……にしても、同じ完全体なのにこの差はなんなんだろうな。こっちはようやく皆1万を超えたぐらいだってのに、向こうは5万もあるなんて」

「まあ、ウチのトノサマゲコモンでも2万ぐらいあったし──差し詰め今のわたし達のパートナーは“ファイル島の完全体”で、スーパースターモンは“フォルダ大陸の完全体”って感じかしら」

 

「??? ファ……フォ……え?」

「……その例えは上手いとは思うけど、たちばなには通じないと思うぞ、弥生」

「そうですよ。立花さん、弥生さんが言いたかったのはですね──」

 

 

 琢斗の指摘通り、立花はポカンとしていた。

 完全に訳が分かっていない様子だ。

 

 ──ファイル島。

 人間が初めてデジモンを見付けた島で、とある学者の説では“デジモン発祥の地”とも云われる島。

 

 デジモンが死んでしまった時に生まれ変わる場所“はじまりの町”という場所があり、後に見付かった多数の地域に比べて遥かに小さい島にも関わらず、非常に重要な意味を持つとされている。

 

 それ程までに小さい島にも関わらず、何故最初に見付けたのがこんな小さい島だったのかという疑問については学者達の間でも諸説あるが。

 最も有力視されているのは、人間が組み立てたプログラムが偶然デジモンになった時に、そのデジモンを追跡したら“はじまりの町”に辿り着いたからではないか、と云われているらしい。

 

 そんなファイル島には生まれてからそれ程経っていないデジモンが多い所為なのか、この島のデジモンのレベルは全体的に低く、完全体ですら“幻の存在”とされていた。

 一説によれば、ある程度強くなったデジモン達は更なる強敵を求めて大陸へ渡ってしまうからだとも云われている。

 

 ──フォルダ大陸。

 学者達が見付けた2番目の地域であり、ファイル島では“幻の存在”とされていた完全体が多数確認され、それまで最上級の存在だと思われていた完全体の更に上の存在である究極体が発見された大陸。

 

 究極体が存在する地域で生存競争が激しいからなのか、ファイル島にも居たハズの成熟期ですらかなり強力で、ファイル島の成熟期では全く歯が立たないとされる程にレベルが高い。

 

 更に、未確認情報ではあるが究極体をさらに超える“超究極体”なる存在が出現した事もあると云われ、こちらも学者達の間では議論が尽きない大陸である。

 

 ──と、そんなウンチクを立花に語った所で余計に混乱を招くだけだと判断した尚貴は、ただ単に島のデジモンと大陸のデジモンとでは強さに大きな開きがあるのだという事だけ伝えたのだった。

 

 

「……まあ、そんな話は置いといて。さて、今のでちょっとはダメージがあるといいんだけど……」

「パワーは少し減ってますけど、抑えてるだけかもしれないし……」

 

 

 ギガデストロイヤーによって巻き上げられた煙は段々と晴れて来ている。

 その煙が晴れた時に見える結果によって今後の戦術が決まるのだが、果たして。

 

 

 

 

「──今のは、中々いい攻撃だったぞ」

 

 煙が晴れた。

 奥から現れたのは、全身が煤に塗れ、ロックスターを思わせるようなサングラスにヒビが入ったスーパースターモン。

 見た目と雰囲気から判断すると、ダメージはあるが戦闘にはほとんど支障の無い程度、といった所であろうか。

 

 

「……ちぇっ、大して効いちゃいないって感じかな」

 

 

 その様子を見て取ったメタルグレイモンは、その言葉とは裏腹にさして残念でもなさそうに呟いた。

 実力差を理解していたからでもあるが、何より今のは牽制だったからだ。

 あくまで本来の本命はドルグレモンの直径50m級の巨大鉄球による攻撃だったのだから。

 

 

「さあ、続けようか」

 

 

 ダメージこそ少ないが一撃入れられたからであろうか、スーパースターモンは獰猛な笑みを浮かべながら悠然と歩み寄って来る。

 いよいよ本格的な戦闘になるであろう事を察知したアルド達は、より一層の警戒心でもって相対する。

 

 

「まずはさっきの礼からだ」

 

 

 その時だった。不意にスーパースターモンは足を止め、呟きながらヒビの入ったサングラスに手を掛ける。

 わずかに持ち上がったサングラスの隙間からまばゆい光が漏れ出し、そして。

 

 

「──ギャラクティカアイズ!」

 

 

 まばゆい光は小さな無数の星々となり、更にそれが集まって小さな星の流星群となってメタルグレイモンに襲い掛かる。

 

 

「くっ、避け切れない──!」

『レイ、飛んで!』

「──っ! ぐ、ああっ!」

 

 

 レイは星の奔流を避けようと試みるが、あまりの数に避け切れそうに無い。そう思った瞬間、尚貴からの指示が来た。

 その指示を聞いたレイは、咄嗟に金属製の左腕を盾にしつつ飛翔。刹那、流星群がレイの身を飲み込んだ。

 

 だが、数秒もしない内にメタルグレイモンの身体が星の奔流の中から脱出した。

 盾にしていた左腕は見るに堪えない程に無惨な姿になっていたが、何とか戦闘は続行出来そうだ。

 

 

「あ、危なかった……ナオキの声を聞いて飛んでなかったら、ボクはリタイアしてたかも」

 

 

 流星群が通り過ぎた跡は綺麗な更地と化していた。

 それを見てレイはホッと一息吐くのだったが、その時足元の方で何かが光った。

 レイにはそれが何なのか判断が着く前に、尚貴からの檄が飛んで来た。

 

 

『レイ、真下を撃って!』

「──っ!? ギガデストロイヤー!」

「スーパアアアァァァスタアアァァアッパー!」

 

 

 不意に飛んで来た尚貴の指示で、レイは半ば反射的に真下の光源に向かって有機体系ミサイルを発射した。

 その行動は結果から言えば正解で、正に間一髪と言ったところである。

 

 凄まじい勢いで迫って来ていた黄金の星の右拳と生身を半分腐らせた機械竜の有機体系ミサイルがメタルグレイモンの直下僅か3m足らずの所で衝突し、それによって発生した爆風によって機械竜の体躯は一気に50m程も吹き上げられたのであった。

 

 その爆発でレイは全身を焦がし、満身創痍と言っていい程のダメージを負ってしまうが、まだ何とか戦える状態だ。

 

 

『アルド、今だ!』

「メタル──メテオォォォオオッ!」

 

 

 その時だった。

 丁度吹き上げられるまでメタルグレイモンが居た座標に、直径50m程もある巨大な鉄球が姿を顕した。

 

 次の瞬間、その鉄球の上から20m級の巨体を誇るドルグレモンが激突し、落下速度が飛躍的に増大。

 一瞬にして鉄球は地面に衝突し、耳をつんざく轟音と共に琢斗達の所まで届く程の衝撃波を発生させる。

 

 

「よっしゃ、どうだあっ!」

「完璧なタイミングだったね!」

 

 

 思わずガッツポーズを取ってしまう程に手応えを感じた琢斗。

 質量にしておよそ30万トンにもなろうかという大質量の純粋な物理攻撃。

 普通ならこれで決着でも何の疑問を挟む余地も無い所であるが……。

 

 

 ビーッ! ビーッ! ビーッ!

 

 

 次の瞬間、琢斗達のスカウターからけたたましいブザーが鳴り響いた。

 

 

「え? これって──」

「……何か、来る──!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間を少し遡り、戦闘開始の2時間程前の事になる。

 琢斗達は、スカウターの通信機能を使ってエリテリスに居るエンシェントワイズモンと連絡を取っていた。

 

 

『──久し振りだな、我が国のらりるれろ! らりるれろ!』

「うおっ!?」

「何だ? 言語規制か!?」

「立ちゃんは一体何を知ってるの!?」

 

 

 いきなり向こうの第一声から変な声が聞こえて来た。

 琢斗が素直に驚愕しているのに対し、立花は違った反応を見せる。

 そしてそんな反応を見せた事に対して春菜は二重にビックリするのだった。

 

 

『……ああ、すまん。今、通信機能のテストでNGワード設定を試していたんだ』

「ああ、それであんな……」

「ちなみに設定は何と?」

 

『“戦士”と設定していた。それと、ワシは普通に喋っている。上から被せるように声が出ているハズだ』

 

 

 無論その点に関してはきちんとエンシェントワイズモンから説明があり、琢斗達はすぐに納得した。

 そしてその話題は早々に切り上げ、今回の通信の本題へと入る。

 

 

『──1つ、言い忘れていた事がある。スカウターの事だ』

「何だ? 戦闘力が100000を超えたら爆発でもするとか?」

 

『いや、違う。……ちなみに爆発する戦闘力は任意に設定出来るぞ』

「爆発するんかい!」

 

 

 琢斗は完全に冗談のつもりで言ったのだが、肯定されてしまい大声でツッコんでしまった。

 そしてその大声が他の3人の耳に酷く響いたのか、3人から恨みがましい目で見られてしまう。

 

 

『以前、遠距離の相手の戦闘力を測る事は出来んと言っただろう? その部分を少し改良した。アプリの追加はワシが居なければ出来んが、アップデートはそこでも出来る。後でやっておくといい』

「その言い方だと完全に遠距離の相手を測れる訳じゃないみたいですけど、何が出来るようになったんです?」

 

『相手の具体的な数値は出せんが、凄まじいパワーを持った者が近付いて来た時に警報が鳴るようにした。ああ、勿論ワシが予め登録した者は鳴らんぞ』

「まあ、そうでないとザンバモンの側に居たら鳴りっ放しだもんね」

 

『…………それと、警報が鳴った時は非常事態だ。その時はワシ等にも伝わるようになっているからそう心配するな』

「……? ……ああ、分かった。ありがとうエンシェントワイズモン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時は再び現在。

 けたたましい警報音を聞いて、4人は皆僅か2時間程前の通信を思い出していた。

 

 

「──まさか、実際に警報を聞く事があるなんて……」

「しかもこんなすぐにな」

「くそっ、ただ近いってだけで、距離も方角も分かんねえなんてな」

「まあ、これじゃせいぜい心の準備が出来るってだけだよね」

 

 

 そんな会話を交わしつつ、4人は背中合わせに立って辺りを見回し最大限の警戒態勢を取る。

 尤も、今の戦力でその警戒が役に立つかどうかは怪しいモノであったが。

 

 

「スターシーカー!」

 

 

 その時、巨大鉄球が砕ける轟音を響かせながら、スーパースターモンがその身体を高速で回転させながら飛び出して来た。

 その様子はかなりボロボロで、かなりのダメージを負っている事が看て取れる。

 

 ちなみにその間アルド達はというと、警報を聞き付けて即座に琢斗達の下へ戻り、更に一旦進化を解いて成熟期に戻っていた。

 言うまでも無いであろうが、シューツモンもフェアリモンに戻っている。

 

 スーパースターモンもアルド達がパートナーの下にまで戻ったその様子を見て異変を感じ取ったらしく、明後日の方向に先刻レイを苦しめた星の奔流を放った。

 すると、どこからともなく学ランを羽織った番長風の獅子が猛スピードで駆けて来た。

 既に何かを感じ取っているのであろうか、誰も何も話していないにも関わらず臨戦態勢になっている。

 

 

「何者だ! 姿を見せろ!」

「なっ、もう近くに居るのか!?」

 

 

 バンチョーレオモンの怒声に驚きを隠せない琢斗。

 だが、その言葉が真実であるなら驚いている場合ではない。

 

 刹那、その場に居た全員が例えようのない悪寒に襲われた。

 そして、人間でも感じ取れる程の気配のする方を見遣る。

 すると、一体いつの間にそこに“居た”のであろうか、黒と白が互いに染まらずに複雑に混ざり合っている不可思議な球体が宙に浮かんでいたのだった。

 

 

「あれは……まさかオ●マか?」

「いや、何でここで別世界の裏ボスが出て来るんですか」

「そうだ、目の前に居るんだからあいつのパワーを測りゃ何か判んだろ。──な、何だよ、これ……」

「どうしたの? 立ちゃ──」

 

 

 敵らしきモノの姿が見えた事で少し落ち着きを取り戻したのか、琢斗達は冗談も入れて話す事が出来た。

 しかし、春菜が口を開いた瞬間、球体が弾けた。

 

 その中から現れたのは──

 

 

「何故貴様がこんな所に居る!? ──ルーチェモン!」

「ここは余の世界だ。余がどこに居ようと(アリ)にとやかく云われる筋合いは無い」

 

 

 球体の中から現れたのは、純白の翼と漆黒の翼を左右にそれぞれ6枚ずつ持っている事を除けば、神聖さと妖艶さを併せ持った金髪碧眼の貴族、といっても通ってしまいそうな容貌のデジモンであった。

 

 体躯はそれ程大きくは無く、2mあるか無いかぐらいの背丈なのだが、感じられる威圧感はエリテリスの城でリリスモンから感じたモノを遥かに凌駕している。

 そんなルーチェモンはというと、近くに建っていた1番高いビルの頂上に着地し、こちらを見下ろしている。

 

 

「なあ、あいつは何者なんだ?」

 

 

 その時、立花が琢斗達に向かって疑問の声を投げ掛けた。

 それはまだデジモンの事を知って日の浅い立花にとっては当然の疑問で、最早立花への説明係と化して来ている尚貴が教えようとした瞬間、意外な人物が割り込んで来た。

 

 

「何、余の事を知らんだと? デジモンでないとはいえ、余の事を知らんとは嘆かわしい。いいだろう、ならば特別に余が直々に教えてやろう」

 

 

 割り込んで来たのはルーチェモンの方だった。

 翼の生えた貴族はやたらキザったらしく髪を掻き上げながら、自己紹介を始める。

 

 

「余はルーチェモン。Divine Rebellion──ディベリオン──の長にして世界の頂点に立つ者だ」

「へっ、何を言ってやがる! 前回オメガモンに負けて準決勝で敗退した癖によ!」

 

「黙れ(チリ)め」

「────っ!」

 

 

 一瞬、その場の空気が凍り付いた。

 凄まじい威圧感の眼光が黄金の星を撃ち抜き、スーパースターモンは何の声も出せなくなってしまう。

 

 

「……ふん、オメガモンはもう出れんではないか。その点、余は何度でも出られる。今回こそ余が世界の覇者になるのだ!」

「え、どういう事だよ? 1度出た奴は出られないんじゃなかったのか?」

 

「たちばな、違うんだ。再出場出来ないのは究極体だけだ。あいつは完全体だからルール自体が変わらない限り何度でも出られるんだ」

「なっ──嘘だろ!? アレで完全体だって!? だって完全体って言ったらあたし等のパートナーやスーパースターモンと同じ──」

 

「一緒にするな(クズ)が。余と貴様等屑共とでは生まれながらにして出来が違う」

「……それで? 我々とは生まれながらにして出来が違うルーチェモン様が何故このような場へ足を運ばれたのでしょうか?」

 

 

 自分達の事を屑呼ばわりされて腹の立たない者は居ないだろう。

 その例に漏れず、尚貴が皮肉たっぷりに仰々しい程の敬語で尋ねたのだが。

 

 

「何、単純な事だ。前回の大会で余の覇道を妨げた不届き者共を皆殺しに来たのだ」

「──────っ!」

 

 

 そんな尚貴の言葉など全く意に介していない様子で返されたルーチェモンの言葉に。琢斗達は身の毛がよだつ程の悪寒に襲われてしまうのであった……。

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