ブルーアーカイブでブルアカを   作:粋刺@翻訳

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総力戦- Decagrammaton: BINAH 後編

かつて航空法というものが存在していた。

 

しかしここはキヴォトス、エイミにとっては服装について周りからとやかく言われるぐらいどうでもよかった。つまり現在、彼女は全速力でヘリコプターを飛ばしているが、航空機の利用者が少ないため大事故を起こすことはなかった。

 

全速力で飛ばしていようとも、搭乗員は誰一人として不快にならなかった。エイミの技術力のおかげではあったが、それぞれ取り組まなければならないことに集中しており、それどころではなかった。

 

「もしもし?もしもし?誰か聞こえますか?」コタマが呼びかけるも、ノイズしか流れてこない。三年生の彼女はため息をつき、頭を横に振った。「駄目です。接続が確立しません。」

 

「本当なんですか!?」とコトリが眉をひそめる。「もうすぐミレニアムに着くというのに駄目なんですか!?」

 

「切断からもう何時間も経過している。」と重々しく言うウタハ。「ハブのせいで校内の通信が全て遮断されているとはいえ、ここまで長く続くなんて…」

 

「あっ!学園が見えてきたよ!」とマキは叫び、指差して学園を見た。しかし景色がはっきりと見えると、彼女は言葉を濁した。「…え?」

 

「これは…」とアカネは眼鏡をかけ直す。空に向かって立ち上る複数の煙がはっきりと見えていた。「状況は想定よりもかなり深刻のようですね。」

 

「煙濃すぎ…」と唸るエイミ。「とりあえず安全な着陸地点を探してみるね。」

 

さらに前へと飛んでいけば、戦場の様子が鮮明に映し出されるが、混迷が深まっていくだけだった。サンプルとして連れ戻されたデグラマトンの取り巻きがありとあらゆる入口へ一斉に攻め入っている。防壁に向かって発砲するものの、設置された防衛用ターレットと数名の生徒が食い止めている。だが校内にいた生徒全員が防衛をしているわけではなく、大半は防壁の()()起きている事態に対処していた。

 

「あれは…ハブ?」エンジニア部部長は思わず目を見開いた。今まで数え切れないほどの時間を費やしてメンテナンスしてきたあの機械が、自分たちの学園を攻撃しているのだ。ミレニアムが持つ技術の粋を集めて作り上げ、校内での円滑なコミュニケーションを支えていた傑作が、今やヘイローが浮かんでいた。モニターは不気味に輝くオレンジ色の瞳が映し出されており、必死に防衛をしている生徒たちを睨み付けていた。

 

その色合いは、つい先ほどのビナーと同じものだった。

 

かつて学園を一つに結んでいた数多のケーブルは、今や引き裂く触手と化し、校内では電を纏った炎が迸っていた。設置場所と強大な力からすれば、ハブだけで校舎全体を倒壊させることもできたはずだが、ミレニアムが総力を挙げて結集した勢力によって阻まれていたようだった。

 

最前線には、あるメイド集団が陣取っていた。中で一番小柄な少女が何か叫んでいた。声は聞こえないが、彼女が指差すと全員が動き出す。指揮権を握っていたのは確かだった。

 

「部長が指揮を執っておられますね。」と呟くアカネ。

 

「わっ!わーっ!あれって!」金髪の少女が叫び、ガラスに顔を押し当てながら遠くを指差した。「も、もしかして…!?」

 

正門で勇猛果敢に戦っているのは、なんと──

 

「スーパーロボット!?」マキが大声を上げ、全貌が徐々に明らかになってきた。具体的に言うと、少々時代遅れの頭部の姿が。「…いやーそのデザインはちょっと…」

 

学園の守護者は、4本の腕と戦車のような脚を持つ、巨大でほぼ人型の機械だった。顔のデザインは妙にコミカルで、1本の手には万物の黄金比を模した盾を装備していたものの、残り3本の腕に装備された武器の火力を見れば、本物の兵器であることは疑いようがなかった。とはいえ…

 

「うちが作ったものじゃないね。」とウタハは断言した。「いつの時代のものなんだろう?」

 

「大昔のものでしょうか?」と呟くコトリ。

 

「ミレニアムはそんなに古くないね。」

 

一方、対峙していた相手は全く別の存在だった。ヘイローが浮かぶ機械で、蜘蛛と戦車を足したような奇妙な姿だった。外見とは裏腹に、車体に取り付けられた巨大な砲塔の重量を感じさせず、まるでローラースケートで滑っているかのように戦場を軽やかに駆け回っていた。その反応速度は常識外れで、機械的な外見でなければ生物と見間違えるほどだった。

 

この機械は完全に圧倒しており、ミレニアムの守護者は激しい連続攻撃に必死に食らいついていた。

 

「あれも預言者の一体だよね?」マキは息を吞んだ。「頭おかしいスピ──」

 

彼女の言葉は、同じ部員が出した普段とはかけ離れた叫びによって遮られた。「危ない!」

 

エイミはすぐに操作をして、ヘリコプターは間一髪で回避すれば、突如として飛来したミサイルが機体の側面に掠めた。彼女たちの全身には再びアドレナリンが駆け巡っていき、ピンク髪の少女の操作で砲塔が展開される。だが銃弾が空を飛び交う頃には、敵は既に回避行動を取っていた。ジェット機のような速さで白い閃光が紅い空を駆け抜け、その後ろにはオレンジ色の光の尾を引いていた。

 

幸い、敵は挨拶代わりの一発を発射した後、相手にする価値がないと判断したようだ。

 

だがそれは不幸でもあり、別の標的を狙っていた。謎の光がミレニアムの正門を目指して急上昇し、彗星のように落下すれば、寸前で二足歩行の姿に変形する。ケースから鋭く伸びた鉤爪のようなものが、謎の守護者の胴体へぶつかれば、そのロボットは一瞬にしてスクラップと化した。間抜けな形をした頭部は、ヘイローが浮かんだ最新鋭の戦闘マシンの足下に無残に踏み潰された。

 

二足歩行型のメカは、仲間の預言者へ得意げに首を傾げ、それに対してもう一方のメカは怒りを込めてライトを明滅させた。言葉を交わすこともなく、二機は同時に防壁へと向き直り、一斉に攻撃を開始した。堅牢そうに見えた鋼鉄の壁も、預言者たちの圧倒的な力の前には長くは持たず、やがて大きな穴が穿たれてしまった。

 

そうして二機は自信に満ちた足取りでミレニアム内部に侵入し、学園を裏切った者を出迎えた。一方、これまで必死にハブと戦っていた生徒たちの顔から血の気が失せていく。

 

預言者たちはそんなことなど気にも留めなかった。

 

──武器を向け、発射した。

 

その日、未来という真っ白なキャンバスは、神の炎に焼かれた。

 

純白の鋼鉄は深い漆黒に焦げ付き、阿鼻叫喚に陥る生徒たちは砲撃に巻き込まれないよう必死に逃げ惑う。数秒が永遠のように感じられるほどの時間、無差別に撃ち続けられ、やがては全く予期せぬ行動に出た。

 

──攻撃を停止したのである。

 

「…信号を受信しました。」受信機を調整すれば、機械的な『声』が雑音の中から三つ聞こえてきた。

 

【挿絵表示】

 

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【挿絵表示】

 

カチッという音と共に無線は完全に沈黙し、後には呆然とした静寂だけが残った。彼女たちの目の前で、預言者はすぐに立ち去ろうとしていた。ハブは今やホドと名乗り、ケーブルを空中に持ち上げている。ジェット機形態に変形したゲブラは離陸し、触手を掴むと、新たな仲間をどこへともなく連れ去っていった。ケテルと他のデカグラマトンの信奉者たちは、ただ散り散りになり、近くの廃墟へと逃げ散っていった。

 

誰かが口を開く前に、スマートフォンが一斉に振動し始めた。慎重に取り出せば、目を見張るような光景が映し出されていた。

 

「えっ!?」マキは自動でブルーアーカイブが起動される瞬間に目を瞬かせた。再び目を凝らすと、プレゼントが届いていることに気付く。「『追憶の証』?なにこれぇ!?」

 

「もしかして!」と声を上げるコトリ。「石を配ったのですか!?」

 

眉をひそめるコタマ。「明らかにハッキングの類です。後でロールバックされます。」

 

「ふむ。」とアカネはスマホを置いて、椅子を指で叩く。「エイミさん、中庭を見せてくださいますか?」

 

「分かった。」とピンク髪の少女はうなずく。

 

一同は息を呑んで煙が晴れるのを待った。煙が消え、それぞれの目が見開かれる。校内にいた生徒たちはまだ混乱していたが、上空から見下ろすと、襲撃した目的ははっきりと分かっていた。預言者が自らの信奉する教えを説くのは当然のことだ。

 

ミレニアムの中庭に、生傷のように刻まれた印があった。

 

細部まで精巧に彫り込まれた、決して忘れることのない神秘の象徴。

 

それはヘイローのようにも見える形。

 

そして中央に刻まれたある言葉。それは──

 

音にならない聖なる十の言葉(D E C A G R A M M A T O N)

 


 

「デカグラマトン!これが正体不明の存在なのでしょうか!?」特ダネを手にした記者らしい、ジャーナリスト特有の興奮した声で、レポーターはマイクに向かって叫んだ。「今話題の新作スマホゲーム『ブルーアーカイブ』とは一体どのような関係があるのでしょうか!引き続き、クロノスニュースが最新情報をいち早くお届け──」

 

ボタンを押して、私はテレビを切る。ポケットに手を入れると、ポッキーを一本取り出してかじる。深刻な状況下だっていうのに、甘い棒一本で心が落ち着く。

 

私以外のMXスタジオのスタッフは大混乱に陥っていた。

 

「クロノス、ミレニアム、連邦生徒会からメッセージが殺到しています!」PRリーダー(くじ引きで決めた)がモモトークを必死に確認しながら叫んだ。「公式アカウントが大炎上しています!お問い合わせが多すぎて対応しきれてません!」

 

「複数の不明なアカウント操作を確認しました!」テクニカルチーフ(番号当てゲームで決まった)が声を張り上げた。「サーバーはロールバックしますか姉貴!?」

 

「ははは…終わったぁ…」リーガルチームのリーダーは顔面蒼白になり、天井を見上げていた。「もう終わりだよこのゲーム。」

 

「はあ…」私は早くも押し寄せてくる疲労感を感じながら、皆を落ち着かせるようにこう言った。「はい、一回落ち着く。」

 

だが依然として阿鼻叫喚のままだった。

 

そこでドン!と強く地団駄を踏むと、ようやく騒ぎが収まった。

 

「PRチームはダメージコントロール。デカグラマトンとの関与は徹底的に否定して、ただの偶然だとか、ファンサみたいなものって言ってシラを切れ。大事なのは、今回の攻撃には一切関与していないという認識を広めさせて、これ以上のヘイトを集めないようにすることだ。」

PRチームの中には報道スタイルが少々()()()()()という理由で退学させられた元クロノス生もいた。かなり難しい注文だとは重々承知していたが、背に腹は代えられない。

 

「テクニカルチームはサーバーを厳重に監視しろ。間もなく大量の新規ユーザーが押し寄せてくるはずだ。そして──サーバーはロールバックするな。」

 

皆、信じられないといった様子で私を見つめた。「ほ、本当ですか?」

 

「喧嘩を売る相手は分かるか?」これが脆弱性の類であれば、修正した後にお仕置きをするのだろう。だがこれはあの存在による敵対行為、少しでもサーバーに触ろうとするのなら、爆破されてしまうのは間違いない──文字通りの意味で。「セキュリティチームは徹夜覚悟で準備しろ。誰一人として、一歩たりとも踏み入れらせるな。」

 

「分かりました姉貴!」と返事が返って、慌てて配置へ着く。

 

「私は自分のオフィスにいる。地獄を味わいたくない限り一、二時間ぐらいは誰も干渉するな。いいか?」

 

「は、はい姉貴!」全員が慌てて仕事に戻り、すでに今夜は長い夜になることを悟っていた。

 

自分のオフィスに一歩足を踏み入れると、疲れたため息とともにドアを閉める。ドアの背後ではまだ混乱が続いている。パニックになるのも無理はない。最初にデカグラマトンの概念を説明した時、大半はただ私の話に付き合っていただけだったはずだ。実在すると伝えても、シナリオの一つだと思って頷いているだけだった。最近の出来事を経て、ようやく最初から私が本気だったことに気付いたのだろう。

 

部屋を見回した後、私は首を振った。「働け、姉貴…ってか?」

 

慎重に椅子を動かし、この時のために用意しておいたろうそくを取り出した。

 

一本ずつ、火を灯していく。やがて部屋は濃厚な香りで満たされた。

 

照明を消す。パソコンのモニターの微かな光だけが、室内をぼんやりと照らしている。

 

ゆっくりと正座すれば、無刀の奇跡を優しく目の前に置く。

 

目を閉じる──

 

Speak of the Devil──悪魔の話をすると本当に現れるという言い伝えが元となった慣用句がある。」そんな言葉が口から流れ出る。「だが私自身、これは少し変な表現だと思っている。なぜ悪魔を呼び出すような慣用句があるというのに、神を呼び出す慣用句はないのだろうか?」

 

ブルーアーカイブのシステムファイルの最深部、私は入手できる限りの暗号化を施した特定のファイルを、最深部に埋もれるように保存していた。たとえ誰かがアクセスできたとしても、その内容は曖昧極まりないものだった。暗示的な表現や問いかけ、本来の受信者でなければ文脈を理解できないような会話の断片が散りばめられていたのだ。

 

つい最近知ったことだが、どうやら誰かがこのファイルをすでに解読していたらしい。犯人は特定できないが、最近の出来事を考慮すれば、疑いの目を向けるべき人物は一人しかいない。

 

なにせパスワードは割られていたのだから。

 

Who am I?

 

「その理由は…」深く、息を吸い込む。「神を呼ぶ前から、すでに神はいる。」

 

目を開ける。「さあ、崇高なる機械仕掛けの神よ、どうか顕現してくだされ。」

 

モニターの電源が落ちる。

 

直後、周囲は赤く光る禍に包まれる。

 

パソコンのモニターから、デカグラマトンのヘイローが私を押しつぶさんばかりに迫ってきた。「随分と頭が回るものだ。偽りの預言者。」

 




[訳者あとがき]
次回は17日に投稿します。
画像を弄る手間が結構かかってます
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