ブルーアーカイブでブルアカを   作:粋刺@翻訳

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咲き誇れ!覆面水着団!!!!(2)前編

さて、少し時を戻そうか。

 

世界初となるリアル総力戦から一週間後、その週はまだ生まれて間もないMXスタジオの歴史の中でも多忙を極めに極めた1ページとなった。人口が爆発的に急増したため、テクニカルチームは一日中モニターと睨めっこすることになり、スタジオの場所を特定した奴がいたせいでセキュリティチームは総動員で対応に追われることになり、(ついには修行部までもボランティアとして駆り出されることとなった。)二日間ずっと机の下で隠れていたリーガルチームは可能な限りの法的措置を講じ始めた。とはいえ皆、混沌を好む変わり者ばかりなせいか士気は逆に上がることとなった。つまるところ開発チームの状況は…

 

まあ、何ら変わらないということだ。

 

ほう?いきなり一週間後に次の章の公開をアナウンスすればチームは大慌てで準備に取り掛かるだろ、と?

 

甘い。公開日は最初から決まっている。お祭り騒ぎの中でもスケジュール通りに進めているが、そのことを世間に知られるわけにはいかない。どうやら私は、企業の裏工作に長けてきているようだ。

 

それに悲しきかな、Cute and Funny(ロリロリらしさ)官僚制(あの激務)をやり過ごせるのは超人ぐらいだ。私の仕事量は日増しに増えていく一方で、各部署からの報告書の確認に加えて、キヴォトス各地からのEメールが受信トレイがパンパンになるほど押し寄せてきて、仕事以外の対応事項もあって…

 

「そこまで。」と私はストップウォッチのボタンを押し、顔を上げる。「全員解答用紙を受付に提出すること。カンニングをしたら、分かるな?」

 

「「はーい。」」と疲労困憊の返事が重なった。

 

一瞬だけ不満の声が出るも、全員の解答用紙が私の机の上に静かに重ねられていく。そうして私は小さく唸って枚数を数えて見落としがないかを確認し、うなずく。「よし、お疲れ。昼食に行っていいぞ。結果はいつもの時間に発表する。」

 

その瞬間に、部屋は賑やかになり、皆散り散りになってそそくさと出ていった。「あー試験マジでむずすぎた。」

 

「28問目分かった?」

 

「あれの解き方は多分…」

 

疲労と共に息を吐き出し、目の前の山積みの書類を見やる。一体誰が、ソシャゲ製作と同時並行で退学者や不良への勉強をさせるという妙案を思い付いたのやら。まあそうだ、私が思い付いた。事実私は、このスタジオのメンバーにいられる条件として、一定以上の成績を維持し続けることを義務付けていた。当時としては、それでいいと踏んでいた。Cute and Funny(その手の萌え)ゲーマーを除いて、ブルーアーカイブレベルのソシャゲを作るには一定以上のスキルが必要不可欠だったからだ。元々の出自のせいなのか、彼女たちにはそのスキルがなかった。だからこそ、スキルアップの為の勉強は会社にとっても間違いなくプラスになるはずだ。

 

だがどちらかというと、主目的は彼女たちの精神的な支柱となることだった。

 

キヴォトスの外の人間には理解しがたいかもしれないが、()()()()()()()()()()。どこの出身であろうとも、生徒は皆通学しているという誇りを少なからず持っている。いくら不良連中が威勢を張って大口を叩こうとも、学校にはもう通えないという事実の痛みは大きい。いわば未来を奪われたようなもので、不良の大多数が目的もなくただその日その日を必死で生き延びていた。

 

私が組んだカリキュラムは明らかに非公式のものではあるが、超高価なBDを一枚の為に無理をしてでも彼女たちを助けたかった。そう、いわば私の『カリキュラム』は様々な学園からのパッチワークで、一貫性には欠けていた。だがそれでも、『生徒』としての実感を与えることができれば、それで十分だった。

 

ただし、誤解しないでほしい。この程度のことをしただけでは『先生』と呼ばれるレベルには達しない。それどころか家庭教師すらも達しない。授業内容を軽く流し読みしただけで、質問されれば教科書を引っ張り出して答えを探し、その後一緒に問題を遡って理解しなければならない始末だ。せいぜい妙に丁寧な試験監督程度が関の山で、それも私の目の前にある便利な発明品ありきで成り立っているものだった。

 

機械音と共に、解答用紙は一枚残らずあっという間に箱型の機械に飲み込まれる。ハイランダー鉄道学園から直接取り寄せたセイントネフティス社製の自動採点機だ。アビドスからの撤退については色々と意見があるだろうが、そこの製品は本当に高品質だ。特にこの採点機の基準は厳格で容赦がない。もしもあのシュポガキどもがシュポシュポパヒャパヒャと採点していけば大事故になるだろう。もちろん、念のため後で時間を十分に掛けて手作業で再確認したが。

 

…正直に言うと、採点が一問一問進んでいく様子を眺めていくうちに、少し腹立たしくなってきた。時短目的でこの機械を買った。だが問題は、全く異なる背景を持つ気性の激しいたちを、試験監督がいないストレスフルな試験会場に放り込むと(実際そうだった)激しい衝突が起こりかねないことだ。幸い彼女たちは皆、あの地獄を体験した後に互いを歩み寄ることを学んだ。それでも、念のため私が試験監督を行う必要はある。それに今では「伝統だから」「しっくりくるから」という理由で私にせがんでくる始末だ。

 

私はタイムマネジメントの神ではない。初期のアトリエシリーズでさえ、クリアできずにゲームオーバーになってしまう。

 

少なくとも最近の予算増額のおかげで、スタジオ用のスペースを更に確保できるようになった。事務所で寝るのは腰に良くないからな…

 

物思いにふけっていた私の耳に、突然ノック音が入ってくる。そしてうちの生徒が慌てて頭を突き出してくる。「姉貴!お客様です!」

 

「今回は誰だ?」私はため息をつく。「また記者だったら…」

 

「それが──」彼女は息を呑む。「陰陽部の副部長です!」

 

あぁ、カホか?

 

遂にこの時が来たようだ。

 

「分かった。少し待ってくれと伝えてくれ。」私は採点済みの解答用紙を片付けて、まっすぐ自分のオフィスへ向かう。「すぐに向かう。」

 

もしも私の予想通りの展開になるのなら、その前に持っていくべきものがある。

 




[訳者あとがき]
後編は明日の18日に投稿します。
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