ブルーアーカイブでブルアカを   作:粋刺@翻訳

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サービス開始(2)

「ちょっとこれって──なんで!?どうしてなの!?」早瀬ユウカは足早に歩き回り、砂埃を立てるほどの勢いで部屋の中で右往左往していた。まるで直近のC&Cの任務が再現されているかのような感覚で眉間を押さえていた。すべては暇つぶしとしてダウンロードしたスマホゲームが原因だった。

 

一日中仕事に追われて擦り切れ、そしてミレニアムの中でも倹約家な彼女がこのゲームに夢中になっていたとは、彼女自身もにわかには信じられないことだった。

 

『ただなんとなく』からすべては始まった。

 

意味深な台詞、連邦生徒会長と思わしき少女のモノローグと共に映る謎のスチル、そしてキヴォトス各地が描かれた美麗なイラスト──しかしイラストに出ていた人物はトリニティ生やゲヘナ生、もしくはユウカが知らない学園の生徒ばかりで彼女としては不満を抱いていた。

 

開発陣はミレニアムに恨みでも抱いているの!?なんでミレニアムだけ仲間はずれなの!?さっきのはゲヘナの風紀委員長!? そんな考えが彼女の頭によぎるが、音楽のリズムがそれを消し去っていった。それを聞いた瞬間、ユウカは一瞬でそのゲームに引き込まれていった。このような掴みは、技術的な面で見ればそれほど印象的な出来ではなかったが、それでもユウカはこのスマホゲームのシンプルながらも高いクオリティを感じられずにはいられなかった。

 

気がつくとオープニングは終了しており、連邦生徒会副会長との出会いに移っていた。

 

「主人公はキヴォトスの外から来たのかしら?」奇妙な選択だった。まるでキヴォトスのことを何も知らないプレイヤー向けに設計されている。外の世界はそれほど違うのだろうか。「ふふ、ユウカ()()…そのうち先生呼びに慣れるのかもね。」

 

その()()が理知的な大人なら、生徒たちはきっとついていくのだろう。

 

この時点での会計は完全に『ブルーアーカイブ』にのめり込んでいた。一息ついて、この先の展開を見ようとした…そのときだった。

 

「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」

ユウカが言った。いや、本人が実際に口に出したわけではない。画面には生き生きとした「ユウカ」のイラストが表示されて、彼女の声を完璧に再現した音声が再生されていた。自分の声の録音を聞く時と同じような違和感を覚えたが、それよりも不安を駆け巡ったのはこれまで一度もそのような言葉を言ったことがないことだった。

「…うん?隣の大人の方は?」

 

「いや知りたいのはそっちの方よ!」ユウカが大声で叫ぶ。当然のことではあるが、ゲーム内の「ユウカ」は一切返事をしなかった。そうして少女の心の内には不安が募っていくものの、彼女はプロローグの最後まで読み進めていく。その結果、彼女は叫び声をあげ──やがて同じような叫び声がキヴォトス各地で相次ぐことになった。「何なのよこれー!!!!???」

 

しかしブルーアーカイブはその問に答えることなく、新たな問を投げかけるだけだった。不気味に思える程まで忠実に再現された動きをこなしながら突如不良集団からサンクトゥムタワーを奪還する任務に巻き込まれたゲーム内の自分を、彼女は驚きながらただ見守ることしかできなかった。時間が経つにつれ、その光景はますます非現実的なものへとなっていった。

 

ゲーム内のユウカはユウカ先生に向き直る。「なるほど…これが先生の力…まあ、連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前か…」

 

「何もしていないんだけど…」ユウカ本人が言った。

 

チュートリアルだったからという理由もあるかもしれないが、難易度が少し簡単すぎてベテランゲーマーである彼女としては少し物足りなさを感じていた。しかしこの時点ではもうスマホを放すつもりはなかった。

 

気付けばタワーを奪還し、伝説の不良を撃退(?)し、謎のAIの少女と約束を交わし、シャーレの顧問となっていた。唯一、超法規的権限を持つ組織という存在が、これはただの()()()にすぎないと彼女が確信する証拠であった。

 

そして、この状況へと繋がる。

 

「やっぱり怪しいと思っていたけど、いくらなんでもこれはおかしすぎるわ!」とユウカは叫ぶ。おかしいと思う度に頭痛が酷くなっていたからだ。「名前と顔以外に声まで無断使用されてるじゃない!それになんでバリアのことも知ってるの!?まだそこの開発は終わっていないのなんで!?」

 

彼女の足取りは突然止まり、一人の少女──セミナー所属の白髪の書記、生塩ノアに振り向く。「ノアもおかしいと思うでしょ!?」

 

「ですね~」彼女は画面をじっと見つめたまま、うなずく。

 

「ま、まあ、しっかりと調べ尽くしていて凄いとは思うけど…」とユウカは口どもる。「それに何か褒められたような気がして…と、とにかく!ゲームに出すならせめて一言でも言ってちょうだい!」

 

()()がユウカちゃんのヘイローなんですね?シンプルな形ですが、とっても似合ってますよ。」

 

「そっちじゃない!」会計はノアからスマホを取り戻そうとするが、友人の方はそうやすやすと手放そうとはしない。「ヘイローの形はどうでもいいの!どうせ魅力的に見えるようにしてるだけで!」

 

「そうですか?他の部分もかんぺき~に再現されていますよ。」ノアは突然画面をユウカに向けて、L2Dバージョンの彼女と向き合わせる。「ほら、小言の言い方も。」

 

『まったく…大人なんですから、しっかりと大人らしく計画的な消費をしてください。お小遣いをもらってパーッと使っちゃう子供じゃないんですよ?それに、こうして領収証の整理を手伝ってくれるのなんて、私くらいなんですから…次はもう絶対に手伝いませんからね!』

 

「ふふふ。」とノアは楽しさを隠す素振りすらも見せていなかった。「本当に、ユウカちゃんはユウカ()()が好きなんですね?」

 

「ぐうっ!」とゲームを見せたことを後悔するユウカ。同時に、ユーザーネームを本名にしたことにも悔やんでいる。しかし彼女の名誉のために弁明すると、こんなことで黒歴史が増えると予想できるのは不可能だ。「でもこの先生と私は別人で、そもそも浪費していたら普通は るでしょ!こんな大人になんかなりたくない…って違う!違う!違う!話がそれてる!」

 

スマホを焼き尽くしそうなほど鋭い視線を向けながら、ユウカは続ける。「開発者は私のことを全て知り尽くしているから、まるでずっと目を離さずに観察──あれ?」

 

癖まで含めてずっと、ユウカを観察している人物。

 

そんな条件に当てはまる人物が、今まさに彼女の目の前に座っているのでは?

 

「ノア…まさか関わっていたりとか…」

 

「え?」とセミナーの書記は目をぱちくりさせた後、小さく笑い声を漏らす。「いえ。一切関わっていません。ですが開発者のリサーチ力には目を見張るものがあります。目の前のユウカちゃんに愛されているみたいです!」

 

「被害者じゃないノアに言われても…」ユウカは唸る。「とはいえ、このまま黙って見過ごすわけにはいかないわ!さすがに法の一つ二つは反しているはずよね?」

 

「ふむ。私は取り扱っているのは著作権ではなく特許ですが、少なくともこのゲームの制作会社についての調査ならできます。」タブレットをスワイプし続けて数分後、ノアは答えを見つけ出す。「ええと、MXスタジオというインディー系のスタジオで、所在地は…あら。」

 

「え?」ユウカはノアのその声色を好ましく思っていなかった。

 

ノアが顔を上げて申し訳なさそうな笑顔を見せたことで、その疑惑は確信へと変わった。「百鬼夜行のようです。」

 

「…やっぱりそこなのね。」ユウカは肩を落とす。「あのフリーカルチャーのせいね…」

 

スタジオがミレニアムに構えられていたのであれば、簡単に閉鎖できた。しかし、百鬼夜行は著作権に関してはかなり寛容であることはマニア間の常識である。山海経のような無法地帯とまではいかないが、それでも悪い意味で有名である。それに加え、別の自治区内にあるということは、もしもMXスタジオが反発した場合は連邦生徒会も巻き込むことになってしまい、その間にユウカが卒業してしまう可能性もある。

 

「まあ、まあ。」とノアはユウカの肩を優しく叩く。「このゲームから何か学べるかもしれませんよ?」

 

「学ぶっていっても…まあプロローグは色々と考察できそうね。」とユウカはうなずく。「JHP弾を違法にしても問題なさそうだし、ゲームみたいに風力発電が停止したら堪ったものじゃないわね。」

 

ミレニアムで二分間の停電が発生した時、セミナーはその話題を二か月間もずっとやり玉に挙げられていた。

 

「発電所を連邦生徒会やサンクトゥムタワーから独立する方向でいくのは…でも、うっ…」ユウカはまた頭痛が発生していた。「それだと予算が…」

 

「ですが、ミレニアムアプリストアで配信されている以上、収益の一部はセミナーにも入っていってますので──」とノアは指を立てる。「案外ゆとりを持てるかもしれませんよ?」

 

「そこまで儲かるとは思わないけど…」とユウカは目を細める。「そもそもこのゲームに課金する人なんているのかしら?」

 


 

「おはよ──」黒見セリカが対策委員会部室に入ろうとしたその時、唐突な閃光弾に襲われる!「うわあああっ!!!目がああああ!!!」

 

「あっ!セリカちゃん!ちょうどよかったです☆」ノノミが声を上げる。いや、このノノミはただの十六夜ノノミではない。最強武器『伝説のクレジットカード』を使った(スーパー)ノノミである。周囲の空間を捻じ曲げる程の力を持ち、偉大な相手というのは輝いて見えるどころかそもそも姿が見れない域にまで達していた。

 

格差社会の一撃をモロに喰らったセリカは、スマートフォンを顔に押し付けたまま、ただうめき声を上げるだけだった。「こちらにサインお願いします!」

 

「あ?え?」普段であれば、何でもかんでもサインするような馬鹿な真似はしない…とセリカ本人は思っている(人によって意見が分かれるところだが)が、あまりの衝撃に気が動転していたため、気がつくと指が勝手に動いており、画面に表示されていた封筒にはサインが記入されていた。「あっ!私今何を──」

 

「ありがとうございます!」と友人が画面をタップしてひとしきり騒いだ後、演出が再生され、そこには…「凄いですセリカちゃん!ホシノ先輩が引けました!」

 

「ん、」今になってセリカがその存在に気付いた人物であるシロコは短くうなずく。「グッジョブ。」

 

「やっとですか…」屍のように机にもたれかかっていた奥空アヤネは呻くように言う。「ノノミ先輩、早くカードをしまってください。強すぎます。」

 

何も知らない猫耳少女の頭に浮かんだのは、たった一つの疑問だった。「…さっきから何が起きてるの?」

 

ひとしきり説明を受けた後、彼女の困惑はむしろ深まっていただけだった。「え?私たちのゲームを作った人がいるの!?マジで!?」

 

沈黙が少し漂った後、彼女は続けて疑問を投げかける。「…なんで?」

 

「分かりません☆」とノノミ元気よく言う。「今朝アプリストアでたまたま見つけたんです!」

 

「他の生徒さんたちも大勢登場していますが──」アヤネが説明する。「どうやらボリューム1の主役は私たちのようです!」

 

セリカは遠慮がちにノノミの肩越しに画面を見上げ、タイトルを読み上げる。「『対策委員会の奇妙な一日』、まさに今起きていることね。」

 

「まあ…」眼鏡をかけた少女は頭を掻く。「ゲーム内ではカタカタヘルメット団を倒したみたいです。」

 

「えっ!?そうなの!?」

 

「はい!☆」少し間を置いてから、友人はふてくされたように続ける。「でも倒したらセリカちゃんが私に怒ってきて…」

 

どうしてノノミに怒った理由を彼女が聞き出す前に、シロコが口を開く。「ん、ノノミじゃなくてノノミ先生に怒った。」

 

「さっきから話がややこしくなっていってない…?」彼女は何か忘れていないだろうか?あっそうだった!「って、まさか皆一日中ゲームしてたの!?」

 

やはりというか、その時にちょうど自治区一の怠け者が口を開く。「おじさんの寿命と違ってまだそんなに時間は経ってないけどね。うへ~」

 

「ほら、セリカちゃんも!」とノノミは椅子を近づけさせる。「気になってきたんじゃないですか~?」

 

まあ、それは…そう!彼女としては、()()気になってきたということは否めないのである。「分かった!分かったから!」

 

黒髪の少女は腰を下ろし、長い一日の始まりに腹をくくる。「スマホ貸して!」

 

ストーリーを把握した後、大人が信頼できないからゲームのセリカが怒ったことを本人は知る。彼女自身も共感できるが、真逆の立場にいるせいか複雑な気持ちを抱いていた。

 

直後に起きたことについては言うまでもなく…

 

「えっ──なんで!?」バイトしていることを赤裸々にされてしまい、セリカは叫ぶ。「昨日決まったばかりなのに!?」

 

その猫耳の少女は一瞬で現在の状況を理解する。まず対策委員の全員が自分を見つめており、全員が自分の言ったことを聞いていた。彼女は身体を強張らせて、言葉を詰まらせてしまう。「あ、えっと…」

 

「やはりアルバイトをしていたんですね!」と、名探偵のようにアヤネはそう断言した。

 

一方で、ノノミはただ微笑んでいた。「この後皆で一緒にお昼ご飯を食べましょうか!」

 

「無理!無理だから!」シフト初日から友人を連れてくるアルバイトを見た柴大将はどう思うのだろうか。「バイト中はちょっかいかけないで!」

 

不幸にも、屈辱はまだ終わらない。

 

「あ~セリカちゃんが泣いてます~☆」

 

「泣いてるのはゲームのセリカ!私じゃない!ジロジロ見ないで!」

 

「あの…」とアヤネは少し考え込むような表情を見せた後、続ける。「ストーリーを読んだ後だと本物のノノミ先輩の語尾にも☆がついているような気がしてきました。」

 

「ん、私も。」

 

「なんだか…」と眼鏡の少女が言おうとしていた言葉は突如として遮られ、彼女の視線は自分のスマートフォンへと移る。「え?」

 

「先輩。」今の状況などつゆ知らずに、シロコはピンク髪の先輩を小突いた。ノノミがセリカをからかっている間に勝手にスマホを操作していたからだ。「先に読まないで。」

 

「ちょっと気になっただけだから~」とホシノは答えるが、小声で呟き続ける。「そんなことがあったんだ…」

 

「なんでメッセージがこんなにたくさん来ているんですか!?」突然、アヤネが声を上げる。全員の視線が一斉に彼女へ──正確には大変なことになっているモモトークアカウントに集まる。対策委員らは少し理解に手間取っていた。アビドスのモモトークアカウントは以前から稼働していたが、誰からも見られていなかった。だからこそそのアカウントが一気に注目を浴びることこそが、死者が蘇ることよりも衝撃的な出来事だった。

 

ノノミがこの状況を一番的確にまとめ上げる。「あはは、どうやらしばらくは盛り上がったままになりそうですね。」

 

別の場所でもまた、同じような状況に直面している少女たちがいた。

 

「便利屋にこんなにたくさんの依頼が来てるわ!…えっ!?どうして急に依頼の半分がキャンセルされたの!?」

 




[作者あとがき]
友人から解説を求められたので、簡潔に説明すると、この二次創作は複数のアジア圏の二次創作からインスピレーションを得ており、物語の構成はゲームのストーリーに対する反応と、その反応を知った後の影響を交互に描く形になります。このような構成は西洋の二次創作ではあまり一般的ではありません。通常、登場人物たちが謎の劇場のような場所に転送される展開が主流だからです(この傾向は『MST3K』の影響と言えるでしょう)。
[訳者あとがき]
次回は6日に投稿します
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