トリニティで内緒話をしたければ、外でやれ。
──トリニティ外の者にとっては、直感に反する言葉だろう。だが、トリニティ総合学園は広大なキャンパスを有しており、そのおかげで現在使われていない教室はすぐに見つかる。しかし広大なキャンパスを有しているということは、数多くの生徒を抱えているということ。そしてここは、小規模の学園群が連合して創立したという歴史を持つ。その結果、いつ、誰が、どこにいるかという推測は至難の業であった。そのため、これまで密かに打ち明けられてきた数々の秘密は、瞬く間に噂と化し、山火事のように広がっていった。全ては自分たちは安全だと思い込んでしまい、通りすがりの誰かが聞き耳を立てているのかもしれないと考えていなかった者たちにある。
事実、トリニティに渦巻く噂は凄まじく、もしもトリニティとゲヘナが一日の間だけ校名を入れ替えるとなれば、トリニティは地獄の魔王としてレッテル貼りをされることになるだろう。
人気の場所は主に二つ、一つ目は近くにある踏み切り、ここで内緒話をすると周囲からそう思われないという理由で人気である。そして二つ目はもちろん──
「場所はここで合ってますかね…?」阿慈谷ヒフミはそう呟きながら、スマホで地図を確認していた。「この角を曲がれば…あっ!」
まさにその瞬間、子供向けの公園が視界に入ってきた。周辺地域にある廃墟のような場所ではなく、規模の割には少々小さいものの、手入れが行き届いておりくつろげる場所だった。ただ、まだ幼い子供たちの下校時刻ではないため、この公園で出来ることといえば楽しみを待つ程度だった。とはいえ、人っ子一人いないというわけでもなく、入り口のすぐそばには、銀髪の少女がぼんやりとスマホをいじっていた。
ヒフミは微笑みながら手を振り、彼女に声を掛ける。「お待たせしてしまってすみません、スズミさん!」
ちらりと、赤い瞳が彼女に向けられる。スズミはうなずき、その口角は僅かに上がる。「大丈夫です、阿慈谷さん。」
「あ、阿慈谷さんだなんてそんな。」と彼女は小さく「あはは…」と笑う。「ヒフミで大丈夫です。」
「わかりました。」と天使は答えると、その声色が一気に変わる。「この前お伝えしたように、ブラックマーケットには行っていませんですよね?」
その瞬間、ライトブラウンの髪の少女は足を止めた。「も、もちろんです!行こうだなんて一度も考えたことがありません!もちろん銀行強盗もです!」
ヒフミは一瞬言葉を切った。「まあ...そうですね、少し、調べたことがありまして。どうやらそこにペロロ様グッズでもレアなのがあったらしいんですが!全て転売ヤーのものだったんです!でもそこへ襲撃して元のデパートへと返してあげた方がいたらしいんですね!」
スズミの頬を汗の一滴が伝った。「ブラックマーケットに行ったことがないにしては、随分と詳しいんですね。」
「あっ、モモフレンズ界隈で大きな話題になってましたので。」と少女は浮足立っている。「ゲームの私はもう色々と誇張されまくっているのですが、私なんてどこにでもいるただの生徒なんです!」
そんな台詞をヒフミは何回も発してきたせいか、寝言として出てしまうほどだった。とはいえ事実、その通りであって、一ヶ月前までの阿慈谷ヒフミはごくごく平凡なトリニティ生であった。見た目も成績もごくごく平凡、強いて言えば他よりもモモフレンズに少し熱くなってしまう程度。だがブルーアーカイブが配信されてしまうと、なんと銀行強盗の主犯格へと大変身!遂にはあのナギサ様直々にお呼ばれされてブラックマーケットに行ってないかと確認されることとなってしまった!
誤解を解くのに一体どれだけ時間が掛かったのやら…幸運なことに、クラスメイトは皆理解のある人だったが、それでも日々『ファウスト』のことでからかわれていた。特に昨日のメインストーリーの更新の後、騒ぎも収まるかと思っていた矢先に…
そう、ヒフミは本当に、電車で百鬼夜行へ行って無断使用した開発陣に一言申したかったのだが、なけなしの小遣いでは交通費は到底払えそうになかった。
代わりとして、現実の自分は決して罪を犯さない──そう自分自身に言い聞かせて慰めることとした。
もちろん、どうしても──その時が来たら。
ペロロ様はきっと、お赦しになられるはず。
「そのことはしっかりと胸に刻んでおきます。」と、スズミは気楽に笑いながら言った。「ともかく、これからのことについては聞いていますか?」
「だいたいは分かっていますが…」ヒフミは言葉を途切れさせ、昨晩起きた出来事を回想する。
事の発端はナギサ様にまた会議へお呼ばれされたことだった。最近はこういった会議が頻繫にされるようになったからだ。初めは二人共にブルーアーカイブの世界に翻弄されていたが、やがてヒフミは、ナギサ様はただ自分の学園生活に悪影響が出ないかを気にかけてくださっていると理解するようになった。フィリウス派のトップがごくごく平凡な少女をこれほどまでに気にかけてくださるとは、なんとお優しい方であろうか!そして昨夜も、特に変わったことはないように思えた。
「少しヒフミさんにお話しておきたいことが…」と亜麻色の髪をした天使優しく語りかけながら、手に持っていた紅茶のカップを何気なく一口飲む。「あの噂についてのことですが──」
「やってませぇん!」とすぐに、ヒフミは否定した。「疑うのは分かりますがそれでも絶対に!絶対にしていませぇん!」
「そう…ですか?」
「ペロロ様もそうだそうだと仰ってます!私はただウェ〜ブキャットパジャマを買いに並んでいただけなんです!」
「…こほん、ひとまず落ち着いていただけると──」
「確かに一見すれば似ているのですが!これはゲヘナ生が模倣犯としてやったことなんです!」
「ヒフミさん。」とナギサはため息をつく。カラン、と部屋にはティーカップを置く音が静かに響く。「よろしければ、最後まで私に話させていただけませんか。どうやら誤解が生じているようですので。」
平凡な少女はそのホストを呆然と見つめる。「えっと、今日ブラックマーケットで起きた銀行強盗のことではないということですか?」
「ブラックマーケットで起きた銀行強盗…ああ、成程。分かりました。確かに誤解されるのも無理はありませんが、ティーパーティーの部屋で大声を出すのはお控えください。トリニティの生徒がそのような振る舞いをするのは無作法で失礼になってしまいますよ。」
「も、申し訳ございません。」とヒフミはつい頭を下げたが、今しがたの自分の行動が頭にはっきりと浮かぶと、急に近くの大きな水場に飛び込んでしまいたい衝動に駆られる。慌てて手で顔を覆うも、それでも恥じらいで頬が熱くなっていった。「本当に、すみません…申し訳ございませんでした。」
「最近の出来事で気が立っているのは分かります。」とナギサは丁寧に諭す。「そして私がお願いしたいことは…それと似たような件についてです。一つお聞きしたいのですが、『覆面水着団』というのはご存知ですか?」
覆面水着団──ゲーム内で例の銀行強盗の時にアビドス生らが使った名前である。だがこれはあくまでもフィクションであり、現実の方で便利屋68が起こした事件に埋もれてしまったのも相まって、単なる作り話として扱われるはずだった…少なくともこれまでは。
「最近、トリニティの施設にて覆面水着団のメンバーと自称する者による犯罪被害がティーパーティーに多数報告されています。」深刻な面持ちで、ナギサはそう伝える。「通常であれば、これらは正義実現委員会が管轄する案件ではありますが、さらに調査を進めると、模倣犯たちが何か計画を企てているようです。それも、かなり重大なことを。」
彼女は一呼吸置いて、再びティーカップからお茶を一口飲む。「そのため、ヒフミさんにもこの調査にご協力いただきたいのです。」
「私にですか?」とヒフミは不安げに尋ねる。
「少なくともブルーアーカイブはある種の
「具体的にどうすればいいのかは分かりませんが、頼まれたからには全力で頑張ります!」
「そうですか。」天使は眉を上げ、椅子に深くもたれかかる。「ふふふ、ヒフミさんは本当にお優しい方なんですね。それでは明日、こちらの場所で向かって合流していただきたい方がいます。その方は──」
「──私、と。」とスズミは昨日の出来事(恥ずかしい部分は除く)をヒフミから聞いて、そう結論づけた。そしてトリニティ自警団の団長である彼女はうなずき、こう言う。「そもそも、こういったことは自警団がやるようなことではありませんが…」
「そういえば…」とヒフミが口を開く。「具体的に何をするかはナギサ様から聞いていないんですよね…」
「ああ。」と銀髪の天使は声を上げる。「なら説明しますね。『現実』の方の覆面水着団についてはどれくらいご存知ですか?」
「あまり詳しくはないです。」とライトブラウンの髪の少女は答える。「ネットで検索してもブルーアーカイブの方ばかりが出てきて…」
「やはりそうでしたか。」とスズミは腕を組む。「簡単に言うと、覆面水着団を名乗る集団は普通の不良集団とは違っていて、ブルーアーカイブのキャラクターの格好を真似た反カイザーの過激派集団です。」
彼女は深く、ため息を吐く。「まだ発足から一ヶ月にも満たないのですが、理念が多くの方に共感を呼んだみたいでして、団員は爆発的に増えています。」
「そんな!」とヒフミは驚愕する。「具体的には何人ぐらいなんですか?」
スズミの口が開くも、その答えは別の人物から発せられた。「それはもう!数え切れないほどいます!」
「うえっ!?」とヒフミがその声の主へと振り向くと、太陽がその主の姿を影で覆っていた。「誰ですか…!?」
「楽園の証明が失われたその時!影より這いずるはその拳を振り下ろさんとする者たち!」稲妻の如く、パステルカラーの影が突進していく。あと少しという距離で、その影は一跳びで大きく飛び越え、足音を響かせながらスタッと着地した。鮮やかなピンクと青の髪をした少女が、ヒフミに向かって笑い、親指を立てる。「ですが心配ご無用!トリニティからの使徒、宇沢レイサ!登!場!です!」
ヒフミはただ、目の前で起きた事に目を丸くするばかりだった。「トリニティの使徒…」
自警団の団長はため息をついてこう言う。「こんにちは、レイサさん。この前頼んでおいだ物は持ってきましたか?」
「もちろんです!」とレイサは自信満々げにビニール袋を取り出す。「先ほどの決闘、トリニティの走る閃光弾なら絶対目から鱗が落ちますよ!何故なら相手はあの九紋龍!ですが私は…そう!伝説のキャスパリーグに337回も戦った少女!当然、結果は大勝利でした!」
「トリニティの走る閃光弾?九紋龍?キャスパリーグ?」ライトブラウンの少女はただオウム返しをするだけだった。「一体何が何だか…」
「あっ。」天使の顔はすぐにその瞳と同じ色へと染まる。「…レイサさん、変なあだ名は使わないようにしてください。」
当然ながら、レイサはスズミのことを気にせずにヒフミを見つめる。「ところで、あなたは誰なんでしょうか?どこかで見たような気がしますが…」
突然、ヒフミの背中からは大量の汗が流れ落ちる。気まずい沈黙が訪れる中、レイサは「うーん」と唸れば、突然頭の中では豆電球が点灯したかのように閃く。「あっ!分かりました!自警団に入ったばかりの人ですか?」
「自警団に…っていえ!違います!自警団には入りません!」とヒフミはすぐに訂正する。「私は阿慈谷ヒフミといって、ただのトリニティ生です。」
「昨夜モモトークで伝えたように──」素早くスズミはフォローをして、事態がややこしくなるのを防ぐ。「ナギサ様が送った方です。」
「なるほどですね!それなら心配ご無用です!」その不思議な少女は胸を張って言った。「これから私たちはキヴォトスで一番恐れられている不良たちの本拠地へと突入するのかもしれませんが、その時になったら傍に離れない限り、必ずあなたをお守りします!」
ヒフミは首を横に振るスズミの方へと向き、スズミはバッグから中身を取り出す。「では、私たちの目的は覆面水着団に関する情報を集めて、計画の詳細を突き止めた後に正義実現委員会に報告することです。」
「先ほども言った通り、この任務は普段パトロールを行う自警団に任されるようなものではありません。ですが…先月のハスミさんは現実では起きなかったゲヘナの侵攻に過剰なまでにかかりっきりになっていましたが、私たち自警団はブルーアーカイブが配信されてから、カイザーの動きを調査していたため、既に覆面水着団とは接触済みです。とはいえ、正義実現委員会自体は諜報に強い組織というわけでもありませんが。」
そう言ってスズミはバッグに手を突っ込み、16と書かれた覆面を取り出す。「今回私たちは一般のメンバーではなく、番号付き──つまり作戦の指揮を担う立場として潜入します。レイサさんに覆面を用意する頼んでおいたのはそのためです。」
「ふっふっふ、ありがたいことに、私が倒した人は予備の覆面も持っていたんです!」レイサは鼻の下を擦りながら、シンプルな白い覆面──額には108と書かれたそれを取り出した。「どうぞ!」
「あっ…」とヒフミは手を震わせながら、それを受け取る。たとえナギサ様のためとはいえ、実際にそれを手に取る日が来るとは夢にも思っていなかった。少なくとも紙袋じゃなかっただけマシといったところか。「どこまでお役に立てるかは分かりませんが、お二人の足手纏いにはならないよう頑張ります!」
「大丈夫です!あの伝説のファウストに遭遇したとしても、必ず無事に脱出させてみせますね!」
普通の少女はその場で固まってしまう。「え、ありがとう…ございます?」
彼女の視線はスズミの方へと移り、全神経を集中させて言葉を介さずに考えを伝える。『レイサさんも知っているんですか?』
その表情から意図が伝わったのか、その天使はぎこちなく首を振りながら、口の動きを合わせて答える。『プレイはしてないかと思います。』
「それでは、出発しましょう!」完全に気が付いていない様子で、レイサは空へと指し示す。「もうすぐ覆面水着団の悪の会議が始まります!覆面水着団の悪事を阻止して、トリニティの平和を取り戻しましょう!」
「あの!レイサさん──」スズミが言い終える前に、少女はすでに駆け出していた。「…本当にすみません。」
「大丈夫です。少し賑やかなだけで、親切なんですね。」ヒフミは不安そうに言いながら、手に持った覆面に再び視線を戻す。どういうわけか、この任務は簡単に終わる気がしなかったからだ。直感というにはあまりにも不確かだったが、ともかく…
あのナギサ様から直々に頼まれたことだ。当然彼女は全力で取り組むだけだ。
トリニティ生には知る由もなかったことだが、キヴォトス各地では、ブルーアーカイブで活躍した少女たちにも、それぞれの冒険を繰り広げていた。
「ここが百鬼夜行ですね~!」ノノミは笑顔で両手を広げ、大きく息を吸い込む。長時間電車に揺られた後の、心地よい気分転換だ。「わぁ~お花の香りが良いですね✿」
「うへぇ~」とホシノはだらけた笑顔で言う。「ノノミちゃんの語尾が変わるレベルで活気が満ちてるね~。うちのつまんない砂漠とはすっごい大違い。」
「別につまらなくはないでしょ!」セリカは反射的に答えるも、すぐに目をぱちくりさせる。「って何で語尾の違いが分かったの?」
「おじさんのひみつ。」
そんな二人の会話など気にも留めずに、ノノミは隣の二年生をつつく。「シロコちゃんはどうですか?素敵なところだと思いませんか?」
そんな狼は返事をせず、その代わりに目の前に広がる賑やかな通りをじっと見つめる。そして数分後、彼女はようやくうなずく。「人が多くてアビドスとは違う。」
「でもいい場所ですよね?」
「ん。」
「今現在の復興のペースでいけば、アビドスでも同じような景色が見られると思います。」アヤネが口を挟み、眼鏡をかけ直してため息をつく。「スタジオが手配したホテルにチェックインしてきます。皆さんはどうしますか?」
「おじさんも一緒に行くよ。」ホシノがすぐに口を開く。「高級ホテルでお昼寝できそうだからね。」
セリカは眉をひそめる。「ずっと電車で寝てたでしょ!」
「若いのには分からないけど、夜が忙しいとすっごく疲れちゃうんだよね。」
「それなら先に観光にしましょう!」と手を振るノノミ。
「お腹空いた。」と簡潔に言うシロコ。
「そうね、私も足を伸ばしたいし。」とセリカも同意する。「待ち合わせ場所はスタジオの外よね?」
「はい。こちらで受け取ったメッセージは皆さんの方に転送しておきました。」とアヤネはうなずく。旅行の計画はゲーム内の受信ボックスとして残されていた。とはいえ、どうしてこんな方法で送ってくるのか、素直にEメールでいいのではとアビドスの少女はそう思っていた。「ブルーアーカイブの方の受信ボックスから予定が見れます。あと、今朝アロナさんから更新が入ったと聞いていますので、場所はしっかりと確認してくださいね!」
「それに変装も忘れないようにお願いします!」とエルフは続ける。「今はよその自治区にいますので、トラブルは起こさないでください。特にシロコ先輩は気を付けてください!」
「ちぇ。」問題の少女は目を細めて、マスクを再び付ける。「ここの不良の強さを知りたかった。」
「不良に喧嘩を売る観光客って何!?」
「それでは、セリカちゃん!シロコちゃん!」一番豊満なメンバーがクラスメイトの手を取り、前に進み出た。「観光開始です!」
三人はその後、数時間にわたって趣を感じる百鬼夜行の街並みを散策していく。郷土料理を味わい、俳句専門店で本を物色し、不良たちから俳句バトルのコツを学んでいった。
「短く簡潔に、フェアだけど白熱するような勝負じゃない。それが俳句…」誰もが固唾を飲む込む中、シロコがどのような句を詠むのかを見守っていた。時間切れになる寸前に、彼女は小さくうなずいた。『ん』
街の通りにはため息が広がる。黄色い服を着た不良の一人が叫ぶ。「おい!ノーカンやこんなん!」
審判役は眉をひそめる。「あれは…一音だけでしょうか?それとも二音?」
「日本語だと一音、
「…あの、今何語で話してます?」
「おい!そこのKYども!」金髪の小柄な少女が現場に現れ、地獄を体験したかのようなボロボロのライフルを手にしていた。「よくもあたしらのシマをやってくれたな!」
「ちぇ、路上流か。」と不良たちは唸る。「取るならもう取ってるんだよあんたらのシマは!」
「なら誰がやったんだ!?」
「さぁ。多分東の連中でしょ。」赤い面を付けた少女が嘲笑う。「銃を失くしたとかばっかじゃねえの?」
「あ゛?やる気か!?」
「ここで
「「は!い!く!は!い!く!は!い!く!」」不良たちは全員、一斉に声を揃えてそう叫ぶ。
「うんうん、こちらの出番ですね!」と歓声を上げるノノミ。「皆さん、楽しみましょう✿」
シロコは小さく唸る。「見学したい…」
「不良同士の喧嘩に巻き込むなーっ!」とセリカは叫ぶ。
この自治区は砂漠とは明確に区別されていたが、それでも楽しいひと時となった。だが何事にも終わりは来るもので、彼女たちは集合場所へと向かい始めた。
「確かこの辺りだったよね?」猫耳の少女がスマホのGPSアプリを見ながら呟く。
シロコは目を細める。「こっちのルートならいいんだけど。」
「えっ…違うとこ行ったのは一回だけだから!」
「二十分も丘を登ることになった。」
「ああもう!先輩なんて自転車で遠いところまで行ってるじゃないの!」
「あ、あそこです!」ノノミが指差した先は…「あれ?」
「あれは…煙?」とセリカが首をかしげる。「おかしいわね。今は畑のとこにいるはずじゃ──」
言い終える直前、地響きが響き渡り、続いて二つ目の煙柱が空に立ち上った。
キヴォトスで暮らすアビドスの少女たちにとっては、今の出来事はすぐに理解できた。
──何者かが爆弾を起爆させた。
【作者あとがき】
Across Kivotos, All Girls Are Sisters!
【訳者あとがき】
オデュッセイア
次回は3日に投稿します。