そう、うら若き女子生徒三名を郊外の人目につかない公園へと連れていって、服をひん剝かせたのはそのためだった。
…とはいえ、最初からそうするつもりではなかった。最初はタイマーを使って練習をしていたものの、それだけで十分に追い込められないと感じたため、強硬手段を選んだ。ご存知の通り、女の子にとってパンツとはハートそのもの。奪われることそれ即ち、己の魂が大衆の目に晒されるようなことだった。
その時に感じるストレスこそが肝心だった。時間に余裕がなかったので、神秘を使えられるように三人にプレッシャーをかけなければならなかった。銃を使用禁止にしたのが功を奏した。自動化したせいで人の腕前が衰えていくのはSFではベタな話。その道を極めたければ、便利を取っ払って困難な道になろうとも自分の手を動かして学べ。銃を使用禁止にしたのもそういうことだ。簡単に敵をぶっ飛ばす方法が無くなってからやっと、忍術研究部は
まあ、この訓練自体、数多くの漫画を参考にして私なりの訓練から練り上げた付け焼き刃のものだった。普通なら嘲笑されて叩き出されるところだが、ここはキヴォトス。
とはいえ、まだまだ初日だから、私はそんなに期待していない。これまでの三人の様子からまだ私を満足させる域からは遠い。そんなことないっていう少女がいるのは重々承知しているが。
「はあ…はぁ…ぁ…」制服に着替え直したミチルがまた、前のめりになって倒れる。「うわーん!腕がもう限界だよぉー!」
一方のツクヨ(もちろん制服)は自身の体操服の残骸を見つめていた。「あれだけしかサイズが合うのが見つかりませんでしたのに…」
「私が憧れてる忍者って皆すごいんだね…」
あー、しまった。「イズナ?」
唯一、まだ余力があったその部員は私の背後へ飛んできた。「はい師匠!」
「ツクヨ用の体操服を1着…いや5着をクレジットカードで買ってやってくれ。」そう言って振り返る。「確かまだ持っていたは──なんで半裸なんだ!?」
「忍たるもの、いついかなる時でも主の命にはお応えしなければ!」とイズナの着物は肩からずり落ちていた。他のキャラのようにその身体は豊満ではなかったが、それでもブラのホックが外れていて、ちょうどいいサイズの胸が揺れて誰かさんの目の保養に──駄目だ駄目だイズナはキュートで萌えー♡な忍者だぞ!こんな姿を先生に見せてしまったら先生は『忍法!三つ子の術~!』ってなるぞ絶対に!
「まずは服をちゃんと着ろ!退魔忍じゃねえんだぞ!」
「退魔忍って何ですか?」
「ルール追加!今度からは絶対にそれを聞かないこと!そしてまた地獄を味わいたくなければ3カウント以内で服を着ること!」
彼女はすぐに服を着始める。「わっ!おやめください師匠!すぐに着替えますのでお待ちください!ニンニン!」
「えっと、つまりイズナが服をちゃんと着てなかったら裸にするってこと?」ミチルが呟く。
「あの…」ツクヨは慎重に私のところに近づいてくる。私はその方に目を向けるとまるで私が飛び掛かってくるのを身構えるかのように、身を引く。「こんな私なんかにここまでして頂かなくても…制服は高いですし、それに私は…」
私は冷たく見返す。「どうしてこれが最初で最後だと思っているんだ?」
ウサギ耳から蒸気が溢れ出て、彼女の目が大きく見開かれる。「え、ええっ!?」
「まだやるの!?」ミチルは声を荒げてそう言った。「もっと忍者らしい訓練ってないの?訓練場を走り回ったり、水上を走るとかっていうのはやらないの!?」
「そのうちやる。」やり方を考えないと、そう心の中で呟く。「スパーリングで忍術を使うのは忍者がする訓練じゃないとでも?」
「あー、その、いや…」
からかうように笑みを浮かべて、私はミチルの声真似をしながらこう言う。「まさか神秘術の授業なんてしませんってことはないよね!?」
その少女は疑問に思いながら瞬きをする。「なんで既視感を感じるんだろう?」
「まあ、苛立ってしまう気持ちは分かる。」私は肩をすくめる。「崇高やらヘイローやら話してきたが、全然分からないだろ?詐欺師だと思われても仕方ないんだよ。」
「いや、そういうことじゃなくて…」
「だがそう思っている節はあった。」別に彼女を責めているわけではない。ただこの学園都市の常識に反しているだけだ。
「師匠は詐欺師ではありません!」ドロンと煙幕が展開されて、イズナが再び現れる。今回はちゃんと着ている「本物なんです!」
「な、ならデモンストレーションしていただいたらいいのでは、ないでしょうか。」とツクヨが提案する。「信じていないわけじゃなくて!ただその、えっと、頭がこんがらがっていて…」
「ふむ…」と私は得物の柄を叩く。「今のところ正しく神秘術を使えているのはイズナだけ…そうだな、傷つけないのなら少しだけ見せられる。熟達への第一歩が分かるはずだ。」
さてと、一発芸みたいなものじゃない。印象を残す必要はあったが、
「よし、しっかり見ておけ。」軽やかに無刀を鞘から抜く。期待に震えているのが伝わった。それを高く掲げ、息を吐き出せば、冷たい空気が肺いっぱいに流れ込んだ。瞬く間に、透き通った金属は再び、鮮やかな赤へと染まる。
川の流れのように口から言葉が紡がれていく。
「かつて、責任を持たない奴がこう言った──それは誰しもが持っているもの。だからこそ、お前も持っている。それこそが、この世界と戦うために必要な心だ、と。」
その身は流れに任せていた
「だから私はこう返した。第三の公案──」
だけども、私は魚のようには泳げなかった。なぜなら私は人間だったから。
「■■■■■なくして、■■■■■なしで、■■■■■をどう表す?」
浅い池に溺れている時でも、私は海に夢を見る。
頭上にある水面には何があるのか?世界は一つの細い線に歪められている。
ああ。
ぁ…
刀を振るう。
狙いはない。拍はある。私には聞こえない拍で無刀は踊る。己の身体を投げ出し、己自身もそれに従う。影を追っても無駄だと分かりながら。
そこは無。またしても、私の手の届かないところに悟りがある。それでもなお、刃から花びらが舞い落ちる。それは、初めて出迎えてくれた可能性の花ではない。すでに散り果てていた。風に舞う、小さく儚きものども。夏の梅花の如く、咲き終わった花は骸も同然。
出来る限りの誠意を込めて、私は舞う。空しき行為にすぎないが、それでもこれを見る人々の心に響いてほしいと願うから舞う。
だが、いつしか世界は消え、残るは私と刃のみ。
無刀の奇跡──可能性に満ちた世界で、お前は何を聞き入れたい?
私は、いつか己に答えを見つけ出せることを願う。それまでは…
舞が終わる。
「ふう…」他のと違い、この公案の後には、服がボロボロになったり倒れたりすることはなかった。完成されきっていない技だからだ。せいぜい疲労が少し貯まる程度だ。息を整え、呆然とする見学者たちの方を向く。「さて、感想は?」
まともな感想なんて返ってこないと、分かっていたはずなのに。
忍術研究部の三人が目を丸くして私を見つめている間に、既に公園の入り口に向かって歩いていた。図らずも、三人が我に返った瞬間、ミチルはいきなり歓声を上げ、今ではやかましいほどにおしゃべりを続けている。
「ほんとすごかった!ホワイトみたいだったよ!」ホワイト…ああブリーチ*1か。はいイラつかないイラつかない。お前はもうそういう段階じゃない。「昔の三大漫画の時代ならあの忍者漫画と肩を並べていたのかもしれないけど、私も忍術であんなことが出来たら…あはは!ははは!再生回数3桁も夢じゃない!」
どんだけ駄目なんだよお前の動画!?
「こんな、不器用な私でも本物の忍者になれるんですね!」ツクヨは目を輝かせながら拳を握りしめていた。「木と一心同体になれば…初めてかくれんぼに勝てます!」
いやお前の趣味なだけかーい!
「そうです!師匠は最高のお方なんです!」イズナは教え諭すように、誇らしげにうなずく。「何でも出来てしまうんですよ!ニンニン!」
「誇張しすぎだ!」私ができるのはせいぜい一発芸レベルだ!そんなに驚くようなことか?!
部長は腰に手を当てる。「清廉潔白なイズナのことなら間違いないね!私も師匠の言う事は何でも聞くよ!」
「「「師匠!師匠!師匠!」」」と三人は声を合わせる。
「うぅ…」と私は呻きながら耳を塞ぎ、視線を冷たく投げつける。「そういえば、宿題を出すぞ。」
こうして、楽しい催しはあっという間に終わりを迎えた。「…え?」
ああ、この穏やかな静けさよ。
「三人の神秘に関連する昔話をいくつかまとめておいた。」私は説明しながらスマホを取り出す。「後でモモトークで送っておくから目を通しておくこと。要は作文課題だ。これについての感想文を書くこと。それほど長くはないが、次の授業で提出だから、くれぐれも手を抜かない
「わ…」ミチルは腹の中から魂が抜け出したかのような表情になる。「分かった…」
「では…」と公園出口で私は立ち止まり、静かに時計を見上げながらこう言う。「これで第一回目の授業は終わり。もう帰っていいぞ。」
「えへへ!」イズナは尻尾を激しく振りながら、頭を下げる。「授業ありがとうございました、師匠!とっても楽しかったです!」
「もう帰っちゃうの?」とミチルが漏らす。「一緒にお昼ご飯食べてからじゃダメ?」
「…さては私のクレカで奢ってもらおうっていう算段だな?」
「ぎくっ!」
「ぷっ。」と私は笑う。「大丈夫だ。カップ麺を食べたせいで夜通しレスバに興じることになるのなら、それぐらいは大目に見よう。」
「なんでそれ知ってるの!?」
「それが私の仕事だから。」と袖をひらひらさせ、名刺が説明しているかのようにそれを見せつける。「仕事があるからこそ、一緒に食べに行くわけにはいかない。私だって忙しい身だからだ。この後人と会う予定がある。」
「あっ!あのバンに乗っている人たちですか?」イズナが公園の入り口に向かって全速力で走る無塗装の白い車両を指さしながら尋ねる。
私は瞬きする。「いや、あんなことができるほど金に余裕はないはずだが…」
これまで培ってきた生存本能が一気に警戒モードに入る。こっちは念のために人気のない場所を選んだ。もちろん、ただの空き道を利用しているだけの可能性もゼロではないが、そのバンをよく見ると不審な点がいくつもあった。ナンバープレートはなくて、窓がすりガラスになっていて見えない
その車が突然急ハンドルを切った瞬間、確信に変わる。横滑りしながら私の目の前で急停車し、ドアが勢いよく開け放たれ、黄色い着物とお面姿の少女たちが一瞬にして私に駆けてくる。
「ちっ!」私が舌打ちしている間に一人が私の射程圏内に入ってきて、ショットガンの銃床を私の頭めがけて正確に叩きつけようとするが、私は刀を鞘から抜き放ち、必死に身を避ける。銃床をかすめながらしゃがみ込み、素早く脚へ回し蹴りを喰らわせて、転倒させる。敵の姿を見やると…「この制服は…」
仲間の一人がロケットランチャーを取り出し、躊躇なく引き金を引く。発射される寸前に、イズナが煙と共に現れて手裏剣でロケットを迎撃したため、爆発は熱波となって広がった。「魑魅一座か!」
敵は4対1で劣勢であることを悟ったのか、こちらからでは姿は確認できない運転手を見た後、自分の頭の横で合図を送った。その敵とよろめいていた他の敵は互いに顔を見合わせ、車が走り出すのと同時に二人とも後ろへ飛び退き、車に飛び乗った。その直前に、最後の一発が放たれた。
私は一旦飛び退き、土の上で転がりながら、体に襲いかかる熱波を感じた。濃厚な煙の臭いが空気を満たし、咳き込んだ。
ミチルは目を瞬かせる。「逃げてる…のかな?」
「質が悪いことになってきた。」私は唸りながら、体を起こして真っ直ぐ突き進む。お面を被った少女たちが両サイドからこちらに突っ込んでくる。「プランBに移行しているようだ。」
「どどどどうすれば!?」とツクヨは声を震わせて身を縮こまらせる。「銃は部室に置いてきちゃって…!」
「忍者でしょ私たちって!」ミチルは地獄忍魔刀を鞘から抜く。今回は顔の動きも一緒だった。「数人程度の不良ならなんとかできるよ!」
「…いや」私は首を横に振る。「お前たちの腕ではどうにもできない。」
「し、師匠!?」とイズナが叫ぶ。
「お前たちの腕ではどうにもできない。」イズナはともかく、他は…疲労困憊じゃない方がマシか。「あいつらの狙いは私だけだ。だからここは逃げれば怪我をせずに済む。」
刻一刻と、避けられない戦闘が近づいてくる。それなのに、三人は私をまじまじと見つめて、貴重な時間を無駄にしていた。
沈黙を破ったのは、一番内気な部員だった。「嫌です!」
視線が全て彼女に注がれるが、彼女はひるむ様子を見せなかった。「忍の掟その一!仲間を決して置き去りにしない!私はとんでもないおっちょこちょいですが、そのことぐらいは私でも分かっています!」
「ツクヨ…」はあ、やはりそう来たか。あのキヴォトスの精神が発揮されている。若気の至りが爆発してしまった以上、論理や理屈で説得するのは無意味だった。まあ、そう言われるとなれば。「忍どもよ、集え!」
まるで太鼓の音が聞こえてくるかのように、3人は瞬時にポーズを決めて叫んだ。「百鬼夜行でただ一つ、唯一無二の忍術研究部!」
「備えろ。」と、敵が武器を構えるのを見て、私は唸った。とはいえ、助けがあっても厳しい戦いになりそうだが──
最初の攻撃は忍どもではなく、機関銃の渦だった。弾幕が竜巻のように敵を一掃していく。遠くで、3人の少女が私たちに手を振っていた。
「ブルーアーカイブのディレクターだよね?!そんなことを大声で叫ぶんじゃないセリカ!「助けに来たわよ!」
「やはりというか、アビドスはまたしても美味しいタイミングで参戦してきたか。」と私はぶつぶつ文句を言ったが、それでも顔には笑みがこぼれていた。
アヤネは連れてきていないようだから…ストライカーが6人だけの部隊か。
後は分かるな?
なんとかなる。
[訳者あとがき]
次回は16日に投稿します