アビドスほど暑くはないとはいえ、目的地に近づくにつれ、アヤネは息切れせずにはいられなかった。「着きました!」
「うへぇ…」ホシノも同じように疲れ切っていた。「こんなに歩き回るのはおじさんの心臓に良くないよ…」
「先輩の方が楽だったでしょ!」セリカが不満を漏らした。「こっちはカイザーの連中と戦わなきゃいけなかったのよ!?」
「大声でそんなことを言わない。」グループの中で唯一見知らぬ存在である、星野と同じくらいの背丈でふわふわした赤い髪の少女がため息をつき、こちらを向いて言う。「とにかく、急な交代で申し訳ない。いくつか事情が込み入ってて…」
「大丈夫です!攻撃されると想定する方が難しいので。」アヤネとホシノが最初に公園に到着した時の状況を考えれば、激戦になることはエルフの彼女にも疑いようがなかった。「ですが、どうしてここで会うのかが疑問に思ってまして…」
カードゲームショップの目の前という待ち合わせ場所には、アヤネが予想外。むしろ、シロコから場所の変更の連絡を受けるまで、MXスタジオのオフィスビルに直接向かうつもりだった。
「ああ、それには理由がある。」MXブレードは頬を掻きながら言う。「今の状況が少し──」
遠くからのバイクのエンジン音が次第に大きくなっていく。
「少しお待ちを。」取り纏め役は一歩前に出る。それに応じてバイクは減速し、ディレクターのすぐ目の前に停車した。「状況はどうだ?」
「マークしていない魑魅一座はすべて消えました。」バイクを運転していた女性は、座っている状態でも背丈の高さが一目瞭然だった。直近の基準で見ても三年生に違いないと、アヤネは確信していた。鋭い眼差しをしている上に、率直に言って──豊満さはノノミよりも明らかに大きかった。そんな彼女の体型は、身に着けている服でしっかりと支えられていた。彼女は首を振り、頭頂部から突き出た2本の牛の角を見せる。「ご指示をお願いします。」
「普段通るルートを変更しろ。ただし、不審な人物がいないかに目を光らせておけ。」上司らしき女性はうなずく。二人の外見があまりにも違うため、少し滑稽な光景だった。「奴らが変装している可能性も捨てきれない。」
「承知致しました。」エンジンが再び唸り上げる。「A.I.Rの掃討を開始します。」
「おい待て、やめろ――」やめろの後の言葉は分からなかったが、赤毛の少女は突然の衝撃にパニックに陥った。謎のライダーが遠くへ走り去ると、彼女は叫び声を上げた。「
しかし既にライダーの姿は消え去っていた。MXブレードはため息をつき、アビドスの生徒たちに申し訳なさそうな表情を向けて言い放つ。「すみません、あれはうちのセキュリティチームの責任者で、じゃんけん大会の優勝者でもある。」
シロコは呆然とした。「…最後のはどういうこと?」
「セキュリティチームの責任者ということか? 特に大事なことではないぞ。私が事件を報告して以来、皆して辛気臭くなっている。」それには十分な理由があった。もしもアヤネが、皆が各々の用事をしている最中にカイザーに襲撃されたと知ったら…ああ、まさにその事態が実際に起こったようなものだった! この件が片付いたら、あの三人にはしっかり話を聞かせなければならない!「先の乱痴気騒ぎで時間を浪費してしまった。急いでスタジオへ向かおう。」
そう言うと、MXブレードはすぐにカードショップの中へ入っていった。
「…え?」と全員が顔を見合わせながら後に続く。柔らかなベルの音が耳に響き、居心地の良い小さな店内に足を踏み入れる。そこには様々なカードゲームのカードが壁に並び、かすかにコーヒーの香りが漂っていた。カウンターの奥には年老いた猫が退屈そうに新聞を読んでおり、この時間帯にいる、数少ないプレイヤーたちが対戦に興じていた。
そのうちの一人が顔を上げ、椅子から飛び降りた。「あっ!来た来た!みんな!」
黒髪の少女が興奮した様子で駆け寄っていく。「ずっと待ってたよ、ヘラクレス!」
「あっ!」最初に気づいたのはノノミだった。確かに小柄ながら大きくて、巫女服を着た少女はそう多くないでしょうが、先月全国大会の場に立ったばかりのことを考えれば、彼女の正体はただ一人。「カエデさんですか?✿」
「うん! 修行部の勇美カエデだよ!」彼女は若さあふれる元気さで返す。「15歳で、趣味は――」
「カブトムシを捕まえること?」MXブレードが割り込む。なぜか、彼女自身のセリフを言っているかのような口調だった。
「そうなんだけど……今は違うの!」カエデは腰に手を伸ばし、デッキを取り出す。「私がこのお店に入った瞬間、私は素敵なレディーから、一流のムシクイーンバトラーへと変身する!じゃ、前回のリベンジマッチといくよ、ヘラクレス!」
赤毛の少女はため息をつくが、同時に笑いを吹き出さないようにしている様子だった。「部活はどうした?」
「もう全部終わらせたよ!」まるで小学生が宿題の話をするかのように彼女は言った。「だから日が暮れるまで
「すまない、こっちは違うんだ。」MXブレードは親指で、後ろにいるアビドス生らを指す。「今、仕事中で。」
「え?でも最近はぜんぜん来てくれてなかったし…」
「ああ、そうだ。仕事で忙しくてな…」と彼女は唸るように言う。「なんとか時間を捻出してみる。閉店前なら会えるかもしれないから、それまではいつものメンバーとの
「わかった!」カエデはうなずき、一行を見送る。すると、突然首を傾げて一行の方を見つめる。「…ん?なんかどっかで見たことがあるような…?」
アヤネは緊張した面持ちで変装した姿を整える。鼓動が早まる中、カエデが何気なく肩をすくめる。「まあいっか!」
「良い子ちゃんだね。」と呟くホシノ。
「だな。」MXブレードはうなずく。「色んな意味でホシノと真逆だ。」
「へ~?おじさん何か変なことでも言った?」
「そうかもしれないし、そうでないのかもしれない。」剣士は微笑むと、カードショップのカウンターを叩く。「裏でプライベートデュエルをする。」
猫はただ一行を一瞥する。これを合図と受け取ったMXブレードはカウンターの裏手へ回り、奥の部屋へ入る。そこは棚が所狭しと並ぶ狭い倉庫のような空間だった。彼女はそれに一切目もくれず、部屋の一番奥の壁まで歩いて行き、軽くノックする。「おい、開けてくれ。」
壁の向こうから少女の声がした。「…合言葉は?」
それに対し、MXブレードは目を細める。「今はそんなことをしている場合か?」
「常に警戒を怠るなと言ったのはあなたでしょう。」
「やれやれ…わかった。早く渡してくれ。」壁の一部が開き、カードマットが入ったトレイが滑り出てくる。相手側はスターターデッキを手に取った。「ちょっと待ってくれ……」
数分後、アヤネには追いつけない複雑なチェーンと召喚の応酬の末、相手フィールドのモンスターは倒され、決闘は終わる。MXブレードが相手のHPを最後の1ポイントまで減らした直後、目の前の壁がカチッと音を立てて開き、その背後に立っていたMXスタジオのスタッフが姿を現した。「どうぞお入りください。」
「…面白そう。」シロコはカードショップを最後に一瞥すれば、階段を下り始める。「ん、トレカを始めてみようかな。」
「シロコさん、トレカ中毒にならないよう注意してください。」相手はため息をつく。「時間もお金もドブに捨てるハメになりますので。」
アヤネは目をぱちくりさせる。「トレカ中毒?」
スタッフである少女は少し取り乱した。目を見開き、早口でどもりながら答える。「え、ええ!イラつくあまり頭をドカチ割りたくなってしまうっていうことです!」
「いくらなんでも過激すぎない?」とセリカがツッコむ。
「本当だぞ。的外れじゃない。」MXブレードはため息をつく。「まあ、私が生まれ育った本物の大人向け子どもカードゲームと比べれば、ムシクイーンなんてGo Fish*1みたいな…とにかく!」
スタッフはトンネルの壁を指で叩く。「東奔西走させてしまいすみません。現在当スタジオは記者たちに張り込まれているので、正面玄関を使うのは危険なんです。ですのでこの隠し通路を使わせていただくことにしました。これなら誰にも気づかれずに直接中へ入れます。」
「拠点に通じる秘密のトンネル、ねぇ。」ホシノは大きな笑みを浮かべる。「いやあ用意周到。」
「我々は予算の範囲内で、できる限りの範囲内で備えていますので。」もう一人の小柄な少女がため息交じりに答える。「事務所に付属していたって信じられます?前の所有者が脱税目的か何かで建てたんだそうですよ。」
MXブレードは指を鳴らす。「不動産のプロ直伝のコツ! セキュリティを重視したくば、怪しい大人が所有していた経歴のある建物を選ぶべし。そういう建物には得てしてギミックが仕込まれている。」
「その通りです!」これには富豪も満面の笑みで同意する。「私の家では壁に砲台が隠されていたんです!子供の頃はよくそれで遊んでいました!」
「なるほど…」シロコはうなずきながらメモ帳にそれを書き留める。
「そこはメモを取らなくていいかと!」アヤネは眉をひそめる。「そもそも不動産を購入する余裕はありませんので!」
「まあ、ここは賃貸だから、正直言うと良い不動産業者を知っていたらそこまで難しくはないのだが…」
「ブレ様の足を引っ張らないでください!」
「…ブレ様呼びならそれで結構。そっちの方がずっと嫌なので。」赤毛の少女はため息をつく。すると突然、トンネルの向こう側に着く直前に足を止めた。「あ、入る前に一つだけ忠告しておく。MXスタジオのメンバーは中退や不良しかいない。みんな良い子だが、時々やかましくなる。」
「ふん。そんなの、何ヶ月も相手してきてるわ!」セリカは胸を張った。「撃ってこない限り、どんな相手でも対処できます!」
「そうおっしゃるのなら…」不穏な言葉を残しながら、MXスタジオの扉が開かれ、砂漠の乙女たちは知らず知らずのうちに、虎穴へと足を踏み入れたのだった。
アヤネは心のどこかで、MXスタジオは一流企業のように運営されていると思い込んでいた。洗練されたオフィス空間、全員が静かにデスクに座り、黙々と仕事をこなす光景。だが実際には、オフィス家具は揃っているものの、実際の内装は混沌とした無秩序だった。
テーブルは無造作に置かれ、段ボールの仕切り壁でグループが区切られていた。各セクションはまるで別世界のようで、段ボールに貼られた一枚の紙切れだけが、そこが何かを示す唯一の手がかりとなっていた。デベロッパーチームは連日徹夜のような勢いで何かに必死に取り組んでおり、一方のPRチームはノートパソコンに向かって文字通り叫び声を上げているため、財務部の女子がこっそりマーケティング部の間の仕切り壁に穴を開けているのに、まったく気づいてなかった。そしてそのマーケティング部では、シロコぬいの前で何やら神聖な儀式と思わしき行為が行われているようだった…
彼女たちの目の前には、実に様々な規模のグループがひしめき蠢き合っていた。研究開発部と書かれたセクションまであったが、そこには誰もおらず、代わりにプリンの空き箱が山積みになっており、壁には「クッキーの魂とは何か!?」という謎の文章が書き殴られていた。
あまりに複雑怪奇な状況のせいか、アビドス生は誰も理解できなかった。特に、各セクションにいる者たちが皆、鋭い鷹のような目つきでアビドスの女子たちを見つめる瞬間が何度もあったからだ。あちこちで囁き声が飛び交い、銃弾のように飛び交っていた。
「あれが"彼女たち"…!?」
「きたぁ!きたぁ!!」
「セリカきゅんにお金渡せばお腹を見せてくれるのかな?!」
「えっ!?」猫耳の少女は慌ててお腹を隠す。
MXブレードはため息をつきながら、足で床をトントンと叩く。「おい!お客様とは後で話せるぞ!今は仕事中だってことを忘れるな!」
「はい、姉貴~!」皆そう答えるが、その声には明らかな落胆の色が滲んでいた。
残念ながら、どれほどの忠誠心があろうとも、必ず一人、他がやらないような行動を取る者がいた。
アヤネ自身が身をもって体験したのは、背後から「むふふ~」というかすかな笑い声を聞いた時だった。それが警告の合図となり、彼女は軽い風を感じると同時にスカートの後ろがめくられた。「白!」
「きゃっ!?」エルフの少女は叫ぶ。振り返る間もなく、何者かが尻をしっかりと掴み、力を込めて揉みしだくと、背筋にぞくりとする感覚が走り、頬が熱くなるのを感じた。「わ、何!?」
「あっはっ!私の仮説通り!」下品な行為にもかかわらず、アヤネが振り向くと、そこには清楚で品行方正な少女が、無邪気な瞳を輝かせてアビドス生の尻を揉みしだく姿があった。彼女の首には「デベロッパーチームリーダー・ヘッドアートディレクター」と書かれた名札が掛けられていた。「アヤネママの下は、見た目よりもずっと立派なものですね!なればドールはもっとソフトに作らなければ!」
「いい加減にして!」マーケティング部門の少女が部屋の向こうから叫ぶ。「ぬいぐるみだろ!ケツなんてどうでもいいじゃん!」
「そのような考え、私のアートなレゾンデヱトルとは逆行しますわ~!」
「ハスミの抱き枕の時も同じこと言ってたよね?その時はすぐに完売したけど!」
「現実を超えるためには、まず否定すべき対象を知る必要がありましてよ!ここに来て、体験をすれば、悟りを──」
「ストップ!ストップ!」フラットキャップを被った平凡な茶髪の少女が大声で叫び、体当たりして変態の手からアヤネを引き離した。「セクハラで訴えられる気なんですか?!」
「真のバーニングスピリットを育むためには、リスクを冒さなければなりませんの!」デベロッパーチームリーダーは微笑みながら言った。「現実に近づきすぎた弊害で、現代の活気に満ちたパッショネイトな市場は今や衰退していますわ!革新的な技術もまた停滞し始めていましてよ!だからこそ、研究活動は全力でオーバードライブしなければならないのです!姉貴もそう思いまして?」
MXブレードは一瞬彼女を見つめ、時折アビドス生らをちらと見やり、どう返答すべきか迷っているようだった。やがて彼女はかしこまって、拳で咳払いをして言う。「…補習があるんじゃないか?」
するとアーティストはたちまち石像のように固まる。「あっ…」
「本当に、ほんっとうに申し訳ございません!」リーガル部部長と書かれた名札を上下に揺らす少女が慌てて頭を下げ、アヤネの溜飲が下がる。「徹底的な指導を必ず致しますので、どうかお許しくださいどうかお許しくださいどうかお許しください!!!」
「あっ…あ…」とぎこちない返事を返すアヤネ。内心では堪忍袋の緒が切れる一歩手前ではあったが、目の前の少女の謝罪している様子を見ると、胸の奥の怒りは急速に鎮まっていった。「…まあ、大丈夫です。いえ、本当は大丈夫じゃないですが、本当に自身で対処するつもりのであれば、お任せします」
「この御恩はいつか必ず返させていただきます。」その弁護士は鼻をすすり上げて涙を拭い、姿勢を正してからコートの内ポケットに手を入れる。「そしてMXスタジオを代表して、当事務所への正式な歓迎の言葉を申し上げます!ではまず、これからいくつか確認事項の方を取らせていただきます。」
彼女はコートの内ポケットから異常に分厚い書類の束とペンを取り出し、それぞれに手渡した。「こちらは機密情報に関わる場合の秘密保持契約書と、その他業務規則となっております…あっ!姉貴!」
「騙すんじゃない。」MXブレードは不機嫌そうに顔をしかめながら、少女の頭から帽子をひったくる。すると、先ほどの書類とは比べものにならないほど薄い束と、頭の横から生えた2枚の小さな白い天使の翼が現れる。彼女の上司はその書類を素早く奪い取ると、全員に手渡した。「コイツが渡してきたのはスルーで。これが正式なNDAだ。」
「…え?」セリカは目をぱちくりさせながら、目の前の書類を見つめる。「でも私、もうその書類にサインしたんだけど?」
事務所内に重い沈黙が流れる。
そうして全員がパニックに陥る。
「セ~リ~カ~ちゃん✿」ノノミの顔は微笑んでいたが、その目は違うものを語っていた。
「そんな目で見ないで!」猫耳の少女は慌てて薄い書類を奪い取り、高く掲げる。「どうせこっちが本物なんだから、問題ないよね!?」
「いやいや! あれも法的な拘束力がある契約だ!」赤毛の女性が叫ぶ。「正式じゃないからといって、存在しないというわけにはならない!」
「なら解約!キャンセルしてちょうだい!」
その時、法務担当者が顔を上げる。「あ、第16条B項をご覧いただければお分かりのように、解約には多額の違約金が発生します。」
細則を読み進めるセリカの顔色が青ざめていく様子をアヤネは見た。「借金が!?」
「んも~」ホシノは首を振る。「だから若者はね、契約書を読まずにサインしちゃいけないんだよ。」
弁護士は小声で何かつぶやきました。「言うじゃありませんか。」
「うへ~?」
天使が再び口を開こうとすれば、上司の鋭い視線がそれを遮った。「ともかく!違約金を払いたくないのであれば、契約に従うしかありません!つまり!」
悪魔の尻尾を生やしたピンク髪の少女が駆け寄り、一年生を攫う。「はいは~い!ささ、こちらへどうぞ!」
「ちょっと!放してよ!どこに連れて行くつもり!」セリカは抵抗するも、成すがままにMXスタジオの奥深くへと引きずられていった。
「あはは、これで四人になっちゃったね。」ホシノは同情を装って鼻を鳴らす。
後輩たちは神妙な面持ちでうなずいた。ノノミは今にも泣き出しそうな様子で「今でも時々、セリカちゃんの声が聞こえます。」と呟いた。
「まだ死んでないってば!って、ちょっと──あっ!」
シロコもまた神妙な面持ちを保った後、本来の目的へと話題を移す。ヘッドアートディレクターを見下ろした。「ゲームの環境を変えたい時は、誰に言えばいいの?」
「ああ。」とアーティストは意識を取り戻したように首を振った。「それは私の管轄外でしてよ。テクニカルチームの方へご相談くださいまし。」
アヤネは恐る恐る自分たちの領域に目を向けたが、そこには誰もいなかった。
シロコは唸るように言う。「…私の匂いを嗅がせてあげるから、場所を教えてくれれば──」
「はいなっ!」狼が反応する間もなく、うら若き令嬢はすでに獲物へと飛びかかっていた。二年生の制服に顔をうずめ、じっくりと匂いを嗅ぐ。「ふむ、蓮の花の香りとは意外なものですわ。姉貴と少し似ていますの…」
「おい。どうしてそれを知ってるんだ?」
「アートな情熱!」彼女は飛び退いて部屋を見回す。「そうですね、チームの大半は二階でサーバーメンテナンスを行っておりますが、部長であればおそらく…あそこですわ!」
彼女が指差す先――部屋の隅に置かれた段ボール箱までシロコはついて行った。「…ん。」
狼は注意深く、その箱に近づいて拳で軽く叩く。なぜか叩くたびに硬くて空洞のような音が響く。三回目の時、中から不機嫌そうな声が返ってくる。「あ?何か用か?今仕事中だってわかんねえ――」
箱を持ち上げるシロコ。
部屋中にバンシーの絶叫が響き渡る。
箱を戻すシロコ。
「――のか!」そして何事もなかったかのように技術者は作業を終える。
「ちとぶっ壊れが何人かおるな。要調整だなこりゃ。」
「頼みを聞き入れてくれると思っているよう――」
ヒョイ
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!!」
ストン
「──だが!」アヤネは、喉がボロボロになった後でも少女の声が変わらないことに思わず感心してしまいました。「ゲームバランスなんてうるせ~~~~~~しらね~~~~~~! お前はもうとっくに統計学においての外れ値なんだよ!むしろナーフがいるのは──」
ヒョイ
大咆哮。
ストン
「お前やぁ!」入力遅延が1秒ほど遅れて。「あとさっきからそれやめぇや!」
「シロコ…」MXブレードは額を押さえる。「怠けている奴ならまだしも、勤務時間中のスタッフはいじめないでくれ。ちゃんと普通に話しかけてくれ。」
「ん」と唸る狼。
「…本当に賑やかだね。」ホシノは言いながら、それでもなおシロコにいじめられるかわいそうな少女を眺めていた。
「少し賑やかすぎる気がするが。」ディレクターはため息をつく。「さて、事務所から物を取ってくる。少し待ってくれ。」
アビドス生たちが見守る中、謎めいた少女はフロアで唯一、分断された一室に足を踏み入れ、ドアを閉める。アヤネの敏感なエルフ耳がかすかに遠くで聞こえる物音を捉えた。「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!ホシノオオオオオオオオオオオオオ!ウオオオオオオオオオオオオオオ!」
ドアが開き、MXブレードは完璧な身だしなみで現れた。「よし、レセプションルームまで案内しよう。」
全員が席に着いた頃には、アヤネはすでに深い疲労感が心に染み渡っていた。先輩たちは何事もなかったかのように平然としており、ノノミは受付室に置かれたブルーアーカイブ関連グッズを楽しそうに眺めていた。一方、ホシノはソファで一番快適な一角を見つけて昼寝していた。
しかしセリカは…
「ハヤクコロシテ。」クラスメイトはそう言って、虚ろな目で遠くを見つめていた。契約上の理由から、彼女の服装はすべてブルーアーカイブの関連グッズにまみれていた。布の層が重なるたびに、セリカの心も重くなっていた。「バカの格好よ。」
「とっても似合ってるよ。」最年長がくすくすと笑う。
「20年前のオタクのステレオタイプみたいだな。」MXブレードは気だるそうに呟いた後、ファッションについて小声でつぶやいていた。
なんとも奇妙な例え方…
「ですので、契約書は必ず内容をしっかりと確認してからサインしましょう!」ノノミは一年生の肩を叩くが、それに気づいた彼女はびくりと身を震わせた。
「早く話を進められないの!?」とセリカは不機嫌そうにテーブルの上で指さす。「もっと大事なことを話すべきよ!」
赤髪の少女は顎をこする。「もっと大事なこと…?」
「私たちに許可も取らずにゲームに登場させたこと!」そう、まさしく部屋の中の象。とりわけ、アビドス高校の生徒たちのポスターが壁に貼られているのだから。
赤髪の少女は顎をこする。「もっと大事なこと…?」
「今度は無視!?」クラスメイトは怒りに任せて机を叩きつける。「どれだけ迷惑かけたか分かってるの!?こっちは毎晩客を裁くためにシフトを入れなきゃいけないのよ!校門前には撃ってくださいっていう人がどんどんくるし!ネットを見ても私が…いろんな…こと…をされているのが目に入ってきて…」
「セリカちゃん。」ホシノは首を横に振りました。「そういうのは見ちゃダメよ。」
「わざとじゃない!」
「どうやら認識の齟齬があるようだ。」MXブレードは椅子にもたれかかる。「生徒は全員18歳以上であり、ある種の感情を抱いても問題ない。」
「今度は嘘!」
「まあ!」ノノミは息を吞む。「それってつまりノノミ先生とノノミが…あんなことやこんなことを…♡」
それに対し、ブルーアーカイブのディレクターは鋭い眼差しでうなずく。「もちろん。」
「
「当然だ。」
「どこが当然よ!」
「ん?何の話だ?」小柄な少女は無邪気に首を傾げた。「今、話している内容は完全に合法だ。そもそもブルーアーカイブのキャラクターは全員架空の存在だし、実在の人物と似ていたとしても単なる偶然だ。」
「それは──もう──」セリカの頭から煙が爆発するように噴き出した。ドサッと椅子に崩れ落ちれば、彼女は地面を見つめたままこう言う。「もう無理…」
「今度は私の番。」シロコは真剣な眼差しで見つめる。「テクニカルチームから聞いたけど、あなたがブルーアーカイブのゲームシステムを設計したの?」
「ディレクターとしての職務の一環としてやったさ。」
「戦闘していた時、まだ実装されていない生徒のEXスキルまで把握していた。」シロコの言葉にアヤネは納得しつつも、どうしてそれが分かったと疑問に思わずにはいられなかった。「ん、知ってることをすべて教えて。」
「断る。」
「ちぇっ。」
「たとえ企業秘密ではなかったとしても、ブルーアーカイブはソーシャルゲーム。つまり、ゲームが進むにつれて徐々に強力なユニットが解放されていく仕組みになっている。だから焦らずにゆっくりと進化を見守ってくれ。今のお前では環境を理解しているつもりかもしれないが、シュポシュポの恐ろしさなど到底理解できるレベルではない。」MXブレードは言葉を切る。「ただし、どうしても何か欲しいのなら…自転車に乗った時に起こる現象を実験してみるのもいいだろう。きっと驚くかもしれない。」
「うん。」銀髪の少女は納得した様子で、座席にもたれかかる。これで二年生のもう一人に先手を譲る形になる。
「皆、木を見て森を見ずですよ!」とノノミは笑顔で宣言する。「ずっと気になっていたんです!皆のことは可愛く描いてくれているのですが、声の方はどうやって再現しているのですか?」
「ああ、それなら。」MXブレードはポケットからネックレス型のデバイスを取り出し、頭上に掲げる。「紹介しよう、カイテ――MXボイスチェンジャー! これを装着するだけで――」
カチッという音とともに首に装着し、再び口を開いた時、出てきたのは――ノノミの声だった。「アビドスアイドルプロジェクトを復活させましょう☆」
「わぁ~!」少女は手を叩く。「すごいです!」
「そうなんです! たったこれだけで私までノノミみたいに──ゲホッ!」MXブレードは咳払いをした後、デバイスの電源を切る。「スターを目指してみたんだが、台本から外れるとどうしても声がうまく出せなくて……ところで、どのくらいの資産を持てば私の語尾にも記号がつくようになるんだ?」
「うーん、よく分かりませんね。」とノノミは質問について考え込む。「私はずっと持っていたような気がしますが…」
アヤネの顔には困惑の汗が流れていた。「あの、それって買えるのでしょうか?」
「ともかく。MXスタジオには声優も在籍しているが、その実力は…率直に言って、今のところモブや汚い大人役以上の演技はできない。なので音声収録の大半は私に回ってくる。」赤毛の彼女は疲れたようにため息をつく。「早く上達してくれるといいが…毎週新しいキャラの声を担当するなんて、今でさえ忙しいというのにこれ以上は無理だ。」
「では…次は私の番ですかね?」順番でやるのだろうか。自然とそういう流れになっていたのだが…だが、大事なことについての質問をしなければならない。「ブルーアーカイブは未来予知をしているのでしょうか?」
「ブルーアーカイブはフィクションであり、実在の人物とは関係ありません。」
「でも絶対何か知ってるでしょ!」デカグラマトン!カイザー!影でコソコソしてる連中!「ただのフィクションだなんて絶対にありえないから!」
「ブルーアーカイブはキヴォトスをモデルにしている。ゲーム内の出来事が現実と一致しているだけなら、それは単なる偶然にしかすぎない。」なぜかアヤネは、答えをはぐらかしているかのような感覚を拭えなかった。「もしもこのゲームが存在しなかったのなら、もしも私が存在しなかったのなら、もしも先生がここにいたのなら、今まで見てきた展開になっていたのかもしれない…だが、その未来はもはや自分たちの想像の中でしか存在しない。」
「そう…なのですか?」彼女は納得していなかった。「では、具体的に
「ブルーアーカイブのディレクター、それが私の仕事だ。」
しかしそれでは何も説明にもなっていない!
「うへ~」とあくびをするホシノ。「ここまで話してくれたのはありがたいんだけどさー、わざわざおじさんたちを呼んだ理由はあるんだよね?」
「直球で来たか。」小柄な少女は唸るように言った。「確かにある。
MXブレードは懐に手を伸ばし、テーブルの上に書類の束を放り投げた。「この契約書はお前たちの肖像権を引き続き使用する代わりに、MXスタジオがブルーアーカイブを続ける限り、アビドスの利息付きローンを毎月返済するというものだ。好きに読んでくれ。」
「それって!」アヤネは驚愕の声を上げた。まさに桁違いの話だった。毎月の資金繰りに頭を悩ませる必要がなくなれば、学校再建のための本格的な取り組みが始められるということだ。「本当にそんなことをしてくださるのですか!?」
「まあ、リーガルチームから『復興状況の報告書を提出することを条件に』という旨を入れてくるよう要求されたので。」と救世主は肩をすくめた。「実のところ、生徒の肖像権に関する費用は、本人が直接私のところに来て言ってくれれば、喜んで支払うつもりだ。あ、でもこのことは内緒だ。私にも支払わなければならない請求がある。」
セリカは涎を垂らしながら、ぼんやりと契約書に手を伸ばすが、ノノミに叩き落とされてしまう。「いたっ!ちょっと!何するの!?」
「帰ったら補習が必要かもしれませんね✿」
ホシノはテーブルを指で叩く。「それに、まだ話の続きを聞いてないしね。」
ちょうどその時、MXブレードが契約書の横に薄い封筒を置く。「そしてもう一つの選択、それは私の指示に従ってこの手紙を届けることだ。」
シロコは片眉を上げる。「それだけ?」
「簡単そうに思えるが、一つ大事なことを伝える。この道に進むとなれば、命がけの戦いを強いられることになる。」と剣士は答える。「苦難を歩むことになる。多少の妥協も必要になるのかもしれない。だが、うまくいけば、アビドスの借金は完全に帳消しとなる」
ホシノは身震いする。「完全に…帳消し?」
「一応言っておくと、アビドスは今後も外部の干渉を受けない独立した学校として存続していくことになる。」彼女は急いで付け加える。「それどころか、成功すれば、どの学校も、お前たちが経験したようなことに遭わなくなる。」
…いかに困難かをMXブレードが強調しても、アヤネにとっては話が美味すぎて信じられなかった。他も同意し、ホシノが代弁するように小さな声で言った。「なんでそんなことするの…?」
「"それが私の責任だから"…そんな言葉、信じられるわけがないだろう?」赤髪の少女は不敵な笑みを浮かべた。「まあ、私自身の気持ちはさておき、一つシンプルな真実を。私はカイザーが大嫌いだ。本当に大嫌いだ。アビドスでの活動だけが全てだと思うか? 甘い。カイザーの連中にとっては関節をシコシコ動かせるようにするため。見ているだけで吐き気を催すような悪事を企んでいる。なので、カイザーを攻撃できるチャンスがあれば、それを利用するのが自明の理。」
最年長は片眉を上げる。「アビドスを『チャンス』だと思っているのかな?」
「どんな穴でも手当たり次第に手を突っ込めば、やがて抜けなくなるのは子供でもわかること。」MXブレードは反論する。「お前たちはまだそれを見たことがないだけだ。たとえ見たとしても、それを利用するための手段もリソースもないのだろう。私はその両方を補うことができるが、正直に言おう──これは大博打だ。お前たちの意思が確認できてからようやく、私はこれの実行へと移ることができる。」
彼女は背もたれに寄りかかり、テーブルを指差す。「さあ、どの道を選ぶ? 楽か、苦難か。」
砂漠の子供らは無言で目の前の書類を見つめていた。一方はある機会を与え、もう一方はリスクを伴うものの、大きな可能性を秘めていた。どちらが正しい選択なのか? どちらの選択を取るべきなのか?アヤネには分からなかった。ブルーアーカイブが登場するまで、人生はとても単純だった。借金を返済できるだけの金を稼ぐことだけに集中し、手の届きそうで届かない未来をただ夢見る日々だった。しかし今、道が目の前にはっきりと提示されている。
「…ホシノ先輩。」最初に口を開いたのはシロコだった。「ここは──」
「うん、わかってる。」対策委員会委員長である彼女は、クラスメイトたちを見回す。もう言葉を重ねる必要はなかった。先行きが不透明になった時、アヤネにできることは自身の心に従い、うなずくのみ。ホシノはため息をつく。「そういうことなんだね~?」
彼女は微笑むと封筒を手に取る。「もちろん、苦難を選ぶよ!」
「初めの選択を選んだとしても、カイザーは別の学校を狙ってくるのかもしれません。」アヤネも同意する。「もしそうなった場合…私にやれることがあったと思えば、きっと自分が許せなくなってしまいます!この計画でカイザーを完全に止められるのなら、それをやるべきだと私は思います!」
「うん。」シロコもうなずく。「他に選択肢はない。」
「泣き寝入りのままで終わらせるものか!」とセリカが叫ぶ。「アビドスにはまだ誇りがあるわ! 私たちに手を出すとどうなるか、あいつらに思い知らせてやるのよ!」
「全会一致、ですね! ✿」
「それなら、まだお前たちの旅は終わってない。」MXブレードは心の底から笑顔を浮かべ、二枚の切符を取り出した。「荷物をまとめてくれ。次の目的地は山海経だ。ガイドとして何人か手配しておいたが、時間は限られている。次のアップデートまでにこの計画を実行しなければ、成功する可能性は
アヤネは目をぱちくりさせる。「え? ですがアップデートは数日後では…!」
「だから早く来いとアロナが言っていたんだ!」
「最初からこの計画を立てていたんだよね?」ホシノはため息をついた。「それなら持っていくものの中身だけでも見せてもらえないかな?」
「ダメだ。秘密だ。」剣士は肩をすくめる。「リスクは冒せない。アニメを見たことがあるだろ?そういうこった。」
突然、ドアをノックする音がしました。「姉貴! ミレニアムから返信がきました!」
「さてさて、そろそろ仕事に戻らなければならない。」赤毛の少女は立ち上がった。「私事はこれで終わりだ。全員マーケティングスタッフのところへ降りて、プロモーション企画について聞いてくれ。…ただし、ノノミを除いては。私のオフィスまでついてきてくれ。」
ノノミは目をぱちくりさせる。「私が?」
「そうだ。ノノミに話しておきたいことがある。」
「ごめんなさい!ご指名が入っちゃいました!」とノノミは明るく手を振りながら、小さな少女に続いて部屋を出て行った。「シークレットエージェント・クリスチーナ、出動~!」
「お~どんどん動いていってるね~」とホシノはあくびをしながら外に出る。「おじさんはついていけなさそう。」
「自分でも信じられないです。」アヤネも同意した。
「でももしうまくいけば…!」セリカが叫ぶ。「本当に大チャンスになるよね!?」
シロコは彼女をじっと見つめる。「…アイドルになりたいの?」
「そんな冗談は言わないで!」
アビドスの生徒たちは皆笑い出したが、その笑いには初めて感じる異質さが伴っていた。雲のように軽やかで、鳥のように自由に感じられた。アヤネが踏み出すその一歩一歩が、彼女にとってはまるで空を飛んでいるようかのようだった。こんなに自由を味わうのは久しかったせいか、エルフの少女はその感覚をほとんど忘れかけていた。彼女は心からそれを信じたいと願っていた…
「希望」という名のほんの小さな火花の中で。
背に腹は代えられない。
「撃て!撃てーっ!」覆面水着団の団員たちがそう叫ぶ中、ペロロ様は団員たちを踏みつけて吹き飛ばしていった。「ぐあっ!」
「はぁ…はぁ…」も絶え絶えになりながら、ヒフミは最後の一人を倒した。慌てて周囲を見回すと、いつの間にか自分が最後の一人になっていた。突然、体中から緊張が解けた。膝が震えながらも、なんとか立ち続けようとする。誤って召喚した人形は消え去り、ホログラムを投影するディスクだけが地面に転がっていた。「やった…!」
「そんな…」倒れ伏した敵たちはうめいた。「ぜ、全員アイツにやられるなんて!なんなんだよあのバケモノ!?」
「あの技!」誰かが叫ぶ。「まるで伝説のファウストの技みたいだったぞ!まさか…!?」
「馬鹿言わないで!」誰かが怒鳴った。「悪魔の兜をかぶっていないじゃない!ならあれはペロロ神官だけが知る高度な技に違いないわ!」
「あはは…」普段ならヒフミはこれらの発言の一つ一つに反論したいところだが、今の彼女はあまりにも疲れていて、一言も発することができなかった。
「…これで十分ですね。」スズミが72の方を向いて宣言した。
それに対し、小さな少女は親指の爪を噛みながら言った。「違う!違う、外にはまだやれる娘がいるってんの!あーしはこれから新イベントを開催してやんの!団員全員を対象にした参加型イベントを──」
「無駄ですよ!」レイサが叫ぶ。彼女は手首をスナップさせ、紙切れを(たぶん)子供の顔に叩きつけた。
「…はぁ?」生主はうめき声を上げながら、それを顔から剥がした。「一体何しやがってんの──」
「先制攻撃です!」
ヒフミには、漫画に出てきそうな乱闘を繰り広げる二人の少女を、ただ見守ることしかできなかった。やがて砂埃が収まると、レイサは明確にヒエラルキーを確立していた。勝利を確信した笑みを浮かべ、相手を見下ろすようにして立っていた。「勝利はこの
「うぅ…」ツインテールの少女はうめき声を上げた。「ねえチャット欄、マジであれなの?」
ドローンが地雷で飾り付けられたクリスマスツリーのように次々と点灯する様子から、ヒフミは画面の向こう側にいる誰かが配信者の不運を嘲笑っているのが手に取るように分かった。
「今から全部話して頂きますよ、いいですか!」レイサが叫んだ。
「
「あっ、その呼び方はしなくていいのですが…」スズミは恥ずかしそうに首を振った。ヒフミには彼女が内心ボロボロになっているのが分かった。「このやり方では、何も聞き出せそうにないと思います。」
「もしかすると…」そう提案したのは、
レイサは小さな少女から飛び降り、72が立てられるようにした。「え?脅すの?好きにしやがってんの!あーしが負けるなんてー!」
ライトブラウンの髪の少女はペロロ様財布のくちばしに手を入れ、500円玉で文字通りの投げ銭をした。
「スパチャありがとうございます!ハッピーうれぴーハッピッピー!後輩も悪くないでやんの!」
「「「ちょろい。」」」トリニティ生三人は一斉に肩を落とした。
たったの500円でこんな面倒事を避けられたかもしれないというのに…
「では!」覆面水着団の団員はドローンをちらりと見た。「どこまでかは分からないけど──」
突然、その機械から通知音が鳴り響いた。「
「きーまり!」跳澗虎はにっこり笑った。「大集合作戦、話してやーんの!」
[作者あとがき]
読み直したらこの章で笑うかもしれません。
[訳者あとがき]
みんな違ってみんな変
次回は8日に投稿します