転生系卑屈ぼっちは今日も行く   作:納豆巻

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6話

「おい、竜殺しだ。また現れやがった」

 

 いかにもなスイングドアを通り抜けると、冒険者ギルドがざわめいていた。

 なんでも、劣等地竜とかいうすごい魔物が倒されたらしい。

 脳と背中の急所を的確に攻撃された死体が見つかったとのことだ。

 以前にも、卑穿竜の幼体が何者かに倒されていた事例があったと聞く。

 お忍びで凄腕の冒険者がやってきただの、放浪する伝説の武芸者だの、噂が一人歩きしていた。

 まあ、俺には関係のない話か。

 

「竜殺し……いったい何者なんだ――ってか」

 

 誰でも良いけど、おぞましい魔物が攻め居るフラグとかでないことを祈る。

 俺には関わりのない話だが。

 俺が倒した大物と言えば、先ほどのトカゲやなんだか拗くれてドリルみたいな尻尾した蛇くらいがせいぜいだ。

 いやあ、あのまものもきょうてきでしたね、すばしっこくて。

 動きのパターン読めたら、アッサリ切れたけど。

 

「おう、今日もお使いかい」

 

 ギルドの窓口担当さんは、片方が義足の強面だった。

 いつもクシャクシャの笑顔で穏やかだが、それでも若干怖かった。

 

「はい、換金お願いします」

 

 俺が捕らえたと言っても信用して貰えないので、保護者である同居人が捕まえたのを運んでいるだけだという事にしている。

 腰に佩いた剣だって、おもちゃの模造刀扱いだ。

 あのものぐさに振り回されて大変だなぁと、たくさんの人に同情して貰えるのでまあ良しとする。

 カウンターに差し出したのは、角兎。

 2本の角が生えた、魔物は分類されないその獣は、確かに子供が捕らえるには勇気が要るだろう。

 魔術で捕らえて、トドメ刺して、血抜きまで全部自分でやりましたけどね。

 魔術で作った擬似的なロープっぽいのを伸ばして、引き寄せて刀でザクって。

 あの人、一応俺の監督役だろうに。

 暴走(笑)とかしないように。

 やる気なさ過ぎ。

 兎の肉と、角と、毛皮、全て良好と査定結果。

 引き取り価格に影響するからね。

 捕らえてからの処置は、そこらのトーシロにはムズいってもんよ。

 筋が良いって村では褒められたもんさ、狩人のおっちゃんに。

 ……つか、これくらいしか褒められた記憶が無い。

 何なの俺の人生?

 泣きたい。

 低賃金労働に悩殺されるばかりで将来は閉ざされたし、その事実を思うとただただ辛い。

 内心でのたうち回りながら、帰路へ。

 同居人との生活は、家事全般から何まで全て俺任せ。

 そもそも狩りは手伝いしているだけだったのに、いつしか全部押しつけられる始末。

 この低空飛行な暮らしがいつまで続くのか。

 不安を少しでも和らげるためには、金の魔力にすがるしか無い。

 手探りで狩りのさらなる効率化を図って、ばれない程度にくすねた小銭を貯める発想に至った。

 もっとはよう気付け俺。

 何時、金が入り用になるか分からんしな。

 俺の弱った心は、宗教お金様への依存していくのだ。

 金の概念は、魔術に通じるところが有るような無いような気もする。

 魔術を学ぶ物として、畏敬を抱くのはしゃーないよね。

 などと自己弁護。

 そして、昼下がりの余った時間に自己鍛錬。

 家から少し離れた所、森が近く薄暗い人気が無い場所。

 近くじゃやりにくいんだよ、なんだか。

 子供たちが群れなして遊んでいる光景に恐れを成したからではない。

 断じて。

 囲まれてよそ者洗礼リンチされるかもなんて、考えちゃいない。

 そう、唯一の資本である肉体を磨き上げなければ、最悪命に関わるんだ。

 かつて無いくらい、刀を振る修行に身が入るのは至極当然。

 ――というのは嘘です。

 

「あーっ! ああああぁぁーー!!」

 

 あれこれ考え込むせいで集中など到底無理。

 でも、やらねばという焦りでどうも落ち着けない。

 簡単な型や素振り程度しか出来ない現状。

 お屋敷にいた時、もっと真面目に励んでいれば。

 そう、もっと高度な鍛錬を行えていたのではなかろうか、と。

 もはや後悔しか無い。

 何度、同じような事で悔やむのだろう俺は。

 もっと前世で勉強してれば、知識がこの世界でも多少なりとも役に立ったろうにと、しょっちゅう思う。

 ラプラス変換とか。

 魔術の勉強にブロック線図が応用出来そうだなんて、夢にも思わんかった。

 最近、前世の異界でゾンビから逃げ回るパニックホラーばかり夢に見る。

 今ならば、アンデット系モンスターに効果ありそうな魔術を会得済みなのだが。

 魔術はもちろん剣術もそろそろ、知識不足で限界有るんだよなぁ。

 ちゃんとした指導が欲しい。

 自分が今やっている基礎の型が正しいのかすら自信が持てない。

 フォームが崩れていても、自分だけじゃ分からない。

 剣の振り方、足運びが持つ意味を何となく分かったような気がするが、錯覚の可能性大。

 持ってる刀は引くように切らなきゃとか余計な知識が足を引っ張るばかり。

 同居人にお願いして見てもらった事もあるんだが、一言だけ。

 

『まあ、そんな感じじゃねぇか?』

 

 ――当てにならん。

 何というお茶濁し。

 鼻くそをほじりながら言われたよ。

 

「あーっ! あーっ!」

 

 ムシャクシャして、無意味に叫びたくなる。

 つか叫んでる。

 

「糞が! 鬱陶しいんだよ!」

 

 素振りが荒くなった時だった。

 ――カサリ、と音がした。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 近くの茂みに子供が居た。

 満年齢でまだ八歳にも満たない自分より、更に一歳か二歳くらい小さな子供。

 ぼさぼさな髪の毛はこの辺りじゃ見ない黒髪で、少し黄色人種を思わせる風貌。

 ――異民族キタコレ。

 これはまさしく新展開へのフラグかも知れん。

 脳に虫が涌いたような事を考えながら、俺の錆び付いたコミュニケーションスキルがココでどうすべきか軋み出した。

 数秒間、フリーズしていた。

 まず、この子がごめんなさいと言ったのは、何故だろう。

 俺が奇声を上げたせいに決まってんだろ。

 

「あー、驚かせちゃいましたね。貴方を怒鳴ったワケじゃないですよー」

 

 声が震えた。

 単なるコミュ障である。

 しかも中途半端な敬語だ。

 

「あ、うん……」

 

 それだけ言って黙り込む、見知らぬ子供。

 これはどうした物かと唸っていたら、駆けて去って行った。

 

「ど、どうと言う事も無い」

 

 声は、更に震えた。

 駄目だろ俺。

 どうしてこう、もっと気の利いた事言えないんだ。

 どちくしょー!

 自己嫌悪の奇声を上げながら、俺は素振りを再開した。

 ――そして次の日、同じように剣の鍛錬していたら、その子供がまた姿を現した。

 いつの間にかやって来て、俺の素振りを真似ようと、木の枝を振り回す。

 微笑ましいなぁ。

 その次の日も、その子は俺を少し遠目に観察して、枝を振り回す。

 更に三日後、俺は意を決して話しかけた。

 

「あのう、もし良かったら、教えてあげよっか?」

 

 自主鍛錬をしながら、子供に剣の型を教えるようになった。

 型を見て、あやふやな知識を元に構えを見てあげる。

 枝は削って、木刀の形状にしてあげて。

 俺にとって楽しい時間で、ハリのある生活を送れたと思う。

 でも、一月くらいでそんな日々もアッサリと終わりを告げる。

 そう――。

 たった一月で――。

 年下の子供にアッサリと技量で追いつかれそうになり、精神的に追い詰められる胃の痛い日々が始まるのだった。

 

 

 続くかも分からん




「また排除されただと。こんな街の隅に追いやられたガキを殺すだけの仕事じゃ無かったのか。何が竜殺しだ、クソっ!」
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