異世界転生ーーーーー誰しも一度は憧れることだろう。一度命を落とした者が、特別な力をもって別の世界でもう一度人生を謳歌するのだ。憧れないわけがない。…………何でそんなことを突然言うのかって?
それは私が実際に転生したからだ。
それも『魔都精兵のスレイブ』の世界に、女性として。
この作品は、数十年前魔都という異界とそこに住まう黄泉醜鬼なる化け物と魔防隊との戦いを描いたちょっとえっちなバトル漫画である。
その中に『東家』という名家が出てくる。この家の方針を一言で言えば徹底的な実力主義だ。弱者は当然のように淘汰される。
そして私ははその東家に生まれた。日万凛の双子の姉…
声を大にして言いたい。何でこうなった!?私なんか悪いことしたかなぁ!
確かに風舞希さんが母親になったり、日万凛や八千穂と姉妹になれるのはすっごい嬉しいよ。でもその喜びが全てかき消されるくらいに、東家は歪んでいるんだよ!
そう思った原因は主に現当主で祖母にあたる海桐花の教育方針だ。これは完全に何となくだが、あの人能力の強さで人物を評価している節があるんだよなぁ。
例えば能力がチートだが身体能力がそこまで高くないベルちゃんを特別待遇でスカウトしたり、コピーできる能力に相性があるというデメリットを知る前は
日万凛を評価していたりする。まあ能力以外はこれから伸ばせば問題ないという考えは分からんでもないけど。
私はこれから魔防隊に所属するであろう日万凛を守りたい。だが日万凛が主人公が務める七番組に所属した理由が、東家を飛び出した日万凛を当時副組長だった京香さんが拾ったからだ。つまり日万凛には東家を出てもらわなければならない。そうでないと原作とのズレが出来て、勝てる戦いに勝てなくなるかもしれない。
だから日万凛にはある程度距離を置いておくことにした。心苦しいが、これも日万凛のためだ。だからあそこで誉に日万凛がいじめられていたとしても、俺は関与しない。日万凛のために関与しない。
「おらっ!泣けよ日万凛!」
ドコッ!バコッ!
誉は執拗に日万凛を蹴り続けている。日万凛は目に涙を浮かべている。
…私は関与しない
「お前はつくづく落ちこぼれだな。まさしく東の恥だな!」
蹴りが激しくなっていく。
…関与しない
「何度でも言ってやるよ。お前は落ちこぼれだってなぁ!!」
………。
「…あ?なんの様d」
バキッ
俺は誉の右頬を思い切り殴った。誉は少し驚いたような顔をしたが、その後すぐ殴り返してきた。その後は日万凛そっちのけで殴り合いである。正直そっからのことは
覚えていない。気づいたら自室の布団の中だった。風舞希さん曰く、あの後ずっと殴り合っていたところを、日万凛に止められたらしい。私の容体はというと、全身ボロボロで今日一日は絶対安静らしい。全く…関わらないって決めたんだけどなぁ。まあ後悔はないけど。
その夜、特にやることもないのでぼーっとしていると、部屋に日万凛が入ってきた。
「どうしたの日万凛?」
「綺利香、あのね。今日のことなんだけど「ごめんなさいならいらないよ。」え?」
「あれは私が勝手にやったこと。日万凛は何にも悪くないよ。」
「で、でも。私が弱いから…綺利香が。」
この子ほんと自己肯定感が低いなぁ。こんな環境で生きている以上仕方ないとは思うけど。さて、こういう時は…
「確かに、そうかもね。日万凛が強ければ、私がこうなることもなかったかもね。」
「………。」
「でもね。それはゆっくりでいいんだよ。」
「え?」
「海桐花様がなんて言うかは知らないけど、そんなことは気にしなくていい。焦って走ったら転んじゃうでしょ?それと同じで、焦って強くなろうとしても潰れてしまう。だから、ゆっくり歩くんだ。たとえゆっくりでも、いつかは強くなれるよ。だって進んでいるんだから。何か間違っているかな?日万凛。」
俺の言葉に日万凛は呆気にとられている。すると日万凛の目に涙が溢れた。
「綺利香………ありがとう!」
その顔は涙でぐしゃぐしゃだったが、私には過ぎた報酬だった。
因みに風舞希さんにこの件について小一時間説教を受けた。やっぱり美人は怒ると怖いね。
綺利香の能力とかその他は次回以降に詰めます。
次回『第一話:何番組に入るかで身の振り方が変わるよね。』
お楽しみに。