争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい 作:大気圏突破
月灯りに照らされた山林で坊主頭の少年が裸足で駆け下りていく、兵藤一誠は幽閉されていた寺から逃げ出していた。1年前に通っていた学園の女子更衣室を覗いたことで放校処分を科さられてしまった彼は再び駒王学園を受験したが願書が破られてしまった
「(もう少しで街に……)」
このままでは世間を騒がせてしまうと思った両親は、息子のスケベな性格が改善されるのを祈って県外の寺に放り込んだ、しかし現代社会に染まった俗物が厳しい修行に耐えるのは不可能であった
「(まずは靴と服だ!このままじゃ絶対にバレる)」
手には隠し持っていた1万円が握られていた。人混みの中へ隠れてしまえば探すのは不可能になる。味気ない精進料理よりジャンクフードを貪るように食べ尽くしたい、なにより苦痛なのは男だらけの空間で彩りが存在しないことである。本屋でエロ本を購入する選択肢にカーソルが揺れ動く……しかし
「うああぁぁぁぁぁ!」
寺側が仕掛けた逃亡者を捕まえるトラップにハマってしまった一誠は叫び声をあげてしまい追ってきた者たちに取り囲まれる。『自由』という2文字は指の間からすり抜けるように落ちていくのであった
なお彼の部屋にあったエロ雑誌やDVDは両親の手によって処分され、火曜日の燃えるゴミとして捨てられたが変態コンビが回収し再利用されている
「本当に臭くないわよね?」
リアス・グレモリーは何度も腋の臭いを嗅いで異臭がしないか確認をしている。既に『腋臭』は解除されているが本人は未だに臭うのではないかと不安になっている
「大丈夫ですよ部長」
「…臭わない」
眷属たちも太鼓判を押すが鼻呼吸をしていない、全員があの臭いをトラウマにしてしまい空気がぎこちないのだ、部室には最高級の空気清浄機がマックスで稼働しゴミ箱には制汗スプレーとファブリーズの容器が散乱している
一時的だがライザーとの婚姻を先延ばしに成功したが現在の立場が芳しくない、彼の勝利者インタビューで突きつけられた事実と取り巻く環境は自身やグレモリー家の評判を下げる要因になっている。兄のサーゼクスは「リーアは大器晩成」と擁護したが両親からの視線は冷たく痛いものだった
「(アイツのせいで…私の人生メチャクチャよ!)」
八つ当たりも甚だしい、メッキが剥がれて本来の実力が露呈しただけである。しかし挽回の猶予は残されているのも事実だ、本人に向上心さえあれば底辺から這い上がる努力を今から行わなければならないが体臭に気を取られているのを見ると前途多難である
「(あの力は決して…)」
部室から姿を消していた姫島朱乃は屋上で物思いにふけっていた。彼女が憂う姿を写真に収めればコンクールで佳作に選ばれるだろう。しかしここにはカメラマンは1人もいない、人払いを施し誰も近寄ることが出来ないのだ
「(アイツと同じ忌まわしい血なんて)」
レーティングゲームでマイクを持ったライザーから発せられた言葉が、終ってから今まで頭の中で何度も巡り判で押した答えを導き出したが朱肉のインクが切れてしまい紙に印字することができない
「(祐斗君はリアスの為に命懸けだったのに、私と小猫ちゃんは)」
忌むべき力を開放すれば不死の特性を持つライザーも無事ではなかったはずだ、彼が単騎で現れたのはチャンスだったのに己のプライドを優先させてしまった。手の内を隠して勝てる相手ではないと分かっているのに
寛大な心と器の広さによって問題を回避することはできたが主や家名の評判を落とす戦犯者の1人になってしまった。そしてこれから起きる騒動で彼女の心を不安定な位置に追いやってしまうのだ
「エクスカリバー?ってゲームやアニメで登場する…あのエクスカリバーですよね?」
「そうです。1本は所在不明ですが3本が堕天使によって盗まれました」
放課後に呼び出された伸元は生徒会室でソーナから聞かされた出来事にクエスチョンマークを浮かべていた
「その言い方だとエクスカリバーが複数あるように感じるのですが」
「エクスカリバーは7本存在しますよ」
「……はい?」
大昔の戦争で四散してしまった聖剣を教会が回収し、錬金術を用いて7つの特性を7本の聖剣に分けて作り直された。ちょっと待ってほしい聖剣が折れて作り直したって日曜大工的な感覚でエクスカリバーを作っていいのか?
そもそもアーサー王が持っていたエクスカリバーって湖に返還されたはずでは?借りパクして壊して破片で新しいのを作って同じ名前を名乗っていいの?しかも盗まれるって警備担当者は何をしていたんだ!
「また堕天使ですか」
「そのまたなんですが…」
ソーナの歯切れが悪いのには理由があった。聖剣を盗み出したのは
「当然向こうから出してくれますよね?」
「教会の方からエクソシストが2名派遣されるみたいで近日中に接触する予定です。堕天使側からも戦力を提供する旨の報告を受けていますが、アテにはならないかと」
相手は古の戦を生き抜き聖書にも名を記された堕天使の幹部である。たった2人のエクソシストで太刀打ちできるとは思えない、不祥事を起こしているのならトップが先に謝りに来いよ!…それよりも面倒で厄介なことがある
「これってリアス・グレモリーが今までの汚名返上で『私たちがコカビエルを倒すわ』って言いだす可能性ってどれぐらいあると思う?」
その質問に彼女は額から汗を流しながら明後日の方向に顔を動かして口笛を吹いている。その姿を見て伸元は察してしまった。少し前にグレイフィアから魔王であるサーゼクスのシスコン具合を聞かされているのでシナリオを予測する
コカビエルに立ち向かえる面々は限られている。教会から派遣されるエクソシストは未知数なので現時点では戦力外として扱おう、ライザーに傷を負わすことすらできなかったリアスが堕天使の幹部に勝つ未来が1%も存在しない、何も考えずに眷属全員で突撃して返り討ちなるのが関の山だ
そうなると自分が矢面に立つ必要がある。コカビエル相手に仮に勝てた場合もしかするとリアスの手柄にされる可能性が僅かながらにあり得る。魔王が『妹の呼び掛けに応じて赤龍帝と共にコカビエルを撃退』と吹聴させたら最悪である
『サーゼクスの手のひらで転がされているな』
「シスコン魔王の駒扱いなんて真っ平ゴメンだ!」
住んでいる街を破壊されたくなければ、懇意としているソーナを守る為に自発的に出てきて堕天使を打ち破ってくれ、愛しい妹のリアスの為に
「姉さんに連絡して援軍を頼みましょう、今回のことで石動君とドライグが全てを背負い込む必要はありせん」
「…シトリー会長」
「楽しいことは皆で楽しんで、辛かったり苦しいことは分け合って1人の負担を軽くするのが仲間です」
彼女の言葉を聞いて心が少しだけ軽くなる。ブラック企業に勤めていたときの悪い癖だ、誰にも頼らずになんでもかんでも背負ってしまって視野が狭くなって己のクビを絞め続ける
「改めて頼らせていただきます」
「任せてください、私と貴方の仲なんですから」
出会ってから長い付き合いで気心が知れている。片方が苦しかったら手を差し伸ばして助けてきた。今回は高い壁と大きな障害だがやることはいつもと変わらない、乗り切ることができたら全員でドンチャン騒ぎで祝勝会を開こう
2人の手は強く握られ強大な敵に立ち向かうのであった
一誠は寺送りにされてスケベが治るまで暮らし続けます。そもそも覗きって犯罪なのに処罰されないのがおかしいので、なお彼が脱走して自宅に帰っても寺へ送り返されます
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