争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい 作:大気圏突破
伸元の投じたダイスの効果で『アルツハイマー型認知症』を発症してしまったコカビエルは何も出来ない存在になってしまった。しかも赤龍帝の倍加が合わさっているので過去の記憶が薄くなり、戦場を駆け抜けていたことや自身が堕天使であること、力の入れ方や歩き方に加え立ち上がることすら忘れてしまい地面で赤ん坊のように泣きじゃくるのであった
「オイオイオイィィィ!いったぃどうしたんだよ、なんでボスがガキみたいに泣いているんだょぉぉぉ!」
別の場所では四方八方からリンチを受けるフリードがコカビエルが戦意を喪失しているのを見て口から唾を飛ばしていた。手持ちで残っていた2本聖剣で悪魔と対峙していたが防戦一方で反撃の糸口が見つからない
「巻きつけ!」
匙の伸ばした龍脈が彼の頸動脈を締め上げ段々と意識が遠ざかる。酸素が行き渡らずに思考が鈍り四肢から力が抜けてしまう
「はぁぁぁぁ!」
左右から接近してきた木場と椿姫が即席のコンビネーションで挟撃し魔剣と薙刀でダメージを与える。魔剣を握る彼は斬りつけるのではなく刺突に特化させた得物を創造すると『騎士』の加速力で踏み込んで腹部を貫く
「このクソ悪魔がぁぁっ!」
「残りの2本も破壊させてもらうよ」
文字に出来ない放送禁止用語を口にするフリードに手段は残されていなかった。夢幻の聖剣と透明の聖剣を微塵に砕いた木場はバルパー・ガリレイの前に立っていた
「バルパー・ガリレイ…僕はあなたの聖剣計画の生き残りだ!死んでいった同志のために、僕自身のケジメのために」
「まさかこんな極東の地に生き残りがいたとは」
彼は懐から輝くクリスタルのようなものを取り出した
「これが何だか分かるか?被験者たちから抜き出した因子を結晶化させたものだ」
「なん…だと」
「おかしいと思わないのか、どうしてフリードが聖剣を扱えることに疑問を抱かない?これは因子の不足を補う代物だ!」
最期の悪足搔きなのか過去に犯してきた所業を口にする。聖剣は『因子』のある者しか扱うことができない性質を持ち、使い手となれるほどの因子を持って生まれる者の数は非常に少ない、バルパーの提唱した理論は人間を材料にして集めて凝縮した因子を移殖するものだった
「私を異端として追放しておきながら研究だけは利用しよって、あのミカエルのことだ被験者から因子を取り出しても殺してはいないだろうがな…欲しければくれてやる」
木場の足元に結晶を投げつけるが拾わずに魔剣を構えた
「僕はもうイザイヤではない、悪魔の木場祐斗だ!」
寸分の狂いなく魔剣は結晶を砕くと淡い光が木場の周囲を包み込んでいた。次第にその光は彼の体内に溶け込むように一体化していく
「そうか…みんな、ありがとう…僕らはもう独りじゃない、受け入れよう。そうだあの頃から僕たちの心はいつだって」
「―――
魔剣と聖剣の両方の特性を兼ね備えた「聖魔剣」を創造し、過去を断ち切り未来に向けて駆けだす。その刃がバルパーを貫こうとしたとき
「でりゃぁぁぁぁあああ!」
突然聖なるオーラが飛んできてバルパーを吹き飛ばした。そして視線の先にはエクスカリバーとは違う聖剣を担いだゼノヴィアが立っていた
「………………………………えっ?」
突然のことで木場の思考は一気にパニックとバグを引き起こし、少し離れて見ていた匙と椿姫も同じように固まり、縛られていたフリードは出血しながら大爆笑していた
「ここは木場がかっこよく過去の因縁を断ち切るところだし、お前どうやってブタ箱から出て来たんだ?」
禁手化を解いた伸元も近寄って弛緩してしまった空気を立て直そうとするが完全に「だめだこりゃ」である。聖魔剣を構えたままの木場の前で手を振るが反応がなかった
「お前のせいで私とイリナは…」
「まさか脱走してきたのか?」
その言葉に彼女は力強く頷いて持っていた聖剣の切先を彼に向けていた。無銭飲食と店内の破壊によってお巡りさんたちに捕まったエクソシストは留置所で暮らしていた。雨風凌げて朝昼晩のご飯と布団が用意される生活を満喫していたが、彼等の放出した魔力とコカビエルの存在を感知したゼノヴィアは亜空間に収納していた聖剣『デュランダル』を呼び出して駒王学園へ単独で向かったのだ
「はぁ~~~~~~~~」
伸元は重くて深い溜息を吐いてヤンキー座りの体勢になって頭を抱えた。コカビエルは『アルツハイマー型認知症』を発症しグラウンドで泥だらけになりながら砂遊びを楽しみ、木場の復讐も一応終わってバルパー・ガリレイもソーナたちによって捕えられた
「立て、赤龍帝!私(の経歴)を傷物にした報いを受けてもらう」
デュランダルで斬りかかってくるが匙が龍脈でゼノヴィアの足首を巻き付けると、バランスを崩した彼女はガンヘッドスライディングを披露し自滅した。当然のことだが聖剣は没収され彼女は結束バンドで拘束されるのであった
「お前が堕天使側の助っ人か?」
「あぁ、二天龍の一角で白龍皇だ!」
騒動が終わって10分が経った頃だった。セラフォルーとグレイフィアを含め今後の対応を協議しているときに、現れたのは堕天使陣営から送られてきた白龍皇だった
「遅くない?」
「すまない…俺も忙しいのでな、コカビエルたちを回収しても構わないか?」
「ちょっと時間をくれ」
悪魔とドラゴンによる協議が再開され多数決の結果、条件をつけて引き渡すことが決まった。その条件の内容は『堕天使側でシトリー家の関係者たちがコカビエル討伐を行ったことを大々的に吹聴する』ことであった
「問題ない、白龍皇のお墨付きなら信じるだろう」
「じゃあ持っていきな!」
白龍皇はコカビエルを含めた今回の首謀者たちを担いで立ち去ろうとする。しかし呼び出していないのに籠手からドライグの声が発せられる
『無視か、白いの』
『やはり、起きていたか赤いの』
『まぁな。そちらの所有者はかなりのもののようだな』
『お互い様だろう?だがどうした赤いの以前のような敵意が感じられないが?』
『気持ちの変化だ、ドラゴンだって心変わりぐらいするものだ』
二体の龍は久々の再会を楽しむように会話を続ける。割って入るのは野暮なので締めの挨拶が終るまで口を挟むのはやめた
「俺の名はヴァーリだ!赤龍帝…お前の名は?」
「石動伸元だ!気軽にノブさんとでも呼んでくれヴァーリ」
「そうか…いずれまた会おう。我がライバルよ」
白龍皇は全員に視線を向けると飛び去って行った。これでコカビエルが起こした騒動は全て終わった。彼等のせいで亡くなった人たちはいるが、それ以外に大きな被害は特に見当たらなかった。そして今から事後処理を行わなければならない
「とりあえず、このエクソシストはどうしよう?」
人差し指の先には拘束されたゼノヴィアが脂汗をダラダラと流しながら地面をのたうち回っている。協議をしているときに大声で騒いでいたので黙らせる為にダイスを投げたら『過敏性腸症候群』と記されてあった
エクソシストでも乙女である。人様の前で腸内に溜まったガス…つまりオナラを放出する訳にはいかない、括約筋をフルパワーで稼働させ出入り口を塞いでいるが既に小さい音は漏れ出ている。ゼノヴィアの我慢はいつまで続くのか?それは読者の方々への想像に任せます
とりあえずエクスカリバー編の終わりです
次話は事後処理になります
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます