争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい 作:大気圏突破
あの発汗と入れ込みで勝つなんて
渡された飲み物を口に含んで潤したリアス・グレモリーの女王である姫島朱乃は自身の出自を近くに座る3人に語り出した。母親は五大宗家に連なる姫島家の巫女で父親は『神の子を見張る者』に属する堕天使のバラキエルだった
「母が傷つき倒れていたバラキエルを助け、2人は恋仲となり私が産まれました」
しかしバラキエルを良く思わない姫島家の本家によって刺客を送られ1回は撃退したものの残党が堕天使の敵対者へ密告されてしまい、不運なことに彼が留守だったこともあり朱璃は娘を守りながら命が尽きてしまった
「人間と堕天使のハーフで転生悪魔ってややこしい背景だな」
イタリア系関西人でアメリカ競馬で活躍するダービージョッキー並みに肩書きを盛り過ぎている。その後の朱乃は各地を放浪し本家に追われている内にリアスと遭遇すると彼女の仲介によって命の保障がされることになり中学入学前に悪魔へ転生した
「施設から逃げ出した僕も部長に救われたんだ…あれは」
「お前まで過去を語るな日が暮れる」
伸元のツッコミに木場は肩をすくめてシュンとなってしまう
「父が堕天使だったから母は殺さ―――」
「いや違うでしょ」
「…っえ?」
心の均衡を保つために意識していたこと、堕天使を憎むことで心の宝箱に何重にも鎖や南京錠でガチガチに固めて表に出したくない感情を封じこめてきた。しかしそれを目の前の彼は遮った
「なんで俺達にカミングアウトしたんだ?自分の意見に賛同してほしいの?」
「違います…その堕天使について」
「2年になって早々にレイナーレと呼ばれる堕天使に命を狙われてコカビエルは戦争がしたいからエクスカリバーを奪って駒王町でヒャッハーだもん」
その言葉を聞いて朱乃は顔を曇らせた。ここ数ヶ月で父親と同じ種族が人間界で大暴れして迷惑を掛けている。殆どの人が嫌悪感を抱くだろう
「俺としてはあくまでそいつ等が嫌いだ」
「えっと…それって?」
「兵藤一誠って知ってます?去年学園を追い出された野郎で仲間の変態コンビが同じクラスにいます。俺その3人のことが大嫌いなんですよ」
目の前にあるスチール缶を握り潰してゴミ袋の中へ投げ込んだ
「じゃあ人間全員嫌いですか?と問われたら答えは『NO』です」
普通で当たり前のことである。権力を笠に着る奴や人を見下す輩に心を開くつもりはない、とりあえず未だに謝りに来ない総督のアザゼルのことは大嫌いの方に振り分けられる
「そうですわね」
「でも気になったんですが何で先輩のお母さんは堕天使領に身を寄せなかったんですか?」
シトリー眷属の椿姫も五大宗家の出身で弁当を食べている時に話を聞いたことがある。保守的で鎖国的な風潮で変革を嫌う存在だ、堕天使と結ばれたら確実に家族が狙われることが分かり切っている
言うなれば駆け落ちしてバラキエルの地元である冥界の堕天使領に居を構えれば問題なかったはずだ、例え父親が所要で家を留守にしていても別の堕天使に警護をしてもらうことも可能である。人間界に住む者が冥界に不法侵入してきたら即行でバレる
「聞いたことなかったですわ…そんなこと」
「なら聞けばいいじゃないですか?言葉に詰まってふざけたことを抜かすならバラキエルで時代を先取りするような十字架を作りましょう」
ふと想像してしまった。全裸でハチミツと安いワインで体を汚した父親を富士の樹海に放置して虫や動物たちに襲われる姿を思い浮かべたら『ドS』の心に火がついてしまい、ニヤニヤと笑みをこぼしている
「思い悩んでいたのが馬鹿らしく思えてきましたわ」
「ちなみにだけど部長のことは?」
「リアス・グレモリー?もちろん大嫌いだ!」
判で押したように当たり前のことを口にすると、ゼノヴィアのお腹のタイマーがヤバそうなので立ち上がり帰り支度を始める。これから晩御飯の材料を買って調理になると彼女はダウンしてしまうだろう。空腹しのぎにポテチの袋に手を伸ばしてしまったら怒るつもりだ
「俺たちは帰りますね」
「差し入れありがとうございます」
夏の日差しで濡れていた衣服が乾いたゼノヴィアと共に学園を後にした。昼の蕎麦とアイスキャンディーだけじゃカロリーが足りなかったようで少しフラフラしている
「彼が私たちと同じオカ研所属でしたらリアスに向けられている目も違ったのかもしれませんね」
「石動君はあげませんよ」
「ソーナ会長の眷属じゃないのなら問題ありませんわよね?」
まさかロックオンされてしまった?
自宅にたどり着くと彼女はソファに倒れこんでしまい力尽きてしまった。紛らわす為にクッションの端を噛みしめて白い歯をカチカチ鳴らしている
「後片付けと明日の朝食は私が全部やるから作るのを任せていいか?」
「そんな状態で包丁を振ったらチラシ寿司が血らし寿司になるな」
1人で台所に立った彼は急いで準備し、朝に炊いた白米を冷蔵庫から取り出してレンジで温める。早くしないとゼノヴィアのライフが尽きてしまい箸を持つことすら出来なくなってしまう
"ピンポーン"
もう少しで完成する頃合いに自宅の呼び鈴が鳴った。通販は頼んでいないし回覧板なら郵便受けに投函される。こんな時間に押し売りのセールスが来るとは思えないし自宅のテレビはNHKが映らないタイプなので集金でもないはずだ
「私が見てくる」
「ドアスコープで確認しろよ」
ふらつく足で壁にもたれながらゼノヴィアは玄関まで向かった。スーパーで買った穴子を大きめに切り分けて大皿によそったチラシ寿司の上に盛り付けてワサビ醬油を用意したが2分経っても彼女は玄関から戻ってこない
「誰が来たんだ?」
気になって彼も玄関に足を運んだ、ゼノヴィアはドアスコープをじっと睨み付けている状態で固まってい殆ど動いていなかった。遂に空腹のピークが限界を迎えてしまい機能不全に陥ったのかもしれない、とりあえず彼女をどかして伸元もドアスコープを覗くと
「グレイフィアさん?」
そこには自分たちと共にコカビエルの撃退に尽力してくれたメイド服姿の魔王の女王が立っていた。そしてその隣にはリアス・グレモリーを性転換させたような人物がにこやかに微笑んでいる。また面倒なことが起きそうな雰囲気に溜息を吐いてしまうのであった
「やあ、すまないねこんな時間に…赤龍帝の石動君だね?」
「普通に迷惑な時間ですね」
とりあえず2人を招き入れた伸元はソファに座らせてホットコーヒーを提供する。お腹と背中がくっつきそうになっていたゼノヴィアは台所の椅子に腰を下ろして先に食べてもらっている。我慢させるのは可哀想だもん
「自己紹介が遅れてすまない、私はサーゼクス・ルシファーで君の通う学園の理事でリアスの兄で魔王を務めている。妻のグレイフィアのことは存じているね?」
「貴方のことはセラフォルーさんから伝え聞いてますので」
「そこまで喧嘩腰にならないでほしいな、今日は君の活躍に褒美を与えるために来たんだ」
それならせめて電話でアポをとってほしいものである。貴方の奥さんとは連絡先を交換してあるのでマナーぐらい守ってほしかった
「俺ではなくシトリー会長たちに与えるのが筋だと思いますが」
「無論そのつもりだ、だがまずは君と話がしてみたくて」
「妹が活躍するはずだった台本を書き換えた人間がどんな顔かって気になったんですか?」
「そんなつもりは…」
好き嫌いで判別するなら彼はサーゼクス・ルシファーのことが嫌いである。リアス・グレモリーに駒王町を任せ堕天使たちに好き勝手されているのに何も咎めていないとこに怒りのマークを浮かべる
「別にこっちは褒美の為にやっている訳じゃありません」
「まぁ…そう言わずに私の方も出したものを、引っ込めるつもりはないよ」
もう帰ってほしい、空は暗くなって居酒屋の提灯が紅く染まっている時間なんだから長く居座るのはやめてほしい、サーゼクスは彼の瞳を真っ直ぐに見つめると
「石動君はソーナ君の夢を応援しているとセラから聞いたんだ」
「長い付き合いですから」
「リアスの夢にも力を貸してくれないか?」
その言葉を聞いた瞬間に彼は今世紀最大のストレスを受け眉間にシワを寄せて魔王のことを睨みつけるのであった
サーゼクスとの対話になりました。彼の晩御飯は何時に食べることが出来るのか?
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