争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい 作:大気圏突破
サーゼクス・ルシファーから発せられた言葉を耳にした瞬間に彼の不機嫌メーターは臨界点を超える勢いで上昇した。なんで自分がリアス・グレモリーに手を貸さなければならないのか?ライザーとの対決の前に訪れ無防備なアーシアを攻撃したことに対して謝罪すら受けていない
「どうだろう引き受けてくれないか」
「冗談だとしても笑えないジョークですね。浅草の東洋館にでも行ってきたらどうですか?」
不機嫌オーラを放出して帰宅してくださいと催促をする
「なぜだ、どうしてリアスのことを毛嫌う?」
「無能な王に身を捧ぐなんてまっぴら御免ですね。豪華客船風の泥舟に乗り込むほど無謀なチャレンジャーでもないので」
中身の無いガワやハリボテで造られ、船底に穴が開いて浸水しているのを沈みながら直す稀有で特殊な趣味は持ち合わせていない
「彼女はまだ若い…至らないところもちょっとあるが、それはリアスの全てじゃない良いところも沢山あるんだ、アラばかり見ていないで広く視野を」
「ちょっとだど」
「サーゼクス様」
その言葉は彼の逆鱗に触れるタブーであった
「リアス・グレモリーがここに来てから堕天使やはぐれ悪魔に襲われる人が多くなった。それを至らないで済ませるのか?」
「そんなつもりは…だが交通事故や病気で」
「ご子息のミリキャス君が襲われて亡くなっても"仕方が無い"で矛を収めることができるんですね?流石悪魔を牛耳る魔王様だ!覚悟が違いますね」
息子が他種族に襲われ泣き叫ぶ姿を想像してしまい怒りの表情を作り立ち上がってしまい、ハッとしてしまう
「グレイフィアさん貴女から見てリアス・グレモリーに点数をつけるなら何点にしますか?」
「最高点数は何点になりますか?」
「100点で及第点は30点にしましょうか」
今までの言動を思い浮かべながら顎に手を当てて考えこんでしまった。隣にいる夫の不安そうな視線が思考を鈍らせるが彼女は忖度するつもりは無い
「20点といったところですね」
「グレイフィア!」
「理由を聞いてもよろしいですか」
その言葉に彼女はゆっくりと頷いて目の前に置かれていたカップに軽く口を触れて潤してから義妹に対しての評価を述べていく
「領主・管理人としての責務を果たしていないことにつきますね。上に立つ者として土地に住まう方々の安全を守るのが重要になりますが、リアスは殆ど何もしていません」
「堕天使が好き勝手に闊歩して人を襲っていましたからね」
「次に自身や眷属に対する指導を疎かにしてます。レーティングゲーム前に行おうとした無理やりなトレード未遂やライザー様との戦闘を見れば冥界にいた頃から成長していないことが見受けられます」
淡々と口にしていく事実にサーゼクスの顔色は段々と赤から青色に変貌してしまい、額からダラダラと汗が流れ落ちている。味方だと思っていた妻からの手厳しい採点に奥歯がガタガタを震え出す始末なのだ
「では石動様から見て
「下の中ってところですね。ミリキャス君をグレモリー家の次期当主に選出した方が良いと思います。今のままなら看板が傾きますね確実に」
当人のいないところで好き放題に言われている。擁護しようとする魔王は脳内で文字の羅列を組み合わせてみた
「評価が低いということは成長する余地があるはずだ、リアスは大器晩成なんだ短絡的ではなく長い目でみればきっと…」
「大器晩成ですか、御猪口サイズの器に明るい未来があるとは思えませんが」
「サーゼクス様、なんでリアスに対してお目付け役を選ばなかったのですか?」
天才でもない限り、いきなり土地を治めることなんて不可能である。それなら統治経験者を従属させて手取り足取り教えるのが通例だ
「まさかリアスの言葉を鵜吞みにして大丈夫だろうと高を括っていたのですか?」
「…それは……」
「あの子はまだ未成年の身です。将来の成長を願って駒王町に住む方々が犠牲になるのも計画のうちですか?答えていただけますよね」
ボクシングのボディブローのように重いダメージが蓄積されサーゼクスは二の句が継げない状態になってしまい、しどろもどろで体を震わせている
「石動様、本日のことですが私は止めたのですがサーゼクス様のワガママを押し通す形となってしまい夕飯のお時間を邪魔してしまったことにお詫び申し上げます」
「グレイフィアさん俺の番号知ってますよね?」
「アポイントを取ろうとしましたが、いきなり訪問した方がサプライズになると仰って」
デカい杓文字を持って突撃!隣の晩御飯をする時代ではない、リアスもそうだが今の悪魔に必要なのは常識なのかもしれない…否、非常識をまかり通してしまうから悪魔なのかもしれない
「私はサーゼクス様と夫婦の話し合いをしてきますので、失礼します」
「ぐっ…グレイフィア!」
震える旦那と共に魔法陣に乗って消えていく姿を見てドッと疲れが押し寄せてくる。とりあえず晩御飯を食べてから先のことを考えよう
台所の方に視線を向けるとゼノヴィアは満腹になって膨れた部分をさすってにこやかな笑顔のまま器用に椅子の上で目を閉じて寝てしまっていた。片付けの洗い物をやってくれると豪語したのにこの有様は笑えない
「(起こすのは野暮だな)」
『(甘くないか…相棒)」
「(明日から頑張ってもらうよ)」
お姫様抱っこで彼女のことを持ち上げると、ソファの上に寝かせてお腹の部分が冷えないようにブランケットを掛けてあげた。チラシ寿司は冷えていたが中々の味だった
「本当に申し訳ない!」
翌朝になりパンの焼ける匂いで目を覚ましたゼノヴィアは頭を深く下げて謝った。居候の身で惰眠を貪る自身の不甲斐なさを詫びているが咎めることはしなかった
「まだ1回目なら許す。だけど続けたら面目が立たないだろ」
「そうだ、私は」
「人生は長いんだし1つずつこなして挽回する姿をみせてくれれば良いよ」
「分かった!」
失敗したことに対して自責の念で後悔させるのも必要だが適度に飴を与えて次のチャンスに導く、転生する前のことを反面教師にしている
「混ぜるな危険を混ぜるな!」
「どうしてだ日本では、押すなと言って熱湯風呂に落とす文化なのだろ?」
悪魔と一緒にゼノヴィアにも常識を教えることが必要だと思うのであった
「やぁ」
「よう!」
始業ベルが鳴る30分前のことだった。学園の正門前にはダークな銀髪を靡かせるイケメンが立っていた。見た目から推察すると伸元と同じぐらいの年齢に見える
「俺の正体に気付いているよな?赤龍帝」
「もちろんだヴァーリ」
エクスカリバーの騒動の最後に現れた白龍皇と挨拶を交わし近くの自販機で購入した午後の紅茶を投げ渡す
「それで何しに来たんだ?」
「今日は軽く挨拶をしにきただけさ」
「堕天使側の護衛ってところか」
彼の言葉に軽く頷いてヴァーリは紅茶の蓋を開ける。午前中に午後ティーを飲むとは恐ろしい男である
「石動伸元、君は世界で何番目に強いと思う?」
「さぁな…考えたことも数えたこともない、ボクシングみたいに世界ランキングが公表される訳でもないし」
「君は強者の部類だ!俺が保証する」
目をキラキラと輝かせて近づいてくる。BL作品なら明らかにヤバい方向になってしまうが、ここは全年齢向けの作品である
「俺とやりたいのか?」
「そうさ、出来ることなら俺は今すぐ君と闘いたい…!」
「二天龍がやりあったら周りに迷惑を掛けてしまうな、広い荒野みたいなところがあれば受けるが」
赤と白の諍いで様々な方面に迷惑を掛けていたことをセラフォルーから聞かされたときはドライグに対して長時間の説教をしたこともある
「互いにとって最高の場所で」
「心置きなく」
「その言葉が聞けただけでも収穫があったよ、すまない俺も忙しくてね今から別件をこなさないといけないので」
ヴァーリはペットボトルを後ろにあるゴミ箱へノールックで放り投げると登校中の生徒の頭に直撃し弾んだ勢いで缶専用のゴミ箱へ吸い込まれてしまった
「また会おう石動伸元」
「そうだなヴァーリ」
二天龍を宿す彼等の遭遇は次なる争いを引き起こす布石になる。とりあえず今日の授業参観でトラブルが起きないことを祈るのであった
とりあえず勧誘は失敗ですがサーゼクスなら次の手を考えそうですね。やっぱり妻が最強なんですよ
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