争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい   作:大気圏突破

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そうだ冥界に行こう

 二度の脱走未遂を経て兵藤一誠は本堂から隔離された独房に詰められていた。四方を木製の壁で囲まれて窓は存在しない、外界と触れることが出来るのは1日3回の食事を配膳する小窓だけである。具の無いおむすびと味噌汁に漬物だけの質素な内容に17歳の胃袋は悲鳴をあげる

 

「絶対に…」

 

 性の権化であるコイツは諦めていなかった。釘が打ち付けられている部分に味噌汁を垂らして塩分で錆びさせている。自身の爪を折りながら引き抜いて板を外し通れるサイズになるまで繰り返す。ランダムで見回りに来るので常に足音を気にしながら3回目の脱走に向けて準備を行っている

 

「モモちゃん!」

 

 特撮番組の美少女ヒーローで一誠は彼女のファンであり8月に駒王町でサイン会が行われる。参加するのに必要なチケットはフリマアプリで5万円を超える値段で取引きされているが、彼は正規の手段で手に入れた

 

 サインと握手に2ショット写真も撮影することが出来る。二度と訪れることのない素敵な時間を満喫するため彼は今日も無駄な努力を続けた。だって帰ったところで家族はいないのだ、それにチケットは燃えるゴミとして処分されてしまい変態コンビの手に渡ってしまった

 

 

 

 

「てなわけで、今日から駒王学園の化学教師になることになった」

 

 生徒会室にはシトリー眷属全員と伸元が集まってホワイトボードの前にいる堕天使総督に視線を向けていた

 

「どういうつもりですか?」

「堕天使がここに訪れたということは喧嘩を売りにきたって訳か」

 

 伸元と匙が臨戦態勢となり右腕に自身の相棒を呼び出し椿姫が薙刀を向けている。他の眷属たちも掃除用具から箒やモップを取り出し、兵士の仁村は球技大会の優勝トロフィーを鈍器として扱おうとしている

 

「待て待て!これには深い理由があるんだ」

 

 アザゼルは両手(・・)を前に出して敵対しないことをアピールしていた

 

「その腕は?」

「片腕だと不便だから、神器研究のついでに作った万能アームさ」

 

 袖を捲り左腕がハガレンに出てくる機械鎧(オートメイル)ような見た目で彼が両手を合わせると錬金術のようにドリルやドライバーなどの形に変化させている

 

 

「それで深い理由ってなんだ?」

「サーゼクスやミカエルと話し合って禍の団への対策の為に派遣されたんだ、俺だって忙しいって言ったんだが…"堕天使領はジェムハザがいれば問題ないでしょ"って」

 

 駒王の地には魔王の妹が2人と赤龍帝の伸元がいる。コカビエルと白龍皇を撃退したということは今後もテロリストに狙われやすくなる。しかし今のままでは善戦すらできない状態でありアザゼルが人間界に留まることで指導者と護衛を兼ねる形となった

 

 

「それにお前ら人工神器を要求しただろ?調整できるのは俺だけだぞ」

「…それは」

 

 ゼノヴィアがソーナの眷属になり夏休み明けから学園に編入される。本人は今日から来るつもりだったが明日から休みに突入するので従ってもらった

 

 

「サーゼクスに頼まれてオカルト研究部の顧問になるがな」

「そうですか」

 

 表向きは若手たちを鍛える立場だが、アザゼルの欲望は神器の研究に没頭することなので赤龍帝や龍脈など個性的な面々が集う生徒会にも顔を出す予定である

 

 

「ところで赤龍帝…コカビエルのことだが」

「もうすぐ冥界に行くからその時だ」

「悪いな」

 

 今ここで解除すると堕天使領の病院で暴れる可能性がある。安全面を考慮するなら万全を期すのが必要なのだ

 

 

 

 

「若ふぇ悪ふぁの会ふぉう?」

「とりあえず口の中のものを空にしろ」

 

 晩御飯を食べながら対面にいるゼノヴィアに夏休みの予定を伝える。参観会のときにセラフォルーから誘われた時にも伝えたが忘れていたようだ

 

「向こうでシトリー会長を含めた若手悪魔たちのお披露目式があるんだと」

「ノブチカも出席するのか?」

 

 その言葉に少し悩んで首を横に振った。一緒に会場へ向かうが主役側ではなく観客席で全員の晴れ姿を見物する。眷属ではなく協力者なのだがソーナの話では会談の場で禍の団を退けたことに悪魔側から褒賞を与える式典も兼ねているらしい

 

 

「私の人工神器も冥界で貰うのか」

「近接戦闘向けで作っているみたいだ、調整も必要だし」

「この家はどうなるんだ?誰もいなくなるぞ」

 

 その辺は大丈夫、人間界で居を構えるシトリー家の使用人が訪れて家屋の警護をしてくれる手筈になっている。いざとなれば魔法陣で冥界から戻ることもできる

 

 

「向こうではシトリー家で寝泊まりすることになるから」

「ということは会長のご両親と顔を合わせるのか…手土産を持っていかないと」

「言っておくが木彫りの熊は駄目だからな」

「何故だ?日本は熊を贈る文化があるとイリナが」

 

 アイツ絶対に日本人じゃないだろ、海外だと未だに忍者が存在すると思われているし日本の文化である相撲もプロレスと勘違いしている人もいる。日本に対して悪いイメージのレッテルが貼られないか心配である

 

 

「すまない…ノブチカ」

「不安なのは分かる」

 

 23時を過ぎてゼノヴィアは自身の部屋で就寝する準備をしていた。電気を消して目を閉じるだけなのだが隣では伸元が彼女の手を握っている

 

 悪魔に転生した日は疲労もあって眠ることができたが、翌日から不安に苛まれて短時間しか寝れない状態が続いていた。それを打ち明けるが彼は医師やカウンセラーでもないので彼女が求める近くでいてほしいを実行していた

 

「アーシアたちには見せられないな」

「女の子なんだ…怖いものは嫌だろ?」

「あぁ」

 

 流石に同衾は出来ない(寝相で戦車のパワーで蹴り飛ばす可能性がある)のでゼノヴィアが寝入るまで近くで手を握ることになった。今日の出来事や過去の思い出に相槌を打っていれば30分ぐらいで夢の世界に旅立つ、それを確認したら足音を立てずに部屋を出て彼もようやく寝るのであった

 

 

 

 

 

 

「やっぱ駅弁は牛タン弁当だろ」

「いやいやノブさん峠の釜めしが至高なんです」

「何を言うか!このだるま弁当以外は邪道だ」

「「それはない」」

 

 列車の旅といえば駅弁とポリ容器のお茶が必須だ、各々がデパートで購入した弁当を広げ伸元・匙・ゼノヴィアは自分の選んだモノが最高だと豪語する

 

 旅と言っても地上ではなく冥界へ行くための列車の中で、この3人以外の眷属も車内で食べているが争うことなく交換しながら和気あいあいとしていた

 

 

「ノブさんと会長って冥界で会ったんですよね?」

「お互いにシトリー領の森で迷子になっていたからな」

 

 お茶を一気飲みした匙は2人の出会いについて質問してきた

 

「もしここじゃなくてグレモリー領にいたら、アレの協力者になっていた可能性も?」

「どうだろう?グレモリー家に対して手を貸したと思うけど、リアス・グレモリーはちょっと」

「そうですよね…見た目は良くても中身がアレだと」

 

 下世話なことや自身の戦い方の見直しに家族のことについて時間の許す限り語り合った。当初は匙の一方的なライバル心が剝き出しだったが、今では冗談の言い合える良い関係になってる

 

 

『まもなくシトリー本邸前。まもなくシトリー本邸前。皆様、ご乗車ありがとうございました』

 

 

 

「さぁ…もうすぐよ。降りる準備とゴミはダストボックスに入れてしまって」

 

 ソーナに促され降りる準備をしながら窓に外を眺め久しぶり冥界の空気に触れるのであった

 

 

 

―パンパンパンパンパン!!!―

 

『ソーナお嬢様!お帰りなさいませ!』

 

 列車から降りると花火と領地に住む悪魔たちが彼女のことを出迎えてくれた。まるで海外の人気アーティストが日本の空港に現れたような雰囲気だ

 

「お帰りなさいませソーナお嬢様、道中無事で何よりです」

 

 シトリー家で使用人の長を務める者が代表として前に出てきてた。ソーナと少し会話を交わすと伸元の前に立ち頭を下げた

 

「お久しぶりです。石動様」

「今年もお世話になります」

「ソーナお嬢様が今日に至るまで無事に過ごし、冥界に帰還できるのも石動様のおかげであります。使用人を代表して―――」

「早く向かいましょう。待っているでしょ向こうも」

 

 使用人の言葉を遮り親指を後ろの方に向けて、未だに驚いた表情をしている眷属たちに視線を誘導させると移動用の馬車があるところまで案内してもらった

 

 日本にいる限り馬車に乗る機会なんて殆どない、今回初めて冥界に訪れた面々は冥界の景色を堪能しながらシトリー家の本宅までの道のりを満喫していた

 

 

「着きましたわ、ここが私の実家の―――」

 

 馬車から降りると道の両脇にはびっしりと、シトリー家の使用人たちが整列していて足元には皺が全く存在しないレッドカーペットが敷かれていてる。庭には噴水やシトリー領でしか咲かない花々が満開になって帰還を喜んでいた

 

「これが…格差社会か」

 

 匙の感想も最もである。日本でもこれほど豪華な暮らしをしている人は僅か一握りだ、こち亀に登場する中川や麗子のようなトップセレブのような環境に圧倒されている

 

「皆様、どうぞお入りください」

 

 促されカーペットの上を歩き、屋敷に入ると初老の男性が出迎えてくれた

 

「お父様!」

「ソーナ…それに伸元君も」

 

 彼はソーナとセラフォルーの父親でシトリー家の当主である。いつもならシスコン魔王が妹に抱きつくのが定番だったが彼女はここには居ない

 

「眷属の方々も長旅で疲れたでしょう。部屋に案内しますので夕食まで一休みしてください」

 

 アーシアたちはメイドたちに案内されて各々に割り当てられた部屋に向かう。伸元はシトリー家にある彼専用の部屋に歩を進めようとしたら父親に呼び止められた

 

 

「テロリストから娘たちを守ってくれてありがとう」

「でもセラフォルーさんは」

「生きて戻ってきたんだ、命があればリベンジのチャンスはいつか訪れる」

 

 そう言って彼は背を向けると書斎に消えていくのであった




冥界へ到着となりました。wikiを見てもソーナの父親って名前が設定されてなくて
一誠のやってることですが、ゴールデンカムイの白石のモデルになった人物が同じことをやってます(味噌汁で鉄格子のネジを錆びさせるやつですが)

ゼノヴィアの人工神器は原作にはないオリジナル人工神器になります


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